虹色DREAMER!   作:UkiA

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 前回のあらすじ。
 
 晴陽、近江彼方の闇に触れる。
 


#31「天王寺、ライブやるってよ」

 

 

 

「ん?」

 

 自室での作業中。そばに置いていたスマホから通知音が鳴り、確認するべく手に取る。チャットアプリからの通知、同好会のグループチャットで天王寺が発言したようで、俺はそのメッセージに目を通す。

 内容を要約すると、明日は同好会が休みなんで遊びに行かないか、というものだった。場所は東京ジョイポリス。お台場では屋内のアミューズメント施設として人気のある場所だ。

 

「ジョイポリか......ま、予定もないしいっか」

 

 特に断る理由もないんで了承の旨を伝えると、天王寺からは、

 

『やったー!』

 

 といった、嬉しさを表すスタンプが送られてくる。

 面と向かった会話じゃ表情の動きが少ない天王寺だけど、メッセージなんかじゃこうしてスタンプや顔文字をよく使ってくる。それは表に出せずとも、天王寺が実際には感情豊かな女の子だという表れなんじゃないかって、俺は思う。

 

 ま、それはそうとジョイポリなんて久々だし、明日は思いきり遊ぶとするか。

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

「りなりー! そっち来てる!」

「わかってる」

 

 連携をとる宮下と天王寺の声が響くこの空間は、東京ジョイポリスのアトラクションのひとつである、VRを使ったシューティングゲーム専用のエリア。

 翌日の放課後になり、予定通りにジョイポリへやってきた俺。そして誘ってくれた天王寺に宮下、侑と歩夢の5人でこのVRアトラクションを遊んでいるところだった。

 

このアトラクションのルールは単純明快。タイムアップまで襲い来る敵を倒しまくって、スコアを稼ぐ。

 最初は敵の数も少なく、1発でも攻撃が当たれば倒せるくらいだったが、時間が進むにつれて難易度がどんどん跳ね上がっていく仕様で、今やとんでもない敵の大群が押し寄せてきていた。

 

「わわっ、どんどん来てるよ〜! 助けてぇ〜!」

「侑ちゃん、今行くよ!」

 

 そんな中、いつの間にか孤立状態の侑が、敵の攻撃に対処しきれず取り乱していた。それに気づいた歩夢がすぐさま侑の援護へ向かう。

 

「くっ、こっちもやばいな......!」

 

 同じようにみんなと分断された俺も、どうにか1人で持ち堪えてはいるものの、多勢に無勢。そのままじりじりと敵の軍勢に追い詰められ、俺は背後からも迫り来る敵に気づかず、反応が遅れてしまう。

 

「しまっ───」

 

 万事休すかと思ったその時。目の前にまで飛びかかってきた敵は一瞬にして消滅する。

 

「晴陽さん、大丈夫?」

「天王寺!」

 

 た、助かった......!

 援護に駆けつけてくれた天王寺のおかげで、なんとか九死に一生を得られた。

 

「わりぃ、助かった!」

「愛さんも助けに来たよ!」

「このまま突破口を作る。2人とも、援護お願い」

「おう!」「おー!」

 

 

 

 

 

「「楽しかった〜!」」

 

 VRアトラクションが終わってご満悦の侑と宮下。

 思ったより体を動かしたんで、少し休憩を挟むことにした俺たちはドリンクを片手に談笑を交わしていた。

 

「子供の頃に来たことあるけど、今はこんなアトラクションもあるんだね」

 

 長い間ここには来てなかったもんで、目新しいアトラクションの数々に歩夢も楽しさをあらわにする。

 

「2人ともすごく上手かったね!」

 

 さっきのアトラクションでの宮下と天王寺の腕前に侑が感心の言葉をかけると、宮下は嬉しそうに笑みを浮かべる。

 

「りなりーとは結構遊びに来てるからね!」

「ほんと、仲良いよなぁお前ら」

「りなりーと初めて会った日も、ここで遊んだんだよね〜」

 

 マジかよ......初対面で遊びに誘えるか普通? いや、宮下ならそんなことは屁でもないんだろうけどさ......

 

「こういうの得意なんだ?」

「ゲームは好き」

「そうなんだ!」

「歩夢も意外とゲーマーだもんな」

「もぉっ、そんなんじゃないよ〜! 空いた時間にちょっとやってるくらいだってば......!」

 

そうは言うけど、2人に負けず劣らずのプレイスキルだったけどな。飲み込みが早いんだろう。

 

「今日はあんまり都合合わなかったけど、同好会みんなで遊びに来たいなぁ!」

「うん。行きたい」

 

そんな侑の一言に、心なしか天王寺は目を輝かせているように感じた。

 

「あれ? 天王寺さん?」

「え?」

 

 突然、名前を呼ばれた天王寺は声のする方へ振り向く。そこには、同じ虹ヶ咲学園の制服を着た、女子3人組の姿があった。

 

「やっぱり天王寺さんだ!」

 

 3人組のうち、片側に髪を結えたサイドテールの少女が確信の声を上げる。

 

「友達?」

「クラスメイト」

 

 歩夢の疑問にただ一言、そう返した天王寺。別におかしいことは言ってはいないんだけど、なんだか余所余所しい言い方だな......表情もなんだか硬くなっている気がする。

 

 と、そこで3人組のひとり、眼鏡をかけた少女が何かに気がついて驚きの表情に変わる。

 

「もももっ、もしかして......愛先輩ですかっ⁉︎」

「ん? そうだよー?」

「あ、歩夢ちゃん⁉︎」

「えっ? は、はい......」

 

 眼鏡の少女は宮下に、そして一方で同じく歩夢の存在に気がついたサイドテールの少女は一気に詰め寄る。この反応......おそらく2人のファンなんだろう。

 

「ちょっと2人ともっ。いきなり失礼だよ、自己紹介くらいしなきゃ......!」

 

 興奮する2人の少女を引き止めるように、明るいロングヘアの少女の声が割って入り、申し訳なさそうに、2人は歩夢と宮下から一定の距離まで離れていく。

 

「お騒がせしてすみません。私は天王寺さんと同じクラスの、川井田(かわいだ)浅希(あさぎ)です」

若井(わかい)色葉(いろは)ですっ」

桑原(くわはら)今日子(きょうこ)です!」

 

 ロングヘアの子は川井田、眼鏡の子は若井、サイドテールの子は桑原とそれぞれ名乗ってくれる。

 合わせてこっちも、すでに名前は知られている天王寺たち3人はともかく、表舞台には立たない俺と侑は、同好会のマネージャー的存在として川井田たちに軽く自己紹介をしておいた。

 

 話は戻り、同好会メンバーのPVについて、若井と桑原は再び熱弁を振るう。

 

「スクールアイドル同好会のPV見ましたよ! 愛先輩、最高でした!」

「私も歩夢ちゃんのを見て、すっごくかわいいなって思って......ファンになっちゃいました!」

「おぉ、ありがとう!」

「直接感想言ってもらえるの初めてだから......嬉しい♪」

 

 顔を綻ばせる歩夢を見て、若井と桑原がさらに盛り上がりを見せる中、川井田は天王寺に話を持ちかける。

 

「天王寺さんのも見たよ。あのキャラ、かわいいしなんだか面白いよね!」

「うんうん。動きとかねー。ていうか、ああいうの作れるなんてすごいし!」

 

 天王寺のPVは他のみんなとは違って、天王寺本人ではなく天王寺が制作したキャラクターを用いて自己紹介をするという、スクールアイドルとしては一風変わった方向性の内容だった。だけど、キャラクターの愛くるしさやコミカルなアニメーションが視聴者には受けているようで、結果的に注目が集まってきているという。編集もバリバリに凝ってて、俺も初めて見た時は、こんなものまで作れるのかなんて驚いたな。さすがは情報処理学科というべきか......いや、天王寺のスキルが高いだけなのか?

 

 ともあれ、PVの宣伝効果がこうして実感できると、俺たちのモチベーションも上がってくるわけだ。

 

「PV、思った以上に好評みたいだな」

「うん! あんな風に言ってくれると、なんか私たちも嬉しくなるよね!」

「ああ。この調子で同好会のことを、いろんな人たちにもっと知ってもらえるといいな」

 

 傍らで、侑とそんな会話を交わす。学校でも声をかけられるようになったってメンバーもいるらしいし、この勢いに乗ってどんどん注目を集めていきたいところだ。

 

「あのー。ところでみなさん、もしかしてライブの下見に来たんですか?」

「......?」

「ライブ?」

 

 桑原の疑問に、何のことかと天王寺と歩夢は首を傾げる。

 

「ジョイポリスのステージでも、最近スクールアイドルがライブをやってるんですよ」

「先週は、東雲学院がライブをしてたみたいなんです」

 

 桑原と若井の補足で合点がいく。

 ジョイポリスにはステージも設けられていて、そこではショーが定期的に行われているらしい。

 ここのステージでは、プロジェクションマッピングと呼ばれる映像技術が使われていて、スクールアイドルのライブでも演出としても活用されているようだ。そして何より、ここは多くの人で賑わう施設だ。それだけ人の目につきやすいっていうのも、ここがライブ会場として適しているんだろう。

 

「早くみなさんのライブ、見てみたいです!」

「私も見たいです!」

「私も! ライブ、決まってるんですか〜?」

「まだそういう話はしてないな」

 

 同好会に期待を寄せる3人だったが、残念ながらライブの目処はまだ立っていない。

 確かにいい感じに知名度も上がってきてるようだし、そろそろライブも考えていい頃合いだとは思うけど、曲も振り付けも何もかもがまだ足りない状態だ。ライブをやるには、もう少し形を決めていかないと───

 

「やる」

「......え?」

 

 不意に発した天王寺の言葉に、思わず耳を疑う俺。

 

「私、ここでライブやる......!」

 

 ........................マジですか?

 

 

 




 
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