数日後、俺は将棋部以外にも賭け試合を申し込んでいた。
チェス部、囲碁部、カードゲーム部。説明会の際にあったが、ボードゲーム系の部活多岐にわたる。
その中で俺自身がルールを知っているものに絞ったものの、それでも個人としては相当稼げたのではないだろうか。
そして今日も他の部活に行くつもりだったのだが……。
「急に呼び出しちゃってごめんね?」
「全然大丈夫です。特に何かしていたわけでもないですから。それで何の用ですか?」
「そうだね、歩きながら話そっか」
例の将棋部の部長さんに呼ばれたので、部室のあるエリアに来ていた。
連絡が来たのはつい先ほどのことで、要件自体は聞いていなかったので切り出すことにする。
どうやらコンピュータ部に所属するクラスメイトの都合がついたらしい。
その先輩の方も興味を示したらしく、わざわざ時間をとってくれるそうだ。
「そういえば他の部にも顔を出してるようだね。クラスでも少し話題になってたよ〜」
「本当ですか?」
「うん。だから彼も興味を持ったんだけど……っと、着いたよ」
そうしてたどり着いたのは1つの部室。脇には「コンピュータ部」と書かれたプレートがかかっている。
声をかけると『鍵は空いてるから入ってきてくれ』と言われたので、言われた通りにする。
部屋に入って奥のところに、1人の男子生徒が立っている。おそらく彼が部長さんの言っていたクラスメイトなのだろう。
「君が氷見の言っていた後輩か」
「はい。1ーCの伊吹湊と申します」
「そうか。僕の名前は
男の先輩───武田先輩は、俺を奥に作られたスペースへと案内する。
俺が席につくとその向かいに武田先輩が座り、その隣に部長さん───氷見先輩が座った。……というより、氷見先輩も話を聞くのか。
「パソコンだったら寮に備え付けられているデスクトップ型のものがある。それではダメなのか?」
「それも考えたのですが、それだと持ち運びには向きませんから。なので外でも使えるようなタイプのパソコンかタブレット端末が欲しいと思っています」
「そういうことか。なら、タブレットよりもパソコンの方が便利だからそっちにするか。どういうスペックのものが欲しいのかとかを聞かせてくれ」
武田先輩からどういったものが欲しいのかを聞かれるので順に答えていく。
専門的なことは知らないので、その都度武田先輩にオススメを聞きながらになってしまったが。
答えていったものは武田先輩がパソコンに記録しているので、おそらく後で検索にかけるんだろう。
「ある程度候補は絞れてきたな。最後に値段だ。ポイントはいくらまでと考えている?」
「値段ですか……。良いものだとやっぱり相当なポイントを使いますよね?」
「そうだな。やはりスペックを上げようとするならどうしても値段が高くなってしまう傾向にあるが、物にもよるな。僕の使っているものはそれでも20万ポイント弱くらいしている」
さらっと20万ポイントという単語が出てきたが、そんなに高いのか……。正直舐めてた。
思えば中学時代の同級生も相当金をかけてた印象があったな。あれはどちらかというと趣味の部分が大きかった気もするけど。
と、余計なことを考えていたが今は関係ないので片隅に追いやっておく。
「そうですね……30万ポイント前後だったら大丈夫ですか?」
「あぁ、そのぐらいあれば問題ない。それじゃこの中から決めてくれ」
そう言ってパソコンの画面をこちらに向ける。
画面には俺が伝えた通りの条件を満たしているパソコンがいくつか並んでおり、評価順に並べられていた。
「え、こんなにあるんですか?」
「それはそうだろ、PCメーカーなんて世界中にいくらでもあるからな。もちろんそれ以外にもハンドメイドというのもあるぞ」
「へぇ……。ハンドメイドってことは1から全部組み立てるってことですよね?」
「あぁ。たまにだがこういった企業で作られているものより安くなることもあるしな。僕のこれもハンドメイドなんだぞ」
「武田くんってこういうのが得意なんだって。私も安いやつを作ってもらったこともあるんだよ」
目の前にあるこのパソコンもハンドメイドらしい。
……せっかくだし、ダメ元だけど作ってもらうようにお願いしてみようかな。
「あの、先輩に作ってもらってもいいですか?」
「僕の?構わないが……」
「いいんじゃない?せっかくの機会なんだしさ!」
「氷見もか……分かった。なら明日一緒にパーツを買いに行くぞ。いいな?」
「ありがとうございます!」
連絡先を交換し、部室を後にした。
氷見先輩は部活に向かうようですぐに別れ、俺はやることもないので帰路につく。
明日の買い物を楽しみにしながら、俺はあることを考えていた。
翌日、俺はケヤキモール内のショッピングモールにいた。
隣には武田先輩がいるが、特に話すこともなく黙って家電量販店に向かう。
「着いたぞ、さっさと買って行くとしよう。君はそのメモにある物を頼むよ」
「分かりました。集合場所はどうします?」
「そうだな……レジの前でいいだろう。あまりに見つからないようなら連絡してくれ」
そう言い残し、すたすたと歩き去っていく。
残された俺は渡されたメモを確認することにした。
CPUやバッテリー部分などいくつかのパーツの名前が書かれている。
そのうちの1つが近くにあったので見てみたものの、似たようなパーツが多くてなかなか見つけられない。
それから数十分、全てのパーツを見つけたので集合場所に向かうことにした。
「遅かったな。見つかったか?」
「えぇ、なんとか。これで合ってますよね?」
「あぁ。それじゃ買って帰るぞ」
先輩からパーツを受け取り、レジで精算を済ませる。
総額は17万4千ポイント。予算として決めていた30万ポイントよりも半分近く少なく済んだのでありがたい。
───その帰り、武田先輩に呼び止められる。
「待て。伊吹、君に聞きたいことがある」
「……なんでしょうか」
先輩が振り返るが、その表情はさっきまでとは変わっていた。
さっきまでも真剣だったが、それ以上の気迫を感じる。
こちらを射抜くような目線はどこか俺を値踏みしているようにも感じられる。
……だが、何を値踏みする必要があるんだ?とも思うし、気のせいだろう。
「氷見から君が相当切れ者だというのは聞いている。賭け試合に気付いたことも含め、僕はある程度君を認めている」
「えっと……ありがとうございます?」
「だが、単にポイントを荒稼ぎしたいだけの人間が偶然気付いただけ、という可能性も否定しきれない」
「あ〜……そうですね」
……つまり本当に俺が優秀な人間なのかを見極めたい、ということだろうか。
将棋部に行った際、雑談として氷見先輩から色々聞かれた記憶がある。
賭け試合に気付いた経緯から始まり、様々なものを聞かれた。実際どうなのかは答えてくれなかったけど。
氷見先輩から聞いたということはおそらく全て聞いているだろう。
「だからこそ、君がどの程度の人間なのかを測らせてもらう。構わないな?」
「えっと、大丈夫ですけど……測るって言ってもどうやってやるんです?」
「簡単だ。1つ質問をするから、それに答えてくれるだけでいい。僕が聞くのは───クラスの振り分けについてだ。作為があると仮定して、伊吹ならどう考える」
そう質問され、俺は黙って考え始める。
クラスの振り分けなんて普通ならランダムだと言えるが、クラス抗争がある以上そうは思えない。
単純に考えるなら成績順といったような規則性があるものなのだろう。
しかしAクラスにも一度観察しに行ったことはあるが、特段変わりがあるようにも見えなかった。……いわゆるおバカそうな奴もいたしな。
いくつか考えられる答えはあるものの、どれも確信があるわけではない。
……この質問答えなんて思い浮かばなくない?
「深く考えているようだが、僕自身答えを知っているわけではないから安心しろ。君の意見が聞きたいんだ」
「……そうですね、であれば俺は───」
答えがないと言ってくれたおかげである意味気楽になったので、俺の考えを伝えることにした。
……なんかこういう風に聞かれることが多いよなぁ。
理由も込みで説明していくと、僅かにだが先輩の顔に驚きが浮かんだのが分かった。
「───こんなもんですかね。……で、俺がどんな人間なのか測れましたか?」
「
……どんな風に思われていたのかは気になるが、それは置いておこう。
それより合格って何のことなんだろうか。秘密裏に何か試験でもしていたんだろうか。
「組み立てや最初のセットアップは僕の方で済ませておく。連絡したらコンピュータ部の部室に取りに来てくれ」
「ありがとうございます、助かります」
「いや、それくらいならお安い御用だ。またな」
1年生寮の前に着いたので先輩と別れる。
……後でお礼のポイントを振り込んでおかなきゃな、と考えながらエレベーターに乗って自室へ向かうのだった。
間違えて途中のものを投稿したから焦った(
一年生編最後のオリキャラが出てきました。頻度は少ないものの、今後ちょくちょく出てきます。
最後の質問の答えは引っ張るものでもないのですぐに明らかになります。
1話挟んで9話から5月に突入します。この調子なら1巻完結まで15話前後で済みそうかな?
それとだいぶ遅くなりましたが……評価を付けてくださった方、ありがとうございます!
作者は評価を付けてくださっているのもちゃんと知っていますよ(ニッコリ)
ではまた次回に。