虹色DREAMER!   作:UkiA

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前回のあらすじ。

前回を見てください(おい)




#15「大好きのソノリティ」

 

 

 

「おっじゃましまーす!」

 

次なる練習場所である部屋のドアを、意気揚々として開ける宮下。部屋には歌の練習をメインとした歩夢と優木、そして付き添いの侑がいた。

 

「3人とも、お待ちしてました!」

「よう...」

「ハルくん、いらっしゃ...い?」

「ど、どうしたのハル...?」

 

笑顔で歓迎する優木に一言返した俺だったが、その様子が普通じゃないことを、歩夢と侑は一目見てすぐに気づいていた。さすが俺の幼馴染...しかし俺がこうなった原因を説明できるわけもなく、うやむやに返すしかない。

 

「いや、なんでもない...」

「明らかになんでもないって感じじゃないんだけど...」

「あはは...とりあえずお疲れ様だね。ほら、ここ座って?」

 

侑からは疑いの目で見られるが、歩夢は特に話を深堀りすることはせず、椅子に座るよう俺に促した。

 

「おう...」

 

その言葉に甘え、歩夢の横に腰を下ろす。練習初日だってのに、疲労感がエグいな...というよりなんで俺が疲れるんだよ。俺はただ練習の様子を見物するだけだったのに...。

とはいえこんな感じじゃ、マネージャーとして頼りなさすぎる。いい加減気持ちを切り替えるとするか。よし、頑張れ俺。

 

「そんで、今何やってるんだ?」

 

とりあえず、ここでの練習内容について聞いてみる。

 

「まずはそれぞれ自由に歌って、いいところとか改善できそうなポイントを探していくって感じだね」

「はい!自分の長所を伸ばしていったり、課題を見つけてこなしていけば、確実なスキルアップになるはずですから!」

 

侑と優木が軽く説明する。要は自分の武器になるスタイルを見つけようってことだな。ま、最初はそんなもんか。

 

だいたいの内容を把握できたってことで練習は再開。みんな、それぞれ自分の好きな曲や得意な曲で歌を披露していく。その中で俺は、聴いたことがなかった宮下と天王寺の歌に興味を向けていた。

 

宮下はやはりというべきか、持ち前の元気さを前面に押し出したエネルギッシュな歌い方だった。かなり勢いのある曲を歌っていても、疲れを感じさせないほど、ハイテンションを維持し続けられるのは素直にすごいと思う。

 

そして個人的に少し懸念していた天王寺なんだが...思いの外、普通に歌えてた。普段の様子がああだから不安だったんだけど、杞憂に終わったのなら何よりだな。

 

とまぁ、そんな感じでそれぞれの歌声や歌い方を分析しながらも、ミニライブの感覚で俺はみんなの歌を密かに楽しんでいた。

 

「うーん...やっぱり緊張して上手く歌えないなぁ...」

「全然!そんなことないって!」

「愛さんの言う通りですよ。私は歩夢さんの歌声、大好きです!」

 

自分の番が回って歌い終わった歩夢だったが、いまいち自信が持てずにしょんぼりとしていた。そこで宮下と優木がすかさずフォローを入れる。

 

「歩夢さんの当面の課題は、リラックスして歌えるようになることですね!」

「うぅ...だよね...」

 

がっくりと肩を落とす歩夢。

 

「でも、かわいく歌えてたよ。ね?ハル」

「ん。そうだな」

 

歩夢の歌声は俺も好きだ。優しくて、一生懸命に歌うその声、その姿に、不思議と応援したくなっちゃうんだよな。

 

「そ、そうかな...?」

「ああ。もっと自信持って、堂々と歌ってこうぜ。せっかくいい声してんだからさ」

 

俺はそう言って、歩夢を奮い立たせるように拳を握ってみせた。

 

「...うん!ありがとうハルくん。頑張ってみるよ!」

 

歩夢の表情はさっきまでの弱気な部分が薄れ、徐々にやる気を取り戻していくようだった。

 

「それにしても、学校にこんなところがあるなんて知らなかったなぁ」

「ホント、すごいよね!プロが使うスタジオって感じ?」

 

まるでレコーディングスタジオさながらの部屋を見渡しながら、侑と宮下は感嘆の声を漏らした。

 

「ここは主に映像系や音楽系の学科の収録ブースですからね。カラオケルームとしてレクリエーションにも使われたりするんです」

 

さすがというか、なんというか...部活動とか行事の力の入れ具合がすごいんだよな、うち。いろんな学科があるから専門的な分野も学べるところってのもあって、知識や経験を底上げするためにこういう設備も惜しまないんだろう。こんなどデカい学校作れるくらいだから金はあるっぽいし。けど、それにしたって先進的すぎるよな。

 

「では、次はどなたが歌われますか?」

「ねえねえ!今度は()()()()の歌、聴いてみたいな!」

「せっつー...?もしかして、私のことですか?」

 

せっつーという聞き慣れない単語に、優木は自分を指差しながら尋ねた。

 

「そうそう!いいあだ名でしょ!」

 

あだ名か...そういえば天王寺のことも"りなりー"って呼んでるし、あだ名で呼ぶのが好きなんだろうか。

 

「いいなぁ!私は?」

「ゆうゆ!」

「わ、私は?」

「あゆピョン!」

「っ!?ぴょ、ピョンはやめてぇ〜!」

 

なんの偶然か、不幸にもトラウマを刺激するあだ名が宮下の口から飛び出し、歩夢は耳を塞ぐ。というかまだ引きずってんのかそれ...

 

「それと晴陽はね〜...」

 

え?なんで俺にまであだ名つけようとしてんのコイツ。でも俺のあだ名ね...一体どんな風になるんだろうか。少し気になりはする。

 

「はるっぴとかどう?」

 

すっごいキャピキャピしたのきたんだが!?

 

「それは嫌だな...」

「えぇー?け○っぴみたいでかわいいじゃん!」

「イメージが違いすぎるだろ!?」

 

どちらかといえばばつ○くんみたいなイメージあるけどな俺。知らんけど。

 

「じゃあはるりん!」

「それはもっと嫌だな!」

「じゃあコクーンタワーにあるやつ!」

「HALじゃねえか!」

 

もはやただボケたいだけだった。これじゃいつものノリと変わんねえ...

 

「あだ名はいいから普通に呼んでくれ...」

「私もいいかな...」

 

まともなあだ名が浮かばれなかった俺と歩夢だけが、ため息混じりにそうぼやいていた。

 

「はっ...!?こ、この曲は!」

 

そこで選曲をしていた優木が、突如目の色を変えて端末の画面に食いつく。

隣に座っていた天王寺が覗き込むように、端末の画面を見ると、

 

「それ...新しく始まったアニメのエンディング、だよね?」

「もしかして璃奈さん、このシリーズを観てるんですか!」

 

その曲について知っているような天王寺の反応に、優木の目つきと声色が急変する。

 

「うん。子供の頃からずっと」

「ま、前のシリーズの第29話覚えてますか!?自分を犠牲にして、マグマに飛び込もうとしたジャッカルをコスモスが抱きしめるシーンを!」

「もちろん。あれは激アツだった...!」

「ですよね!!まさか、このアニメを語れる人がいるなんて!」

 

立ち上がり、身振り手振りで熱弁する優木に、天王寺もテンション高め(?)に頷きを見せる。

何やら2人の間で共通の好きなアニメらしく、同志を見つけたと言わんばかりの優木の瞳はキラキラと輝いていた。

 

「せつ菜ちゃん、アニメ好きなんだね!」

 

侑が発言すると、ハッと我に返った優木は慌てて椅子に座る。

 

「あ、すみませんっ。お見苦しいところを見せてしまって...」

「そんなことないよ。むしろそんなせつ菜ちゃんもときめいちゃう!」

 

知らなかった優木の一面を目の当たりにしてか、嬉しそうに侑はお決まりのフレーズを口にした。

 

「でも確かに意外だよな...スクールアイドル以外、興味ないかと思ってたわ」

「意外だけに?」

「お前はもう黙れ」

「なんかだんだん辛辣になってきてない!?」

 

だってしつこいくらいボケてくるじゃん...さすがに俺もしんどくなってくるわ。いや俺が今まで過剰に反応しすぎなのかもしれないけどさ。

宮下との漫才はここまでにして、再び優木の話に耳を傾ける。

 

「ですが、親にはそういったものを禁止されていて...」

「お家、厳しいの?」

「どちらかと言えばそうですね...スクールアイドルも、本当はダメと言われてるんです」

「そっか。だからわざわざ正体隠してやってたんだね」

「正体?」

 

侑の言葉に疑問を抱いた宮下は目を細めて優木の顔をじっと見つめる。そういえば、宮下と天王寺は知らないんだったな。

 

「あー!もしかして、生徒会長!?」

 

お。気づいたっぽいな。

 

「はい...」

「なんだー、水臭いなぁ!」

「この前はどうもありがとう」

「あっ、いえ。」

 

天王寺が礼を言うと、優木は少しはにかみながらそう答えた。というか、この2人と優木に接点があったなんてなぁ。

 

「愛さんも、せっつーが話してたアニメ、チェックするね!」

「え?」

「せっつーの熱い語り聞いてたらさ、なんだか楽しそうだなーって!」

 

その言葉が意外だったのか、優木は呆然とした表情を見せる。でも、すぐに嬉しそうな笑顔を浮かべた。

 

「...楽しいですよ!」

「うん!」

 

優木の笑顔に、宮下もまた笑顔で応える。

きっと、大好きが伝わるってこんな感じなんだろうな。

自分の大好きなものを共有し合える...そんな優木たちの関係に、俺はどこか羨ましさを感じていた。

 

「よーし、ここからはアニソン縛りだー!」

「「「「おー!!」」」」

 

って、おいおい。盛り上がるのはいいけど、練習だってこと忘れないでくれよ...?

 

 

 

 

 

「ねーえ!」

 

歌が響き渡ること数十分といったところか。なぜだか不満そうな目つきの宮下が俺に話しかけてきた。

 

「ん、どうした?」

「どうした、じゃないよー!晴陽もなんか歌ってよ〜」

 

...出た。お前それカラハラだからな。うざい上司認定されるからな。

 

「いや、お前らが練習するためにここ借りたんだからさ...」

「わ、私も晴陽さんの歌、聞いてみたいです!」

「ゆ、優木?」

「1回くらい歌えばいいじゃん。それで済む話だし」

 

侑まで......それに歩夢と天王寺からも期待のような眼差しを向けられていた。

 

...やるしかないってことね。

 

「はぁ...わかったわかった」

 

結局、みんなの圧に根負けしてしまい、俺まで歌う羽目に。だって、断りづらい雰囲気なんだもん。侑の言い分もあってそっちの方が早いと思ったし。まぁ歌うこと自体、別にいいんだけどさ。

 

俺は端末を受け取り、選曲画面とにらめっこしながら何を歌おうかと頭を悩ませる。

 

「うーん、何を歌えばいいもんか...」

「晴陽さんの大好きな曲を歌えばいいと思いますよ!」

 

優木がそう助言をしてくれる。

大好きな曲...か。そういうことなら...。

 

ぱっと思いついた曲名を入力し、送信。そしてマイクの前に立つ。

なんか...緊張するな。久々に人前で歌うもんだから、上手く声が出るか心配だが...そこは気合で乗り切るしかない。

 

曲のイントロがスピーカーから流れ始める。疾走感溢れるギターのメロディに、片足のつま先でリズムを刻む。子供の頃から聞いていて、今でも俺の1番大好きな曲だ。

 

この曲を聴くと、あの頃の感覚を思い出す。初めて聴いた時の、胸に込み上げてくる、熱い気持ちが。

 

───ただ、それと同時に痛いことも思い出してしまうけど。

 

前奏がもうすぐ終わる。俺はスゥーと息を吸い込んで、昂る気持ちのままに歌い出した。

 

 

 

 

 

「ふぅ...」

 

曲を歌い終え、息をひとつ吐く。そして音楽に集中していた俺の意識は、周りの空間へと引き戻される。

思わず自分の世界に浸ってしまった。最近ロクに歌っていなかったせいか、ところどころ音が外れてた気がするし。聴き苦しいもんを聴かせてしまったかもしれない。

そんな自己反省しながら、席に戻ろうとみんなの方へ振り向くと、固まったように俺を凝視する宮下、天王寺、優木の姿が目に映った。

 

「えーっと...どうした?」

 

その異様な雰囲気を感じつつ、おそるおそる声をかけてみると。

 

「いやいや、晴陽めっちゃ歌上手いじゃん!」

「そうですよ!思わず聴き入ってしまいました!」

「なんというか、すごくビリビリきた」

 

テーブルから身を乗り出すように立ち上がり、軽く興奮状態の宮下。

それに続き、優木と天王寺もそれぞれ感想をぶつけてくる。

 

「久しぶりに歌ってるの聴いたけど、相変わらず上手いよねぇ、ハルってば」

「うん!すごくかっこよかったよっ!」

 

侑と歩夢からも称賛の声が上がる。この2人には以前にカラオケとかで何回か歌っているところを見せているから、他の3人ほど大きいリアクションじゃないけど...それでも褒められるのはこそばゆい感じがするな。

 

「お、おう...ありがとな」

 

くすぐったさを抑えるように頬を掻きつつ、俺は礼を返した。

 

「く〜!これはアタシも負けてらんないなぁ!」

 

と、宮下が武者振るいのように身体を震わせる。なんか嫌な予感がするぞ?

 

「晴陽!愛さんとカラオケバトルだー!」

 

...ホラ、またなんか始まったよ。

 

「いやだから、これはお前らが練習する時間だって」

 

さすがにそんなことに時間を割くわけにもいかず、ここは断りを入れるが......

 

「ふーん?そうやって()()()んだぁ〜?」

 

瞬間、ピシリと衝撃が走った。

逃げる...?俺が宮下から逃げるだって?

 

「それっぽいこと言って、本当は愛さんに負けるのが怖いんじゃないの〜?」

 

ニヤついた表情で尚も宮下は俺を嗾ける。

 

「くっ...!好き放題言いやがって...そこまで言うんなら相手してやらぁ!!」

 

これが挑発だということは百も承知。普通なら大人の対応でスルーすべきだ。しかし生憎と言われっぱなしは気に食わねえ性分...その挑戦、受けて立ってやろうじゃねえか。

 

「あははっ!そうこなくっちゃ!」

 

斯くして、俺と宮下の壮絶な闘いが幕を開け、室内は最高潮の盛り上がりを見せていた。

 

 

 




 
 
 
昨日、ついにこの小説が1周年を迎えたということで、更新頻度は遅けれどここまでよくやってこれたもんだと痛感しています。
読者の皆様に感謝を。これからも頑張って物語を紡いでいきたいと思いますので、今後ともよろしくお願いします!

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