不死身の少女は未来を掴み取る   作:からからしき

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特級

自分自身が優れていると思ったことはなかった。

呪術界の御三家と呼ばれる名家に生まれて、術式どころかろくに呪力を持たないことで落ちこぼれとされた。

それでも、高専で学んで、実力をつけた。

三級ぐらいなら余裕で払える程度にはなった。

それで、少し思い上がったかもしれない。

 

「あ、ああ、あァ!」

 

「くっ……!!」

 

術式も呪力操作もろくに行えない中学生の女子に、追い込まれるなんて、思ってもいなかった。

 

「オラッ……あ」

 

首にモロに蹴りが入る。手加減しているとはいえ、呪力で守らなきゃ死ぬ。

呪力の流れなんて感じ取れやしないが、首の骨が砕けた音が足に伝わる。

 

(マズイ、やっちまったか?)

 

殺しはマズイ、と思うが、後悔する間もなく少女の拳が顔面に飛んでくる。

 

「だから……なんで、生きてんだ!?」

 

これが初めてではない。殺してしまったか、という手応えの度に、まるで()()()()()()()()攻撃を仕掛けてくる。

パンダはくっついていた呪霊の対処でいないし、死にもの狂いで攻撃してくる少女を拘束するのは少しばかり難しい。

 

「そ、こぉ!」

 

「ぐっ、ぶっ……」

 

そしてもうひとつ厄介なのは、()()()()()()()()()かのような時折挟まれる渾身の一撃。

呪力操作が覚束無い癖に、この時だけはきちんと呪力を乗せたパンチを繰り出してくる。

 

 

 

「あ……」

 

積み重なったダメージは、一瞬の硬直を呼び、完全にフリーな瞬間が生まれた。

そこに、今日一番の攻撃。

喰らえば意識を失うのは明白なほど、完璧な一撃だった。

 

「ほいっと」

拳と自分の顔面の間に、間の抜けた声と共に掌が滑り込む。

拳は掌に当たる寸前の所で止まり、拳がその平手を撃ち抜くことは無い。

逆立てた白髪、包帯で隠した目元。

見間違うことなどありえない。

一人で人類を滅亡させることができる規格外。誰がなんと言おうと、どんなに性格が悪くても揺るがない『最強』

 

「なんだよ悟、結局くるのかよ」

 

五条悟がいた。

 

「パンダ君に頼まれちゃってさ、それに───」

 

六眼とかいう呪いを見通す眼で、涙を流しながら拳を振るい、突然の乱入者に目を丸くする少女を見据え

 

「おかしな女の子、っていう話だったけど……これは、確かに変だね。天与呪縛とか呪言とかパンダとかより、よっぽどおかしい。君、混ざってるね?」

 

「は……?なんですか、あなたは──ッ────」

 

ピン、と額を小突くと少女は気を失った。

 

「呪物と言っていいものか分からないけど、このまんまだとこの子処刑か実験台だろうね、真希ちゃん」

 

見透かすように笑うのが、本当にイラつく。

 

「六眼ってのは心まで読めんのか?」

 

「いやぁ、教師の勘だよ」

 

(いい子は辞める、か)

 

「おい悟、私はこいつ気に入った」

 

「お?男子三人に囲まれてハーレム気分かと思ったら、寂しかった?」

 

「うるせーな、そもそもパンダをそうやって数えんのかお前は」

 

「いやいや、冗談だって」

 

「いいから、そいつのこと何とかしろ」

 

「私情?」

 

「ああ」

 

私だって、たまには弱音吐ける奴が欲しいんだよ。

 

「私の私情(エゴ)だ。そいつには付き合ってもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういう訳で君、これから沢山死んでもらうと思うよ」

 

「いや話の流れ」

 

え?あの怖い女の人が気に入ったって?サンドバックとかそういう意味で?

そもそも死ぬって何?しかも沢山って?え、どんな犯罪者でも一度死刑執行されて失敗したらもう死刑にはならないのに?

 

「君の一族はくだんとか人魚とか、本気で妖怪を信じていて、その肉を食べて能力を得ようとしたの、八百比丘尼って知ってる?」

 

「あの……人魚食べて何百年も生きたっていう?」

 

「そーそー、後はくだん。人の顔した牛でね、死ぬ間際に未来を予言して死んでいくらしいんだけどね」

 

なんでこんな話をされているんだろう。

 

「君、その二つを食べて、死の間際に未来を視て人魚の力で生き返る、一種の妖怪みたいになったのよ」

 

「は?」

 

「多分見た方が早いよ。実は君が寝ている間に試したから、不死なのは確認済み。ほい」

 

目の前の不審者が指を向けると、自分の首の肉が一部、抉られたのがわかった。

 

「いっっっった、あ、あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ!?」

 

夥しいほどの血、血、血。

視界が、服が、紅く染まる。

瞬間、視界が変わる。

どこまでも続く暗闇のなか、無数の大小のモニターのようなものが浮いている。その中には様々な情景のものがあり、一番大きなのは蹲る私とそれを見下ろすさっきの不審者。次に大きいのが殴りかかる私と不審者。

一瞬前の痛みを思い出し、ふつふつと湧き上がる怒りに任せ、殴りかかる情景のモニターに触れる。

次の瞬間、モニターで見た光景と同じ状況が再現されるが、顔の寸前で見えない壁に当たったように拳が止まる。

 

「おう元気元気、しかし首吹っ飛んで痛いで済む辺り、やっぱり痛みには鈍いみたいだね」

 

「な……え?」

 

先程抉れた首元を触ると、傷跡も残さず消えていた。

血や少しほつれた中学の制服を見る限り、なかったことではなさそうだが。

 

「で、どう?未来見えた?」

 

「未来……見えた、というより、何個かある選択肢の中から、選びとったみたいな」

 

先程の光景を、できるだけ伝えようとする。

 

「へぇ、くだんは悪い未来ばかり予言すると言うけど、これから死にゆくのだから世界に少しで呪いを残そうとするのかもね、悪い未来をわざわざ選びとっているんだから。ま、それはより一層、ウチに来てもらう理由ができたね」

 

「ウチ?」

 

「東京都立呪術高等専門学校。呪いのお勉強する所だよ、駆ちゃん」

 

 




六眼で確認したから信頼したってことで、何卒。
五条先生は生徒を傷つけたりしないなんて、分かってるんです!ごめんなさい!
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