転生。リンカーコアSSSの元病弱アルビノ少女   作:ちーと

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邂逅少女

金髪の少女が放つ嫌悪感を露わにした目は、私が一番見慣れた目。私の眼を見た人は、みんなそうなる。

 

…理屈は知らないけどね!

これは前世から持ってたものだ、って転生の時に神様が教えてくれたよ。

 

特に言及もされなかったし、てっきり何とかしてくれてるものだと思ってたんだけど…

そこまで親切にやってくれた訳じゃないみたい。

すぐ目に流れていた魔力を遮断する。これでひとまず効果が漏れ出すのは止められる。

...なんで分かるかって?勘だよ、勘。

 

しっかしどうしたもんだろうか、この子。

眼のせいで嫌悪感バリバリだねぇ...すごく『ちーと』効きづらそう。

 

「名前も知らない子の話を聞くつもりは無いかな、うん」

 

でもまぁやってみようかなぁ。

このタイプは負けん気が強そうだし、軽く挑発を掛ければボロを出すかもしれない。

それで名前を知ったら、すぐ『ちーと』の餌食にしてやればいい。

幸い、遊びっぷりを『視る』限りこの子は顔も性格も良さそう。みんなが不気味がって近づかないのを率先して動いたのがこの子だったし。

篭絡してやれば、なのは程でなくても良い仔になりそうな素質を持っているぞ。

 

「...アリサ」

 

少女は話すのも嫌そうに、三文字だけ口を開いた。

 

...驚いた、まさかホントに上手くいくなんて。

言いなりになるのが気に食わなくて教えてもらえない可能性の方が高いと思ってたんだけど。

嬉しい誤算ってやつ。

 

「『生まれつきでさ、悪いね。アリサ』」

「っ!いき...な、りっ...?...何、を...」

 

別に抱きしめなくても『ちーと』は使える。

不意打ちで頭を撫でながら呼びかけた。

 

今までで最強の抵抗感だなぁ...眼に耐えられなかったあたり精神が強い訳じゃないんだけど。

自我が強固、心の壁が分厚すぎる。

現状にある程度満足してるのか、入り込む余地なしって感じだし。

余程大切に育てられてきたんだろうなぁ。羨ましいよ。

 

うん。やっぱり眼が合ったのが思ったよりマズイね。

なのはは夜の公園で目線を合わせずに五段階めまで行ったからもう平気だったけど、初対面でやってしまうのは完全にアウト。

警戒心が強くなりすぎてて三段階めはまず無理だろう。人目もあってかまるでリラックスしていない様子だし。

 

...まぁ、その手前までは何が何でも成功させてもらう。

呆けているアリサをがっしり抱きしめ、頭から背中に腕をスライドさせて二段階目に移行。

 

「偉いなぁ、『皆を代表して来たんだろ?凄いよ、アリサは』」

 

抵抗は弱くなって成功だけど、ぜんぜん脱力してないね。

うん終了!終わり!

 

「.はぁ..?...原凶が...何...を?...」

 

ねえアリサちゃん。

言うに事欠いて『凶』呼ばわりは流石に酷すぎないかなぁって思うよ。

私だって傷つかないわけじゃないんだ。

そこそこつらい。

 

「ごめんね、居ると迷惑なんだろ?」

 

パッと解放してやると少し寂しげに手を掴まれる。

無意識だったのだろう、すぐに離された。

 

「あ...」

 

途端、遠巻きに見ていたギャラリーがわらわらとアリサを取り囲んで私を睨んだ。

そして、人垣の中でも一際目立つ容姿の少年が私の前に出てくる。

 

おお、今のところ被りの無い色、銀髪だ。

眼も...オッドアイというやつだろうか、赤と青で恰好が良い。顔立ちも驚くほど整っている。

しかし何だろう、不思議と不気味さは感じないな。

この世界の住民らしい容姿をしているのに、中身はむしろ前世の園児みたいだ。

少し失礼だろうが、神の才能に狂いはない。

幼子らしい稚拙さを持った希少種である。

 

「我のアリサに何してんだ!?この野郎!」

 

は?

アリサは今『ちーと』で私のにしたんだけど。何言ってるんだこの子。

 

「おい!誰が無視して良いと言った!名前言え!我の『チート』でぶっ潰してやるぞ!」

 

三秒もしないで切れ散らかす少年。これがキレる若者という奴だろうか、あまりに若すぎる。

いや今なんて言った君『ちーと』?ぶっ潰し?...はどうでも良い。

『ちーと』を知ってるのか?

 

「そうよ!佐神くんを無視するなんて生意気!」

「「「そうよ!そうよ!」」」

 

そうよコールがうるさい...っていうか、よく見てみると公園に居た女の子全員少年の傍に集まってる。

とんだプレイボーイだなぁ、ホント。そっちも似たような『ちーと』なのかな。

ちょっとこれめんどくさいよね、と流し目で伝えると、少年は目を見開いた。

何か驚くようなことでもあっただろうか。

 

「...あーー、うん。ごめんね佐神くん、無視しちゃって。邪魔みたいだから私はもう帰るよ」

 

私は居ない方が良いだろう。『ちーと』の邪魔にしかならないし、私も邪魔されたくない。

適当にあしらってそそくさ足を進め、ざっと五メートルは離れた。

 

「待て、雑種!」

 

だというのに後ろから肩を掴まれる。

佐神くん足早すぎない?音もほんの少ししか聞こえなかったし、相当神様の才能磨いてるのかな。

見切れなくはないけど良い動きだ。

 

「『我の嫁になれ!』」

「...へ?」

 

言うと同時に佐神くんは手を頭に伸ばして来た。撫でられる寸前、寒気を感じ咄嗟に前転で回避する。

...何で避けたんだろう?『ちーと』は相手の名前が分からないと発動出来ない筈なのに。

 

「躱すでないわ!オイ!貴様らこやつを抑えてろ!」

「「「はい!」」」

 

 

なんだか『イヤな予感』が、明確な輪郭を持ち始める。

 

命令を受けてじりじり距離を縮めてくる女子たち。中には明らかに中学生っぽいのも居た。

魔法抜きで突破するのは難しそう、だが今の私は魔法を使えない。どうすれば使えるのかまるっきりだ。

何か気合入れたら出来なくもなさそうではあるけれども。

 

それ以上に。

状況を打破できるかどうか以前の問題として、赤の他人にここまで執着されるのは気持ち悪くて仕方がない。

 

おぞましい。何故、私に愛されていないのに私へ執着するのか理解できない。

ソレは等価で交換される筈の物。その主導権は私に無ければならないのに。

 

何故私に執着して、劣情を滾らせられるんだろう?

度し難く、とことん気色悪い。

 

「なんだ、佐神くん。私が欲しいのか?」

「『さっきからそう言っている、バカか貴様は』」

 

だが...同時に面白くもあるな、佐神くんのその熱意。

初めて会った人間に、どうしてそこまで純粋な欲望をぶつけられるのかを知りたい。

 

ゾワゾワと心の底から歓喜の『呻き声』が滲みだして来たのを感じる。

 

「...なら、男の子らしく一対一でやったらどうかな?」

「何?」

 

私は彼の方へ振り向くと同時に両腕を開き、俯かせた貌を上げて両眼を見開いた。

確か後は、魔力を流せば流すほど効果が強くなるんだ。

神の才能をもってしても今のところ制御できてないっぽいから、力の垂れ流しにはなるんだけど...

 

「ギャラリーの子達には文字通り五分間目を瞑ってもらって、その間何があっても私と佐神くんの邪魔や手助けをしない。公平で良いルールだろう」

 

眼が合った子は皆後ずさり、自然と一対一の形に。

佐神くんは、私の一メートル前方で静かに立っていた。

しかしヤジは外野から飛んでくるもので、離れた場所から中学生くらいの子が声を上げる。

 

「佐神くんのやり方に文句があるっていうの!?ルールはあなたが決める事じゃない!」

 

分からなくもない。

けど、そっちが仕掛けてきたんだから此方のルールでやらせてもらうのもまた道理ってものだろう。

 

理由はまだある。今の私は才能を使いこなせてない。

直接殴るぶんには怪我させないよう手加減出来ても、人同士の接触や遊具との衝突までは流石に考慮に入れられない。

まず間違いなく怪我人を出してしまう。

それを避ける為にも、お互い確実に手加減できる一対一でやろうと言っているのだ。

 

「...良いだろう、そのルールでやってやる。おい貴様ら『引っ込んでいろ、怪我をするぞ』」

「う...ぁ...は、い...」

 

佐神くんも私の提案の真意に気づいてくれたのだろうか、取り巻きをさらに一歩下がらせ拳を構えた。

 

「音頭はそっちがどうぞ?」

 

奇妙ながらも堂に入った構え、半身を逸らしたフロントアタッカーってところだろうか。

あからさまな隙があるけれど...すぐカウンターに移れるよう脇を締めてある。

 

「...ふん。ならば早速、スタートだッ!」

 

防御はほぼ捨てきってるんだろう。恐ろしいまでの攻撃特化。

神様の才能すごいなぁ。分析もお手の物だ。

 

 

「おらぁッ!!」

「っ!」

 

なんて感じに観察してたら、一瞬で距離を詰められた。

振りぬかれた拳をなんとか見切り回避するものの、連撃が打ち込まれる。

肘で弾き、引いたところに当たりに行って威力を殺し。あの手この手を身体の思うがままに防ぎ続ける。

 

「ぶち抜いてくれる!」

 

...眼を発動する余裕がない。才能に任せて見切りに徹するのも良いが、面倒だ。

強引に行かせてもらう。

 

「喰らうがいい!」

「ぐッ、くぅ!」

 

蹴りを敢えてガードの上から受けた。

芯の通った良い蹴りだ、凄まじい威力で身体が完全に浮き、二メートル程吹っ飛ばされた。

入り口のコンクリートポールに衝突してそのまま蹲り。

地面に額を着け、あたかも腰が抜けてしまったように装う。

 

実際すごく痛い。

 

「はッ!初っ端の回避だけか?雑種!」

「う、く...」

 

だがこれで良い、溜まった魔力を解放するだけの時間は稼げた。

 

「これ以上は終わりだな。黙って我の物になれ」

「...」

 

時間はまだ残ってるっていうのに、あの瞬足も使わずにのたのた歩いてくる。

私が言えたことじゃないが、油断しすぎだろう。

出来るだけ満身創痍そうに顔を上げて、佐神くんの足が視界に入った。

 

「クフッ」

「何がおか、し...い?」

 

身体を全力で起こし佐神くんの頭を左右両腕で挟み込む。

目を逸らすような隙も与えない。

鼻と鼻をぴったりくっつけて、視線が合ったと同時に眼の魔力を解放した。

 

...なんだか眼がぽかぽかして気持ち良いな、コレ。

一旦魔力を吐き出せば暫く暴発もしなさそうだし、コントロールできるようになるまでは定期的に使っていった方が良いかもしれない。

 

「くひひひっ!!うひひひっ!!」

「...ッ...!...っ!......」

 

ただ...佐神くんの様子がおかしいな。

歯を打ち鳴らして頬の内側を噛み切り、目は充血したまま瞬き一つしない。

痙攣も激しくて少し心配になる。

 

「あれ?」

「あ。ああ、あ。ああ…」

 

そんなに言うなら中断しろって?

出来ない。目が破裂しそうな気がした。神の勘が間違う筈無いだろうし、逆らわず更に五秒ほど力を垂れ流してカラにする。

 

「あー気持ち良かったぁ...佐神くん、大丈夫?」

 

使い終わると怒りとか、恨みとか、そういう鬱屈とした感情が全部吹っ飛んで至極幸せな気分。

胸のつっかえが無くなったみたいに清々しい。

 

「あ。」

「終わったよ、君の負け」

 

目の焦点は外れっぱなしだけど、とりあえず声が出たので話しかけてみた。

ギャラリーは佐神くんを見て困惑しているご様子。

 

「ギィ――――‼ギギィ゛‼‼‼ギギィ―‼‼‼」

 

次の瞬間。

佐神くんは目をひん剥いて頭を押さえ、足をジタバタと出鱈目に動かしながら奇声を上げだした。

口からよだれと血を垂れ流し、鼻水も涙も何もかも。大も小も漏らしながら発狂している。

 

...そんなに負けたのが悔しかったのだろうか?

少しオーバーすぎると思うけど。

 




転生者の初登場。
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