クロム「やべーええええええぜんっぜん溶けねええ!」
ニッケル「扇いで焚いてまだ溶けねえってこの黒い砂BAKE-MONだろ…」
ここはクロム・ニッケル兄弟の妖術倉庫の前の妖術広場。石神村の外にある。
今日クロム・ニッケル兄弟がやっている妖術実験は「川で『北向く石』に引っ付いた黒い砂」を溶かす実験だ。
この黒い砂は、クロムとニッケルが探索に出て迷った際に「北向く石」の取り合いになって川に「北向く石」を落としてしまったところ、「北向く石」に引っ付いたものだ。
クロムが後日「北向く石」を使って黒い砂を集めたのだが、それを見たニッケルが
ニッケル「これを溶かしてボールにしたら黄色いやつのボールよりバチバチパワーが強くなるんじゃね!」
と言い出し、クロムもそれに賛成して今ボールにする作業をしていたところだ。
ところがその黒い砂は土器に詰めて加熱しても、火力を強くしても一向に溶ける気配を見せず、クロムとニッケルを疲弊させるだけだった。
クロム「ぜんぜん溶けねえ…黄色いやつと同じようにはいかねえ」
ニッケル「もっと溶ける温度が高いんだよ…」
クロム「今日はもうやめだ、村に戻ろうぜ」とぼとぼ
ニッケル「兄ちゃん…まってえ」
二人はとぼとぼと橋を渡って自宅へ帰還した。
チタン「おかえりだぜ!クロム!ニッケル!」
このクロムとニッケルにどことなく似ているボサボサ頭の青年は名をチタンといい、クロムやニッケルのいとこである。
彼らがシェアハウスに住まうがごとく同居しているのは理由がある。
三年前のこと。
ニッケルとクロムは遠くに探索に出掛けた際に非常に怪しげな黒い液体を発見。場所を記録して後日使わなくなった水がめをもって採集に向かった…まではよかったのだ。ここまでは「あー、またクロムとニッケルが妖術やってる。気持ち悪いから逃げよ」くらいにしか反応されないはずだったのだ。
当時クロムとニッケルの妖術倉庫は村のなかにあって、他の採集物と同じようにそこに収集しようとしたのだが…
クロムが黒い液体を大量にこぼしてしまい、そのさきにあった金狼のたいまつの火が引火、大炎上して危うく橋が落ちかけたのだ。
これに激怒した村長のコクヨウがクロムとニッケルを追放しようとしたのだが、ここにチタンが待ったをかけたのだ。
コクヨウ「クロム!ニッケル!貴様らは永久追放だ!」
チタン「待ったああああああああああああ!」
コクヨウ「なんだ!チタン!こいつらは永久ついh…」
チタン「今までに何度も狩猟部隊を遭難から救ってきたこのやべええええええええええええ石を見つけたのは誰だと思っていやがる!」
コクヨウ「それは…確かに…クロムだが…」
チタン「それに巫女様の咳を和らげるやべええええええええええええ薬を作ったのは誰だ!」
コクヨウ「確かクロムが発案してニッケルが形にしたような…」
チタン「それに長が熊と戦闘した際の傷が膿んだのを直したのは?」
コクヨウ「ニッケルだな…」
チタン「それに冬場のはやり病の予防に酒で手洗いをすることが効果的だと証明したのは?」
コクヨウ「クロムとニッケルだな…」
ターコイズ「それがどうしたって言うんだい!」
チタン「巫女様のビョーキが直せるかもしれない男どもを追放してしまっていいのか?本当にいいのか?」
コクヨウ「ぐぬぬぬぬぬぬぬぬ…追放はやめだ!」
クロム「しゃあああああああああああああ!」
コクヨウ「ただし妖術倉庫は村の外に移動!妖術実験はそこでやれ!村のなかに住むのなら監視にチタンをつける!」
…なんてことがあったのだ。
クロム「うおーーーー!肉が一杯じゃねえか!」
ニッケル「美味しそう…美味しそう!」
チタン「ふふん!マグマが『イノシシに襲われてめんどくさくなって全部倒したからその肉を配って回ってんだ』ってうり坊一匹ぶんくれたから半分薄切りの薫製にしてもう半分を今ここでやいてんだ!」
ニッケル「大盤振る舞い…じゅるり」
クロム「おー待てよニッケル、ちゃんと酒で手を洗え。病気がつくぞ」
ニッケル「わかってるよ…兄ちゃん」
チタン「そういや今日はメスゴリラ帰ってこなかったな。クロムなんか見なかったか?」
クロム「いんや別に?のろしをあげてたのと東の方の山がやべええええほどちいせえ火吹いてたの以外は特に何にも」
ニッケル「それと松の薪を取りにいったときに木が倒れたような音がしたような気がした以外はぜんぜん。またあのメスゴリラが暴れてんだろうな…くらいにしか。」
チタン「そうか…」(あのメスゴリラ温泉水汲みにいったんじゃなかったのか?)
コハク「くしゅん!」
千空「なんだ風邪かぁ?メスライオン」
コハク「メスライオンじゃない!…誰かに噂されただけだ」
千空「んな根拠のないこといってないでさっさと寝ろ」
チタン「お前ら今日はやべええええくらい食べるな…」
クロム「黒い砂がぜんぜん溶けねえから燃やすもん調達したりしてたからな。やべえええくらい疲れた。」
チタン「それでいつも少食なニッケルがいつもの三倍くらい食べてるわけか…」
クロム「ニッケル、それは食い過ぎだ」
ニッケル「うえっぷ…ほんとだ食べ過ぎてお腹気持ち悪い…」
クロム「これから食う量に気を付けることを約束するんだったら倉庫から熊の胃袋とってきてやるけど…」
ニッケル「それほどじゃないからいい。」
この微笑ましい光景が翌日一瞬で崩れ去るなど村の誰も予想しなかっただろう。
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