真・女神転生▷《プレイ》世界が終わるまでは… 作:五十貝ボタン
部屋は赤く染まっていた。
壁といわず、床といわず、見渡す限りの場所が、そこに生物が
血だけではない。肉片。砕けた骨。臓物。入口のすぐそばでは、
別の一角には、焼け焦げた死体が無造作に転がっている。焼けただれた肌が不気味に変色し、体のどこかでくすぶった残り火が煙を部屋の中に広げていた。快いとはとても言えない、吐き気を催すにおいが、換気の悪い地下室に漂っている。
死が空間を支配している。
人間の破片がばらばらにまき散らされている。マッシュにとっては、上司だった一等警官たちだ。
少年がその部屋に踏み込んだ時、生きているものは一人だけだった。いや、それが「ヒト」と呼ぶべきものなのか、マッシュにはわからなかった。
「まだ残ってたか」
その男は異様な姿をしていた。体と半ば一体化した甲冑を纏っている。鎧武者のようだ……だが、202X年に武者なんて、ばかげている。
男は硫黄結晶のような危うい光をたたえた双眸でマッシュを見据えると、獲物を前にした狼の笑みを浮かべた。
「その腕の機械、お前は悪魔使いだな? すこしは歯ごたえがありそうだ」
顔についた返り血を拭いながら、男が振り向く。濃密な
「あんたが……やったのか」
逃げられない、と本能でわかった。背中を向けた瞬間に、のど元に喰らいつかれる確信があった。
「くだらないことを聞くな」
一等警官を皆殺しにした張本人は、余裕を見せつけるように笑っていた。
「何者だ……」
「今度はまともな質問をしたな」
マッシュには、その口が耳元まで裂けているように見えた。
「自由の使者……そんなにいいものじゃねえか。力の体現者……フン、俺はもっと強くなるはずだ……そうだな、敢えて言うなら……」
男は自分の手を顔の前に掲げた。掌に張り付いて乾いた血が剥がれ落ちる。まるで、古い皮を脱ぎ捨てて新たな体が
「
地獄の支配者となった悪魔たちと同じ色で、男の瞳がひときわ強く輝いた。
「こいつらは力で新宿を支配してきた。ハッ! 悪魔におびえる市民たちを従わせて、さぞかし楽しかっただろうな。だが、この連中よりも俺のほうが強かった。だったら、俺に殺されても文句は言えない。そうだろ?」
「全員が望んでやったわけじゃない。逆らったら何をされるかわからなかった……」
マッシュの反論が、男の逆鱗に触れた。
「逆らう力がないなら同罪だ!」
男の魔力が掌に集まり、
(俺は死ぬのか)
恐怖がマッシュの体を駆け巡る。
(弱いからってだけで、死ななきゃいけないのか)
目を閉じた。恐怖の主体から逃れようとする本能的な反射だった。
(けっきょく、新宿の地下から出られないまま死んでいくのか。いやだ……死にたくない!)
目を閉じても、暴力が消えてなくなるわけではない。肌に、熱が迫るのを感じる。皮膚を焼き、臓腑を沸騰させる破壊的な炎が。
脳裏に、走馬灯のように記憶が駆け巡った。
哀れにも文明が滅びた世界に生まれた少年の記憶が、