心操達よりやや遅れてA組メンバーも夕食の時間となり
一同は食堂に集まり、出されたカレーを食べていた
「めちゃくちゃ美味いな、このカレー!!」
「店でも食えないぞこんなん!!」
「おいしー!!」
「私!!! 生きててよかったァ!!!本当に!!
生きててよかった!!!今日という日が!!
やってきたから!!!」
「麗日、感極まりすぎ…確かに美味いけどさ…」
「ハッ!!カレーに気を取られていたけど、
「悪鬼の気配…」ソワソワ
「闇に紛れて蠢く影…」クイッ
「峰田怖えぇよ…、常闇とマーシー多分違うから」
「嫉妬は醜いね☆」
「黙って食え!」
「この味…まさか、至郎田さんの!?」
「確か砂藤の職場体験先のヒーローだっけ?」
「間違いない!!この各種スパイスの的確な配合!!
これは至郎田さんの技術だ!!
そしてこの柔らかく煮込まれた牛肉だが、
甘味と柔らかさとフルーティーな香りからして、
おそらく梨とパイナップルで漬けこまれている!
辛さは大衆向けに控えめにされているのにも関わらず
確か存在感があるのは生、乾燥、焙煎の3種類の
唐辛子を…それも数種類使っているハズだ!!」
「まるでグルメ漫画だな…」
「ふふっ、それだけじゃないよ砂藤くん…」
「至郎田さん!!」
「梨とパイナップルは使っているが…
さらにキウイフルーツも一緒に漬けこむことで
柔らかさはさらに数倍!!
スパイスと7日7晩煮込むことによって
キウイフルーツの酸味は隠されてしまうが
それにより“知覚できない味覚”という
新たな…そう第6の味覚を私は創りだした」ピク
「やべぇよ…コイツ達だけだとグルメ小説になっちまう」
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A組がカレーに舌鼓を打っている最中、
B組はというと、辛酸を舐めていた
「駄目ノコ…できないノコ…ノコは駄目な子…」
ウサギを抱き締めた小森 希乃子…
小柄な彼女が小動物といる姿は実に可愛らしい
だが…
「必要な犠牲だ、割り切れ」
「駄目ノコっ!この子は…!!」
「できねぇなら俺がヤってやる!!」
「イヤッ!なにも悪いことしてないノコ!!
ころさないで…おねがい……しマッシュ」
「鉄哲!アンタ言い方ってもんがあるでしょ!
小森…こっちで一緒にいましょ」
スタート地点から十数キロ
半日もの間でコレだけしか進めないのかと
思われるかもしれないが
激戦…いや一方的に攻撃を受け続け、
何度も仲間を失い、あるいは自らも死に蘇生され、
怪我を負い、光を失い、手足を無くしては回復され…
襲撃の度に撤退と戦死を繰り返していたのだ
むしろよくぞここまで進めたと思う
そんなB組の彼らは既に食糧は尽きていた
食べきったからではない
幾度とない爆撃に晒されて焼けてしまったのだ
もう、彼らには持ち込んだ荷物などない
身に纏っていた制服ですら焼け落ちてしまい、
蘇生や回復の時に支給された貫頭衣だけが彼らの持ち物だ
靴すら無く、足の裏は皮がベロベロに剥けていた
痛みと疲れで心身共にボロボロになった身体、
尽きない飢えと渇き……限界だった
そんな時に現れたのが1羽の野ウサギであった
人懐っこいのか危機感がないのか
そのウサギは小森の側へと近づき
小森が抱き上げても逃げようとすらしなかったのだ
戦場に疲れた小森にとっては癒しであったが、
鉄哲からすれば貴重な食糧源であった
…火は使わない
夜の山で焚き火をすると光源としても目立ち、
昇る煙は遠くからでもよく見える
深い山の木々に身を潜めるB組としては
リスクは避けねばならなかった
哀れウサギは鉄哲によって首を折られ
鎌切によって捌かれた
円場の[空気凝固]により血の一滴すら溢さずに集められ
皆でソレを回し飲みにする
「拳藤…知ってるかい?A組はこの林間合宿で
“優しさ”と“常識”、“良識”を覚えるのが目標らしい」
「……“優しさ”?」
泣きじゃくる小森を抱きしめながら、拳藤が聞き返す
「優しさって、なんだろう?」
目を血走らせながら、口元を血で濡らして
ウサギだったモノに群がる級友達を見て物間は溢す
その目は希望に満ち溢れていたハズだ
その口元は笑みが浮かんでいたハズだ
「…なんで、こんなことに…チクショウ」