伊吹澪のお兄さん。   作:凪姫

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第3話

入学2日目。俺と澪は高橋たち3人と食堂に来ていた。

言い出しっぺは高橋。俺も澪も弁当を持ってきていなかったので、せっかくならということで同行した。

 

「俺らの担当教師、フレンドリーな奴らで助かったわ〜。もしかしたら当たりなんじゃね?」

「だね。私も怖い先生だったらどうしようって思ってた」

「他の科目もそうだと良いんだけどな」

 

基本的には高橋か宮崎が話題を振り、澪や富岡が相槌を打つ、という進行。……いや、この説明は要らない気がする。

ともかく券売機の順番が回ってきたし、何を買うか決めないと。

 

「ねぇ兄さん、これ……」

「……やっぱりあったか。()()()()()()()()()()()()()

 

昨日の考察通り、数あるメニューの中でも、唯一無料になっている定食があった。

ただ、これで昨日の仮説について信憑性が上がったことは確かだろうな。

俺は山菜定食に決め、料理を取りに向かった。……ちなみに、澪は日替わり定食だった。

 

「おまたせ〜」

「おー、遅かったな。湊は……あれ?」

「それ、無料だったやつだよね?……まさか金欠?」

「流石に初日には使い切らないよ。単純にどんな味か気になったからね」

 

席に着くと、山菜定食を見て気になったのか高橋と宮崎が尋ねてきた。せっかくポイントがあるのにわざわざ無料のものを買ったのが気になったのだろう。

……とはいえ、流石に金欠になったのか聞かれるとは思っていなかったが。

 

「……そういえば、周りの上級生の先輩もそれを食べてる人は結構いるな」

 

そこまで黙っていた富岡が感想を漏らす。……確かに周りを見てみると、山菜定食を食べている先輩は少なくなかった。

それに関して気になったのか、3人は意見を交換し始めた。

 

「確かにそうだね。でも月に10万ポイントが入るなら他のを食べれば良くない?」

「だな。なんか理由でもあんのかな。それこそ金欠とか?」

「……流石にそこまで大きい買い物なんてのはなかなかないと思うが」

「……もしかして、上級生になるとポイントの支給額が下がっていくとか?」

「ねぇ、先生が言ってたことを思い出してたんだけど───」

 

どんどん議論がエスカレートしていく中で、突然校内放送が流れ始めた。

 

『本日午後5時より第一体育館にて、部活動の説明会を開催致します。部活動に興味のある生徒は第一体育館の方に集合して下さい。繰り返します、本日───』

 

部活動紹介のアナウンスだった。これを聞いて

 

「なぁ、部活動紹介はどうするんだ?」

「……俺は行くつもりだ」

「私も」

「兄さんはどうすんの?」

「ん〜……じゃあ俺たちも行こうかな」

 

澪に尋ねられて少し考えたが、行ってみることにした。……どんな部活があるのか気になるし。

 

「だけど、それまでちょっとやることあるんだけど……」

「じゃあ、10分前に体育館前集合にしないか?それまで各自自由ってことでさ」

「そうしてくれると嬉しいかな。……みんなは?」

「私はそれでいいや」

「構わない」

「いいよ〜。それじゃあ話を戻すけど───」

 

全員が承諾したことで、始まる前に全員で集まることになった。

そして再び3人が議論を始めるのを、俺と澪は黙って聞いていたのだった。

 

 

 

 

 

午後の授業が終わり、俺はまだ校舎の中にいた。というのも……

 

「……あそこの監視カメラはこっち向きの撮影か。んで、そっちのは別の方向を撮影する、と」

 

校舎中の監視カメラの位置をメモしながら歩いていた。

この学校には監視カメラが多いので、死角になりやすい場所を覚えて立ち寄らないように気をつければいいと考えていた。

ルール上カツアゲなどは禁止されているが、あくまで()()()()()()()()だ。

 

「バレなかったら問題にならない可能性があるしな」

 

実際、校舎の空き教室や特別棟の一部なんかには監視カメラが設置されていなかった。

もし使う場合を考えるなら、緊急密会なんかには使えるだろうか。場所が場所なので長い時間密会することはできないが、短時間人目を避けるには十分だろう。

余談だが、特別棟で監視カメラを探している様子を明らかに上級生と思われる女子生徒に見られていた。……変な奴だ、と思われていないことを祈るしかない。

 

「きゃっ!」

「おっと」

 

そんなことを考えながら歩いていると、前方から走ってきた女子生徒とぶつかってしまった。

女子生徒はバランスを崩しそうになったが、すんでのところで受け止める。……お姫様抱っこをする直前のような体勢になってしまい、女子生徒との距離が近くなってしまったが。

銀髪のショートカットで、比較的小柄の少女。髪には花をあしらった髪留めを付けている子だった。

 

「えっと、怪我はない?」

「……」

 

へんじがない。 ただのしかばねのようだ。▽

なんて余計なことを考えている場合ではないが、本当に返事がない。

どうしたのかと思って顔を見てみると、顔をこわばらせて固まっていた。

 

「あの、大丈夫───」

「触らないでっ!」

 

再び声をかけようとした時、再起動した少女は俺を振り払って去っていった。

さっきの少女に関しては心配だけど、それよりも目的の監視カメラについて考えなければならない。

 

(上級生の教室に関してはおそらく1年と同じ配置だろうな。となると、あと見に行く必要のある場所は───)

 

そう考えながら、待ち合わせまで校舎内を探索するのだった。

 

 

 

 

 

その後待ち合わせ場所にて集合した後、部活動紹介が始まった。

野球やサッカー、バスケといった王道の部活動から、チェス部や囲碁部をはじめとしたボードゲーム系の部活、コンピュータ部や奇術部といったようないわゆる趣味部活動(実績もある以上趣味ではないんだろうけど)など、普通の高校以上に部活動が活発だった。

もともと剣道部に入るつもりだった富岡くんも含め、各部の説明を真剣に聞いていた。

そして最後の紹介となり、出てきたのは眼鏡をかけた男の先輩だった。

舞台に上がってから1分、2分と時間が経つも話を始める気配がない。

最初1年生はヤジを飛ばしたりいじるような雰囲気だったが、それでも先輩は動かない。

そのうち段々と話し声やヤジが少なくなり、ついに『話してはいけない』という雰囲気が漂い始める。

 

「私は、生徒会会長を務める、堀北学と言います」

 

完全に沈黙したところで、眼鏡の先輩───堀北先輩が話し始める。

 

「生徒会もまた、上級生の卒業に伴い、1年生から役員立候補者を募ることとなっています。特別立候補に資格は必要ありませんが、もしも生徒会への立候補を考えているのなら、部活への所属は避けて頂くようお願いします。部活の掛け持ちは原則受け付けていません」

 

一言一言、重さを感じさせるような話し方。

それもあってか、この場にいる1年生全員が注意して聞くようになっていた。

 

「私たち生徒会は、甘い考えによる立候補を望まない。そのような人間は当選することはおろか、この学校に汚点を残すことになるだろう。この学校の生徒会には、規律を変えるだけの権利と使命が学校側に認められ、期待されている。その事を理解できる者のみ歓迎しよう」

 

司会進行の先輩が「以上で説明会は以上となります」と告げるまで、誰1人として喋ることは出来なかった。

時が止まったかのような空間から、部活ごとに入部の手続きしに行く生徒と、体育館から退出する生徒とそれぞれが動き出していった。

俺たちも例外ではなく、富岡と宮崎はそれぞれ入部手続きへ行った。ちなみに宮崎は茶道部にしたらしい。

俺と澪と高橋は退出し、すぐに帰宅する俺たちと寄り道をして帰る高橋くんに別れた。

 

「あの生徒会長、とんでもない人だったな」

「ん。あの威圧感ってやつ?他の部活と全然違った」

「多人数に注目されるようにわざと沈黙を生むっていうのは、あの場では有効だからね。……というか、アレ自体は見たことあったろ」

「え?……あぁ、あいつか。中学の時の」

「あいつも選挙の全校演説の時に似たようなことをやってたからね。ま、あれとは桁違いの効果だったけどさ」

 

中学の同級生にも似たような奴がいたおかげか、ある程度耐性のようなものがあったらしい。

いつもより少し饒舌な澪と共に、俺は寮へと戻っていった。




ぶっちゃけここの展開をどうするかすごく悩んでいました(真顔)

湊くんの学校探検1日目でした。といっても主に監視カメラの設置場所を探るだけですが。
途中であのキャラクターは出すか悩んでいたのですが、結局出すことに決めました。なので現在それに伴う今後の展開の改稿をしています。遅くなったらごめんなさい。
最後の同級生についてはおそらく今後出てきません。以降の同級生の回想シリーズも同様。

次回以降、オリジナル展開強めになります。ご了承ください。
ではまた次回に。
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