ここのところリアルがいろいろ忙しくなり、投稿ペースがガタ落ちですが頑張って更新していくのでどうぞよろしくお願いします。
「はぁ......」
ついため息がどっと出てしまう。
初っ端から散々な目にあった...背中にまだあの感触が残ってる気がする。
「晴陽さん、大丈夫?」
「天王寺、そう思うんなら助けてくれよな......」
「ごめんなさい。役得だと思って、てっきり止めない方がいいかと」
「お前なぁ...」
年頃の男子があんな状況に遭えばいろいろ大変なことになるんだよ......生理的に。まぁ、役得といえば役得だったのかもしれないケド。
「役得?2人ともなんの話?」
「お前はもっと自覚を持て」
「?」
いやそんな、お前は何を言ってるんだみたいに首傾げられても。天然もあまりに度が過ぎると、そこにつけ込んでくる奴もいるからな...少し心配になるレベルだ。
「とゆーかさ、部室で何やるんだろ?」
「さぁな...メッセには部室に来いとしか書いてなかったし」
俺たちは今、部室に向かっている最中だった。というのも、中須から突如呼び出しを食らったわけなんだが、向こうで何をするつもりなのか全く知らされていない。
わかっているのは、俺の第六感が面倒くさいことになるぞと、そう告げていることだ。いっそのこと、スルーして歌の練習をしている歩夢たちのところへ行こうかとも思ったが......
「そうなんだ。でも、それはそれでワクワクしてくるなぁ!」
この通り宮下は興味深々で、その選択肢はどうやら取らせてもらえそうになかった。
「ワクワク、ねぇ......」
辟易しながらぼそっと返す。さっきの出来事もあるし、今度は中須の相手をしなきゃいけないのかと思うとめちゃくちゃ気が滅入るな...頼むから無駄な時間使わせることだけはやめてくれよ。
俺はげんなりと先が思いやられるように、重い足取りで廊下を進んでいった。
「おーっす...ってあれ?」
程なくして部室に到着した俺たち。中に入ると、そこには眼鏡をかけてホワイトボードの前に立つ中須と、向き合うようにちょこんと体育座りをする桜坂がいた。呼び出した中須はともかく、なんで桜坂まで?
「えっと...かすみさんに連行されて...」
「あー......お前も大変だな...」
俺の疑問を察したのか、状況を一言で説明してくれた桜坂に、たまらず俺は同情の意を示した。
「さてさて!みなさん集まったようなので、早速講義を始めていきたいと思います!」
「講義?」
「はいっ。先輩方はまだまだスクールアイドルについて知らないことがたくさんあるはずです」
「まあ...確かにな」
俺たちはスクールアイドルを知ってからまだ日が浅い。スクールアイドルの歴史も、その魅力もまだまだ知らない部分があるかもな。
「そこでこのかすみんが!スクールアイドルが何たるかを、教授しちゃいましょうというわけですっ」
なるほど...とりあえず、中須にしてはまともな内容で良かったわ。講師が中須ってのは不安だが、とにかく内容はまともだ。
「その前にかすみさん、その眼鏡は一体どこから...?」
そこでずっと気になっていたのか桜坂がそれを指摘し始める。俺より付き合いの長いであろう桜坂がこの反応だと、今までコンタクトだったってわけじゃないみたいだ。わざわざこのために伊達眼鏡でも買ってきたっつーのか?
「コレはせつ菜先輩から借りました!.........無断で」
「また無断かよ!」
「絶対怒られるよ!?」
こいつ、ネームプレートの件忘れてないだろうな...?あの時も無断で持ち出して叱られただろうに、今度は私物に手ェ出しやがったな......本人にバレてどうなっても俺は知らんぞ。
「2人とも、話の腰を折らない!」
開き直った中須は手に持っていた指示棒をビシッと差し向け、一蹴する。このヤロー...あとで優木にキツくお灸を据えてもらわないとダメみたいだな。
「桜坂くん!」
「な、なに...?」
「スクールアイドルにとって大切なこととは何かを答えなさいっ」
「大切なこと?えぇっと......」
いきなりの質問に戸惑いながらも、返答を考える桜坂...真面目か。
「自分の気持ちを表現すること、かな?」
「正解っ!」
「せ、正解なんだ...」
あっけなく正解をもらえた桜坂は、ただ困惑の表情を浮かべていた。
「では同じ質問を、天王寺くん!」
そんな桜坂を意に介さず、今度は天王寺を当てる。
天王寺は俯き、フリーズしたようにそのまま固まった。かと思えば、答えを見出したようで顔を上げて口を開く。
「...ファンの人と気持ちを繋げること?」
「それも正解!」
「一つじゃないんだ...」
「もうなんでもありだな...」
桜坂とともに呆れ果てる俺。
「それでは宮下くん!」
「うーん......」
宮下にも同じく質問を当てられるが、あまりいい答えが浮かんでこない様子。唸りながら思考を張り巡らせること数秒。最終的に宮下から返ってきたのは、
「ごめん!愛さんはまだわかんないや〜...!」
まぁ...右も左も分からない人間に、いきなりそんなこと聞かれてもって感じだよな。
しかし、その答えに対して中須の反応が俺の予想とは違ったものだった。
「ピンポーン!またまた正解です!」
「はぁ...?」「な、なんで...!?」
めちゃくちゃすぎる正否に俺と桜坂は抗議する...が、中須は動揺する素振りも見せず、むしろそれが当然だと言わんばかりに、自信満々な態度だった。
「あれれぇ?もしかして2人とも、わからないんですか〜?」
「むぅ...!」
鼻につくような中須の煽りに、機嫌を損ねた桜坂はぷくりと頬を膨らませる。
「じゃあどういうことなんだよ?」
「簡単なことですよ。スクールアイドルに決まった答えなんてない...ファンの人に喜んでもらえることなら、どれも正解なんですよっ」
そういうもん、なのか......?若干の疑念が残るも、はっきりと言い切る中須を見ると、妙に納得してしまえる自分がいた。
ファンのために...そういえば、こいつがかわいい自分でいようとするのも、ファンのためだったよな。
もしかしたら、本当に中須は、スクールアイドルの真理みたいなものを理解しているのかもしれない。それが意識的にかはわからないけど。
「へぇ〜!スクールアイドルってそんなに奥が深いんだぁ!勉強になるよ〜」
「そうですよぉ愛先輩!スクールアイドルのことならなんでもこのかすみんに聞いてくださいね〜♪」
「よっ!かすかす大先生〜!」
「かすかすって呼ばないでください!!」
的確に中須の地雷を踏み抜く宮下だった。
「ちなみに、晴陽はどう思う?」
「え、俺?」
「うん!もし何かあったら、参考にしてみたいなって」
「んー、そうだな...」
スクールアイドルにとって大切なこと...か。そう聞かれるとどう言葉にすれば難しいけど、頭にパッと浮かんだものといえば。
「まぁ...こういうのって、なにより楽しんだもん勝ちだよな」
「楽しむ?」
答えが漠然としすぎたか、天王寺にはあまりピンときていないようだった。
「だってさ、自分が楽しいと思えなきゃ、他人がそれを見て楽しいなんてまず思えないだろ?」
あくまで俺の主観だけど、ライブってのは自分が楽しんでこそのものだと思う。自分が感じる楽しいという気持ちが、声や音を通じて伝播していく。そうして観客と一体感を生み出していくのが、ライブの醍醐味なんじゃないだろうか。
「......うん!愛さんもそう思うな!」
「晴陽先輩、意外と良いこと言いますね!」
「意外は余計だろ...ま、スクールアイドルじゃない俺が、偉そうに言えたもんじゃないんだけどな」
「じゃあいっそのこと、先輩もスクールアイドルになっちゃいますかぁ?」
「は?」
「おっ!いいんじゃないそれ!」
「いや待て!なんでそうなる!?」
話が急展開しすぎだろオイ。別にスクールアイドルをやりたくてそう言ったわけじゃないんだが。
「男の人のスクールアイドルっているの?」
「いるにはいるよ。数はまだ少ないんだけどね」
天王寺のふとした疑問に桜坂が答える。
ふーん...男のスクールアイドルもいるんだな。どんなもんか、ちょっと気になるな...って、そうじゃないだろ。俺までこの流れに呑まれかけてどうすんだ。早く止めなければ。
「いやいや、どう考えたってアイドルって感じじゃないだろ」
「え?そんなことないと思うけどなぁ」
俺の顔をまじまじと見つめる宮下。そのトパーズのような眩しい瞳から、思わず目を逸らしてしまった。
「ずっと思ってたけど、晴陽ってケッコーかわいい顔してるよ?」
「か、かわいい......」
暗に男らしくないと言われてる気がして、軽くショックを受ける。自分の顔立ちがどことなく中性っぽいのは自覚しているつもりだし、何度かそのことを言及されてきたけど、やっぱり男としては素直に喜べねえ...
「うん。それには私も同意」
「目元のほくろとかすごくかわいらしいと思います」
「う...」
だが俺の複雑な心境などお構いなく、天王寺と桜坂まで共感の声を上げる。
なんなんだこの状況は...新手の拷問か何かか?言ってる本人たちには悪意はないんだろうけど、四方八方から言われるとさすがに恥ずかしくなってくる。
「あれあれぇ?晴陽先輩、もしかして照れちゃってるんですか〜?」
うわ...1番反応してほしくない奴が真っ先に気づいちまったよ。やめろ、そんなニタニタした表情で俺を見んな。
「晴陽って、意外と照れ屋なところあるよね〜」
「そこがまたかわいいと思う」
「いわゆるギャップ萌え...というものでしょうか?」
尚も話が盛り上がる3人。
「だあああああ!!やめやめ!もうこの話は終わりだっ!」
さすがに羞恥心が限界を超え、たまらず俺は声を荒げて会話をぶった切った。
「ごめんごめ〜ん!からかいすぎちゃったね...!」
「勘弁してくれよ、もう...」
そういう話は本人がいないところでやってくれ。いや、いなくてもしてほしくないけど。
「はぁ...俺、もう次行ってるわ」
うんざりとしながら立ち上がり、部室のドアへ向かう。
「あっ、待ってよ〜!愛さんたちも行くから!」
宮下に呼び止められるも、それを無視して俺はそそくさと部屋を出た。逃げ出したようで我ながらダサいとは思うけど、もうこれ以上この場にいたくないし、顔も見られたくなかった。
「顔あっつ...」
火照る顔を抑えながら呟く。廊下の空気が冷たいと感じるくらい、どうやら俺の頬は熱を帯びていたみたいだ。
R3BIRTHのファンミよかった...!
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