虹色DREAMER!   作:UkiA

24 / 34
 
 
 
明けましておめでとうございます、今年もよろしくお願いします。

新年1発目『虹色DREAMER!』をどうぞ!
 
 


#24「変わっていくもの」

 

 

 

「はぁ......」

 

部活が終わり、幼馴染2人とともに帰路についている俺は、今日何度目かのため息をつく。

 

あの後、いろんな衣装を着させられ、なぜかいろんなポーズを指定され、挙句の果てにはみんなに写真を撮られる始末。消せとは言ったものの、たぶん消すわけないよな............亡命してぇ。

 

「ハルってば、もう過ぎたことなんだし、気にしなくていいんじゃない......?」

「そ、そうだよ。気持ち切り替えていこ?」

「そういうお前らも楽しんでただろうが......」

「「うっ......」」

 

ぽつんと言い放つと、言葉が詰まる2人。特に歩夢なんかは嬉々として撮りまくってたのを忘れてねえぞ。ちょっと前まで拗ねてたくせになんなんだマジで......

 

「で、でも、すごく似合ってたもん! か、カッコよかったからつい......」

 

恥ずかしがりつつも、意地を張るように歩夢は断言する。一体何をムキになってんだか......

 

......まぁ、そう言われれば少しだけ気は楽かもしれない。

 

「............そーかい。ありがとよ」

 

視線は合わせず、俺は一言だけそう返した。

 

「ほんと、歩夢には甘いんだから......」

 

呆れ笑いを浮かべながら、侑が何かを呟いたような気がした。

 

 

 

 

 

「ただいま」

 

2人と別れ、帰宅した俺はリビングへと足を踏み入れる。

 

「おにーちゃんおかえり〜」

 

リビングには陽鞠(ひまり)......ともう1人、客人らしき少女の姿があった。

 

「こ、こんばんは......!」

「あ、どうも......」

 

少女は深々とお辞儀をして、それに俺も軽く会釈して返す。

 

茶髪の短いツインテールに、制服は陽鞠が通う東雲学院のもの。ということは陽鞠の友達ってわけか。

 

「おにーちゃん帰ってきたしちょうどいいや! 私途中までこの子送ってくから、お留守番よろしくねっ」

「それはいいけど、暗くなってきたから気をつけろよ?」

「はーい。それじゃ行こっか」

「うん。えっと、お邪魔しました!」

 

帰ってきた俺と入れ替わるようにして、リビングを出て行く2人の背中を見送る。

それにしてもあの子、どっかで見覚えがあるような......?

 

......いや、気のせいか。間違いなく初対面だったし。

そう結論づけて、それ以上は深く考えなかった。

 

それからしばらくして戻ってきた陽鞠と夕飯を食べる。

俺の家は両親と姉、妹の5人家族だが、親父の海外赴任にお袋も付き添って2人とも家を出た。姉は仕事で忙しい時はあまり家にいないし、自然とこうして妹と2人で過ごす時間が多くなっていた。

 

といっても別に寂しいわけでもなく、生活に支障があるわけでもない。生活費は毎月振り込まれてくるし、家事も役割分担でこなしてる。たまに歩夢も気にかけて手伝ってくれたりするしな。

 

「あ、そういえばこの前、おかーさんから電話来たよ。ちゃんとやれてるかって心配してた」

「やれてるかって、心配するくらいなら帰ってこいってんだよな......」

「あはは......あのおかーさんだしねぇ......」

 

お袋の人柄をよく知ってるせいか、陽鞠は苦笑いを浮かべる。

というのも、うちのお袋は今でも親父にゾッコンで、親父の世話をしたいが為に赴任について行ってしまった。

親父の仕事が落ち着いたら帰ってくるとは言ってたけど、当分は帰ってこないだろうな。

 

「ま、お袋の好きなようにやればいいけどさ......」

 

俺も子供の頃から好きなようにやらせてくれたし、とやかく言うつもりもない。

 

「そうだねぇ......それとおにーちゃん、最近またギター弾き始めてるみたいだけど、急にどうしたの?」

「あー、それか......」

 

話題は変わり、俺が長年弾いてなかったギターを、最近になって弾き出したことが陽鞠は気になっていたようだ。

 

俺は事の顛末をかいつまんで説明する。

 

「なるほどー、おにーちゃんが作曲ねぇ......ふふっ」

「なんだよ、嬉しそうな顔して......?」

 

ニコニコとし出す陽鞠に、俺はつい怪訝な表情をしてしまう。

 

「いやぁ、ちゃんと真面目に活動してるんだなーって」

「そりゃまあ......入ったからにはやらなくちゃいけないだろ」

 

同好会に入ったきっかけも、歩夢のやりたいことを応援するためだ。じゃなきゃ、中途半端な気持ちで同好会に入ったりしていない。

 

ただ、みんなのスクールアイドルのイメージが違うもんで、作曲するにしても曲のスタイルを広げなくちゃいけないのが今の俺の課題。そのためにいろんなジャンルの曲を聴いて勉強している最中だ。

 

「最初聞いた時びっくりしたもん。おにーちゃんがスクールアイドル⁉︎ ......って」

「厳密にはサポーターみたいなもんだけどな」

「それにしてもだよ! 今までそういうの興味なかったじゃん!」

 

まぁ......それはそうだけど。

雨宮の時もそうだったけど、それほど俺とスクールアイドルの組み合わせは意外性があるようだ。

 

「でもよかった。おにーちゃん、楽しそうだし」

「楽しそう?」

 

陽鞠の口から出たのは、思いもしなかった言葉だった。

 

「うん。同好会に入る前はなんかつまらなそうな感じだったから、それに比べたら今は随分楽しそうだよ?」

 

気づかなかった......そんな風に見えてたのか。

自分でも気づかないくらい、スクールアイドルに引き込まれてたってわけか......

 

......いや、なんだかんだでみんなといるのが楽しいのかもしれない。みんなで夢を叶えていく、前に進んでいくこの感じが。

 

───もう少し早く知っていたかったな。

 

「それと同好会の女の子たちとイチャイチャしてるんだって?」

「んぐっ!」

 

陽鞠の突飛な発言が耳に入ると、飲み込もうとしたメシが詰まりかけ、慌てて水で流し込んだ。

 

「お前それどっから......! あとイチャイチャはしてねーよ!」

「えー? 歩夢ちゃん言ってたよ?」

「あいつ何してんだ!」

 

大方侑の仕業かと思ったらまさかだった。

そもそもイジられたり振り回されてるだけなのに、どこがイチャついてるように見えんだ......

 

「まあこう見えてもおにーちゃん、結構お人好しだしなー。歩夢ちゃんもうかうかしてられないねぇこれは」

「あれ俺褒められてんのか?」

 

それと後半言ってる意味がよくわからないし......なんでそこで歩夢が出てくるんだろう......

 

「あ、そうそう。スクールアイドルといえば、さっきの私の友達も東雲(うち)でスクールアイドルやってるんだよ!」

「へぇ、そうなのか」

「うんっ。1年生じゃ特に期待されてるらしくてさー」

 

ふーん......東雲のスクールアイドルね。それも一年生のエースか。もしかしたらさっきの既視感は、どこかで動画を一度見たからなのかもしれない。

 

確かに容姿はさることながら、礼儀も正しいし、さっきチラッと会話しただけでも目を引くような愛らしさが感じられた。

もしかしたら、これから中須たちのライバルにでもなったりして......

 

「いつかうちとニジガクで共演したりするのかなー?」

「さぁ、どうだろうな」

 

そもそもうちは曲もまだ出来ていない状態だし......でも、いつかはできるようになればいいけどな。

 

「私もスクールアイドルやってみようかな〜」

 

冗談めいたように、徐にそんなことを陽鞠が言い出す。

 

「お前がか......?」

「むっ、失礼な反応だなー。私だって結構イケてると思うんだけどっ」

 

陽鞠はむくれてそう言った後、パチリとウィンクをする。

 

まぁ俺はああ言ったものの、我が妹ながらその顔立ちは整ってるし、真面目且つ天真爛漫な性格で人当たりは良い。確かにアイドルとして、かなり受けが良さそうではある。

 

「まぁ......陽鞠がやってみたいんならやればいいと思うぞ」

「んー、ちょっと興味はあるけど......それよりもやりたいことがあるからね」

 

少しだけ口惜しそうにしながらも、別の選択肢が陽鞠にはあった。

 

陽鞠がやりたいこと......それはたぶん料理関係のことだろう。というのも、陽鞠は昔から料理やお菓子作りが好きで、うちの炊事は陽鞠が担当している。

学校では料理部に入ってるらしく、将来的にその道を行きたいとも考えてるようだ。

 

「......そっか。頑張れよ」

 

それが陽鞠のやりたいこと、夢なら何も言うことはない。俺は兄としてその夢を応援するだけだ。

 

「うん!」

 

俺のささやかな応援に陽鞠は笑顔で頷く。憂いのないその笑顔が、俺はどこか羨ましく感じていた。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「ふぅ......」

 

自室のベランダから夜景を眺めながら、俺は一息ついた。気持ちのいい夜風が入浴後の火照った身体を冷ましていく。

そこで、隣からガラガラと掃き出し窓を開ける音が聞こえた。

 

「あれ? ハルだ」

「よう、奇遇だな」

 

出てきたのは侑だった。もう風呂は済ませた後だからか、いつものツインテールは解かれている。

 

「珍しいね、この時間にベランダにいるなんて」

「あー......まぁそういう気分だったから」

 

ふーん、と相槌を打って、侑もまたベランダから外の景色を眺める。ミディアムの綺麗な黒髪が、夜風で(なび)くその姿はやけに様になっていた。

 

そして特に会話をすることなく、その状態が数分続いた後、やがて侑が口を開く。

 

「ねぇ、ハル」

「......なんだ?」

 

妙に真剣な声音と表情に、俺は思わず戸惑いながら返した。

侑は何か言い出すのに緊張しているようで、一瞬の逡巡をして意を決したように話を続ける。

 

「話があるんだけど、今からちょっとそっち......行ってもいいかな?」

「えっ、今からか?」

 

こんな時間に......? それに今ここで話せないことなんだろうか。

 

「ダメならまた後でいいんだけど......」

「いや......まぁ隣だし別にいいけど」

「ホント? ありがと。じゃあちょっと待ってて」

「お、おう......」

 

侑の口ぶりからするに、それほど急を要するほどのことじゃないみたいだ。でも、俺も無理に断る理由もないし、話を聞くことにした。

 

それから数分したのち、侑がやってきたんで俺の部屋へと通す。

 

「わぁ〜......! ハルの部屋、久しぶりだなぁ〜」

 

と、部屋を見渡してから、侑は俺のベッドに飛び込んで仰向けになった。

自分の部屋みたいにリラックスしてるけど、一応男の部屋ですよ侑さん......無警戒にもほどがありませんか。

 

まぁ子供の頃はよく侑と歩夢の3人で、お互いの部屋で遊んでたりしてたしなぁ。中学以来はその機会は少なくなったけど、未だにその感覚が侑には残ってるんだろう。俺も今更変に遠慮されるよりかは、こっちの方がいいけど。

 

「あんまり変わってないね〜」

「まぁな」

 

俺は物の配置が変わると気になってしまうタイプなんで、模様替えとかは極力やらないようにしている。だから昔侑たちが来ていた頃からは、物は少し増えているが、ほぼ変わり映えしていないように見えるだろう。

 

「んで、話があるんだろ?」

 

俺は作業机の椅子に座りながら早速話を切り出す。まさかこんなおしゃべりをするためにわざわざ来たわけじゃないだろうし、あまり遅くなって侑の親御さんに心配かけるわけにもいかないしな。

 

「あ、そうだね......」

 

仰向けの状態から起き上がって姿勢を正す侑。

 

「実はハルに頼みたいことがあるの」

「頼みたいこと?」

 

こんなに改まって一体何があるんだろう......?

いつになく厳かな雰囲気の侑に、俺も固唾を飲んで身構える。

 

そうして侑の口から放たれた言葉とは───

 

「私に、ピアノを教えてくれないかな?」

「............え?」

 

予想外すぎて反応が遅れ、間抜けな声が出る俺。

 

ピアノを教えてくれ。確かに侑はそう言った。言ったんだけど、侑がピアノ......?

 

「ピアノを教えろって、またいきなりだな......?」

「あはは......そうだよね」

 

そう言われるのがわかっていたか、侑は苦笑いを浮かべて頬をかく。

 

「私がピアノをやってみたいって思ったのは、同好会のみんなの影響かも」

「みんなの......?」

「うん。みんな、ソロアイドルっていう新しい形に挑戦し始めたでしょ?」

 

しみじみとした様子で視線を下に落としながらも侑は続ける。

 

「それで、私も何かに挑戦してみたくて」

「だからピアノを?」

「うん。この前私がピアノ弾きたくて音楽室行ったでしょ? あれからもちょっと触ってたりしてたんだけど、本とかネットとかで勉強するより、直接人に教わった方がいいかなって」

 

確かにその考えもわかる。そういうのって、人に見てもらいながら教わるのが一番確実だよな......

俺も特別上手いってわけじゃないけど、基本的なことなら教えることはできる。

 

だけど......

 

「私、本気でやってみたい。だから、ハルに教えてほしいんだ」

「侑......」

「ダメ、かな......?」

 

おそるおそる俺に問いかける侑。

 

俺は何も言わず侑の目を数秒見据え、そして最後に確認する。

 

「言っておくけど、簡単にできるもんじゃねーぞ?」

「......わかってる」

「もしかしたら何年、何十年ってかかるかもな」

「それでも......やってみたい!」

 

プレッシャーをかけるように問いかけても、真剣な侑のその瞳は揺らぐことはなかった。

 

......本気なんだな。

 

「......わかった。そこまで覚悟があんなら、俺も手伝わないわけにはいかないな」

 

俺は了承の意を侑に告げる。

 

すると、

 

「......! ありがとっ、ハル!」

「うおっ......⁉︎」

 

パァッと顔を輝かせた侑に勢いよく抱きつかれた。

風呂に入ってからそんなに時間も経ってないためか、シャンプーの香りが鼻腔をくすぐる。

 

「ちょっ.....落ち着けって......!」

「あ......ご、ごめん......!」

 

慌てて宥めると、ハッと我に帰り俺から離れる侑。

昔のノリでついやってしまったんだろうけど、今はそうもいかないからな......

 

「と、とりあえず! そういうことで、よろしくね!」

「あ、あぁ......」

 

侑はなんとか平静を装っているつもりだが、顔はまだ少し赤いままだった。なんか調子が狂うなぁ......

 

「あ、それと......このことはみんなには秘密にしておいてくれる? もちろん、歩夢にも」

「え? なんでだよ?」

 

わざわざ秘密にする意図が全く読めず、その理由を聞いてみると。

 

「なんていうか、まだ自信がないっていうかさ......みんなには今よりも上達できたら、胸を張って言いたいんだ。同じ、夢を追いかける仲間として」

「仲間......」

 

もしかしたらこれが侑の、夢の始まりになるかもしれないんだ。

 

......絶対に、俺のようにはさせない。

 

「だから今はまだ......これは私とハル、2人だけの秘密っ。ね?」

「......フッ。りょーかいだ」

 

悪戯な笑みを浮かべた侑に、俺もまた微笑みを返した。

 

 

 




 
 
 
よろしければ、お気に入り登録・感想などお気軽に!
 
 
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。