「どうも〜! 前回のあらすじを説明する雨宮潤だ〜‼︎ これを読んでいるそこのお前! 前回のあらすじに含まれる内容は前回のあらすじだけだぜ!」
「当たり前だ!」
「というわけで『虹色DREAMER! #28「心の拠り所を」』、始まるぜ!」
「前回のあらすじどこ行ったし⁉︎」
「眠い......」
1人だけの部室の中、俺は極度の精神状態と
ただただ眠い。眠すぎる。気を緩めればすぐにでも夢の世界にお連れされてしまうレベルだ。
今現在、みんなはそれぞれの練習に向かっていて、俺は部室で作曲作業をしている。作曲する時はいつも、ギターを弾きながらメロディーを考えたりするのが
「───陽くん」
あー......やべ......オチそ───
「晴陽くん!」
「............はっ⁉︎」
だんだんと意識が朦朧となりかけたところに、誰かの声が閉じそうになった俺の目を見開く。その声の主はヴェルデ先輩だった。
「せ、先輩。なんでここに?」
「タオル持っていくの忘れちゃってて。取りに戻ってきたんだけど......」
俺の顔を見た先輩は不安そうな表情を浮かべる。
「大丈夫? なんだかすごくボーッとしてたけど......」
「だ、大丈夫です。大したことないですから......」
「......ホントに?」
う、疑り深いな......まあこの前のこともあったし、そうなるのもしょうがないけどさ。
「本当に大したことじゃないんですよ。ただ寝不足なだけで......」
「寝不足?」
「昨日、作曲してたらつい夜更かししちゃって」
「そうだったんだ......だからボーッとしてたんだね」
腑に落ちた様子の先輩。それでも心配の色は抜け落ちていないようだ。
「でも、それはそれで大丈夫なの?」
「大丈夫かと言われたら......大丈夫じゃない、ですけど......」
「そうだよね............そうだ!」
先輩は何か思いついたように手を合わせると、ソファの上に座り、自分の太ももをポンポンと軽く叩いてみせる。
「はいっ、どうぞ♪」
「..................はい?」
思わず素っ頓狂な声が出てしまった。
「えっと......それはどういう......?」
「それじゃ集中できないと思うから、ちょっと寝ちゃった方がスッキリすると思って!」
まあ......その理屈はわかる。こんだけ眠いと
でも俺が聞きたいのはそういうことではなく。
「だから......はいっ!」
「いや、はいって......」
先輩に再び促されるも、俺は返答に困るだけだった。
だって完全に膝枕の体勢なんだけど、これ......そこで寝ろと? 膝枕なんて小さい頃に姉にしてもらったぐらいだぞ。この歳になってそれはちょっと恥ずかしい気がする。
どうしたもんかと躊躇っているうちに、先輩はしょんぼりとした顔になり......
「そっか......私じゃイヤ、だったかな......?」
..................ヴェルデ先輩の膝枕嫌な奴っている?
いねえよなぁ!⁉︎
......キャラがおかしくなってしまった。つーか嫌だとか全っ然......むしろ男冥利に尽きるもんだと思うけど。
しっかし俺の周りの女子はどうも男女間で遠慮がないというか......気にしてるのまさか俺だけ......? そもそも俺はみんなから男として相手にされてない感じが前々からあったし......ヴェルデ先輩に至ってはもう弟みたいにしか見られていない。
「......わかりましたよ」
状況を冷静に鑑みた結果、もはや諦め半分になってしまった俺は泣く泣く先輩の方へと向かった。
「どーお?」
「どうって言われても......」
先輩の思惑通り、俺は横になって膝枕をしてもらってるわけだが......いろいろとヤバい。
柔らかいし、いい匂いするし、顔の上になんか当たってるし......これじゃ逆に気になって眠れないんだが。
先輩は俺を弟扱いしてるとしても、俺の方はたまったもんじゃない。仮にも思春期真っ盛りの男子高校生だぞ......ダメだ俺、余計なことを考えるな。
「わぁ! 晴陽くんの髪の毛サラサラだね〜♪」
「ちょっ、やめてくださいよ......近江先輩じゃないんですから」
「えへへ〜」
嬉しそうな声を上げて先輩は俺の頭を繰り返し優しく撫でる。それがとんでもなく心地いいもんだから、抵抗する気もなかなか起きないのが困る。
近江先輩がしょっちゅう膝枕してもらってるのも、今ならわかる気かするな......
「〜♪」
そこで徐に歌い始めたヴェルデ先輩。
聴いたことのない歌だった。それどころか日本語でもない、先輩の母国語だろうか。ゆったりとした歌の雰囲気からするに、童謡......子守唄とか?
でも......なんでか不思議だ。わからない言葉、知らない歌なのに聴き入ってしまう。そして何より、聴いていて安心する。
この感覚、久しぶりだな......昔姉にしてもらった時もこんな感じだったっけな。頭を撫でられて......歌を歌ってもらって......
どぎまぎしていた気持ちが落ち着いてきたのか、だんだんと眠気が湧いてきて瞼が重くなっていく。
「なんだか晴陽くんたちが来てからの同好会が、すごく楽しいんだ〜」
意識が朧げになり始めた中、ヴェルデ先輩がそんなことを口にした。
「あっ......別にその前が全然楽しくなかったとか、そういうわけじゃないよ。あのことがあったから、今の同好会があるんだと思う」
あのこと......確かに、良くも悪くもヴェルデ先輩たちに起きた出来事は、5人とって大きな変化の始まりだったのかもしれない。
衝突があってこそ、それぞれのやりたいことに気づいて、ソロアイドルという道を見つけられた。目を背けずに困難を乗り越えられたから、今の形があるんだ。
「バラバラになりかけた私たちを繋ぎ止めてくれたのは、侑ちゃんと......あなたのおかげなの」
俺の......おかげ......?
「そして今度は、私と果林ちゃんを繋いでくれた」
俺はただ......見ていられなくて......
2人がギクシャクしてるのが......自分のことみたいに心苦しくて......
だから、2人が仲直りできて......良かった。
「本当にありがとう、晴陽くん」
先輩のその言葉を最後に、俺の意識はぷつりと途絶えていた。
******
「......晴陽くん?」
数秒経てど、膝の上で横たわる彼からの返事はなく、エマは上から覗き込むように様子を窺う。
「寝ちゃってる......」
静かに寝息を立てる晴陽の横顔を、エマは微笑ましく見つめる。
(ふふっ。寝てる時の晴陽くんって、こんな顔するんだ〜......♪)
普段は無愛想な表情をしていることが多い晴陽ではあるが、顔立ちそのものは一般的には美形の部類に入るだろう。それ故に眠っている時には、幼子のような愛らしく優しい顔つきをしており、それだけでもエマの姉としての本能を奮い立たせるには十分すぎる要素だった。
会話も止み、静寂と化した室内でふと、エマは晴陽と出会ってからのことを振り返る。これまでの活動や共にした時間を通じて、少しずつ晴陽という人間をエマは知ることができた。
だがそれと同時に、エマの中でひとつだけ、気がかりなことも生まれていた。
『俺もそうなんです。ビビりで、どうしようもないくらい意地っ張りで......それですげえ後悔してることがある』
そう言っていた晴陽の表情は、ひどく辛そうに影を落としていた。
先日の一件から、自分と果林は似ているという、彼のその発言を裏付けるように晴陽もまた、果林と同じように何かがあっても抱え込んでしまう性格なのだとエマは懸念していた。
(あなたに一体何があったの......?)
晴陽は不器用だけれど優しい少年だ。思い返せば、いつも皆のために晴陽は動いてくれていた。
侑と共にせつ菜を説得し、同好会を再び結束させてくれたのも。
大きな負担になるであろう作曲を受け持ってくれたのも。
衣装製作のために服飾同好会に協力を頼んだのも。
きっと、全部。
そしてそんな晴陽の優しさを皆も知っている。日々の他愛ない会話で、嬉しそうに、楽しそうに晴陽と言葉を交わす皆の表情が、何よりの証明だった。
だからこそエマは頑張っている晴陽をいつだって支えてあげたい。癒してあげられる存在になりたいと、心に決めた。
(無理......しすぎないでね)
柔らかな日差しのようなその茶髪を撫でながら、彼の優しい寝顔をエマは見つめ続けていた。
アホみたいな前書き茶番失礼しました。ここまで読んでいただきありがとうございます。
そして報告が遅れましたが、活動報告にて『虹色DREAMER!』の オリキャラ紹介を掲載しています。キャラの簡単なプロフィールとビジュアルを公開していますので、よければそちらも是非見ていただけると幸いです。
そしてそしてお気に入り登録、感想などもお待ちしています。是非お気軽に。