叛逆の牙in ZEXAL(?) 作:リ・コントラクト・ユニバース
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『全く……めんどくさい事になったもんだ』
「それはこっちのセリフだよ」
『オマエ何で……ってそうか、本当に厄介だな……』
ブラック・ミストは大きくため息を吐いて鼻の頭に手を当てた。
実際の肉体は無いのに頭痛がしたりはするもんなのか。いや、まあするかもしれないけど。
しかしここは一体何処なんだ?
辺り一面真っ暗闇の空間で、俺とブラック・ミスト以外には何も無いし、誰もいない。
俺の魂そのものを見た時と似たような……ならここは
『そう、オマエの心の中。ついでにオレの心の中でもある』
「うわ、黒いなぁ……どんだけ根暗なんだ俺たち」
『性格の問題じゃあない……いや、忘れろ。ともかくオレ達は既に一心同体。不運なことにな』
「まったくだ」
ブラック・ミストは心底嫌そうな顔をしながらも、悪意を表面に出してはいない。
みんな平和が1番!……って事で仲良くできないもんかな?
『そいつは無理な相談だな。オレの目的を果たすのにオマエは邪魔でしかない。いずれは排除する』
「ですよね〜。……って、お前の目的ってなんだ?世界滅亡とか?」
『……』
ブラック・ミストは考え込んでいる。
まあ、考えていることは何となく伝わってきているんだが。言っていいのかとか、もしかしたらコイツを利用できるかもしれないとか、どこまでも狡猾な奴だな。
『オレの魂に触れたならおおよそわかってるとは思うが……オレの目的は神になる事だ』
「神?そういや全てを一つに〜だの神になる〜だの聞こえてたな。あれはそういうことだったか」
ナンバーズはアストラルの記憶って言うけどどうしてまたこんな邪悪な奴が生まれちまったのか。
俺の知らない秘密がナンバーズにはまだ秘められてるってことか……。
『そう。オレ以外の全ての存在は不要。アストラル世界も、バリアン世界も、地上世界も、全てを破壊し原初の混沌を統べる唯一の
「ふーん……」
そりゃまた、随分とスケールのでかいことで……。
その為にナンバーズを集めたいってわけだ。
まあ、こんなイレギュラーが無ければ遊馬とアストラルはブラック・ミストを何とか見つけて再び封印できていたのだろうが……俺が悪いねこれ。知らないところでピンチを招きすぎだろ、俺
「それ、なんか面白いのか?」
『あ?』
「ひとりぼっちってのは思ってるより辛いモンだぜ?世界規模でそれをやったら、俺なら寂しくて死んじまうよ」
『フン、ニンゲン如きにオレの崇高な目的が理解できるとは思ってねえよ!』
ブラック・ミストは拗ねたように逆さまに浮いた。
それ羨ましいな。俺もやりたい。
あっできた。精神世界なら重力もクソもないから意外とできるモンだ。
『しかし……オマエが何故バリアン七皇しか持っていない筈のオーバー・ハンドレッド・ナンバーズを持っているのかは知らん。だがオマエの魂に触れて、ひとつだけわかったことがある。それは……』
「なんだよ?」
俺の好きな食べ物とかか?
ていうか、記憶は読めないって言ってた筈だろ。
……いや、弱った俺の魂からならその限りじゃなかったのかもしれないが……。
『……オマエ、この世界の人間じゃないな?』
「……!」
バレてたのか。
いやまあ、俺の心をある程度読めるならいずれバレるってのはわかっていたが……しばらくは内緒にしておきたかったもんだ。
『バリアン世界とかアストラル世界とかそんなもんじゃあない。オマエは一体何処から来た?オマエの魂は明らかにこの世界のものじゃない。だからこそオレはあの龍に好き勝手されて今こうなってる。……オマエは何者だ?』
「……まあ、確かに俺はこことは違う世界から来た。けど俺はただの人間だ。何もわからずこんなところにすっ飛ばされて来ただけで、No.だって、俺の元々持ってたカードがいつのまにかこうなってたんだ」
そうか、とブラック・ミストは返した。
納得した様子はないしまだまだ聞きたいことはありそうだが……実際のところ俺は何も知らない。この世界のことも、何故ここに来てしまったのかも分からない。
嘘じゃない事は、ブラック・ミストにもわかっている筈だ。
『フン、やはりニンゲンの記憶なんてモンは当てにならねえな。まあいい。せっかくオレの宿主になったんだ。せいぜいオレの為に働いて貰おうじゃないか?』
「やれるモンならやってみろよ。どうせ明日はアストラルに会いに行くんだ、逃げ場はねえぞ」
『そいつはどうかな?』
「なに?」
デュエル外なのにデュエル中みたいなやり取りをしてしまう。
『アストラルがどうしようと、今のオレをオマエから引き剥がす事はできん。なんせこのオレ自身にもできないからなぁ。その方法が見つかる頃には……フフフッ』
「怖い事言うんじゃねえよ……」
『まぁ何にせよしばらくはオレも大人しくしてる必要がありそうだからなぁ……仲良くしようぜ?宿主サマよ』
「まぁ、そうだな……」
握手はしない。
というか握手したらまた吸収とかされそうだから怖くてできない。
仲良くすると言ってもこいつに隙は見せられないだろう。
まぁ、敵意が無い内は信用しても、いいのかな……?どちらにせよ悪いことを考えたり嘘をついたりすれば俺にはわかる。
なら取り敢えずは安全な背後霊でしかないわけだ。問題ない。
『どうあれこれでオマエはNo.の所持者。バリアンに狙われる事になるだろうな……それにNo.108、あれもきっと奴らは目をつけてくる筈だ』
「バリアンって、じゃあ瑠那みたいにCNo.を使う奴らにってことか?」
『そうさ。が、流石のオレ様も今オマエに死なれると困るんだよなぁ……そこで!オマエにオレのナンバーズとしての力を貸してやる事にした。感謝するんだな』
ナンバーズの力……?確かにナンバーズには特殊な力が秘められている。だがそれを貸すってのは、デュエルで使わせてくれるってだけの意味ではない筈だ。
『オマエの持つランクアップ、それとカオス化の力。満足に扱えるよう、このオレが制御してやろうってことさ。カオスナンバーズを使うたびに今回みたいな事になられちゃ、オレも命がいくつがあっても足りないんでなぁ』
「そいつは助かるけど……できれば使いたくねえもんだな」
『それに関しては同感だ。幸いオマエのデッキにはナンバーズ以外にも強力なカードがある。それを使って戦えばいい。できるだけカオスナンバーズを使うのは控えろ』
自分が消えないように、とはいえブラック・ミストも俺の身を案じているらしい。意外と優しいじゃん、こいつ。
めっちゃ睨まれた。怖い。
見れば、俺の右手の甲に紫色の光を放つ文字が刻まれていた。
俺の知る文字とは違うが、96の数字だった。
これがブラック・ミストのいう、カオスを制御する力ってわけか。
『勘違いするなよ。オマエに協力するのは、あくまでオレが復活し、アストラルを倒すまでの繋ぎに過ぎねえ。あまりオレに頼りすぎると、いざって時にいなくなるかもしれねえぜ?ククク……』
「肝に命じとくよ……」
ブラック・ミストの笑い声が暗闇に溶けていき、その姿も掻き消えた。
心の中からいなくなったわけではなく……これは俺が離れて行ってるだけだ。自分の心の中という内面から、現実世界という表層意識に。
つまり、俺の身体が起きようとしてるってわけだ。
★
「……っはぁ!」
悪魔にうなされた時みたいに飛び起きた。
別に滝のような汗をかいたりおねしょしたりしたわけじゃない。
ここに来てから俺が起きると大概何か悪いことが起こってる。だから今回もそうじゃないかと心配だったんだ。
が、特に何もなかった。良かったぜ
「起きたのね、才人」
「あ、あぁ……おはよう」
全然寝た気がしないけどな、とは言わない。
夢の中でも疲れることばっかりだ。まぁ、8割ぐらいは自業自得ってやつだ、仕方ない。
瑠那は相変わらずコンピューターと睨めっこしていたのか?それとも俺が寝ているうちに瑠那も休んでいたのかもしれない。
けど目に見えて疲れているのは確かだ。
こいつも中々無理してナンバーズハンターをやってるらしい……。
「もうすぐお昼になる頃よ。お腹空いたでしょ?」
「ちょっと遅い朝ごはんなら何度も身に覚えがあるよ……」
夜遅くまでデッキを組んでたりカードの効果を調べてたりしたら朝起きれなくなる……これはよくあることだ、みんなも気をつけよう。
「私がよく行くお店があるんだけど……どうかしら?」
……自宅どころかデートに誘われてしまった。
やっぱり、モテる男って辛いね。
『違うと思うぞ』
黙れ。
★
瑠那に連れられて来たのはぽかぽか食堂という名前のお店。
隠れ家からそう遠くなく、また遊馬たちが通っている学校からも近いことでここに決めたらしい。どうせ遊馬たちに会いに行くんだからちょうどいいだろう。
そういえばこの世界に来てから一回もご飯を食べてないことを思い出した。遊戯王に食事フェイズは付き物なのに。
腹が鳴るのを必死に堪えながら、瑠那と向かい合わせの席に座る。女の子を前にして腹の虫鳴らすとか恥ずかしいだろ!
待っている間瑠那は窓から外を眺めていたが……流石に暇だったのかデッキを取り出した。
1枚のカードに目を留めると、取り出して俺に見せてきた。
「【No.63おしゃもじソルジャー】?何だこのちびっこいナンバーズは」
茶碗に盛られた米を胴体、しゃもじに数字がついて顔、両手には箸を槍のように構えたモンスター。No.63おしゃもじソルジャー 。
No.63おしゃもじソルジャー
光属性/天使族/ランク1/エクシーズ・効果
ATK0/DEF2000
レベル1モンスター×2
(1):このモンスターは「No.」と名のつくモンスター以外との戦闘では破壊されない。
(2):このカードのエクシーズ素材を1つ取り除き、
以下の効果から1つを選択して発動できる。
「No.63 おしゃもじソルジャー」の効果は1ターンに1度しか発動できない。
●次の相手のスタンバイフェイズ開始時に、
お互いのプレイヤーはデッキからカードを1枚ドローする。
●お互いのプレイヤーは1000ライフポイント回復する。
正直言ってあまり強いとは言えない。No.耐性があるとは言え壁に使うなら守備力はより高く破壊耐性も無条件の【シャイニート・マジシャン】がある。
二つめの効果も……なんか、人畜無害って感じ。
「これがどうかしたのか?」
「これはね、元々この食堂の店主が持っていたナンバーズだったの」
「ええ?」
それを瑠那が回収したってわけか。
しかしこんなカードが他人の悪意を増幅させて暴れさせるなんて信じられん。というか、こんなカードを使ってもデュエルには勝てないんじゃないか?【No.56ゴールド・ラット】とかもネタにされてたが。
この世界には俺も知らないカードがたくさんあるし、多分俺の知らないコンボでもあるんだろう、多分。
「で、ここの店主はどんなふうに暴れたんだ?」
瑠那は首を振った。
どういう意味だ?それは
「このナンバーズはね、私が知る限り唯一誰にも悪影響を及さなかったナンバーズよ。それどころか所持者である店主の料理の腕は上がり、ここは一躍人気店になっていたわ」
「なんだそりゃ……」
ナンバーズは単に誰かの悪意を増幅させるだけのカードじゃないって事かな?確かに俺はブラック・ミストを持っていても何ともない。
増幅させるべき悪意や強い感情が無いならともかくとして、人間である以上それはあり得ない……。
「……まぁ、ナンバーズを回収したら元に戻ってしまったのだけど。それでもあの店主は努力し続けて、元々あんまり美味しくなかった料理も今じゃとても美味しいわ」
「……そうか、そりゃあ楽しみだ」
「ナンバーズは、単に誰かを傷つけるだけのカードじゃないって、その時知ったわ」
確かに、瑠那を始めとして、ナンバーズに乗っ取られない人間はいる。
そしてそういうタイプの人間も、ナンバーズという強い力の前に、結局は私利私欲に溺れてしまうものなのだろう。
けど、そうじゃない奴もいる。瑠那はそういうことを言いたいんだろう……。
「遊馬や凌牙のように、ナンバーズを良いことの為に使える人はいる。……私は、あなたにもそうなって欲しい。ナンバーズやカオスの力に……決して呑み込まれることのないように、心を強く持って欲しい」
「……ああ!」
まぁ、いくら力があったって俺に何ができるわけでもない。
所詮はただの人間、元の世界ではぐうたら過ごしてただけの、ちょっとカードゲームが好きなだけのバカだ。
だから瑠那が心配するようなことにはならないよ、多分。
心の中でブラック・ミストが笑っているのが聞こえた。なにわろてんねん
「前は、ナンバーズという存在そのものを消し去ろうとしていたこともあったの」
「……はぁ?」
「強大な力はどんな時代、どんな場所に於いても争いを生む。……けど遊馬たちに教えられたわ。自分の中の、悪の心と戦う勇気を。トロン一家やDr.フェイカー、悪意に呑み込まれた彼らを、それでも引き戻したのは紛れもなく彼らの諦めない心と、底知れない勇気あってこそだった」
「勇気、ねえ」
「ナンバーズの存在そのものが危険だという考えはまだ変わっていないわ。……けど、私は遊馬とアストラルを信じて、集めたナンバーズはいずれ全て渡すことにしたわ。彼らなら、きっと正しいことに力を使えると思う」
……それを俺が邪魔する形になってるってわけか。
No.96もまたアストラルの記憶の一部、それが回収されなければ瑠那の目的は果たせない……。やれやれってやつか。
「あなたが気に病む事はないのよ。……ただ、そのカードは危険であることを絶対に忘れないで。例え今はあなたの制御化にあるとしても、いつ牙を剥くかは誰にもわからない」
「あぁ、わかってるよ」
そうこうしてる間に料理ができたようで、件の店主が皿を運んできた。
苦節20年、料理の修行をし続けていたという店主。あんまり美味しくなかった時期を知らないのでどうか知らないが、少なくとも今は普通にうまい。いや、すごくうまい。
俺は唐揚げ定食、瑠那はヘルシーな野菜炒め定食だ。
瑠那の金なのにこんな食っちゃっていいのかな?まあいいか。元々親の金で暮らしてた身だし。なんつって
食べ終わると、ちょうど学校のチャイムが鳴っていた。
学校も今は昼休みが終わった頃だろう。となれば遊馬たちは授業か?この世界の学校かどうなってるのかはよく知らないが。
「この学校には遊馬の仲間たちと……神代凌牙がいるわ」
「シャークさんってやつか」
「そう呼ばれているわね」
俺が寝ている間にブラック・ミストが色々おしゃべりしていたようで、少なくとも俺が遊馬とアストラル、シャークやカイトについて多少知ってる事は瑠那に知れているらしい。意外と仲良いのか?あの2人
名前や使うカードは知っているのに実際に会ったことはないし詳しくも知らないっていうことに、ちょっとぐらい違和感を覚えられているかも知れない。
ブラック・ミストは俺が異世界人ってこと知ってるけど、瑠那は知らない。
「凌牙と……この学校にはもう1人、仲間がいるわ」
「もう1人?」
「実は今日あなたを連れて来たのはアストラルに会うだけが目的じゃないの。会って欲しい子がもう1人いるわ」
「はあ」
もう1人?遊馬と仲間たちっていうのはあのウラウラ言ってたりとどのつまりって言ってたり猫耳生えてたりするあいつらのことだろう。
あとシャーク以外の登場人物については記憶にない……。
「八雲興司っていう子でね。多分、あなたと同じような境遇よ」
「俺と同じって、何が……?」
「あなた、こことは別の世界から来たんでしょう?」
「……は!?」
驚き桃の木ってやつだ。
俺が秘密にしようとしてた事はとっくの昔に知れ渡ってた。
しかし記憶を読んだわけでもない瑠那が何故わかったんだ?
まさか……。
「……なんでわかった?」
「……私もそうだから。私はこことは
今明かされる驚愕の真実!
瑠那は俺と同じ異世界人だった!?
とは言っても俺とはまた別の異世界みたいだが……一体この世界には何が起こっているんだ?ZEXALってこういう感じの話だったの?
「私と興司も、あなたと同じように何もわからないままここに連れて来られた」
「そうだったのか……」
何もわからんまま連れてこられたのにナンバーズハンターとして戦って来たのか……いや、どんな行動力と度胸なんだよ。
俺なんか何もできずに不審者みたいに歩き回ってただけだってのに。
「仲間ができて嬉しい……っていうのは少し違うけれど、興司もきっとあなたのいい仲間になってくれると思う。もちろん私もね」
「ああ、そいつはありがたいな……」
「当面の目的はナンバーズを集める事……そして異世界の力を研究して、私たちの元の世界に戻ること。興司は一応学生の身だけど、ナンバーズハンターとしても活動しているのよ」
すげえ……。
学生なら俺より歳下だろうし、遊馬や凌牙とそう歳は変わらないんじゃないか?確かあいつら14歳とかだった気がするし……遊戯王世界って凄いな。
「あなたもいつか元の世界に帰る方法が見つかるわ」
『だといいけどなぁ……ククッ』
「うわぁどっから出てきたお前!?」
『命の恩カードに向かって何だその態度は』
スッと話に割って入ってきたブラック・ミスト。
周りの人間には見えていないので俺が勝手に騒いでるだけというアホみたいな絵面。ふざけやがって
瑠那も明らかに不機嫌な顔になってきてるし!美人が台無しだよ!
『そんな怖い顔すんなよ。オレ様は一応コイツの相棒、実質的にお前らの仲間なんだぜ?』
「……才人は信用してもあなたを信用することは絶対にないわ」
『可愛くないヤツだ』
可愛いだろうがいい加減にしろ!
全くせっかくのデートに水を差してくれやがって……。
「お前わかってんのか?もうすぐアストラルに会いに行くんだぞ?もうちょっと緊張とかしてろよ」
『は?何でこのオレがあんなヤツにビビらなきゃいけないんだ』
「一応お前の本体なんだろ……」
ナンバーズがアストラルの飛び散った記憶なら、アストラルは元々の持ち主、すなわち主人じゃないのか?主人公の仲間であるアストラルからこんなドス黒いヤツが生まれてくるもんなのか……?いや、闇落ちは遊戯王では恒例だったな……。
★
食べ終わり、少し休んでから店を出た。美味かったぜ。
しかし遊馬達にはまだ会いにいけない。なんせ授業中だしな、俺も学生だった頃が懐かしい……。ろくな思い出なかったけどさ。
……となると今から数時間俺たちは暇になるわけだ。バリアンとかに襲われなきゃ、の話だけど。
「……下校時間になるまでもうしばらくかかるし、一旦戻る?」
「そうだな……ちょっと行きたいところがあるんだが」
「行きたいところ?」
それはもちろん———
「うわぁなんだこのカード……どんなピンポイントメタだよ」
カード屋だ。
金ないけど。うるせえよヒモで悪かったな。
俺が持ってたカードは一応、この世界に来た時近くに転がってた小さい箱に全部入ってるらしい。どんな超技術なのか知らないが取り出したいカードを念じると抜き出されるようになってる。こわ。
当然ペンデュラムやリンクのカードはデュエルディスクの機能上使えないわけだが……これ瑠那に改造してもらって使えるようになったりしない?いや、ズルは良くないし……。
瑠那も鳥獣族と相性のいいカードがないか探しているらしい。
あんな美人がカード屋になんて来たら大騒ぎだ、元の世界なら……。
ストレージの鳥獣族の項目を眺めているようだ。あんまり強くなられると再戦した時に勝てなくなるからやめて欲しい。いつか勝ってやるからな!?
『おい、オレの分身を出すギミックをもっと搭載したらどうなんだ?』
「レベル2を3体とか微妙に重いんだよ、お前……」
まあ出し方はいくつか考えてはあるが……どっちにしろ普通のデュエルじゃ使えないからヤバい奴らが攻めてきた時に使うことになるかな。来なくていいよそんなもんは。
『ナンバーズの中でも最強の力を誇るブラック・ミストにかかればどんな敵も恐れることはない』
「はいはい」
確かに『戦闘では』『ほぼ』無敵だけどもさ。
まあ戦闘に強いモンスターを無慈悲に効果で除去してくるリアリストはアニメの世界ならそんなにいないかもしれない。瑠那ならやりそうだけど。
「しかし本当に見たことないカードばっかあるんだな……」
OCGと同じカードもあれば微妙にテキストが違ったりするものもあるし、OCGには存在しない意味不明なカードもたくさんある。
誰が使うんだよそんなカード!?ってカードも割合としては8割ぐらいある。やっぱり異世界なんだなぁ……。
それ和睦でよくね?みたいな防御カードがかなりの数あるし、発動条件がピンポイント過ぎるカウンター罠とか。エクシーズ素材が効果対象にされた時って何だよ。スペース・サイクロンか?
結局、面白そうなカードを何枚かとエクシーズに関する汎用カードを買って終わった。瑠那はいいカードを見つけたらしくちょっと機嫌が良かった。かわいい。店員が瑠那にデレデレで面白かったし。
マジで瑠那には頭が上がらない。何から何までやってくれて、お母さんか?これはいつか恩を100倍にして返さないと男が廃るってもんでしょ。
★
「お」
キーンコーンカーンなんてありがちな音が聞こえてきた。
学校が終わったのだろう。思っていたよりカード屋にいた時間が長かったらしい。人がいたらデュエルでもすればよかったけど平日の昼間はいねえよな……。
「……じゃあ行きましょうか。遊馬達、大抵は学校に残ってデュエルしてるはずよ」
「そっか」
……俺もあとでデュエルしてみたいなぁ。なんてったって遊戯王の主人公だぞ?きっと俺がどんなカードを使っても何とか凌いで一発逆転大勝利!ってなもんだろう。
いや、負けるのは嫌だけどさ。
『……』
「どうしたブラック・ミスト。今更怖気付いたのか?」
『……いや。別に何でもない』
なんかしかめ面だったからからかってみたけど反応なし、つまらん。
こいつでも悩んだりとかするのかな?いくら魂ごと一体化しててもそこまでは読めん。遊戯と闇遊戯もそんな感じだった気がするしな。
学校に向かっていると、ちょうどゾロゾロと生徒の群れが歩いているのが見えた。ハートランド学園とやらの生徒だろう。
あのちょっと風が吹いたらパンツ見えそうな激短スカートには見覚えがある。別に子供には興味無いけどな!
生徒の群れに正面から突っ込む形で進んでいく。この列というか道を辿っていけば学園に着くだろう。
……と思っていたら、瑠那がちょっと驚いた顔で1人の生徒を見てた。
前髪の真ん中が緑、後が水色、インナーカラーが緑っていう中々に奇妙な髪だけど、遊戯王キャラにしては髪型が大人しい。
しかし見覚えがないヤツだ。誰なんだ一体……。
「興司……?今日は凌牙と一緒じゃないの?」
「瑠那さん?こんなところで何してるんだい?」
……なるほど、こいつが瑠那の言ってた八雲興司ってやつか?
なんか悪そうな名前の割には善良そのものみたいな顔してるなぁ。
ブラック・ミストがまた笑ってら、なんなんだこいつ。
「遊馬とアストラルに用があるのよ。あと、あなたにもね」
「僕に?……というか、彼は?」
八雲は若干敵意……というか警戒の視線を向けてきた。
流石こいつもデュエリストなだけあって中々鋭い眼光じゃないか。俺も負けてらんねえぜ!
「俺は夕陽才人。よくユートって呼ばれてる」
「あ、あぁ……よろしく、ユート。で、僕に用っていうのは?」
「彼の境遇に関してのことなんだけど……遊馬達も見当たらないし先にあなたの方を済ませましょうか」
流石にこの道のど真ん中でナンバーズだのバリアンだの異世界だのを話すのは気が引ける。
瑠那について行くと、公園に着いた。
小さい子供たちがキッズ用デュエルディスクを使ってデュエルをしているらしい。プチリュウとかすげえ久しぶりに見た気がするよ。
「単刀直入に言って……才人は私たちと同じ、異世界からやってきた漂流者よ」
「君が……?それは本当なのかい?」
「間違いないわ。彼の証言はかつての私たちと一致している……何より、彼の持つナンバーズもまた異世界のカードと見ていい」
「! 君もナンバーズを持っているのか」
「ああ……」
若干気が引けたが……俺のエースモンスターのカードを見せる。
No.108の文字に、八雲も驚きを隠せないようだった。ちなみにNo.96も見せた。これは別の意味で驚かれた。
「個別の意識を持つナンバーズ……!これが遊馬の言っていたNo.96か!」
『その通りさ。中々有名らしいな、このオレは』
「お前が出るとちょっと話が拗れるから引っ込んでろ!」
本当にこいつはトラブルメーカー……というかトラブルそのものだろ。出てくんな。デュエルの時だけでいいよ。
わかったから心の中で暴れるのはやめろ!胃の調子とか悪くなりそうだから!
心の中でブラック・ミストと喧嘩しているうちに、瑠那があらかたの事情は説明してくれた。
デュエルしたこと、カオスナンバーズを使って死にかけたこと、そしてブラック・ミストと融合してしまったこと……。
「……で、わざわざ連れてきたということは、そういうことでいいんだよね?」
「……そうね。どのみち、彼の持つナンバーズの力は強大すぎる。いずれ巻き込まれるのは避けられない。いや、むしろもう……」
「そう、だね……」
なんか俺を置いて話が進められてる!?別にいいけどさぁ。
というか「そういうこと」って?俺のわからん共通認識で語るのをやめろ!疎外感で死んじゃうだろ!
『要するに、オマエを味方に引き込もうっていうんだろ。どちらにせよナンバーズを持つオマエはこの争いから逃れられない』
「そうかそうか……いや、そうか……」
珍しくブラック・ミストがいいこと言った。八雲も瑠那も依存はないらしく、ちょっと重い表情で頷いている。
別に俺は構わないが……こんな怪しい奴を味方にしてしまっていいのか?瑠那はともかくとして、八雲はついさっき出会ったばかりだぞ?
……と思っていたが、答えはすぐに出た。
「ユート……僕とデュエルして欲しい」
「え?」
続く
漫画版からの出張2人目、八雲興司くんです。
ちなみに髪型はサイヤ人になってない方の綺麗な八雲。
漫画版はシャークさんの境遇が軽くなった一方でカイトと八雲が重過ぎる