「っかぁ~!」
麦茶が、旨い。
ただひたすらに麦茶が旨い。
それが飛電或斗の感想だった。
無事にライブも終わり、その打ち上げの最中唐突にそう思った。
今までの緊張もあっただろう。
だが、それ以上にうまく行ったことの安堵が彼をそうさせていた。
或斗は千早と練習した三曲だけではなく、一曲追加でこっそり練習していた。
このことはポラリスのメンバーにしか知らせていない。
まず、隠し通すのが大変であった。
このサプライズは誰にも知られたくないものだった。もちろんポラリスのメンバーには知らせてあるが、逆に言えばポラリス以外は知ってはならないものなのだ。だからポラリスのメンバーにも厳重に注意してもらいながらこの一週間を過ごしてもらった。
もちろんこのことはボイトレであった千早もしらないことだ。
「全く…普通そういうのはちゃんと事前に連絡しないと…」
肝心の千早は頭を抱えて唸っていたが。
だが、なにはともあれライブは大成功だったのだ。
それは揺るぎようのない事実。
今はその事と―――異世界のアイドルの護衛に全神経を注いでおけばいい。
量産艦の暴走も収束し、知らないところで起こっていた千早達の
なんと、ボイトレの一週間の間に偽物を大体排除していたんだとか。
「…なんでさ。」
ただ、その偽物はμ兵装を用いたライブで消滅したらしい。
おそらくはライブ中も"狩り"を行っていたディケイド―――門矢士が消滅させたのだろうが。
(…まだ、僕が見ていない力―――Wとかオーズとか隠し持ってんだろうなぁ…。)
打ち上げ会場の端っこでそんなことを考えながら麦茶を呷る。
確かにライブは成功したがまだクイーン・エリザベスに依頼された「護衛」は完了していないのだ。
いつでもセイレーンが襲来してもいいようにゼロワンドライバーと新たなキーを隠し持っている。
千早やエンタープライズ、瑞鶴に見つかったら没収のうえに無理矢理打ち上げ会場に連れていかれるだろう。
だが、外見は少年でも中身はすでに習熟しているのだ。
つまるところこの男、たくさんの異性に囲まれることに慣れていないのである。
ぶっちゃけ、母港ではほとんど自室に籠っていた。
同じお籠り族であるロング・アイランドやル・マラン、綾波とは仲良くなったが、そこまで交友関係が広いわけではない。
そんな男が少女たちが楽し気に語り合う打ち上げに混ざるなど夢のまた夢なのである。
「…おい、お前そんな所で何やってんだ?」
「…あはは…その…物凄く輪に入りにくいというかなんというか…」
「…まぁな。少なくともおれはあんなところでキャピキャピした中に入る自信なんてない。」
そんなところに士がやってきた。
どうやら士もあの雰囲気にいたたまれなくなって打ち上げ会場の端っこにやってきたようだ。
士は片手に持った瓶を開けると持ってきた紙コップに注いでいく。
「…無事にライブは終了したんだ。今くらいは気を抜いたって許されるさ。」
「そういうもんなんですか?」
「ああ。」
士はどこからともなく自分の紙コップを取り出すとまたその紙コップに注いでいく。
そうしたときだった。
「あー!或斗ちゃん居たー!」
「…亜美さん!?真美さん!?どうしてここがッ…!」
「…見張りは交代の時間だ。楽しんで逝って来い。」
「か…漢字が違うッ!これ、僕生きて帰れるんですかーっ!?」
いつの間にか接近していた双海姉妹に捕獲されてしまう。
そのまま麻袋を被せられると担がれてそのまま誘拐されてしまった。
そんなわちゃわちゃした様子を見て、士は微かに微笑んでいた。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
「あ、ようやく見つかったんだね!」
「全く…打ち上げを楽しまないなんて…。」
麻袋から解放された或斗の目の前には異世界からやってきたアイドル達が勢揃いしていた。
よかったと言った感じで微笑む春香と呆れたように見下す伊織の顔が目の前にある。
さらに、ポラリスの面々も、優しい顔で或斗を見つめていた。
が、その顔は往々にして険しい物であった。
「…なんなんですか…?」
「……聞いたわ。貴方の
「…これは克服しないといけないわね…?」
ずいっと顔を近づけるあずさと律子。
一体誰が自分がお籠り族だと嘯いたのか。
「まさか…。千早姉…?」
ばつが悪そうに視線を逸らす千早。
これはもう確定した。
「……よし、逃げよう!」
「あ!」
アイドル達の隙間をするりと抜けると一気に会場外にむけて駆け出す或斗。
少なくとも今はまずい。
今捕まったら確実に耐性が出来るまで付き合わせられる。恐らくそんなことになったら掲示板の住人が漏れなく煽り倒しに来るだろう。
少年は外で遊べなんていう言葉があるが、ここでは色々と目に悪い。
性癖が歪みそうになってしまう。
――だから捕まることは少年の精神が死ぬことを示すのだ。
しかし、のんべんだらりとした生活を求めた或斗の逃走は意外な人物の裏切りで幕を閉じる事になる。
「…いた!確かに千早の言う通り逃げてきたな!」
「流石に生身でKAN-SENである私達には勝てないこと…分かっているよね!」
「エンター姉に瑞鶴姉!?」
そう、二人の姉はどうやら千早側についたようだった。
これは―――詰んだ。
どうあっても飛電或斗のお籠り生活は幕を閉じ―――そして、慣れない少女たちとの関係を持たざるを得なかったのである。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
879:ヘルライジング転生指揮官
【悲報】ワイ、しばらく
880:名無しの転生指揮官
は?
881:名無しの転生指揮官
は?
882:名無しの転生指揮官
よし、殺そう。
取り敢えず我王砲でも撃っとくー?
883:カードゲーマー転生指揮官
千早達はどうしたの?
884:ヘルライジング転生指揮官
帰った。
オーロラカーテンですうっと。
でもあみまみとかちょくちょく遊びに来てるんですけど…?
(オーロラカーテンで帰るアイドルたちの画像)
(アルバコアに不意打ちサプライズを実行する亜美と真美の画像)
885:決闘蟹転生指揮官
どういう…ことだ…?
886:依存転生指揮官
確かに二枚目の日付が後だ…。
887:プリズム★アトラ転生指揮官
あれー?
888:名無しの転生指揮官
えっと…?
889:ヘルライジング転生指揮官
俺が引き籠ってないか確認するために毎日千早姉共々様子を見に来るようになりましたぁ!
おのれディケイドォォォォ!
890:名無しの転生指揮官
どんだけ引き籠りたいんだよイッチは…
891:ヘルライジング転生指揮官
だってブレマートンさんやボルチモアさん達はめっちゃ距離が近いしなんなら当たってるしリノ姉はめっちゃ新作ガジェットを俺に使わせようとしてくるし長門はコミュ障だし愛宕さんは拘束しようとしてくるし隼鷹はめっちゃ「オサナナジミ」連呼してくるしジャベリンはスキンシップが物凄いしウォースパイトさんは物凄い目で見てくるし龍驤に至っては毎日変身してくれとせがんでくるしと思ったら今度はビスマルクさんには非常時以外に変身を禁止されるしシュトラッサ―さんは管理しようとしてくるし…。
892:名無しの転生指揮官
これがアークの影響ですか…。
893:名無しの転生指揮官
…これ多分皆良心で動いているよね…?
894:名無しの転生指揮官
やはりディケイドの仕業か…。
895:名無しの転生指揮官
ええ…?
896:名無しの転生指揮官
…でもこれは引き籠りたくもなるわwww
897:名無しの転生指揮官
要するにイッチはあれなんやな。
ここのKAN-SENは距離感を謝っていると言いたいんだな?
898:名無しの転生指揮官
あぁ…そっか外面ショタだけど内面おっさんだもんな…。
899:名無しの転生指揮官
イッチもしかして前世童貞だった?
900:ヘルライジング転生指揮官
35年間童貞は守ったが自分の命は守れなかったよ…。
901:プリズム★アトラ転生指揮官
世知辛い…。
902:名無しの転生指揮官
まぁそれはイッチが克服するしかない…www
903:名無しの転生指揮官
身も心も少年に戻るんだ!
904:名無しの転生指揮官
がんばれイッチ!
905:名無しの転生指揮官
負けるなイッチ!
906:名無しの転生指揮官
負けそうになったら言え!
907:名無しの転生指揮官
でもやっぱり女の子に囲まれて生活できてつらいだなんて…さてはイッチホモだな?
908:ヘルライジング転生指揮官
俺はホモじゃねぇ!
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
打ち上げが終わり、もろもろの処理も終了したのはライブが終わった一週間後だった。
そして、それが終わるという事は千早達がこの世界に居る理由が無くなったというのと同義である。
そしてついに別れの時がやってきた。
「…
「うん。
だが、別に会えなくなってしまうわけではない。
またどこか、きっとどこかでまた出会えるだろう。
この世界で前を向いて生きる限り、きっといつかまた出会える。
そんな希望があるから湿っぽい別れの言葉は不要だった。
一人は大切な事を教えてくれた者に感謝を込めて。
一人は大切な事を思い出させてくれた者に感謝を込めて。
そして異世界のアイドル達は彼女たちが居るべき場所へと帰っていった。
そして数日後―――。
「こんなものじゃこのアルバコアは驚かせられないよー!」
「「そんなー!?」」
双海姉妹の「サプライズ」をアルバコアが「サプライズ」し返すという謎の光景が繰り広げられていた。
「…まるで意味が分からんぞ!?」
「まぁ、そういう反応するよな…。」
何故、異世界に帰ったはずの双海姉妹がこの母港に居るのか。
何故、門矢士がこの世界に居るのか。
その答えは至極簡単で単純だ。
「…オーロラカーテンがこの世界にしか移動できなくなった。」
「…あぁ。あの銀の幕…。」
「やれやれ…。オーロラカーテンの移動先の決定権は俺にあるはずなんだがな…。」
そうぼやく士。
とにもかくにもオーロラカーテンがこの様では帰るに帰れないらしい。
「…こういうわけだ。これからもちょくちょく様子を見に来る。ま、ちゃんと克服しとけよその引き籠り癖。」
「…おのれ士さん。」
こうして或斗達の母港に新たな仲間が加わった。
彼女たちはこれからも或斗のよい隣人であり、友人となるだろう。
既に母港になじんだアイドル達を見て、士はふっと笑う。
(…もしかしたらこの世界は…破壊せずに済むかもな。)
そして、一人海岸へと足を向けるのだった。
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
930:ヘルライジング転生指揮官
【悲報】オーロラカーテン壊れる【おバカディケイド】
931:名無しの転生指揮官
ど…どういうことなの…?
932:名無しの転生指揮官
まるで意味が分からんぞ!
933:決闘蟹転生指揮官
もしかしたら鏡面海域が一枚噛んでるかもしれないな
934:名無しの転生指揮官
ああ。あれも異空間を作り出すものだからか。
いや、どういうこと?
935:名無しの転生指揮官
とりあえずセイレーンのせいにしとけばOK?
936:名無しの転生指揮官
>>935
OK!(ズドン!)
937:名無しの転生指揮官
ええ…?
938:名無しの転生指揮官
…待てよ?これ、アイマスキャラがアークの影響受けるんじゃ…?
939:プリズム★アトラ転生指揮官
あっ…(察し)
940:名無しの転生指揮官
あっ…(察し)
941:ヘルライジング転生指揮官
そこは士さんが大丈夫って言ってたから大丈夫でしょ。
942:名無しの転生指揮官
ええ…?
943:名無しの転生指揮官
どういうことなの…?
944:名無しの転生指揮官
さあ…?
登場人物紹介
・士
オーロラカーテンが逝かれた。
内心めっちゃ焦ってる。主にあの怪盗が来ないかどうかとか。
・765プロの面々
よく遊びに来るようになった。
もしかしたら他のキャラも出るかもしれない。
・或斗
実はお籠り族だった。
アイマスキャラの準レギュラー入り。
この回でとりあえずアイマス編は終了です。