2ヶ月ぶりの更新気持ち良すぎだろ!(大変遅れて申し訳ございません。謹んでお詫び申し上げます。)
翌日の土曜日。予定通り、トレーニングの一環であるランニングのため、俺は歩夢、侑と一緒に集合場所のレインボー公園方面行きのバスを待っていた。
「ふぁ...」
「ハルくんまた欠伸してる。昨日眠れなかったの?」
何度目かの欠伸が漏れ出てしまい、歩夢に咎められる。別に夜更かししたわけじゃない。単純に昨日の疲れがまだ少し残ってるせいか、寝足りないって感じだった。
「いや、そういうわけじゃないんだけどな...」
「今に始まったことじゃないでしょ。ハルはもともと朝弱いんだし」
「そういうお前だって歩夢に起こしてもらってんだろ...」
「ハルよりはちゃんと起きれてる方だしっ!......たぶん」
「不安になってんじゃねえか」
とはいえ俺らが朝弱いのは事実で、歩夢にしょっちゅう...いや、ほぼ毎朝モーニングコールしてもらってるのもまた事実なわけで...ホントに良い幼馴染を持ったもんだと常々思う。
「今更だけど悪りぃな。歩夢には迷惑かけてるよ...」
「迷惑とかそんなこと思ってないよ...!むしろ、朝からハルくんの声が聴けて嬉しいし...」
「あ、わり...最後の方がよく聴こえなかった」
「ななななんでもないよっ!私は本当に大丈夫だから!気にしないで!」
「お、おう...?」
なぜか急にわたわたと取り乱し始める歩夢...大丈夫か?
「なんか顔赤いぞ...?お前もしかして熱あんじゃないのか?」
「ひゃっ...!」
もしそうだとしたら無理させるわけにはいかないんで、歩夢のおでこに手を当ててみる。
「やっぱちょっと熱っぽい気が...」
「あぅ......」
だんだん体温が上がってるような気が...これ、休んだ方がいいんじゃないか...?
そう思った矢先に、
「ていっ」
「いでっ」
背後から侑に手刀をぺしっと叩き込まれた。
「な、なにすんだよ」
「そんなことしたら熱上がっちゃうに決まってるでしょ?」
「え?」
「まったく...本当に女心っていうのをわかってないんだから...」
「は、はぁ......?」
この状況と女心がどう結びつくのかよくわからないんだが...
「歩夢もいちいち動揺しない。ハルはああいうこと平気でやってくるんだから」
「う、うん...そう、だね...」
......あれ、もしかして俺ディスられてね?
と、そんなことがありつつ、やって来たバスに乗り込んだ俺たち。目的地に着くまでの間に、俺は前に座る2人の背中をボーッと見つめながら昨日のことを思い返していた。
...そういえば。
「なぁ、歩夢」
「ん、なあに?」
頭に浮かんだその疑問を解消すべく、俺は歩夢に声をかけた。
「お前はどう思う?ソロ活動のこと」
「え?」
「その...不安とかあるだろ?大丈夫なのか?」
「うーん......」
その問いかけに難しい顔をして唸る歩夢。
そして幾分か考え込んだ後、
「確かに不安だよ。ただでさえ、スクールアイドルなんて初めてなのに......」
「だ、だよな...」
普通に考えればわかることだった。誰だって初めてのことに不安を持たないはずがない。俺が歩夢の立場だったら同じように思ってるだろうに。
そんなわざわざ不安を煽るような、野暮な質問をしてしまったことを反省する俺に、歩夢はでも、と話を続ける。
「でも、挑戦してみたいって気持ちも確かにある。せっかく自分のやりたいことに踏み出したんだもん。始まってもないのに諦めちゃうなんてもったいないよね!」
その言葉を聞いて、俺はハッとして顔を上げ、歩夢を見た。その表情にはなんの迷いも憂いもない。ただ自分の目標に向けて歩もうとする、直向きで真っ直ぐな瞳だった。
歩夢に続いて、話を聞いていた侑もその口を開く。
「心配しなくても、歩夢ならきっと大丈夫だよ。それはハルだってわかってるでしょ?」
.........そうだったな。
やると決めたら最後までやり通す、それが歩夢じゃないか。その意志の強さは歩夢の目を見てすぐにわかる。
「...そうだな。余計なこと言って悪かった」
「ううん。心配して言ってくれたんでしょ?ありがとう♪」
「まったく、ハルの心配性は相変わらずだよねぇ」
やれやれといった様子で侑は肩を竦める。
心配性か...なんだか昨日も同じこと言われたな。
「侑とは違って俺は慎重なんだよ。侑とは違って」
「もぉー!そういうところも相変わらずなんだから!」
「ほら2人とも、バスの中だからあんまり騒がないの...!」
あれ...さっきまで真面目な話をしてたはずなのに、普段と変わんねえやりとりになっちまったな...
ま、いっか。
待ち合わせのレインボー公園、その入り口へ到着すると、すでに何人かの面子が揃っていた。
「あと来てないのは...エマ先輩と愛先輩ですね」
「みんなー!」
「あ、ちょうど来たみたいだね〜」
中須が人数確認をしていたその時に、俺たちが来た方向とは反対側からやってきたヴェルデ先輩に、近江先輩が気がついて声を上げる。
これで残るは宮下だけなんだが、ヴェルデ先輩は何かを探しているかのように、キョロキョロと周りを見回していた。
「あれ...?愛ちゃんは?」
「いや、まだいないっぽいですけど...」
「おかしいなぁ...ここに来る途中に合流して、そのあと先に走って行っちゃったんだけど...」
「そうなんですか?どこに行ったんだ、宮下のヤツ...」
あいつに限ってドタキャン...なんてことはないだろう。
「...なんだか向こうの方が騒がしい」
宮下の行方がわからず困惑が走る中、天王寺は公園内の方から聞こえるざわめきに目を向けていた。
言われてみれば確かに、と俺もそっちを見てみれば、何かを中心にして囲むように人集りができている。
こんな朝っぱらからイベントでもやってるのか...?元気なもんだなぁ。
そんな呑気なことを考えていたら、
「あそこにいるの、愛さんじゃないですか?」
桜坂の言葉に一瞬耳を疑った。
あの中に宮下がいるらしい.........が、ダメだ、よく見えない。
「行ってみよう!」
先陣を切って侑が走り出し、その後を俺たちも追いかけていく。
そこで目にしたのは───。
「......!」
確かに桜坂の言う通り、宮下がいた......が。
その光景に俺は目を見開いた。
たくさんの人で賑わうその空間が、まるでひとつのライブのステージみたいで、その中心で宮下はノリノリで踊っていた。
軽快なステップと大胆なモーションは、それを見ていた周りの人たちを惹きつけて、笑顔にさせている。中には見よう見まねで、動きを真似る子どもたちもいた。
だけど、他の誰よりも、踊っている宮下自身が1番楽しそうに輝いていた。
宮下から広がる、『楽しい』という想いが人から人へと伝播していく。そしてその想いは俺たちのもとにも届いていた。
侑も。中須も。ヴェルデ先輩も。他のみんなも、宮下のパフォーマンスを楽しんでいる。
そうか...もしかしてこれが───。
「愛ちゃーん!」
「あ!みんなー!」
パフォーマンスを終えた宮下に侑が声をかけると、それに気がついた宮下は俺たちに向けて大きく手を振った。そこでふと、宮下と目が合う。
俺の顔を見るや否や、宮下は一直線に俺のもとへ駆け寄り、
「晴陽!愛さん、見つけたかも!」
「お、おう...?」
興奮気味に何かを報告し始める。つーか顔が近い。
「愛さんのなりたいスクールアイドル、だよ!」
「!」
宮下は雲一つないような、晴れ渡った表情で見出したその答えを口にする。
「愛さん、楽しいことが好きで、みんなに楽しんでもらうのが好き。そんな楽しいをみんなと分かち合えるような...そんなスクールアイドルになりたい!」
それを聞いて俺は、
「............ははっ」
思わず笑いが溢れた。
昨日まであんなに頭を悩ませていたのに。いや、確かに難しく考える必要ないって言ったけどさ?ここまで捻りのない答えが出るとは。
でも......宮下はそうでなくっちゃな。
楽しいを分かち合えるスクールアイドル......それを体現したのが、さっきのパフォーマンスなんだな。
「いいな、面白そうじゃん。すっげえお前らしいと思うぞ?」
「でしょ!えへへっ」
これから目指す理想のステージに、俺と宮下は期待を膨らませて、笑い合う。
「私、見てみたいな。みんなのステージ!」
一方で、弾ませた声でそう切り出した侑に全員の視線が集まる。
宮下のパフォーマンスを目の当たりしたからか、わくわくと興奮が抑えられない...そんな様子で侑は言葉を紡いでいく。
「1人だけど...いや、ひとりひとりだからこそ、いろんなことができそうかもって思うんだ!」
目先の不安なんかよりも、その先を侑は見てた。
この同好会...みんなだからこそ、成し得られるソロアイドルという形。ひとりひとりが輝くことができるその可能性に。
...やっぱ侑には敵わねえな。
「なんかすごいね、侑ちゃんも」
「人を引き摺り回すパワーはありますからね、こいつ」
「ちょっ、それはどういうイミ!?」
感銘を受ける近江先輩に俺は冗談混じりに話すと、侑は膨れっ面になりながらすぐさま抗議する。
「それを言うなら晴陽もすごいと思うけどなー!」
「え...俺?」
不意に宮下から思わぬ言葉が飛び出し、俺は首を傾げながら聞き返した。
「うん!ハルくんが背中を押してくれたから、私もスクールアイドルやろうって思えたんだし!」
「かすみんがかわいいかすみんでいられるのも、先輩のおかげって言ってもいいですよ?」
「私も同じです。私がこうして大好きなスクールアイドルを続けられるのも、晴陽さんの言葉あってのものですよ!」
「お、お前らな...」
揃いも揃ってそう言われると恥ずかしいんだが...
でも、俺もちゃんとみんなの力になれてんのかな...?
そうだといいんだけど。
「これは私たちも負けてられませんね!」
「うん。燃えてきた」
「ふふっ、これから頑張っていこうね!」
感化されたように、桜坂、天王寺、ヴェルデ先輩もやる気に満ちた表情を見せる。
ソロアイドル。
みんなにとってそれは未知なる道だけど、その先の輝きを目指して。
全員がその覚悟を決めて、顔を見合わせ頷いた。
******
「歩夢、サイ
「あははははっ!!」
「走るのって
「ひぃー!」
「次は
「もう、無理っ...!」
宮下の怒涛のダジャレ連発に、侑の笑い声が部室に響く。
その楽しげな2人の様子を俺と歩夢以外、ぽかんとした顔で眺めていた。
「侑さん、すごくウケてますね...」
「あの子、昔から笑いのレベルが赤ちゃんだから...」
床に伏して悶絶する侑を見ながら、優木が呆気に取られる。
つーか歩夢のヤツ、さらっとひでえこと言ってたな...まあ実際その通りなんだが。じゃなきゃここまで笑えるわけがない。
「というか、なんでいきなりダジャレを...?」
「スクールアイドルの特訓だよ!」
中須のもっともな疑問に対し、宮下はそう答えた。
「そんなんで特訓になんのかよ...?」
「む!晴陽はダジャレの難しさを知らないから軽く言えるんだよ〜!」
「そーだそーだ!」
「笑いのレベル赤ちゃんは黙っててくれませんかね!」
俺の発言に2人からブーイングが巻き起こる。こんなところでめんどくさい団結するなよ。
「そんなに言うなら、晴陽が面白いダジャレ言ってみてよ〜」
「いや、そんなこと言われてもな...」
そもそもダジャレ自体、今時ウケるか微妙なジャンルだっつーのに。
とはいえ、この2人に言われっぱなしってのもなんかイヤだ。
「しょうがねぇな......」
頭をフルに回転させ、思いついた渾身のネタをひとつ、俺は披露してみせた。
「お、あそこにかわいい鹿がいるなぁ。ほら、こっちおいで〜、って
ぴしっ、と場が凍りついた。
冷めたような目つき。軽く苦笑い。反応はさまざまだ。
そして、侑と宮下から憐れむような視線と言葉を浴びせられる。
「ハル......」
「さすがの愛さんでもそれはちょっとなぁ...」
「なんでだよ!お前のと大してレベル変わんねえだろうが!」
「あ〜!愛さんのダジャレを馬
「俺のネタ引っ張んなくていいんだよ!」
「あははっ!
「しつけえええええ!!!」
......やっぱ、宮下の相手をするのは疲れるわ。
スパスタ2期が来る...ッ⁉︎
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