虹色DREAMER!   作:UkiA

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更新が遅すぎることに定評のある(ない)ゆーきあです。
お待たせしといてですが、今回はオリキャラ同士のちょっとしたお話になります。
 
 


#11「雨模様」

 

 

 

授業の合間の休み時間。廊下を歩いていると、1人の女子と楽しそうに会話する見知った顔の男子が目に入った。

 

「それじゃ、またあとでね〜♪」

 

その男子は恍惚そうな表情を浮かべて手を振り、話していた女子と別れる。

俺は男子の方へと近づき、話しかけた。

 

「よう、雨宮」

「ん?おお、小日向か」

 

雨宮(あまみや)(じゅん)

 

中学から同じ趣味をきっかけに知り合った仲だ。

青みがかった髪がバッチリと整えられたその外見は、綺麗な顔立ちとスタイルの良さも相まって、少女漫画にでも出てくるイケメンを体現したかのようだ。

高校に上がってからはクラスが別々になったのもあって、絡む機会も減ってしまったが、さっきの様子を見るにこいつの女好きはまだまだ健在みたいだな......

 

「相変わらず女の子引っ掛け回してんのな...」

「おいおい、人を女たらしみたいに言うなよ。今のはあの子から話しかけてきたんだぜ?」

「いや...女たらしなのは間違いないだろ」

「ははっ、言うなぁ。ま、俺くらいのレベルになると、女の子たちから話しかけてくるんだよなぁ。いやぁ参った参った」

 

1ミリも参ってなさそうな笑顔を俺に向けてくる雨宮。その顔面にゴルドスマッシュを叩き込んでやりたい。

 

とはいえ実際、雨宮の女子人気は驚くほど高い。見た目はもちろんのこと、成績は優秀でスポーツも万能とかいう才能マン......爆発して弾け飛んでしまえばいいのに。

「なぁ...聞きたいんだけど、なんでそんなに女子にこだわるんだ?」

 

前々から思っていた素朴な疑問をぶつけてみる。すると、雨宮はいつになく真剣な表情を見せ始めた。

「...知りたいか?」

 

そのシリアスな口ぶりに思わず息を呑みながらも俺は頷いた。

 

そして返ってきた答えはというと。

 

「そこに女の子がいるからだよ」

 

...............果てしなくくだらなかった。

そんな山みたいに言われても反応しづれぇわ。

 

「男なら女の子って山を制覇してみたいもんだろ?」

「いや、別に登山家っぽく言わなくていいから...大して上手くないから」

「男なら女の子の山を揉みしだきたいと思うだろ?」

「お前最低だな!」

「あ。今なぞかけ思い浮かんだからちょっと聞いてくれ」

「唐突ってレベルじゃねーぞ!?」

「えー、『あまり胸が豊かでない少女』とかけまして、『野菜の王様』と解きます」

 

俺のツッコミをスルーして話を進める雨宮。完全にこいつのペースになってしまった...

というかなんなんだその組み合わせ...この時点でしょうもない答えしか返ってこなさそうだが、とりあえず聞いてみる。

 

「...その心は?」

「どちらも、もろ平野(モロヘイヤ)でしょう」

「怒られてしまえ!」

 

く...ダメだ。この流れを続けてたらこっちまでおかしくなってしまう。

そもそもの話、女好きなことにまともな理由がそうあるはずもなかった。

 

「はぁ、やっぱ聞いた俺がバカだったわ...」

「でもさ、異性と仲良くなりたいって気持ちは別におかしくはないだろ?」

「それはまぁ...そうかもしれないけど」

 

雨宮の場合、その度合いが普通じゃないと思うけど...それこそ毎日のように取っ替え引っ替えで女子と遊び歩いてるレベルで。まったく、羨ま...けしからん奴だ。

 

「つーか、そういうお前こそだ。最近やけに女の子と一緒にいるじゃんか」

「え?」

「知ってるぜ?最近、高咲ちゃんと上原ちゃんじゃ飽き足らず、1年生と3年生にまで手ぇ出してるってコト」

 

1年生と3年生...もしかして同好会のみんなのことだろうか。というか見られてたのかよ...あと言い方どうにかなんないのかよ。

 

「お前と一緒にするなよ...あれはただの部活仲間だ」

「部活?どこに入ったんだよ?」

「えっと.........ス、スクールアイドル同好会...」

 

躊躇いながらそう答える。お、思ったより、自分の口から伝えるのは結構恥ずいな...これ。

そして雨宮はというと、ぽかんとした顔で俺を見ていた。

無理もない。そこそこの付き合いがある雨宮からしたら、俺はアイドルの追っかけをするような柄には見えないだろうからな......

 

「い、いろいろ事情があんだよ...!」

「いや...別に変だとは思ってないけどさ。意外だとは思ったけど」

 

しどろもどろになりながら弁明しようとするが、雨宮はそんな俺を揶揄ったり、馬鹿にするようなことはしなかった。

 

「アレだろ?大方、偶然スクールアイドルのライブを見て、それに触発された上原ちゃんがやりたいって言い出して、それを応援する流れでお前も一緒に入ったってところだろ?」

「エスパーかよ!」

 

俺が同好会に入ることになった経緯をサラッと言い当ててしまう雨宮。こいつ、本当は一部始終を見てたんじゃないかと疑いたくなるが、そんなわけ...ないよな?

 

それはさておくとして、気を取り直すように俺は一呼吸置いて口を開く。

 

「...歩夢ってさ、自分よりも周りを優先するようなヤツだろ?」

「まぁ、気配り上手な子というか、どこか遠慮がちなところはあるよな」

 

雨宮の的を射る意見に俺は頷いて続ける。

 

「だから嬉しかったんだ。あいつから何かをやりたいって誘ってくれたのがさ」

 

歩夢は優しい。だから気を遣って周りに合わせることが多かった。それは俺と侑に対してもだ。

あまりにも我儘を言わないもんだから、無理してるんじゃないか、本当はこうしたいんじゃないかって度々思うことがあった。付き合わせて申し訳ないと感じることもある。

だからなのか、初めて歩夢が素直に気持ちを打ち明けてくれたのが余計に嬉しく感じて、応援したいと思った。

 

「きっとスクールアイドルは歩夢に夢をくれたんだと思う。そしてその夢への一歩をあいつは踏み出した......そんなの、幼馴染として応援しないわけにはいかないだろ?」

「...なるほどな。いいじゃん、そういうの」

「それに、俺自身が結構気になってんだよ、スクールアイドル。柄じゃねえってのはわかってるけどさ...」

「ははっ、そんなことねえよ。知らなかったものを知っていくのって、すげえ楽しいんだぜ?」

 

頭を掻く俺に雨宮はそう言ってニッと笑ってみせる。

確かに...その通りでもあるな。さすがに侑ほどではないにしろ、暇な時にスクールアイドルの動画を見てしまうくらいには、俺も相当のめり込んじまってる。

 

今では世界的に注目を集めるスクールアイドル。それは俺が想像するより遥かに魅力的で興味深いものだった。

歌も、ダンスも、演出も、スクールアイドルの数だけいろんな形がある。そのどれもが一生懸命に輝きを放っていて、そして何より楽しそうな姿に俺は目を引かれた。

 

同好会のみんなはこれからどんなステージを見せてくれるんだろう。そんな期待感さえも密かに抱いていた。

 

と、スクールアイドルへの想いを募らせているそんな時。

 

「.........夢、か」

 

俺の耳にふと聞こえたのは、ぽつりと滴り落ちるような雨宮の小さな呟き。

さっきまでのへらへらとしていた雰囲気とは打って変わるように、湿っぽく物思いに耽るような声だった。

 

「なぁ、お前ももう一度やり直してみてもいいんじゃないか?」

「!」

 

またさっきみたいなふざけたパターンになるかと思っていた俺は、雨宮から発せられた一言にハッとして目を見開く。

その言葉の意味を理解するのに、そう時間はかからなかった。

 

「...俺のことは別にいいだろ」

「お前はあのままで終わらせるってのかよ?」

「違う...終わらせたんじゃない。あんなことになった時点で、もう終わったようなもんだよ」

 

目を伏せ、力なくそう答える。同時にあの日の出来事が俺の頭を過ぎる。

俺にも憧れていたものがあって、それに近づきたくて無我夢中で追いかけていた中学の頃。

 

でも現実はそんなに簡単じゃない。自分の努力だけじゃ、どうにもならないことがあるって思い知らされたんだ。

 

『お前が夢を見るのは勝手だけどよ、それに俺を巻き込まないでくれよ...!』

 

その言葉は今でも鮮明に脳裏に焼き付いて離れずにいる。

そうだ。優木や中須がそうだったように、その場の誰しもが同じ夢を見ているとは限らない。

一緒に夢を追いかけていたはずの仲間。いや、一緒だと思っていたのは俺だけだ。なのに勝手に先走って、振り回して。そしてみんな、俺に嫌気が差して離れていった。

 

「結局、俺は自分のことしか考えてなかった。だからみんな離れていったんだ」

「小日向......」

「そんなんで俺のなりたいものになれるはずがないし、しょうがないことだってもう割り切ってんだ」

 

別に今の生活に不満があるわけでもない。やるべきことだってあるんだ。

 

「それに、今は人の夢を応援する立場なんだ。今さら自分のことになんか感けてられねえよ」

 

二兎追う者はなんとやら、だ。自分のことを考えながら、他人を手伝うなんて器用なマネ、俺にはできない。

 

「.........そうか」

 

納得した...という感じではなさそうだけど、雨宮はそれ以上何も言うことはなかった。

やるせない表情だった雨宮だが、その後気持ちを切り替えたかのようにフッと微笑み、いつものような雰囲気に戻る。

 

「まぁなんにせよ、同好会に入ったんだ。しっかりサポートはしてやれよ」

 

そう言って雨宮は俺の肩をポン、と叩いて横を通り過ぎた。

 

「...言われなくても」

 

もとよりそのつもりだ。俺に何ができるのかはまだわからないけど...

 

一度は止まりかけたみんなの夢。けれどいろんな想いを経て、もう一度走り出すことができた。

みんなには、俺のような苦い気持ちを味わわせたくはない......そのためなら、俺にやれることはやってやるさ。

 

「そんじゃあなー」

 

背を向けたまま手をひらつかせて、雨宮はスタスタと歩いて行った。

 

なんだかんだ言ってはいるけど、普通にいいヤツなんだよな...あいつ。

多少うんざりするところはあるけど、こうして俺のことを気にかけてくれてるし、俺の夢物語に最後まで付き合ってくれたのも雨宮だけだった。

こういう気のよさが、人気者たる所以なのかもしれない。

 

そう考えたら、自然とあの後ろ姿も妙にかっこよく見えて───

 

「あっ、佐藤ちゃ〜ん!今日も可愛いねぇ♪」

 

.........やっぱ気のせいか。

 

 




 
 
 
光栄なことに赤評価をいただけました...!この上なく嬉しい限りです。これからも本作をご愛読いただければなと思います。

引き続き、よろしければお気に入り登録、感想などよろしくお願いします。
 
 
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