私の名前は白波千尋。この春から高校生になった女子高生です!
今は高度育成高等学校というところに通っています。
クラスメイトは明るい人たちばかりで、毎日楽しく過ごしています!
そんな私なのですが……今、すごく悩んでいることがあるんです。
それは───私の友達である、伊吹湊くんが原因です。
私と彼が初めて会ったのは、入学して2日目の放課後でした。
クラスの友達との約束に遅れそうになっちゃって急いで走っていた私が、廊下でぶつかったのが伊吹くんなんです。
その時私は咄嗟のことだったので怯えちゃって……そのまま走り去ってしまったんですけどね。
……今思い出すと、彼に対してすごく失礼だったなって思います。
次に会ったのはその2日後のことで、その時のことをお詫びしに行きました。
本当ならすぐに行くべきだったんですけれど、彼のクラスを知らなかったので担任の
彼はすぐ許してくれたんですが、それでも申し訳ないと思って……時間を貰って、一緒にカフェに来てもらいました。
……焦ってて後で友達から言われたけど、よくよく考えたら男の子と2人きりでお出掛け、だったんだよね。ちょっと恥ずかしいですね……。
それから伊吹くんは、私に色んなことを聞いてきました。
私が男性恐怖症であることも見抜いていたようで、それについても質問してきたのは驚きましたけど。
罪悪感があったから、というのもあったけど……彼の優しい雰囲気、っていうんでしょうか。それにつられて話しやすかったんだと思います。
全て打ち明けた後、伊吹くんから驚くような提案があったんです。
それは───男性恐怖症を克服するのを手伝う事。
それを聞いて、最初は怖いって思っちゃったんですけど。
いつかは克服する必要があったので、受け入れることにしました。
連絡先を交換して、その日は別れることになりました。
その日から、偶に伊吹くんと2人でお茶をしに行ったりケヤキモールに遊びに行ったりするようになりました。
もちろん最初は緊張と恐怖心があったのは間違いありません。
それ以上に、伊吹くんといろんなお話をするのが楽しかった、というのもあったんだと思います。
中学時代の同級生の話、今のクラスメイトの話、ちょっとした失敗談……お互いにいろんな話をしあって。
彼が優しく受け止めてくれたこともそう思う理由だと思います。
それで思い出すのは───『私が同性愛者である』と告白した時のこと。
何がきっかけだったのかはよく覚えていません。
でもいつしか女の子のことが恋愛的な意味で好きになってて。
お父さんとお母さん以外には内緒にしていたから、最初はどんな反応をするのか怖かったです。
彼は少し驚いてましたけど……すぐに笑って───
「受け入れられるかどうかは別にしても、好きになるのは自由なんじゃないかな?」
───こう、優しく言ってくれたんです。
単純かもしれませんが……私にとって同性愛を受け入れてくれる友達は全然いないのですごく嬉しかったんです。
それ以降もたくさんお話をするようになって、だんだん口調も崩れていって。
彼に対して、どんどん心を開いたように思っていました。
だけど、昨日。伊吹くんは私にこう言ってきました。
「俺たちはもう、こうして会わない方がいいと思う」
最初は耳を疑いました。何かの冗談じゃないかって。
ですが彼の目が本気だったので、冗談ではないことを理解したんです。
でも、理由もなくそんな事はしないと思って理由を聞きました。
そしたら───彼から、一つずつ理由が告げられました。
クラスに龍園という男がいて、彼がクラスを支配しているという事。
伊吹くんも例外ではなく、他クラスとの接触を禁止するように言われた事。
龍園を問い詰めたら、今後各クラスが争うようになるという事。
関わりたければ彼女をスパイにしろと言われた事。
私はそれを聞いて───頭が真っ白になってしまいました。
断ると思うけどと前置きを入れ、伊吹くんのスパイになるかどうか聞かれましたが……何も答えられませんでした。
ひとまず明日その答えを聞くということで、昨日はそのまま帰りました。
1日経って、俺はいつものカフェ・パレットに来ていた。
目的は昨日、白波の答えを聞くため。
……というより、悩むまでもなく断ると思っていたんだけどな。
そんな事を考えているうちに白波がやってきたようで。
「わざわざ来てくれてありがとう。……ごめん、克服する手伝いが出来なくなって」
「ううん、本当ならしょうがないもん。……それで、昨日の答えだけど……聞いてくれる?」
「……あぁ、分かった」
そう言い、何かを決意したかのような目をしてこちらに向き直る。
「昨日スパイになるかどうか聞かれた時……正直どうしていいか分からなかったの」
「だろうね。こっちも無茶なことを言ったんだから」
「うん。でも……それと同じくらい、伊吹くんと遊びに行けないのも嫌だったんだ」
「……そうなんだ。そう言ってくれると嬉しいよ」
結構遊びに行く頻度が多いからもしかしてとは思ったが、本当だったとは思わなかった。
一緒に遊びに行ってる身としても嬉しい話だ。
「それでね。今日、
「そっか。相談してスッキリした?」
「うん。『千尋ちゃんの思ってる事をそのまま伝えてあげればいいと思うよ』って言ってくれてね」
「へぇ……」
昨日の別れ際、白波には「まだ決めれてないなら、スパイの事は誰にも言わないで欲しい」と伝えた。
ただの口約束だし、内容が内容だから伝えてしまう可能性もあったけれど。
話を聞いてる以上、相談した
「それを聞いて、どうするか決めたんだ」
「……じゃあ聞くけど、どうするの?俺のスパイになるのか、ならないのか」
「私は───伊吹くんのスパイになります」
「は?スパイが出来た?」
その日の夕方、澪に白波とのことを伝えるとそんなことを言われてしまった。
驚いているのはスパイが出来たこともそうだが、そんな行動をしていた事もだろう。
「俺も驚いてるんだよね。正直断られておしまい、だど思ってたし」
「というより、その白波?って奴も大概だけどさ。いくら兄さんに誘われたからって、なんで裏切るような行為を決めたんだか……」
「
「……は?」
そう告げると、驚いた表情でこちらを見る澪。
全てを説明すると時間がかかってしまうため、簡単に説明することにした。
「説明するけどその前に聞いておくけど……澪に出した宿題は覚えてる?」
「確か、生徒の振る舞いでポイントが減るのは何故か、クラスによって優劣があるのか、だっけ」
「そう。それの答えが関わってくるから、先に澪の考えを聞いておこうかな」
俺が白波を……いや、他クラスの人間をスパイにしようとしたのは、そこが関わってくる。
説明するには、澪にもその部分を把握してもらう必要がある。
「……分かった。まずポイントが減る理由は……分かんないけど、高校生や人間の常識としてありえない行動を差し引いてるって事?……で、クラスで優劣をつけるのはそういう常識が身についてるかどうかってのを意識させるため?」
澪の答え自体は、殆どが当たってるが僅かにピントがずれていた。
しかし、初日に言ったヒントだけという事を考慮すれば正解を与えてもいいだろう。
身内贔屓を無しにしても優秀と言わざるを得ない。
「大体それで合ってるよ。正確に言うなら───各クラスに争わせる、ってことじゃないかな」
「クラスを争わせる……?つまり、優劣をつけるのって……」
「ご褒美かなんかを用意して、1番優秀なクラスに与えるために争わせる。そんなところだろうね。目安はポイントがもらえる量ってところかな?」
要は「お前らが色んなもので勝負して、総合1位にだけご褒美をやるよ」ってことじゃないだろうか。
段々と理解してきたようで、クラス抗争のことを意識し始める。
「そうなりゃ、スパイを作った理由に関しては納得できた?」
「うん、それは理解できた。じゃあ白波だった理由は何?」
「ん〜、スパイにした理由としては2つかな。1つは彼女が俺に対して罪悪感を持ってたから。2日目の部活説明会の前に彼女とぶつかった話はしたでしょ?」
「……してたな、そんな話も。けどそんなの誰だって罪悪感ない?私もそうなったら罪悪感あるし」
「だろうね。そこで2つ目の理由。
そういうとまた驚いた顔をされてしまった。
……もともとそんな人間だってことは澪も知ってるだろうに。
「女子の中では交友も広いし、警戒心は強いが一度警戒を解けばすぐに仲良くなれる。弱腰で、依存心が強く、友達の為なら忠実に行動できる人間。スパイにするにはうってつけの人間性だったからね。……カフェに行ったりしたのは約束があったからだけど、正直ここまで懐かれるとは思ってなかったし。その点も決め手になったかな」
「ふーん。……で、スパイにしたと」
「そうだね。そこまで信頼されているならって思って賭けに出たんだよ。スパイになるかどうか」
その結果、賭けには勝って白波はスパイになってくれた。
しばらくはスパイとして動かす必要もないから、すぐに関係性が変わることはないだろう。
「……スパイにした理由としては、って言ったよね。それ以外に理由あるの?」
「あ〜……うん、ある」
……話すことでもなかったから伏せたが、そこに気付くとは思ってなかったな。
前までは気付かなかっただろうから、澪が鋭くなってきた証でもある。。
指摘された以上その理由も話した方がいいか。
「そんな深い話でもないよ。白波の能力自体はおそらく平均くらい。そこから俺が関与してどのくらいの実力まで伸ばせるのか実験してみたくてね」
「要はモルモットってことでしょ?」
「どちらかと言うとゲームの操作キャラに近いかな。モルモットみたいに実験してポイってするつもりはないしね」
「……なんか白波が可哀想に思えてきた」
澪には呆れられてしまったが、スパイにする以上はある程度適応してもらうために能力上げは必須だろう。
Bクラスの中心に関われるくらいを理想にするなら、そのくらいはしないといけないだろうしな。
それに、俺自身の指導能力の限界を知らない。ある意味俺の目的にも合致している。
白波の能力をどうやって上げていくか、頭の中で様々なシミュレーションをするのだった。
※メインヒロインは白波さんではありません。
それどころかヒロインは決まっていません(そもそもヒロインを作らない可能性も……)。
ということで前半は白波さん視点でした。内容だけ見たらカップルの別れ話みたいですね(遠い目)
最終的には湊くんの駒(スパイ)になりました。原作を踏まえたらあり得ないのですが、そこはご都合主義ということで。
後半は湊くん視点。白波さんに協力した意図も明らかになりました。妹以外には容赦なんてありません。
補足として、澪ちゃんは湊くんが手を抜いている事を含め行動基準などは把握しています。本気を出したらどのくらいのレベルなのかは知りませんが。
次回から5月に入ります。1巻完結まではなんとかペースを維持できたらなと思ってるので、応援よろしくお願いします。
最後に、評価をつけてくださった方々、ありがとうございます!
バーに色がついてて「何じゃこりゃ」ってなったのは内緒ですが(
ではまた次回に。