桜は散らず、奇跡の少女と世界を渡る 作:タイラー二等兵
「我、聖杯に願う……」
洞窟に彼の声が響く。
「美遊がもう、苦しまなくていい世界になりますように。
優しい人たちに出会って……
笑いあえる友達を作って……
あたたかでささやかな幸せをつかめますように」
彼がその願いを言い終えると、
背を向けて歩き出した彼を目で追うと、その先には黄金の鎧を部分的に纏った女性がいた。彼女は、アンジェリカ。エインズワースのドールズのひとり。そしておそらく、彼女が
わたしはこの行く末を見届けたかったけど、それは適わなかった。何故なら、わたしの意識はそこで途切れてしまったから……。
気がつくとわたしは、洞窟でひとり横たわっていた。辺りを見渡しても、
わたしは恐る恐る洞窟を抜けて、そして違和感を感じる。……木や草が芽吹いている?
慌てて柳洞寺の階段まで出て駆け下りて、目の前の光景に驚いてしまった。そこには生活感のある家が並んでいたのだから。
そういえば、と、柳洞寺の階段が綺麗だったことを思い出す。先輩とキャスター使いのドールズが戦った後がないのもそうだけど、この階段は毎日誰かが掃いているんだろう。とても綺麗に整備もされてる。
わたしは動揺しながらも、一歩ずつ歩き始める。坂を下る途中で街を見下ろすと、本来あるはずの、五年前に出来た大きなクレーターがない。海岸線も随分と近い。
そしてわたしは確信した。ここは、わたしが居たのとは別の世界だって。
おそらく、先輩の願いはあの世界では叶えられないと判断した聖杯が、美遊ちゃんを、そしてその傍らに居たわたしを、この世界へと送ったんだ。美遊ちゃんが幸せになれる世界へ。
でも、それなら美遊ちゃんは? ……もしかして、こっちへ来るタイミングがずれてる?
わたしはまず、この世界に魔術があるのかを調べることにした。
とは言っても、わたしには魔術の知識はほとんど無い。わたしが引き取られた家では、魔術については一切教えてはくれなかったし、みんなが死んだ後もエインズワースから、僅かばかりの初歩的な魔術と聖杯戦争についての最低限の知識を教わったくらいだ。
だから、わたしに出来たのは。
「……あった」
記憶を頼りに辿り着いたのは、遠坂の家。ここ、冬木の
……やっぱり。慣れない解析魔術で、それでもわかったのは、この家に結界が張られていること。つまりこちらの遠坂も魔術師で、おそらくは
情報が得られたわたしは、遠坂の家をあとにした。出来るだけ周囲に、わたしという存在が知られないように。
……とはいえ、これからどうすればいいのだろう。わたしには住む場所も衣服も食事も、手に入れるすべがない。
まずは、何か仕事を見つけなければ。でも、その為には戸籍も必要だろう。……魔術で役所の職員を操って、戸籍を偽造する? わたしの拙い魔術で、そんなことが出来るのだろうか。でも、やるしかない。
そのあとは、仕事と住む場所を見つけて……。うん、結構やることは多い。それでもひとつずつ片付けて、ある程度落ち着かないと、美遊ちゃんを捜すことも出来ないんだから……。
わたしがこちらに来てから、およそ二週間が経った。戸籍の偽造も何とかなり、ヴィラ・ローサ深山というアパートを借りた。大家の春原輝美さんは優しくしてくれて、何だか他人の様な気がしない。
仕事はマウント深山のスーパーでのパートと、
そして、どうしようかと悩んでいたある日のこと。
「さ…、間桐さん!?」
自身に認識阻害の魔術を施し、伊達メガネをかけてゼブンのレジ打ちをしていたわたしに、わたしの本当の名前を呼ぶ人がいた。そちらに視線を移し、一目見てわかってしまった。……もう、五年も前に顔を合わせたのが最後だというのに。
遠坂凛。御三家の一つ、遠坂家の今の当主で、冬木の
……そう思ったら、少し心が落ち着いた。
「……遠坂さんですね? もう少しで休憩なので、少々お待ちください」
「な、ちょ……」
何か言い返そうとする
休憩に入り、わたしは遠坂さんと近くの路地裏に入り込む。
「ちょっと、間桐さん! これってどういうことなの!? 髪の毛まで染めて!」
開口一番、遠坂さんは言った。そう、今のわたしは髪を染めている。さすがにあの髪色は目立つので、明るいブラウン系になるようにしたのだ。
「あの、すみませんが、わたしは間桐桜さんではありませんよ?」
「……は?」
遠坂さんは、それは間の抜けた顔で、間の抜けた声を発していた。
「わたしは最近、こちらに移り住むことになった魔術師で、
「え、でも、桜にそっくり……」
驚きすぎて、思わず名前を言ってしまう
「はい。わたしもこちらに来てビックリしました。それで、同じ顔の人物がいると色々と噂も立つと思って、普段は弱い認識阻害をしているんですよ。わたしの拙い魔術では、魔術師の方には効果はないみたいですが」
わたしは、魔術師に出会ったときのために考えていた設定を、遠坂さんに話した。実際、その様に生活している理由は、あながち嘘でもない。
「そ、そう……。そういえば、桜は魔術の知識がほとんど無かったわね……」
独り言ちる遠坂さんの言葉を聞いて、やっぱりこっちのわたしも、魔術から遠ざけられていたのだと確信する。この一点に関してだけは、エインズワースに感謝しよう。
「ところで遠坂さんは、桜さんと仲がいいんですか? 先程から名前で呼ばれてますが」
「えっ、あ、いや、それは……! そ、そんな事より、貴女! 余所から来たのに、何故わたしに一言もなかったのかしら? わたしの事を知っていたのなら、当然遠坂が冬木の
半ば誤魔化すようにわたしを責める遠坂さん。でも、わかってるのだろうか。
「あの、何度かそちらにお伺いしたんですが、ずうっと家を空けていらして……」
もちろん、髪を染めた後のことだ。
「あ。わたし、数日前に一時帰国したばかりだった……」
ねえさああああん! わたし、悲しいですよ!
「そ、それでは改めまして。わたしは桜谷実枝。歴史の浅い魔術師一族の落ちこぼれにして、最後の一人です」
内心の動揺を隠しながら自己紹介をするわたし。もちろん、こういった時のために予め設定していたものだ。
「……最後の?」
「はい。大きな事故に巻き込まれて、わたし以外は家族全員亡くなりました」
これは、本当のこと。わたしの家族は、間桐も遠坂も五年前の、第四次聖杯戦争の事故で亡くなってしまったのだから。そう……、姉さんも。
「……そう。悪かったわね」
事務的な口調で言う遠坂さん。けれど一瞬、跋の悪い表情をしたのを、わたしは見逃さなかった。
その日の夜。玉子が無くなっていることに気づいたわたしは、近くのコンビニ……バイト先とは別の……に向かっていた。すると視界の端に、白い影が映り込む。
……女の子? こんな夜遅くに?
それは新都の方へ走っていく、小学校高学年くらいの銀髪の少女だった。気がついたらわたしは、その少女のあとを追っていた。
……本当は声をかけた方が良かったんだと思う。だけど、この少女はこんな真夜中に、どこへ向かっているのか。わたしはそれが気になってしまったのだ。
少女を追いかけること数分。未遠川、冬木大橋の袂辺りまでやって来た。そこで目にしたのは、いつの間にか変わった衣装に着替え、遠坂さんと会話するあの少女と……。
「……美遊、ちゃん?」
そこには金髪の女性と会話をしている、美遊ちゃんの姿が。思わず呟きを漏らしたわたしに、四人の視線が注がれた。
「あ……」
一瞬、美遊ちゃんの目が大きく見開かれる。……あ。そういえばメガネこそかけてるものの、認識阻害の術、解除したままでした。これでは
「あんたは桜谷さん! なんでここに!?」
と、我に返った遠坂さんが、わたしに声をかけた。
「たまたまなんですけど、夜中に女の子が走って行く姿を見たので、気になって追いかけてきたんです。
それよりも遠坂さん達こそ、こんな夜中に小さい子を連れて、何をしているんですか?」
わたしが努めて冷静に質問を返すと、遠坂さんは数秒ほど考え込み、そして言った。
「そう、ね。いっそのこと、貴女も巻き込もうかしら?」
「ちょっと、
金髪の女性が、流暢な日本語で引き止めようとしている。おそらく、神秘の秘匿の為だろう。
「彼女は一応魔術師よ」
「え?」
遠坂さんに言われて、彼女は少しおどろいた顔でわたしを見る。
確かに、わたしが魔術師らしくないのは自覚してますけど。むしろ根源を目指していないので、魔術使いの方が正しいのかも知れませんし。
チラリ、と遠坂さんが美遊ちゃんを見る。そして金髪の女性が、得心がいったと言う風に頷いた。
ああ、そういう事ですか。
確かにわたしは、「美遊ちゃん」と口走ってしまった。なら当然、その関係性が気になるはずです。ちょっと、迂闊でした。
「そうですわね。魔術師なら追い返すより、こちらの監視下に置いた方がいいかも知れませんわね。下手に探られるよりも対処がしやすいですし」
金髪の女性は尤もらしい理由を述べる。いえ、それも理由の一つなんでしょう。だけどおそらくは、美遊ちゃんに本当の理由を悟らせない為だと思います。
美遊ちゃんは頭はいいのだけど、あまり他人と接していなかったせいか、心を汲むのは苦手なんでしょう。遠坂さんの視線には気づいていたみたいですが、その意味までは読み取れなかったようですね。
「それではまずは、自己紹介をさせて戴きますわ。
「候補でしょ! わたしとあんたは次期主席候補!」
「ああら、
「……ほう? たかがハイエナ魔術師がやろうっての?」
……なんでしょう。二人が[あおいあくま]と[あかいあくま]に視えてしょうがないんですけど?
とりあえずわかったことは、二人は犬猿の仲だという事ですね。
『二人とも、ケンカしてる場合じゃありませんよー?』
『お二人は、何故わたし達に見限られたのか理解していないものとお見受けします』
えっ? 美遊ちゃんと銀髪の子が持ってるステッキが、喋った!? 魔術礼装、なんですか?
「そう、ですわね……」
「確かに、任務遂行が優先ね」
二人とも、気持ちの切り替えが早いです。
「わたしはもう自己紹介を済ませてあるから……、イリヤ、貴女の番よ」
「ええっ、わたし!?」
遠坂さんに名指しされて、先程の銀髪の少女が驚きながら、自身を指さしている。
「えっと、わたしはイリヤ。イリヤスフィール・フォン・アインツベルンです。なんかこのステッキに巻き込まれて、魔法少女してます」
『このステッキ呼ばわりはヒドいですねー。ルビーちゃんは最高位の魔術礼装ですよ?
というわけで、わたしはカレイドステッキのマジカルルビー。部分的にですが第二魔法を扱う、正真正銘の魔法のステッキです』
第二魔法……。確か[並行世界の運用]でしたね。まさにわたし達が聖杯によってこちらへ来たことこそ、その第二魔法の一端です。
「……わたしは、美遊・エーデルフェルト」
エーデルフェルト……。ルヴィアさんと同じ
『わたしはマジカルサファイアと申します。ルビー姉さんの妹です』
魔術礼装にも姉妹ってあるんですね。驚きです。
さて、次はわたしの番ですね。
「わたしは桜谷実枝。拙いですが、魔術師です。最近こちらへ来ました。
この街にはわたしとそっくりな方が居るようなので、普段は認識阻害の術をかけて生活してます。だから街でこの顔を見かけても、迂闊に声をかけないでくださいね?」
わたしは自己紹介と共に、注意を促す。けれどそれは、こちらのわたしには出来るだけ迷惑はかけたくないから。
「……さて。自己紹介も終わったことだし、早速本来の目的に移りましょうか。
今回は、四枚目のカードの英霊との再戦よ!」
カードの英霊!? それってまさか、サーヴァントカードの事ですか!?
カレイドステッキによって、現実世界から鏡面界へと移動をしたわたし達を待っていたのは、上空に待機しているキャスターだった。
イリヤちゃんと美遊ちゃんは上空へと移動、キャスターとぶつかり合う。そのあと何度か危険な状況に陥っていたものの。
「ミユさん、乗って!」
そう言って、キャスター目がけて跳んでいく美遊ちゃんに向け、魔力弾を放つイリヤちゃん。美遊ちゃんはその魔力弾を足場にして加速。
「
ランサーのカードを
……けれど。事はこれで終わりじゃなかった。
ガシャリ、という音と共に、腹部に奔る突然の激痛。倒れ込みながら視線を向けた先には、黒い甲冑を纏った女性騎士の姿が。
セイバー。そう認識した直後、わたしの意識は途切れる。
……。
「いつまでそうしてるつもりなんですか? ……早くしないと、食べちゃいますよ?」
食べる。その単語が出た瞬間、途轍もないおぞましさと共に意識が覚醒した。
「ここは……?」
わたしは辺りを見渡す。この場所は、わたしもよく知る場所であり、同時にまったく知らない場所だった。
ここは、円蔵山の洞窟の最奥、大空洞と呼ばれる場所。けれど、美遊ちゃんが寝かされていた台座には、途轍もなく大きなモノが鎮座している。これは、器、でしょうか?
「そう、器。大聖杯、と呼ばれているものです」
「!?」
聞こえた声に驚きながら振り返り、そして更に驚愕する。そこにいたのはわたし。白い髪に赤い瞳、血管のような赤い筋の入った黒い服を着た、わたしが居たのだ。
「いい反応ですね、間桐桜。もう一人のわたし」
わたしの本名を呼ぶ彼女は、本当にわたしであるらしい。
「これは一体……」
わたしが疑問を口にすると、彼女は蠱惑的に笑って言う。
「ここは英霊の座。傷つき倒れた貴女の意識を、一時的に連れ込んだんですよ」
「英霊の座? それでは貴女は、英霊となるほどの偉業を為したって事ですか?」
わたしでは無いわたし、おそらく並行世界の自分は、先輩と同じく英霊となり得る活躍をした? けれど彼女はどう見ても、英雄とは言い難い雰囲気を纏っている。
「そうですね。ある意味偉業なんでしょうか。わたしが倒されることによって、一人の英雄を生み出す切っ掛けとなったんですから」
それを聞いたわたしは、ある存在に行き着いた。
「反英雄……」
「その通りです。わたしという存在が悪を成すことで、彼の善を明確にしたのですから」
彼女は、不自然なくらい嬉しそうに笑う。
「わたしは[マキリの聖杯]間桐桜。ある世界線で汚染された聖杯と繋がり、[
正義の味方を目指す少年!? まさか、それって……。
「はい。衛宮先輩です」
彼女は再び嬉しそうに笑う。
「先輩は、わたしを止めてくれたんです。お陰でわたしは、大事な人を殺さずにすみました。先輩はわたしの恩人です」
どういうことなのだろう。最初に声をかけられたときは、途轍もないおぞましさを感じたというのに、今の彼女は本当に救われたという表情をしている。
「不思議ですか? わたしの言動が安定していない事が。でも、無理はありませんね。
わたしは[この世全ての悪]と同化する事で、人格に影響を及ぼしていきました。そんなわたしの、本来の人格がまだ僅かに残っている内に、先輩はわたしを止めてくれました。
お陰で座に居るわたしは、ある程度まともな人格に戻っているんです。まあ、ある程度、ですが」
つまり、[この世全ての悪]の影響が強く出ているときとそうで無いときがある、というわけですか。
「はい。そういう事です」
はあ、とため息をつくわたし。
「さっきから、わたしの思考を読んでませんか?」
「まあ、
彼女は、わたしがしないような意地の悪い笑顔でわたしに言った。
少しイラッとする心を落ち着けて、わたしは彼女に聞く。
「それで、貴女がわたしをここへ呼んだ理由はなんですか?」
「ああ、それがありましたね。
間桐桜。いいえ、桜谷実枝。貴女はあの少女達の闘いを見て、思ったんでしょう? 自分が闘えないことが歯痒いって」
!! ……確かに、サーヴァントカードを持たない今のわたしには共に闘う力が無く、それに歯痒さを感じてもいた。
「そんな貴女に、わたしが力を貸してあげます」
「……え?」
強力な魔力を肌で感じ、わたしは目覚める。その視界に飛び込んできたのは、通常ではあり得ない魔力を放出しながら、地に置いたカードに手を乗せている、普段着姿のイリヤちゃんの姿。
「
そう告げると、イリヤちゃんの姿が変化する。それは、デザインに違いこそあれ、まごう事無き
「イリヤ、ちゃん?」
「! 桜さん!」
だけどわたしの呟きに反応したのは、同じく普段着姿の美遊ちゃんだった。
「怪我は、大丈夫なんですか?」
心配そうに尋ねる美遊ちゃんを見て、脇腹が全く痛くないことに気がつく。恐らくは彼女の仕業だろう。
「はい。わたしは大丈夫です。それより、今はどういう状況なんですか? 遠坂さんとルヴィアさんは一体……」
一人、アーチャーの力を使い闘うイリヤちゃんを見つめながら、わたしは美遊ちゃんに尋ね返す。
「……ルヴィアさん達は、黒化英霊の攻撃……、[
え……。姉さんが……?
わたしの中に、ドス黒いモノが駆け巡る。だけど。
『ご無事ですか、美遊様ーッ!』
アスファルトを突き破り現れるサファイア。
「サ、サファイア! 無事だったの!?」
『はい。なんとか地中に潜って緊急回避を。
負傷はしましたが、ルヴィア様達もご無事です!』
サファイアの報告を聞いて、わたしの中の黒い靄が晴れていく。良かった。無事で……。
『!? 実枝様? お怪我はもう……』
わたしに気づいたサファイアが訪ねて来るが、状況はそれどころでは無くなる。魔力の膨れ上がる感覚にそちらを見れば、セイバーが剣に黒い魔力を纏わせ構えていた。
「まずい! 宝具の二撃目……!」
そう。セイバー・アーサー王が、反転した[
「
え、まさか。あり得ません。
「美遊ちゃん、サファイア。これからわたしがすることは、みんなに内緒ですよ?」
「え、さ、実枝さん?」
『実枝様、何を……?』
二人の疑問には答えず服をまさぐると、上着のポケットに一枚のカードが入っていた。
『それは、クラスカード!?』
「……アヴェンジャー、
わたしは彼女から受け取った[
「「
二人が宝具を放とうとしている。そんなセイバーに対し。
「……!?」
わたしは彼女の影から黒い帯を放ち、彼女を雁字搦めにする。
[……
イリヤちゃんが放った白き極光が、その本来の持ち主を飲み込んでいった。
サーヴァントカード……、いえ、こちらではクラスカードと呼ばれているそれの回収はなりました。イリヤちゃんは魔力を一度に解放したためか、夢幻召喚も解けて意識を失っています。
「美遊ちゃん。イリヤちゃんの事は、遠坂さん達には秘密にしていた方がいいと思うの」
「そう、ですね」
美遊ちゃんも納得してくれたようです。
そのあと、遠坂さんとルヴィアさんが地中から這い出してきたので、セイバーは美遊ちゃんが倒したという事にして話は落ち着きました。けれど。
「……桜谷さん。親睦のためにも、今夜はとことん話し合いましょう?」
「いいですわね。それでは我が家にご招待して差し上げますわよ、
どうやら二人は、わたしを逃がしてはくれないようです。
わたしはひとつ、ため息を吐いてから、星空を見上げる。
……先輩。わたしは、わたし達は、こちらの世界で精一杯生きていきます。だから先輩も、どうか無事でありますように。
わたしは星へと、願いを託したのでした。