転生。リンカーコアSSSの元病弱アルビノ少女   作:ちーと

1 / 7
一期前
籠絡少女


青い空。

春風が吹き抜ける砂地のど真ん中。

網目に絡んだツタ植物の下で私は目が覚めた。

 

「…ん?」

 

肢体は随分と小さく、来ている服は白のワンピース一枚。

髪は前世と同じ白のロング。

 

「終わった…?」

 

寝転んだ身体を起こして辺りを見渡す。

手のひらを挟んでしまいそうな古い鎖のブランコ、裏腹に整備の行き届いていそうな滑り台。何の変哲もないベンチ。

大きくもなく、小さくもない広さ。

 

「…ひはっ」

 

立ち上がる。

 

立ち上がれる、この身体なら。

それが嬉しくてたまらない。

 

「…く、くへへへっっっ!!!」

 

もう、真っ白な部屋で点滴を受けなくて良い。

肌触りの良いシルクで身を包まれる必要も、太陽の光を避けなければいけない訳でもない。

 

その事実が現実のものとして骨肉に染み渡り、腹の底から息が噴き出してくる。

 

「くくくっ、!うひひひっ!!」

 

「あーっはっはっはっ!!ありがとう神様!」

 

ようやく。

 

漸くだ。

 

やっと私は糞みたいに貧弱で、誰からも避けられる肉の鎧から解放された。

 

公園の中を走り回り、ひとどころでくるくる回って目を回す。

 

「息がっ!切れ、ても!血が、出ない!!咳もだ!あははははっ!!」

 

幸せ。

 

ゼイゼイと荒い息をつきながら、きっと世界の誰よりも今の私は幸せだと確信していた。

生まれてから十年間、先天性の糖尿病、HIV、アルビノと血友病に悩まされた私はもういない。

 

此処にいるのは、全く同じ見た目をしただけの別人なのだから。

 

走り続けていると、だんだん足に力が入らなくなり、ふるふる震えた足が崩れてスッ転ぶ。

 

「…わぁ!血が固まるぞっ!普通の人ってホントに血が固まるんだなぁ!」

 

以前は怪我ひとつする自由すらなかった。血が止まらないから。

食事も制限された。運動もロクにさせて貰えなかったし、末期は四肢が動かなかった。HIVはエイズと違うというのも理解されず、トモダチなんて居なかった。

 

…いや、これは筆記作業が困難になり宿題を全く提出しなかったのも有るかもしれないが、とにかく学校生活なんて出来なかった。

 

そう、何もかも持っていなかったのだ。私は。

 

でも、もう違う。

私はその普通のヒトになれた。

 

「は、はははっ、ありがとうっ…!、本当にっありがとう…神様…今度あったら、セクハラは水に流しますね…」

 

コロコロ転がり公園の真ん中で大の字になって空を見る。

思い返すは嘗ての退屈極まった日々。

いつからだろう。点滴オンリーになった日々。

オムツを履かされて、かぶれない程度の頻度で交換される日々。交換するのが男の看護師さんになったときの恥じらい、やがてただの汚物扱いでしかなかったと気付いたときの悲しみ。

物心ついた時、硝子越しに居るハズの親が居なかった落胆。

全てが昨日の事のように思い出せた。

 

…いや、オムツの件は体感時間でまだ一時間も経っていないのだから当たり前ではあるのだが。

これで忘れていたらとんだ痴呆だろう。

 

「ははっ、はひ、はっ、はっ……ふぅ」

 

変わらぬ青天。

病室の窓から飽きる程の眺めた陳腐な景色も、今となっては全く違う色に見えるものだ。

青と白の二色しかないのに。不思議である。

 

「…ん」

 

動きを止めると、微かな眠気が私を襲う。

まあ、多少眠るくらいなら大丈夫だろうと目蓋を閉じ。

オヤスミナサイと心で呟いて、意識を手放した。

 

 

 

「…ねぇ、大丈夫?」

 

どれくらい経った頃か。

次に私の視界に入ってきたのは、栗毛を月夜に色付けられたツインテールの女の子。

見たところ背の丈が同じくらいなので、幼稚園児だろう。

他人の心配が出来るとは、将来が楽しみである。

 

「ん?誰だキミは」

 

いやしかし。

もう空はすっかり夜笠が落ちた夜天である。

辺りにあるたくさんの足跡から察するに、私が寝ている間に遊んでいた者たちは全員帰路に着いたのだろう。

 

なら、いくら有望とはいえこんな小さい子が放置されているというのは考え辛い。

 

「こんな時間まで一人ぼっちだったから気になっちゃって」

「それは此方の台詞だぞ。君の親御さんは放任主義なのか?」

 

少女は不思議そうに首を傾げる。

 

「放任主義?」

「あーなんというか、ほったらかしというか…」

「…みんな今は忙しいだけなの。放任主義じゃ、ないかな」

 

放置されていると認識した瞬間、その表情に陰りが見えた。

 

……ほぉ。

 

何だろうか、この面倒そうな雰囲気は?

非常に興味深い。是非とも根掘り葉掘り聞き出したい所だ。

 

それと…この子の家族はこの時間まで家に帰ってこない?

良いことを聞いてしまったぞ。

今こそ、神様より授かりし『ちーと』とやらを使ってみるべき絶好のタイミングじゃあないか。

 

「…そうなんだ、大変だね。寂しかったり、しないかな?」

「大丈夫なの。一人でもちゃんと家の事はやれるから」

 

起きたならもう行くね、と少女は立ち上がり出口へと歩き始めた。

すかさず腕を掴んで引き留める。

 

「まぁまぁちょっと待ってくれよ、五分で良いからさ」

「…三百秒?」

「ほう、幼稚園児なのにもう掛け算が出来るのかい?お利口さんだねぇ」

「受験のお勉強してるから」

 

受験……?

まさか小学校から私立とかいうやつか?

私は所属上小中共に公立だったし、十四で死んだからまるで縁のなかった話だ。

 

「そっかあ、大変だね……」

「ううん、お兄ちゃん達と比べたら全然大変じゃないよ」

 

なるほど、やけに大人びていると思ったらそういうことか。

人付き合いが少なく、知能ばかりが独り歩きしているから物事を俯瞰的に捉えている。

そのくせ好奇心だったり親切心だったりで非論理的な行動をとるからちぐはぐに見える。

 

やはり面白いぞ、この子め。

 

「…そうだ!此処だけの話、とっっても頭が良くなれるおまじないが有るんだけど…やってもいいかな?」

「どんなおまじないなの?」

「ふふ、簡単さ。私が君を()()()()()()()()()

「ハグするだけで頭が良くなる…?」

「いやいや、それだけじゃない!その上で私が()()()()()()を呟きながら()()()()()事で完成する…らしい」

「なんだかあやふやなの」

「私も初めてやるおまじないだからねー、どう?やってみる気は」

 

説明を終えると、少女は顎に指を当てて眉をハの字にするというトンでもなくあざとい悩み仕草を披露して。たっぷり十秒程思案した。

 

「お勉強以外にも効果ってある?」

「勿論あるよ?万能だからね」

「…それじゃぁ、お願いします」

「任された!…いやそれにしてもホント礼儀がなってるね…」

「それほどでもないよ」

「あるあるって!まぁ良いけどさ。んで?キミはどんなご利益が欲しいの?」

「私を…」

「うんうん」

 

「良い子にしてほしいの」

 

ん?

 

………は?

 

自力で勉強できる幼稚園児とかいう現人神(あらひとがみ)にこれ以上何をしろと?

 

 

「むり」

 

「えっ……?」

 

「あっー!いやいやいやいや!?何でもない何でもないよ!おっけおっけー!良い子にすれば良いんだね?」

「……うん」

「よしきた。こっちおいで、ほら」

 

一番近くにあったベンチに腰かけて両手を広げる。

正直夜風が脇を通り抜けて寒くて堪らないので脇に腕を回してほしい。

 

駄目だった。

これまた寒かった首が外気からガードされる。

どっちもどっちだが気分的にはハズレだ。

 

「…そういえばこれ名前が要るんだった。キミ名前なんて言うの?」

「なのは、高町なのはっていうの」

「ふうむ、なのは…なのはねぇ」

 

何処かで聞いたような名前?

ここ数年間ではないだろうけれども、聞き覚えのある響きだ。

うむ、わからん。取り敢えず『ちーと』の試運転を済ませてしまおう。

 

「よしよし、『もう大丈夫だよ、なのは』」

「…ふぇ!?」

 

まずは一段階め、適当な声掛けと最後に名前を呼びつつ頭を撫でる。

この時対象の鼻を鎖骨と心臓の中間に位置させると効果が強まる…らしいので少し高めの頭を撫でながら位置調整。

 

「『私がなのはのお世話ずっとしてあげる』」

「ふぁ、ぁ、ぁ…?」

 

なのはの目がトロンとなってきた。

二段階め、活動に対する支援の意思を込めた呼び掛け。

今度は後頭部から背中にかけてゆっくりとすりすりしてやる。

声は聞こえるかどうかという音量で耳元に囁きかける感じだそうだ。

 

「『私はずっと守ってあげたい、なのはの事を』」

「…ぁ」

 

今のところは上手くいっているらしい。神様が言っていた通りになのはの身体から力が抜け落ちた。

三段階め、その身を案じる声がけと両腕での抱き締め。

肩甲骨の真ん中で腕をクロスさせる。上からでも下からでも大丈夫だけど、頭のポジションからして大抵上からだろう。

私もなのはの腕が首からずり落ちたので上からである。

 

「『だからお願い、貴女を愛しても良い?』」

「…………ぃ」

 

離された腕が再び絡み付いてくる。

なのはの身体に力が戻って、再び私を抱き締めてくれる。

 

…これで四段階め。ここのワードはほぼ固定。老若男女の差だったり立場だったりで多少変化するけど。

後は相手の返事が肯定であれば次に進める。

 

「……はい…わかったの…」

「…よし、最終契約『無限の母性っ!(アンリミテッド・マターナル!)』」

 

五段階め。

魔力を込めた呼び掛け。ここで抵抗されたら契約はおじゃんにされるし、四段階めまでとは違って、失敗したらもう二度と同じ対象にはこの『ちーと』が使えなくなる。一番緊張するところだ。

 

三分程経過して、私の『りんかぁこあ』からゆっくりと放出された魔力が全てなのはの『りんかぁこあ』に吸収される。

確かそのコアがある人に使うと私のコアが吸いとられるんだったけか?

思ったよりも吸いとられて驚いた。

 

…いや吸われすぎじゃね?

 

十分経っても吸収は止まらない。

じわじわ萎んでいく私のリンカーコアと、反面瑞々しく輝きを増して大きくなるなのはのリンカーコア。

 

……やばくね?

 

確かあのセクハラ神様は私にSSSランクのリンカーコアを下さった筈なのに…

もう一割削られたとはいったいどういう了見なのか。

 

でもこの才能譲渡によってリンクが繋がり、様々な能力が使えるようになる…筈だ!

そう考えればとんでもない天才と縁が結べたのだから良いのだ!

 

 

…良いん、だよな……?

 

 

それから二十分が経過、つど三十三分。

 

 

なんだこれ?あたまおかしいよ…(ドン引き)

ていうか姿勢保ち続けるのホントにしんどい。でも一種の儀式みたいなものだからあんまり姿勢を崩しちゃだめだって神様言ってた。頑張らないと。

 

 

 

更に二十七分後。

 

もうむり。

マターナルじゃないよこれアンリミテッドがエターナルしてるんだけどまだ終わらないの?ホントに腰が痛くなってきたんだが?っていうか首が痛いし、大きい関節は大体なのはの体重掛かってるから全部痛い本当どうするのさこれ。

 

 

んで。

…最初のリンカーコア吸収からかれこれ四時間が経過しました。

もう六割しか残ってないよ。段々スピードが落ちてきてるのがせめてもの救いかもしれない。

 

 

更に一時間が経過。

死にはしないが寝れない寒さが辛いなぁ。

なのはは何か溢れた魔力で防御されてるっぽい。

私は逆で、ずーっと空腹感に襲われて頭痛いしプルプル震えてきたよ…

なのははぐっすりおねむさんでかわいいなぁ

 

これも『ちーと』の効果だったかな?

愛されるかわりに愛情を抱くようになるっていう。

コア持ちでリンクが強いからか尚更可愛くみえるよ…ぐっすりおやすみね……

 

 

 

 

おはよう  ☀️

朝焼けって綺麗だよね!  ✨☀️

 

やけに辛い理由分かりました。

私がなのはにバリアみたいなの張ってたみたい。

魔力消費ゼロ。代わりに寒さも風も全部私が味わいます。

まさに母性愛って感じのバリアだね。

辛いのは私だけだし、実際にバリア分の体温奪われてる訳でもないから本当我慢さえ出来れば最強らしい。理論上核何個落とされようと私が無事ならなのはを守れる。遠隔無敵バリア。

すごいチートだな(白目)

 

 

 

わーようちえんのそうげいばすさんだよ

かわいいね

 

あーあ。とおりすぎちゃった。

 

つらい。

 

 

 

もう、十時間以上は経ったかな。

やっとリンカーコア君が身体に帰ってきたよ。

五段階め、完了だ。

…二割以下しか残ってないね。ランクにするとAA+くらいかなぁ…

SSSと比べると余りにも弱く見える…いや、多分この世界じゃ十分強いんだろうけども。

 

なのはちゃんって何者なのさ、一体。

 




なのはのリンカーコアのサイズ

ビー玉

ソフトボール

オリ主
その逆。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。