3日目。今日も俺は監視カメラの場所を探っていた。
昨日の時点で校舎、特別棟、カフェテリア等の学校内の施設はほぼほぼ確認が終わっているので、今日はそれ以外───ケヤキモールやその他施設に出向くつもりでいた。
「さて、それじゃあ───」
「待て、そこの青髪の新入生」
……いきなり声をかけられた。入学してまだ3日目、俺が声をかけられるようなことは何もしてないはずだけど。
そう思って振り返ると上級生がこちらに近付いてきていた。
身長は俺よりも多少小さいくらいで、女子としては高い方じゃないだろうか。
銀髪、ストレートのロングヘアー、頭には黒いカチューシャをつけている。
……あれ?この人何処かで……。
「俺、ですか?」
「あぁそうだ、お前に声をかけている。今時間はあるな?」
「え?まぁ、ありますけど」
「そうか。ならちょうどいい、こっちについてきてくれ」
有無も言わさずに歩き出す先輩。
何事かとも思ったのでついていくことにした。
学校を出てしばらく歩き、到着したのはカフェ、パレット。グループラインにて宮崎から今度5人で行こうと誘われていた場所だ。
放課後すぐだったからかまだ混んでいる様子はない。
席に着いたところで、先輩がまた声をかけた。
「さてと、着いたぞ。何にするんだ?」
「せっかくですけれど遠慮しておきます。……それで、俺に声をかけた理由って何なんですか?」
「そう慌てるな。私はお前に興味が湧いたから声をかけただけだ。さて、何も頼まないのなら私は注文させてもらうとしよう」
そう言って店員さんを呼び注文を済ませた。
メニューを見た限り、ドリンクはコーヒーだけでも十数種類、食べ物もケーキだけでなくサンドイッチをはじめとした軽食類も充実している。……といってもこちらとしてはポイントを増やす手段を持っていない以上あまり余計にポイントを使いたくないんだけどね。
しばらくして店員さんが頼んだ物を持ってきた。それを受け取り、先輩は本題を切り出す。
「さて、自己紹介がまだだったな。私は鬼龍院という。そっちの名前を教えてもらおう」
「1ーCの伊吹、です。さっきは興味が湧いたって言ってましたけど。俺は先輩になんかした記憶がないんですが……」
「あぁ、私には何もしていないな。放課後にたまたま目撃しただけだよ」
放課後?となると監視カメラを探している時か、説明会の帰りかってことだよな。
……そうだ、特別棟にいた先輩だ。もしかしてあの時興味を持たれたってことか?
「なるほど、特別棟にいた時ですか。うわぁ、あんまり見られたくないとこを見られたな……。先輩、それについて───」
「昨日のアレに関して言いふらしはしないさ。そのかわり───」
「あの場で何をしていたのか、包み隠さず話せと……」
「話が早くて助かるよ」
どうやらあの場にいた詳細な理由について聞きたいらしい。
……他クラスに伝わる可能性があるくらいなら、ここで話しておく方が良いか。
「……分かりました。それが条件みたいですしね。長くなりますけど───」
「あぁ、別に長くなっても構わないさ。付け加えるが───」
「途中で質問とかは無しでお願いします。ごちゃごちゃになりそうなんで」
……この先輩、とんでもなく頭の回転が速くない?質問内容を言い切る前に答えてくるし。
早くしろと言わんばかりの目を向けられ、俺は一から説明することにした。
「それじゃ、最初に───」
初日に澪にした説明プラスアルファ、課題にしていた部分も含め全てを話した。先に質問なしと言っておいたおかげか静かに聞いていてくれた。
あるいは答えを全て知っているからなのかもしれないが、現状では判別がつかない。
「───というわけなんですが」
「なるほどな。非常に面白い考察だった」
「これで全部ですけど。興味を持っていた部分も全部解決したのでは?」
「まさか。むしろもっと君に興味が湧いたよ。───そうだ、携帯を貸してくれ」
「え?……はい」
言われるままに携帯を渡す。
すると鬼龍院先輩は30秒ほど俺の携帯を操作してからすぐに返してくれた。
「さて、これでアドレスを登録しておいた。また用ができた時に呼び出すことにしよう」
「はい?」
「あぁ伊吹、君から用がある時も連絡しても構わない。これを今日に関してのお礼にしようか悩んだがね、どうせまた声をかけるのだから手間を省く意味もあるんだ」
「いやそうじゃなくて───待ってください、じゃあ今日のお礼って別のものが何かあるんですか?」
「……
……やはりな?何か試していたのか?
それよりも報酬ってどういうことだ?上級生の連絡先を手に入れただけでも報酬だと言っても気がするが。
「報酬というのは───」
翌日、俺は昨日の一件を含めてある人物に接触しようとしたのだが───
「あの、この間はすみませんでしたっ!」
現在俺、2日連続でパレットに来ています。……あれ?デジャヴかな?
目の前で土下座せんとばかりに頭を下げるのは、この前校舎の中でぶつかってしまった少女。
放課後すぐに教室に来て「お時間いただけませんか?」と連れてこられ、この有様である。
ちなみに連れ去られる時には高橋と宮崎はニヤニヤした目で見ており、富岡は一瞬こちらを見たもののすぐに目を逸らし、澪は少し不機嫌そうだった。可愛い(シスコン)。
「あの、別に気にしてないから頭を上げてくれないかな?そこまでされちゃうと俺もどうしていいか困っちゃうからさ」
「うぅ、分かりました……」
そう言って頭を上げてもらうと、とんでもない罪悪感があるようだった。
……推測でしかないけど、男嫌いなのにあのタイミングで急に接触してしまったからだと思っている。誰だってあの立場になったらあんな反応すると思うけど。
とはいえ、このまま罪悪感を持ったまま過ごさせるのも……と考えたところで、俺はあることを思いつく。
それを頭の中で吟味し、決定したところで早速彼女に対して行動することにした。
「……ねぇ、もしかして君は……男性のことが苦手なの?」
「えっ?そ、そうですけど……」
「どうしてそうなったのかとか色々聞いてもいいかな?話したくない事があったらそこは伏せてもらっていいからさ」
「えっと、じゃあ───」
そう言い、少女の話を聞いてみる。
どうやら彼女───
なんでそうなったのかは話したくないとのことだったので教えてもらってはいないが、何が起こったかはあまり想像に難くはない。
それ以外に関して尋ねてもしっかり答えてくれたことから、おそらく罪悪感が勝っていたのだろう。
そのおかげである程度どんな人間なのか理解したから、収穫ではあったんだけど。
「そっか、そんな事が……」
「将来的にはちゃんと克服しないといけないんですけど……それでもやっぱり、まだ男子が怖いです……」
「……」
そう言って、お互い黙ってしまう。
白波の考えは把握しきれていないが、葛藤している以上克服するという言葉は本気なのだろう。
「……そうだ、白波。君が良ければなんだけど、克服するのを手伝わせてくれないかな?」
「……えっ?」
「今日みたいに、俺とどこかに遊びに行ったりしないかって事だよ。俺としては他クラスに友人が欲しかったからさ」
「あの、私はいいんですけど……その、貴方はいいんですか?私の事情に巻き込んでしまっても……」
「むしろ俺がお願いしてるんだし、別に問題ないよ。……それで、どうだろう?」
再度確認した上で尋ねる。
……よく考えたらほぼ初対面の相手に「これからも会わないか?」って聞いてるんだよな。どう捉えてもナンパだよねこれ。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
どうやら白波も受け入れてくれたようだ。
パレットを出た後、俺と白波は連絡先を交換して別れた。ちなみに白波にとって初めて男子と連絡先を交換をしたらしい。……同じクラスの男子とも交換してないのかよ……。
こうして、俺に初めての他クラスの友人ができたのだった。
鬼龍院先輩と白波さんとの一幕でした。2人とも口調が分からん……!
サクサク進めていますが、のんびり進めていくと1巻終了まで相当かかると思ったのでこういう処置になりました。展開が早いので何卒。
澪ちゃんはおそらく5月に入るまで出番がないかもしれません。なんとか出せるように考えてはいますが……。
次回は本文で言う『ある人物』と接触します。
ではまた次回に。