叛逆の牙in ZEXAL(?)   作:リ・コントラクト・ユニバース

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前回は思ったよりアーティファクトの息が長くなかったおかげですぐ終わりましたが今後はわかりません。

デュエルは無し(?)です


No.14 欲望

「万寧々、漫研部副部長、か……」

 

倒れて気絶してしまった少女を、取り敢えず保健室の前まで運んでおいた。

こんな血だらけの男が学生を担いで入ってきたら事案だろ。いや侵入してるだけでも十分事案だけども。

ついでに、吹き飛んだ時に散らばってしまったスケッチブックも1枚残らず回収しておいた。すげえ上手い。

 

情熱をかけて描かれたであろうイラストの数々はVRヴィジョンを目の当たりにした俺から見ても凄まじいクオリティだ。

本当に好きなんだな……武器……女の子にしては物騒だけど……。

アーティファクトが好きなだけはある。

あとブラック・マジシャンの杖とか、鉄の騎士ギア・フリードとかも描いてあった。すげえ上手い。

ま、取り敢えず手当は保健室の先生にやってもらうとして。ノックした瞬間全力ダッシュで逃げ去った。これで大丈夫だろう。

多分命に関わるような怪我はしてないだろうし。

ものすごい勢いで吹っ飛んでたけど。

 

ていうか俺の方が痛え!ダメージの実体化ってこんな痛いんかよ!

カオス化した時の痛みに比べりゃどうってことないとか思ってたけど、あれとは別ベクトルの頭が襲ってきてやがる。

幸い傷は浅かったが……。

 

「あっ」

 

そういえば俺はあの部室に用があるんだったなぁ……。

多分今は遊馬と小鳥、あと真月が璃緒が閉じ込められたスケッチブック?とやらを探してるはずだ。

 

『しっかしバリアンの連中もけったいな事を考えるもんだなぁ。回りくどい奴らだ』

「お前が言うな」

 

いやこいつはある意味ではめちゃくちゃ直接的な方法ではあったけども。

それはそれとして、俺は部室へ戻っていく。痛え!

部室の扉が開いている。多分遊馬達だろう。

 

 

 

なんか知らないが状況が飲み込めないうちに瑠那の瞬間移動であら不思議、病院の近くに戻ってきていた。マジで状況飲み込めないからやめて……あと酔いそう……。

 

「ありえないから。私の前で負けるなんて」

「はぁ?一体誰のせいだと……」

 

……しかし俺は一体何を見せられているんだ?

何が起こったのか知らないが、いつのまにか目覚めていたシャークの妹、璃緒がやたら高いところからシャークを見下ろしてすげえ冷徹な言葉を吐いている。

フィールド魔法、コミック・フィールドによって生み出された景色は荒野に立つ城。その塔の最上階に璃緒はいた。

顔は可愛いのに言ってることが怖すぎるだろ!

 

目に巻いてた包帯がシュルシュル解けていくのはなんか幻想的だった。けど、どっかで見たことあんな、あれ……。

ともかくだ。

カオスエクシーズの召喚と妹の人質によって窮地に立たされていたシャークさんも、これで心起きなく戦えるだろう。

 

『へっ、人質如きで身動き取れなくなるとはな。やはり人間は弱い』

「1番率先して人質取りそうな奴が何を……」

 

というか実際俺を人質にして瑠那のこと脅してたしこいつ!

マジで許せねえなマジ。

 

Dパッドで確認したデュエル状況は……若干シャークさんの不利、かな?

いやそりゃあ実質ハンデデュエルだもんね……。

 

神代凌牙

LP:500

手札:2

モンスター:No.32海咬竜シャーク・ドレイク 潜航母艦エアロ・シャーク

魔法・罠:2(セット)

 

有賀千太郎

LP:3000

手札:2

モンスター:CX CH(コミック・ヒーロー)レジェンド・アーサー

聖騎士王アルトリウス 聖騎士トリスタン 聖騎士の三兄弟

魔法・罠:聖剣クラレント(アルトリウスに装備)

聖剣EX-カリバーン(アルトリウスに装備)

聖剣ガラティーン(アルトリウスに装備)

フィールド:コミック・フィールド

 

「しかし、よくもまぁナンバーズのハンデもあるのにあそこまで……」

「……【RUM(ランクアップ・マジック)-バリアンズ・フォース】よ。あれはカオスエクシーズに、ナンバーズを破壊できるようにする効果がある。しかもORUを全て吸収し、1つにつき攻撃力を300ポイントダウンさせる効果も併せ持っているわ」

 

瑠那が親切にも教えてくれた。

詰め込み過ぎじゃないのぉ?

まあ、仮にもバリアンの切り札。一般人にナンバーズの所持者と戦える力を与えるには、あれが手っ取り早いんだろう。

 

あの額に出てる謎の十字架?みたいな紋章。

あれがブラック・ミストの言ってたバリアンの力を制御する紋章か。

 

『ああ。あれが無いと人間の身体はバリアンの力に耐えられん。お前ならよーくわかってるはずだぜ?』

 

そりゃもう、身に染みて

 

ちなみに今は漫研部部長……有賀千太郎のメインフェイズ。

聖騎士トリスタンと三兄弟を呼び出したところらしい。

璃緒を解放した凌牙に対し、もう実力で普通にカタを付けようとしてるらしい。

 

「偉大なるバリアンの力、思い知れ!聖騎士トリスタンと聖騎士の三兄弟でオーバーレ———何!?」

 

呼び出したトリスタンと三兄弟でエクシーズ召喚を行おうとする有賀……だが、その瞬間振りかかる水飛沫。

冷や水をかけるとはこの事だ。

上手いこと言ってやったぜ。

 

……えー、怒涛の水流に押し流され、モンスター達はあえなく全滅してしまう。

それは当然凌牙のフィールドのシャーク・ドレイク、エアロ・シャークも同様で。

つまり、凌牙が発動したのは……。

 

「残念だったな。璃緒さえ無事なら貴様なんぞ屁でもねえ。お前が聖騎士トリスタンを召喚した瞬間、リバースカード【激流葬】を発動した。こいつは、フィールドのモンスター全てを破壊する!」

「俺のヒーローが!?でっ、でもお前のフィールドにもモンスターはいない!次の俺のターン……」

「次のターンだと?見通しの甘い野郎には……イラッとくるぜ!リバースカード発動!【激流蘇生】!破壊された水属性モンスターを全て特殊召喚し、その数×500のダメージを貴様に与える!」

「なっ、なにぃー!?」

 

有賀千太郎LP3000→2000

 

激流葬と激流蘇生のコンボ……うん、鉄板だな!

シンプルだが強力ないいコンボだ。

相手の場をガラ空きにしつつ自分のモンスターだけを呼び戻す。

実に素晴らしい!

 

「やることがねえならさっさとターンエンドしな。引導を渡してやるぜ」

「ち、調子に乗るなぁ!カードを2枚伏せてターンエンドだ!」

 

有賀千太郎

LP:2000

手札:0

モンスター:0

魔法・罠:2(セット)

 

「俺のターン、ドロー!魔法カード、【海底噴火(デプス・エラプション)】を発動!このカードはフィールドに水属性モンスターエクシーズがいる時、場のカード全てを破壊する!」

「伏せカード諸共、自分のモンスターまで!?」

 

海底噴火を名乗るだけあって、その規模は凄かった。

なんか地面に亀裂が入ったかと思えば無数の火山弾が噴出し、降り注ぐ。

有賀の伏せカードどころか自分のモンスターまで無差別で破壊してしまう。これNo.101なら破壊無効で凌げるしCNo.なら復活して回復もできるね!相性抜群かよ。

そんな間にもエアロ・シャークとシャーク・ドレイクも砕け散ってしまう。

フィールド魔法・コミック・フィールドも跡形もなく破壊され、荒野に立つ古城も消え失せる。

塔の上にいたはずの璃緒は貯水タンクの上に立っていた。危ねえ!

 

凄まじい大災害だけどこれは所詮立体映像だ。シャークさんは涼しい顔をしている。

 

破壊された有賀の伏せカードは【聖なるバリア-ミラー・フォース】そして【魔法の筒】。最後の最後で恐ろしいモン伏せてんなこの部長!

シャークさんが用心深くなかったら終わってたよこれ!

 

「フン……俺は【死者蘇生】を発動!蘇れ、シャーク・ドレイク!そして俺はシャーク・ドレイクを素材に、カオス・エクシーズ・チェンジ!現れろ!【CNo.32】!【海咬竜シャーク・ドレイク・バイス】!」

 

CNo.32海咬竜シャーク・ドレイク・バイス

水属性/海竜族/ランク4/エクシーズ・効果

ATK2800/DEF2100

攻撃表示 ORU1

 

あれがシャークさんのカオスナンバーズ……シャーク・ドレイク・バイスか。元が赤っぽい色合いなだけにいきなり白くなってすげえ目立つ。

けど確かに強そうに見えるわ。

まあカオス化させる意味とかあんま無さそうだけど。

まあシャークさんも妹を人質にされてちょっとイラついてたんだろう。仕方ないね。

 

「バトルだ!行くぜ根暗野郎!シャーク・ドレイク・バイスで貴様にダイレクトアタックだ!デプス・カオス・バイト!!」

「うわーーーーーっ!!!」

 

有賀千太郎LP2000→0

 

WIN:神代凌牙!

ARヴィジョンの投影が終了し、デュエルが終わる。

あたりの景色も病院の近場に切り替わる。

 

「あれ、僕は何を……?」

「有賀くん!大丈夫かい?」

「え、八雲くん……?なぜここに?」

 

ほんとすげえ勢い吹っ飛ぶよな、大丈夫か……?

すぐに八雲が駆け寄って様子を見ていたが大丈夫らしかった。

意識あるのかよ、デュエリストってすげえな。

ていうか八雲ってあいつと友達と何かなのかな?いやあいつのことだから学園内では有名人とかそういうのかもしれんね。

 

まあ、近くに病院もあるし万が一ってことはないだろう、多分。

しかし漫研部が2人とも洗脳されてるとはなぁ、バリアンは漫画が好きなのかな?

 

「チッ、手間かけさせやがって……」

「さっすがシャーク!かっちょいいぜ!よっ大統領!」

 

神代凌牙くんばんざーい!なんて調子乗って言い出した遊馬が小鳥に嗜められていた。だろうね。

 

言葉は冷徹だったとはいえ、璃緒は昏睡状態から目覚めたばかりだ。

あんな高いところにいて、風に煽られでもしたら大変だ。

と思ったら瑠那が貯水タンクまで迎えに行っていた。

ジャンプ力すげえし、力も強いのか……。デュエリストってすげえ。

 

「離さないようにね」

「わかってるよ……礼を言っとくぜ、瑠那」

「お礼なら、才人にも言ってあげて。彼も頑張ってくれてたんだから」

「サイト……?誰だ、そいつは」

 

瑠那に璃緒を預けられ、お姫様抱っこの体勢になったシャークさん。

璃緒は無邪気にシャークさんの首に腕を回している。

距離近くない?本当に実の兄妹なの?

ていうか、シャークさん未だに俺の存在に気がついてなかったのか……別にいいけど。別にいいけど!

 

『所詮脇役は脇役ってことだ。ハハッ』

「うるせえよ出てくんな」

 

せっかくのハッピームードなのにお前が出てきたらぶち壊しだろうが!

シャークさんにいらん心配をかけるな!

 

「……サイトってのは、お前か?」

「えっ……あ、そうだけど」

 

 

暴れるブラック・ミストをなんとか抑えようと奮闘していたら、シャークさんが俺に近づいてきた。びっくりしたぁ。

多分、瑠那に俺のことを聞いたんだろう。

 

璃緒は疲れたのかまた眠っているようだ。まあ目覚めたてだしな……。

女の子お姫様抱っこして近づいてくるのは何の当て付けなんだよ!俺にはこの身体も腹も黒い背後霊しかいないのに!別にいいけど!

 

「妹を助ける手助けをしてくれた事、礼を言っとくぜ」

 

THE・不良って感じなのにすごい素直なんだな……まぁ、確かに悪人って感じじゃないのはわかってたけど。

ブラック・ミストが笑いを堪えてる。何がそんなにおかしいんだ。

 

「別にいいぜ。シャークさんもまたなんかあったから頼りにしてくれ」

 

めちゃくちゃカッコつけてみる。

まあ、歳上だし?先輩だし?大人だし?

シャークさん学生なんだから他人に甘えてもいいんだよ、まだ。

デュエルはお前の方が弱いとか言うなよ潰すぞお前マジ。

 

「……凌牙でいい。今回はお前にも瑠那にも世話になった」

 

シャークさん……凌牙はそれだけ言うと妹を抱えたまま病院に戻って行った。かっけえなぁ、シャークさん……あんな変な髪型なのに。

まあ凌牙でいいって言われたし今後は凌牙って呼ぶか。凌牙!

いい響きだな、凌牙。

 

しかし……。

 

「どっかで会ったっけ?凌牙……」

 

そんな気がしてならない。

確かにZEXALのアニメは見てないが主要キャラの見た目と名前ぐらいは知ってる。神代凌牙、シャークさん。

マジックコンボだとかイラっとくるぜとかで有名だったはず。

それはそう。

 

……だけど、それとは何か違うところで凌牙を知っている気がする。

この世界に来る時に何があったのか知らないが、何か記憶がどこかしら欠けているような気がしてならないのだ。わからないが。

 

「お疲れ様、才人。璃緒ちゃんも目覚めたし……良かったわ、本当に」

「瑠那も色々頑張ってたろ。……しかし、あんたと凌牙、一体どんな関係だ?」

 

ずいぶん親しいみたいだし……凌牙もなんていうか、心を許してるって感じがする。

璃緒と瑠那で名前がなんとなく似てるし親戚とかかな?とか思ったけど、どうも違うらしかった。

 

「私は昔ハートランドで働いててね……ハートランド主催で開催されたデュエル大会、そこである事件が起きたの。凌牙と璃緒ちゃんのことは、その時に知ったわ」

「へぇ……」

 

瑠那はちょっと悲しそうに目を伏せていた。

シャークさんがあんな不良みたいになっちまったのはその事件が原因、とかかな?

ていうか昔っていつの話?今も充分若いけど?

 

「ナンバーズを巡る戦いに、彼らが巻き込まれているのを知った時は驚いたけど……彼は強かったし、何より遊馬たちの助けがあった。今では彼も私たちの仲間の1人よ」

「ふーん……やっぱ色々あるんだな」

 

まあ、確かにあのデュエルを見るに凌牙の実力は確かなんだろう。

聖騎士とか普通に強いし。

デュエルリンクスだと環境入りしてたぐらいだし。

コミック・ヒーローとかいうのは知らないけど、聖騎士は強い。

それにリンクスのシャークさんもめっちゃ強かったしな。遊馬も強いし。

 

「凌牙はたまに1人で無茶をすることがあるから……それは遊馬もカイトも同じだけど、もし危なそうなら止めてあげてほしい」

「了解!」

 

凌牙だけに?

……なんでもないです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

凌牙は妹を無事病室に送り届け、遊馬と真月と小鳥はそれを見届けて帰った。

夕暮れの病院前でそれを見送る俺、と瑠那と八雲。

せっかく久しぶりに妹と話せるんだ、兄妹水入らずってことで、2人きりにしてあげようって八雲が言ってた。

 

……しかし、この世界に来てからようやく2日目が終わろうとしているわけだが、ハードスケジュール過ぎねえ?何かの悪意を感じるような気がしてならねえわけだが。

バリアンだって?確かに。

 

にしても俺住むとこ無いし服もねえな。もう日が沈みそうだけど夕飯どうしよう。金もねえ。

 

「……あー、言うの忘れてたけど」

「?」

「今日からユートは僕らの仲間になったわけだよね」

「? ああ」

 

八雲がちょっと言いにくそうに口を開いた。

デュエルの時は積極的なんだからもっと気楽にいかないか?

 

「つまりだね。君、住むところないだろう?」

「そうだな」

「良ければ、なんだけどね。まあ君が望むならいくつかある隠れ家を使ってくれても構わないんだけど……」

「興司が言いたいのはね、私たちと一緒に住まない?ってことよ。そうでしょ?」

「瑠那さん……いや、そうなんだけど、どうかな?」

 

何を照れていたんだか知らないけど、それなら願ったり叶ったり……。

 

「……って、お前ら一緒に住んでんの……?」

「えっ?うん。戸籍がないからね、一応兄弟ってことにしてバレないように暮らしてるのさ」

「ハートランドで働いてたのが役に立ってね」

「そ、そうなのか……」

 

瑠那と興司が姉弟、ねえ……。

髪も顔も似てないが……いや、髪は似てる奴の方が少ないか?でも蟹と蟹パパはめちゃくちゃ似てたけどな。

まあ、異世界の住人同士気の合うところもあるんだろうな。

 

「どうかな?ユート。悪い話じゃないと思うんだけど……」

「そういうことならお言葉に甘えさせてもらうよ。これからもよろしくな!」

 

再び2人と握手を交わす。

異世界トリオの結成だぜ!

異世界から来た奴ら同士、末永く仲良くしていきたいな!

……まあ、元の世界に帰る道が見つかるまでの間だけだが。

 

「じゃあ、帰ろうか?僕らの家に」

「そうね……」

 

あっなんかいいムードじゃんって思ってたらまた瑠那が胸のペンダントに触れた。

カシュっなんていう音がしたと思えば瞬間移動。

マジで勘弁してくれ、それ……。

酔いそう。いやちょっと慣れたけど酔いそう!

 

『いい加減慣れたらどうなんだ』

「黙ってろ!」

 

こいつ黙ってるかと思えば大笑いしたり出てきたと思ったら茶々入れてきたりなんなんだよ。割と無害でもないねこいつ!

 

ていうか、既に家の中にいるらしい。靴で入ってオッケーな感じですか?

わざわざ瞬間移動するぐらいだから相当遠くにあるとか、怪しげな地下室とか、そんな感じかと思ったら割と普通の民家なんだね。

 

普通に6人ぐらいの家族が住めそうな割とデカめの家。

よくこんな家買えたなぁ。

ハートランドで働くとそんなに金貰えるんだろうか……。

俺もバイトぐらい探さないとまずいよなぁ……。

 

「じゃあ……早速だけどご飯にしようか!ユートの歓迎パーティって事で、張り切って作るからさ!」

「お、おぉ。お構いなく……ていうか、作るのお前の方なんだ」

「瑠那さんはいつも色々忙しくて遅いからね。僕は学生で早く終わるから普段は僕が作ってるよ……じゃあ僕は買い物に行ってくるから、瑠那さんに部屋とか、教えてもらっておいてくれ」

「ああ……」

 

なんか怒涛の勢いで話が進んでいって、八雲は軽い足取りで家を出て行った。

そういえば、八雲と姉弟ってことは八雲瑠那って名乗ってるのかな?別にどうでもいいが。本当の苗字はなんでいうんだろうな……。

 

「……しかし、なんであんなに嬉しそうなんだ?」

「興司も仲間ができて嬉しいのよ」

「びっくりしたぁ……」

 

急に出てきた瑠那が独り言に答えてくれた。

どこに行ったのかと思ったら着替えしてたらしい。

いつもの若干巫女みたいな風情のある服じゃなくて、THE部屋着って感じのパーカーとズボン。なんか新鮮。

 

俺も服が汚ねえし着替えたい……というか、コートで隠してるけど下のシャツ血まみれになっとるし。まあ傷自体はそこまで深くないから血は止まってるみたいだが。

しかしなんでここまでリアルダメージがでかいんだ?遊戯王ってそこまで流血表現キツくなかったと思うんだが……。

 

「あなたも着替え……っていうか、怪我してるなら早く言いなさい」

「……バレてたの?」

「バレバレよ。今なら興司もいないし、見せなさい」

「はい……」

 

瑠那のキリッとした目に見つめられると、どうも萎縮してしまう。

怖くはないんだけど、なんか迫力あるよね。デュエルで負けたしそういう優位性的な何かが俺の精神に刻まれたのかもしれん。

 

大人しく服を脱いで傷を見せる。

胸から腹まで袈裟懸け一閃。お見事。

バリアンの力で身体能力が上がったとはいえ女子の身でここまで見事な切り口とは……。思ったよりは血は出てなくてよかった。

 

「仲間なんだから、もっと頼ってもいいのよ。とは言っても、昨日今日知り合ったばかりだけどね」

「いや、助かるよ……」

 

ていうか、病院に行けば良かったんじゃないかな……いや戸籍も身分証も金も無いから逆効果かもしれんけど!

傷口を洗い、消毒。そして包帯を巻く。

しかし瑠那は妙に手際がいい。慣れてるのかな?

確かにナンバーズとかバリアンと戦うにあたってこんな怪我は日常茶飯事だろうし、慣れもするか。

凌牙とか遊馬とか、無茶するって言ってたし面倒見たこともあるんだろうな……。

 

『随分仲の良いことだな』

 

またお前か……。

しかも瑠那にバレないよう俺だけに語りかけとるし。

今度はなんの嫌がらせだよ。

 

『とんでもない。オレは警告をしてやろうって言うんだぜ?その女と、八雲興司には気をつけな。というか、異世界から来た奴には気をつけな。その裏には、必ずそいつらをこの世界に連れてきた何者かの意思がある』

 

何者かの意思?

やっぱり誰かが八雲と瑠那、そして俺を意図的にこの世界に連れてきたってことかな?

ブラック・ミストは嘘を言ってない。ならそれだけは信じて良い。

 

『何の意思の介在もなくいきなり世界の壁を越えることはない。お前ら人間がアストラル世界やバリアン世界に行くのだって、必ず何かの代償や力が必要になるからな。ましてや別の世界(パラレルワールド)なんて、更に上位の何かが介入してると見て間違いねえ』

 

更に上位の何か?パラレルワールド?

何を言ってるのかわからんが……とにかく、その黒幕には気をつけろってわけだ。

でもまぁ、遊戯王世界の黒幕なんて結局はデュエルで勝負するわけだし……いや負けたら死ぬんだけどさ。

 

『楽観的なのは結構だがな。今後、その程度で済むような敵とだけ戦えると思ってんならそれは間違いだ。それだけは忠告しといてやるぜ?宿主サマよ……』

 

恐ろしいことを言うだけ言って消えるんじゃないよ。

やっぱり嫌がらせじゃないか。

 

しかし、上位の存在ねぇ……。

アストラル世界やバリアン世界は魂がランクアップした、エネルギー世界って言ってたよな……。

それより更に上?想像がつかないな。

 

というかそれを言うなら俺の元の世界……要するに三次元の世界から、遊戯王ZEXALという作品である二次元世界にやってきた俺は、ある意味で上位存在なんじゃないか?

三次元から二次元に干渉できないように、二次元からも三次元には干渉できない。……なら何で俺はここにいるんだろう?

 

「……はい、終わり。……才人?才人?ちょっと、大丈夫?」

「……えっ、あぁ、ありがとう?」

「上の空だったわよ?……色々あったし疲れも溜まってるわよね。今日はゆっくり休んで」

「お言葉に甘えて……」

 

ブラック・ミストの言ってる事はまぁ、本当なんだろう。

誰かの意図があって俺はここにきた。それはなんか、無意識的に気づいていた節もあったからな。

それが何者なのか、何の目的があってなのか……そこまではブラック・ミストも知らないだろうな。

 

「服は……興司のじゃサイズが合わないし、後で買いに行くべきかしら……」

 

無くなっている俺の記憶、そこに手がかりはあるのかもしれないが。

何を忘れているのか思い出せないんじゃ、元も子もないか。

 

 

 

そんなこんなで手当も終わり。

風呂には入れないので謎技術による謎エネルギーで身体を洗浄された。何それ怖い。それで怪我も治ったりしません?

することもないのでデッキをいじっていたら、ちょうど八雲が帰ってきた。

 

「ただいま。いやぁ待たせたね、すぐ作るから2人はテレビでも見て寛いでて」

「私も手伝うわよ」

「助かるよ」

 

俺も手伝った方がいいかな〜……って思ったけど、料理なんて家庭科の授業以外でした事なかったしなぁ。

大人しく食後の皿洗いをやるか。

エクシーズを使わないデッキにジェネレーション・フォースなんて入れても役に立たないし。要するに適材適所ってやつだ。

……なんか俺もだんだんデュエル脳に染まってきたのか?

 

しかしブラック・ミストが言うには敵もどんどん強くなっていくらしいし、俺も浮かれてられないのかもしれない。

瑠那や八雲がいくら強くても、俺1人で戦わなきゃならん状況は絶対あるだろう……。

それにNo.108は前の戦いで使ってないが、邪魔をしたのが俺だということぐらいはバレてると思っていい。

警戒を怠るとろくなことにならなさそうだ。

 

イライラと考えながらデッキをいじる。

前回はブラック・ミストを出す方法を作って使ったけど結局出さなかったんだよな……まあ、使い所あんまり無いし。相手が打点バカならどうにかなるだろうがダーク・リベリオンの方が圧倒的に出しやすいし。

こいつを全力サポートするデッキだと別の問題が生まれそうだし。

色々大変だなぁ。

 

 

……全くこの世界に来てからこんなことを考えてばっかりだ。

いくら遊戯王の世界とはいえデュエルデュエル、またデュエル。

飽きる事はないが心休まることもない。

明らかに主人公勢の抱える問題の渦中に入り込んじまったし、いつまでも平和ってわけにはいかんだろう。

 

いや、それは俺が望んだ事だったけどさ。

いくらめんどくさくても、デュエルしか取り柄のない俺には結局それしかできないらしいからな。

それに遊馬とか凌牙とか、八雲とか、どいつもこいつもまだガキだ。

ポッと出の俺でも、なんか守ってやらなきゃ、みたいな意識は湧くわけで。

 

……特に、異世界の仲間ができたことであんなに喜んではしゃいでる八雲を見たら、尚更そうしなきゃいけない気になって。

 

異世界に来ていきなり瑠那や八雲と出会えた俺と違って、あの2人はしばらく一人で暮らしてたんだろう?

知らない世界で、誰も自分を知らない世界で、たった一人、孤独に。

 

それは、なんていうか……。

とにかく、もうあいつらを蔑ろにするなんて俺にはできない。

少なくとも知ってしまった以上は、あいつらより遥かに歳上である俺が守ってやらなきゃいけないと思う。

無論、責任感が強い瑠那もそう思っていると思う。

あいつを支えられるような立ち位置にいるのは俺しかいないんじゃないか?

……なら、これが俺の、この世界での立ち位置なんじゃないのか?

 

まあ確かに、ガラじゃないけど。

なんかそうしなきゃいけない気になってきた。

誰の意思だろうが、誰の策略だろうが。

俺がここにいることには必ず意味があるはずなんだ。

 

なら、その意味は他でもない俺が決めるべきで。

時代や環境や周りの人間に流されて、仕方なく選ぶような道はきっと後悔を生む。

……それはもう痛いほど思い知った。なら、尚更俺は変わらなきゃいけない。

自分の意思で、自分の決めた道を、決して後悔しないように。

そう思う。

 

俺はバリアンと戦う。

遊馬や凌牙、八雲、瑠那、他にも守らなきゃいけない奴はいっぱいいるだろうが……そして、俺が守らなきゃいけないほど弱い奴らでもないだろうが。

少なくとも、俺はそれが正しいと思う。

そんな感じ。

 

 

 

 

 

……いつのまにか外は真っ暗になっていて、時計は19:30を回っていた。

夕飯にはいい時間じゃないか。

デッキいじりに集中していて気がつかなかったが、めちゃくちゃいい匂いがしてきている。

カレーの匂いだ。

ライフポイントが200回復しそうだな。なんちゃって。

 

「じゃあ、一応ユートの歓迎会って事で。僕らが帰る方法を見つけること、ナンバーズを集める事、バリアンと戦うこと、主に僕らのやる事はこの3つだ」

「お、おう……」

 

本当に嬉しそうだし、歳相応って感じの満面の笑みが眩しすぎる。

こんな歳でイケメンだから尚更。

瑠那は微笑んで慈しみの視線を向けている。まじでお母さんか何かか?

食卓に並んだカレーの大皿は気持ちよく湯気を立てていて、スパイスの香りが突き抜けるようだ。美味そう。

……でも、米が山盛りのおにぎりになってるのは一体なんの冗談なんだ?高度過ぎてわからねえ……。

 

「まだ短い付き合いだけどね。僕らは同じ、異世界からきた漂流者だ。きっとこれから上手くやっていけると思う!……じゃあ、冷めないうちに食べようか」

「いただきます!」

 

はっきり言ってめちゃくちゃ腹が減っていた、ので手を合わせるとほぼ同時にスプーンに手が伸びた。自分でも驚くほどの早技で。

 

八雲の料理の腕は想像以上に達者で、ご馳走様をする頃にはライフ200ポイントどころか5000ぐらいは回復していたのだった。うめえ!

 

 

続く






自分で作ったオリカを使うとなんでもありになっちゃうのでそれはやりません。まあテキストが不明瞭なアニメ、漫画オリジナルカードのテキストをアレすることはあるかもしれませんが
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