虹色DREAMER!   作:UkiA

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大変長らくお待たせしました───

「かすみんのアツいアイドル活動、始まりますっ☆」

中須さん、それ違うやつです......
 
 


#5「かわいいは正義......?」

 

 

 

中須の勧めで俺たちはスクールアイドル同好会(仮)の一員となり、早速活動が始まった。

 

しかしどんなことをするかと思えば、まずは活動場所の確保からだった。

......まあ、今まで使っていた部室は明け渡されていたらしく、使えなくなっているのだから当然と言えば当然だろうけど。

 

そんなわけであちこち駆け回って活動場所を探していた俺たちだが、どうにも良い場所が見つからず、頭を悩ませていた。

 

「ここも無理そうですねぇ......」

「思ったんだけど、なんでわざわざ学園の外なの?」

 

侑と同じことを俺も疑問に思っていた。学園なら活動できそうなところなんていくらでもあるってのに。

 

「かすみん、生徒会に睨まれているので、校内はちょっと活動しづらいのです......」

 

ばつが悪そうな顔で答える中須。

生徒会から睨まれてるって、一体何しでかしたんだよ......

 

とはいえ、ここまででいろんな公園や広場を回ってきたし、他に良さそうな場所というと俺には思いつきそうもない。

 

「うーん.........あっ!あそこなら...!」

 

 

 

侑の当てを頼りに、俺たちがやってきたのは東京湾近くの公園、その一角。

芝生と木々に囲まれ、広々とした石調仕立ての空間には、俺たち以外の人は1人もおらず、活動場所には打って付けだった。

 

「お〜!広いです〜!」

「ここなら人もあんまり来ないし、迷惑にならないでしょ?」

「はいっ、バッチリです!ここにしましょう!」

 

意気揚々として中須は石のベンチに鞄を置き、鞄の上にあるものを乗せた。

 

「じゃーん!」

「あれ、それって生徒会長が持っていったやつじゃ......?」

 

それ、とはスクールアイドル同好会のネームプレートのことだ。『かすみんの』という文字が後から書き足されてはいるが間違いない。

でも侑の言う通り、俺たちが初めて部室に来たあの時に生徒会長が持ってったはずだけど......

 

「かすみんが取り返してきました!.........無断で」

「え.........?」

「いや...無断なのかよ」

「だから睨まれてるんだ......」

 

軽率というか考えなしというか......そりゃ無断でそんなことすれば睨まれるのは当然だろ.........

 

「と、ともかく!今日からここで活動を始めますよ!」

「...具体的に何やるんだ?歌とかダンスの練習か?」

「それもありますが、まずはコレです!」

 

そう言って中須は自分のスマホを取り出した。そしてカメラアプリを起動するとスマホを侑に手渡す。

 

「これで何するの?」

「まずは同好会の宣伝も兼ねて、自己紹介動画を撮るんですよっ!」

 

紹介動画か......確かに、スクールアイドルとして知名度を高めるには必要なことかもしれないな。

 

「動画をアップして、いろんな人にかすみんと同好会のことを知ってもらって、あわよくば部員をゲットです!」

「へぇ...ちゃんと部員集めのことも考えてたのか」

 

正直アホの子だと思っていたが、満更でもないようだ。

 

「部長として当然ですよ!それにたくさん人がいれば、よりかすみんのかわいさが引き立ちますし!」

 

.....................やっぱ前言撤回。

こいつを少しでも見直そうとした俺がバカだったわ......

 

「あはは......」

 

浅ましさ全開の中須に、歩夢も苦笑いを浮かべるしかなかった。

 

 

 

......とまぁ、なんだかんだで動画の撮影は決行。侑が画面の録画ボタンをタッチして、中須に撮影が始まったことを合図する。

 

結構自信ありげみたいだったし、一体どんな自己紹介をするのか気になるところではあるけど...,

 

「やっほー☆みんなのスクールアイドル、かすみんだよっ!」

 

............うん。なんか、こうなりそうだなとは思ってはいたけどさ。

 

「かすみん、虹ヶ咲学園スクールアイドル同好会の部長になっちゃったんだけどぉ...そんな大役ぅ、かすみんに務まるかとっても不安〜......」

 

いや、そもそもまだ正式な部活にすらなってないから。

 

「でもでもっ、応援してくれるみんなのために日本一かわいいスクールアイドル目指してぇ.........頑張るよっ☆」

 

キャピキャピとしたポーズを次々と決めて締め括ると、撮影は終了。

その一部始終を俺たちはただぽかんとした表情で見ていた。

 

「どうでしたか?かわいくできましたか?」

「いや、かわいくってお前......」

「ちょっとやりすぎじゃないかな......?」

 

狙いすぎてて俺も歩夢も軽く引くレベルだった。

侑もあれをかわいいとは思えないはず───

 

「わぁ〜!!これがスクールアイドルの自己紹介!?ときめいちゃったよ〜!!」

「「えっ」」

 

興奮のあまり、侑が投げ飛ばしたスマホを歩夢が慌ててキャッチする。

しまった......侑の感性は俺たちとは少しズレてることを完全に失念していた。

 

「さすが侑先輩です〜!かすみんのかわいさをわかってますね〜!」

 

そんな侑に褒められて上機嫌になる中須。こいつらはちょっと手遅れかもしれない...

 

「では次、歩夢先輩の番ですよっ。今みたいな感じで願いしますね!」

「へっ!?むむむ、無理だよぉ!恥ずかしいって....!」

 

両手と首をブンブンと振りまくる歩夢。

 

「自己紹介で恥ずかしがってどうするんですか!スクールアイドルの基本ですよ!」

「で、でも......!」

「心配しなくても、歩夢先輩もかわいいので大丈夫ですよ!かすみんの次に!」

 

最後は余計だけど、中須の言うことにも一理ある。

これからスクールアイドルを始めるなら、これくらいは慣れておかないと、人前になんかとても立てそうにないだろうからな。

 

「上手くできるかはともかくさ、やるだけやってみたらどうだ?」

「ハルくんまで......」

「ほら、晴陽先輩もこう言ってることですし。やってみましょう!」

「うぅ.........わかったよ...」

 

歩夢が渋々といった感じで了承して、早速撮影が始まった。

 

「あっ、えっとぉ......虹ヶ咲学園普通科2年の、上原歩夢です......」

 

自己紹介を始める歩夢。しかしこっちもこっちで予想通りというか......声は小さくて歯切れも悪い。目線も下を向いてもじもじとしていた。

 

「わ、私...スクールアイドルをやりたくて...」

「もー、声が小さいですよ」

 

中須のダメ出しが入る。

 

「ご、ごめんっ。私!スクールアイドルやりたくて!!

「それは大きすぎですって」

 

再度ダメ出しが入ると、歩夢がわたわたとテンパってしまったため、一旦カメラが止まる。うーん......さすがにダメだったか。

 

「ファンのみんなが見てくれてるって思って、しっかりアピールしていかないとダメですよ?」

「ファンなんて言われても......」

「そんなんじゃ、スクールアイドルとして不合格ですね」

 

小さくため息をついて項垂れてしまう歩夢に、中須はきっぱりと手厳しい評価を言い渡した。

 

「あらら......まあ初めてだししょうがないよ」

「い、いきなりは無理だよぉ!」

「ふぅ、仕方ないですねぇ......じゃあ少しだけかすみんがコツを教えてあげます」

 

やれやれといった感じで中須。なんだろう......変な予感しかしない。

 

「まずは両手を開いて頭の上に」

「えっと、こう...?」

 

言われた通りに歩夢はポーズを取った。

頭の上にあるその両手は、どことなく動物の耳を表しているようにも見えるけど......

 

「そして語尾にピョンをつけましょう!」

「へ............?ピョン!?」

「うさピョン!」

「えええええっ!?」

 

歩夢の表情が驚愕の色に染まる。ここでまさかのうさピョンとは.........

 

「さあ、それで行ってみましょう!」

 

中須はスマホを歩夢に向けて強引に促す。その横で侑はキラキラと瞳を輝かせて期待の眼差しで歩夢を見つめていた。

 

窮地に立たされた歩夢は俺に助けを求めるような視線を送ってくる。

これはさすがに2人を止めないといけないんだろうけど......

 

「な、なあ...それはちょっと違うんじゃないか...?」

「いいえ!かすみんのかわいいに、間違いはありませんっ」

「歩夢のうさピョン...あゆピョンがまた見れるなんて...!」

 

うん、たぶんこれ止めんの無理だわ。

中須は言っても聞かなそうだし、侑に至っては耳に届いてすらいない。すまん歩夢。

 

「さぁ......!!」

 

スマホを構え、ギラリと目を光らせる中須。

最早どうにもならないことを悟った歩夢は、観念してきゅっと目を瞑ると───

 

「あ、歩夢だピョン...... 」

 

蚊の鳴くような声が聞こえた.........だが、中須はそれで満足するはずもなく。

 

「声が小さい!もう一回!」

「うぅ〜.........!あ、歩夢だピョン!!」

 

どうにでもなれと、半泣きになりながら声を張り上げる歩夢。

 

「もっとうさピョンになりきって!」

「うさピョンだピョン!!」

「ピョンに気持ちがこもってない!!」

「ピョーーーーン!!!!」

 

あゆピョンの悲痛な叫びが、清々しい青空へと響き渡った。

 

............ホントに何やってんだろう。

 

 

 

 

 

*****

 

 

 

 

 

「週末には動画をアップするので、ちゃんと自主練してきてくださいよ?」

 

歩夢にそう釘を刺しておく中須。

 

あの後、歩夢のライフが0になり、続行は不可能と判断して撮影は後日、改めることになったわけだけど.........

 

「かわいい怖いかわいいこわいカワイイコワイ.........」

 

隣に座っている歩夢は、魂が抜けたかのように目が虚ろになったまま、ぶつぶつと呪文のようにそれだけを繰り返していた。怖えよ......

 

「あー......これ食うか?少し食べちゃったけど」

 

少しでも機嫌を直してもらおうと、途中で買ってきたクレープを差し出してみるも、反応はない。

はぁ......仕方ない、しばらくそっとするしかないな。

 

そう思いながらふと、自分の手元を見直すと.........持っていたはずのクレープがない。

思わず歩夢の方を見ると、もそもそと俺のクレープを食べていた。い、いつの間に......?

 

「かわいいって大変なんだねぇ......」

「アイドルの基本ですからね」

 

俺が狐につままれたかのような感覚に陥っている間に、侑と中須はそんな会話をしていた。

 

「でも、せつ菜ちゃんはかわいいっていうより、かっこいいって感じだったなぁ」

「せつ菜先輩を知ってるんですか?」

「うんっ。なんたって、私がスクールアイドルにハマったきっかけだからね!」

「なるほどぉ...そうだったんですね」 

「そういえば───」

 

ここで俺は一つ、気になることが頭に浮かんだ。

 

「中須は、なんで優木せつ菜がスクールアイドルを辞めたのか知ってるのか?」

 

同じ同好会にいたんだから何か知ってそうだけども。

すると、中須は表情を曇らせて俯いてしまう。

 

「絶対とは言えませんが......たぶん、かすみんと揉めたのが原因だと思います」

「揉めた......?何があったんだ?」

 

一瞬、中須は躊躇う素振りを見せつつも、2人に起きた出来事を掻い摘んで説明してくれた。

 

まず、俺たちが初めて優木せつ菜を目にしたライブ。あのライブには元々グループとして、中須たち同好会メンバー全員で出る予定だったらしい。

そして以前からソロアイドルとして経験豊富だった優木せつ菜の指導の下、ライブに向けて練習が始まった。

 

しかし、ある日中須と優木せつ菜の2人が衝突してしまった。それは中須が思い描いていたスクールアイドルと、優木せつ菜のそれは全く別のものだったからだ。

噛み合わない2人の方向性と、ハードな練習の日々でピリピリしていたせいもあってか、お互い強い口調で言い合ってしまったらしく、メンバーの士気は下がり、そのまま活動休止になってしまったという。

 

「そんなことがあったんだな......」

 

思い返してみればだ。同好会のライブだっていうのに、あのライブには優木せつ菜1人しか出ていなかったというのもどこか変ではあった。

 

「んー、要するにかすみちゃんもせつ菜ちゃんも、それぞれ届けたい想いがあるんだね」

「それはもちろんですよ!スクールアイドルにとって、応援してくれるファンのみんなは一番大切ですから!」

「おぉ、アイドルみたいなこと言うじゃん」

「アイドルみたい、じゃなくて!アイドルなんですぅー!」

 

ぷくーっと頬を膨らませる中須。こいつの表情がコロコロ変わるこの様は、見ていてちょっと面白かったりする。

 

「そういうわけですから、ファンのためにもかすみんは、いつもかわいいスクールアイドルでいなくちゃ───」

 

すると、中須の言葉に反応したように歩夢が小さく呻き始める。

 

「かわいいって何......かわいいって難しいよ......」

 

落ち着いてきたかと思えば、またさっきの調子に戻ってしまった。

『かわいい』という単語を聞くだけでこの有様だ。重症だな、こりゃ.........

 

「もうっ、そんな調子じゃ、ファンのみんなにかわいいは届きません......よ......?」

 

ん....?なんだろう、なんか中須の様子が変だな。

 

「かすみちゃん?」

 

その異変に侑も気がついたのか、不思議そうに顔を覗き込んだ。

 

「...き、今日はもう解散しましょう!また明日の放課後、よろしくお願いしますね!」

 

どこか慌てた様子でそう言い残すと、中須はそそくさと帰っていった。

あいつ、急にどうしたんだ?

 

「...かすみちゃん、どうしたんだろ?」

「さぁな......」

 

中須の様子も気にはなるが、それ以上に中須から聞いた以前の同好会の状況が、俺の心に引っかかっている。

 

なんか......似てるな。昔の俺と......

 

いや、あの時のことなんか今更思い出してどうすんだ.........終わったことだし、今の俺にはもう関係ないだろ。

脳裏にチラついた苦い記憶を振り払おうと、拳にグッと力が入る。

 

「ハル.........?ハルってば!」

「っ!」

 

俺を呼ぶ侑の声で、俺の意識は引き戻される。どうやら考え事をしているうちに何回か呼ばれていたみたいだ。

 

「大丈夫?なんかボーッとしてたけど......」

「あ、あぁ。あちこち歩き回って疲れちまったからな...」

「私も疲れちゃったよ。早く帰ろっか」

「...そうだな」

「歩夢も帰るよ。ほら、立って立って」

 

未だに落ち込んでいる歩夢を、侑が介抱するようにして2人は歩き出した。

 

なんか嫌なこと思い出したせいで、心がモヤッとしたけど.........そんなことは気にしていられない。

俯いた視線を真っ直ぐにして、俺も2人の後ろに付いて行った。

 

 

 




 
 
最近、他の方たちの小説を読み漁るようになり、ますます筆を取るのが遅くなってしまいました......面白いからしょうがないネ...!

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