ROMAN DE ドォォォォン!! 作:霧鈴
「ねぇロビン、アレ止めなくてもいいの?」
目の前の光景を見ながら、麦わらくんの船の航海士さんが私に聞いてくる。
と言っても繰り広げられているのは見慣れた光景なのよね…
麦わらくんたちが「まだデービーバックファイトの途中だから」とハンマを止めて、自分たちのゲームを先に済ませるということで待つことになったのよね。
ハンマは海賊同士のゲームなんてどうでもよかったのか、さっさと船を出そうとしてたわね。まだログが溜まってなかったから大人しく待つしかなかったんだけれど。
ゲーム自体は麦わらくんたちが勝って無事船医さんも取り戻したんだけど、ゲームが終わった後にハンマが突然フォクシー海賊団にゲームを挑んだ。もしかしたら相手に麦わらくんたちも含まれてるのかもしれないけど。
…あれをゲームって言ってもいいのかわからないけれど「次は俺ともぐら叩きしようぜ。お前らモグラな」と言って襲いかかり一方的に蹂躙している。
ああいう時のハンマって相手を殲滅するまで止まらないから、初めて見る航海士さんからしたらビックリする光景なのかもしれないわね。音の衝撃と地響きとかすごいもの。
それでもちゃんと私の声は聞こえてるみたいだし、止まってって言ったら止まってくれるから心配はしていないんだけど。
それに暴れる相手は大体海賊とかだからわざわざ止める理由もないもの。
「ハンマが満足するか相手が全滅すれば終わるわ。放っておいて大丈夫よ」
「あれを見て普通にしてられるロビンもなかなかすごいわね。なんかあの海賊たちに同情しちゃうわ」
「それハンマに言わないほうがいいわよ?『じゃあお前らも味わってみるか?』とか言って襲いかかってくるかもしれないから」
「なにその理不尽!あいつのほうがよっぽど海賊みたいね」
まぁ航海士さんの気持ちもわからないでもないわ。相手が海賊やマフィアだってだけで、実際にハンマがやっている行動や言動すべてが海賊やマフィアと変わらないもの。
たまに私でも驚くような行動を起こしたりもするけれど、そんなハンマの奇行も今に始まったことじゃないから受け入れることができている。
20年…私がオハラからたった1人逃されて、たどり着いた先の島で出会ってからずっと一緒にいる。
良くも悪くも昔から変わっていない行動だったから見慣れたものだけれど、もう少しくらい理性的な行動とか覚えてくれたらなと思う事もなくはない。
アラバスタでは海王類と戦っていたり、ジャヤでは町を1つ潰してたり、偉大なる航路に入ってから私では理解できない突発的な行動が増えてきてるような気がするし。たまに私のほうをキラキラした目で見てくることもあるし、あの目は絶対くだらない事を考えてるのよね。
そんなことを考えながらギャーギャー言いながら逃げ回る海賊たちと、プレゼントしてから愛用してくれている金槌を巨大化させて振り回しているハンマを眺めていたら、後ろから突然声が聞こえてきた。
「へぇ、ハンマから聞いてた通り随分といい女になったみたいじゃないの」
「………!?」「ちょっとロビン!?どうしたの?」
「あーあー、そう怯えなさんな。別にお前さんを捕まえようってわけじゃねぇよ」
「……ぃゃ」
その男を見て腰を抜かしてしまったかのように地面に座り込んでしまった。まさかこの男がこんなところにいるなんて…
心配して声をかけてくる航海士さんに答えることもできず、ただ震えながら声も出せず頭の中でハンマに助けを求めることしかできなかった。
するとその男の頭上から巨大なハンマーが振り下ろされ、私の視界は長身で見上げないと顔が見れないほどの男から鉄の塊に変わっていた。が、やはりその男には攻撃は効いておらず冷気が集まってすぐに元の姿へと戻っていった。
「…おいおい、突然攻撃するなんてひどいじゃないの」
「ロビンが俺を呼ぶ声が聞こえた。って誰かと思えば大将じゃん。こんなとこで何やってるの?」
なんかロビンが呼んでた気がしたから咄嗟にその相手を叩き潰してみたら相手は海軍大将だったでござる。
これって海軍への謀反的な感じになるんだろうか?ひとまず何もなかった事にして全力で誤魔化してみることにした。
「おいおい、お前さんいきなり攻撃とかびっくりするじゃないの」
「いやーごめんごめん。いやまさかこんなところに大将がいると思わないじゃん。俺たちちょうど海軍本部に行くところだったんだけど、まさかこんな島で会うなんて奇遇だねー」
「なんだ、センゴクさんと連絡取れてるのか?お前さんと連絡が取れないってんでこれ幸いとサボっ…新たな七武海をわざわざ探しに出てきたんだが」
本音が漏れてるじゃねーか。適当な言い訳作ってサボろうとしてたわけね。
俺が空島行ってる間にアラバスタに海軍から連絡があったのだろう。そして俺がいないから連絡が取れず、それを好機と見て「ハンマと連絡が取れない?それは大変だな。新しい七武海なわけだから大将が迎えに行くのは問題ない」とか理由付けて出てきたんだろうな。
でもこれは案外ラッキーかもしれない。このまま自転車の後ろに乗って送って行ってもらえればログを辿らずとも海軍本部まで行くことができるじゃん。
「それなら俺を送って行ってよ。海賊とゲームしてたんだけどもう終わりにするつもりだったし良いタイミングで来てくれたね」
「海賊とゲーム?もう七武海になったってのに随分と仲良くやってるみたいじゃないの」
「そうかな?俺の攻撃に耐えられなかったら負けの簡単な
「あー…やっぱお前さん七武海に向いてるわ。まぁいい。海軍本部に行く前に俺の用事を終わらせておくからちょっと待ってろ」
そう言って大将青キジは海賊たちが死屍累々で倒れ伏している方向へと向かっていった。
何の用事かわからんけど、今のうちに座り込んでいるロビンの元へと歩いていき立たせてあげておく。
少々顔色が悪いが大丈夫そうだな。そういえば青キジと会うのはオハラのとき以来だし、やっぱりまだトラウマになってるんだろうな。こんなところで会うのなら前回海軍に行った時に青キジに会ったことも話しておいて多少覚悟しておいてもらうべきだったかもしれない。
「ロビン、大丈夫?」
「ええ、大丈夫よ。ちょっとビックリしちゃっただけだから心配しないで」
「それならいいんだけどね。気分悪いなら船に戻って休んでてもいいよ?」
「そうしたいのは山々なんだけれど、あれを見てるとそうゆっくりしてられなさそうだしね」
「ルフィ!ゾロ!サンジくん!ウソップ!チョッパー!」
そう言ってロビンと一緒に青キジのほうを見てみると、なんでか今度は青キジが残ってた海賊を蹂躙しているというか凍らせてる。ロビンは何を心配してるんだ?もしかして自分も狙われてるとか思ってるのかな?
あら、ルフィたちも凍ってるわ。そういや決闘とかしてなかったっけ?ここじゃないのかな。
そうこうしてる間に青キジは残ってた全員凍らせちゃったみたいだ。残ってるのは俺たちとロビンの後ろに隠れてたナミだけになってる。ナミは仲間たちを呼んでるが聞こえてないと思うぞ。
「ハンマ、お前さんこの海賊たちをどうするつもりだったんだ?」
「海軍本部に行く手土産にでもしようかと思ってたんだけど、いらないなら放っておくかなー」
「なら持って行くのは面倒だし、ここで砕いておくか」
氷像となっている仲間を守るためナミは涙を堪えながら青キジに対峙しようとしてるけど、どう考えても氷像が1つ追加されて砕け散る予感しかしない。
あ!いいこと考えた!
「ねぇ大将。海軍に持って帰らないのならこいつら俺がもらってもいい?」
「ん?突然どういうつもりだ?」
「いや、俺が海軍本部に行ってる間ロビンが1人になっちゃうからさ。さすがに連れて行けないしどうしようかと思ってたんだけど、それならその間こいつらに預かってもらおうかと思ったんだ」
「…………こいつらは先々厄介事の種になる気がするが…まぁいいか。お前さんの大事な女が心配で、1人にさせたくないから護衛をさせるっていうんなら仕方ない。このまま本部に戻るとするか」
これでロビンが1人になる心配はなくなったな。勝手に決めちゃったけど、ルフィたちもきっとこのまま砕け散るよりはいいだろう。名案すぎて自分が怖くなるな。
俺は七武海になったとはいえ、まだあの計画を諦めたわけじゃない。そのためには海軍本部に行って挨拶してすぐ帰ってくるわけにはいかないんだ。
だからこそロビンを待たせてしまうわけだが、その間ずっと1人でっていうのも申し訳ないし良い方法が悩んでいた先にこんな機会がやってきた。
「ナミ、話は聞いてただろ?助けてやるからしばらくロビンを預かっててくれ」
「…あんたあいつと知り合いなわけ?ちゃんと説明しなさいよ」
そういえば知らないんだったっけ?ナミにあのノッポは海軍本部の大将ですごく強い事や、俺が七武海に任命されたから海軍本部に呼び出されていることを説明し、更にこのままルフィたちが砕かれるところだったが俺が海軍本部に行っている間ロビンを預けることで助けることになったことを説明した。
「そういうわけで断れば全員砕け散るわけだが、一応返事を聞いてもいいか?」
「あんた鬼ね。そんなの答えは1つしかないじゃない」
「別に悪い話じゃないだろ?お前たちの事を知ってるからこその提案だ。他のやつらだったらこんな事を言ったりせずにさっさと砕いて先に進んでるさ」
「…見方によってはあんたが七武海って立場を使ってロビンを預けてまで助けてくれるって事だし、私たちもあんたたちの事は知らない仲じゃないから確かに断る理由もないわ。でもロビンはそれでいいの?」
「まぁ海軍本部から帰ってきた後に多少お小言をもらうのは仕方ない。ただ、ロビンを傷つけたり悲しませたりしたら…………どうなるかわかってるよね?」
これで大丈夫だろう。ナミにロビンをくれぐれもよろしくねって念押ししておいたし、ナミもこのまま青キジと対峙して砕け散るのを想像して恐ろしかったのか青い顔をしてコクコクと頷いていた。これならきっと他の海賊やら賞金稼ぎなどから守ってくれるはずだ。
ロビンにはこの事を話したと同時にほっぺを引っ張られて「私がいくつだと思ってるの?いい加減子供扱いするのやめてちょうだい」と言われてしまったが…
島を出る前に俺の最初の攻撃の余波で陸に転がってるメリー号を海へと戻し、女の子2人だけで氷像になってるやつらを運ぶのは大変だろうから代わりに運んでおく。
本当は全員解凍してちゃんとみんなにロビンをよろしくねって言っておきたいところだが、どうやって解凍すればいいのかもわからんし意識が戻るまで待つわけにもいかない。
なので船に運び込むところまで俺がやって、後はロビンとナミに任せて青キジの自転車の後ろに乗せてもらい海軍本部に向けて出発することにした。
「よかったのか?」
「うん?何が?」
「海賊にニコ・ロビンを預けてきてよかったのか?」
「あいつらなら大丈夫だと思うよ。一応空島には一緒に行った仲だし、ちゃんとよろしくねって言ってあるから丁重に扱ってくれるんじゃないかな?」
「まぁ、お前さんがそれでいいのならこれ以上口を出すのも野暮だな」
青キジが自転車をこぎながらロビンを麦わらの一味に預けてよかったのか聞いてくる。俺としては一応朧げながらも原作知識として知ってる部分もあるし、これくらい問題ないと思っているが他人にはわからないことだもんな。
もちろん俺の知っているルフィたちと違う部分があるのかもしれないが、だからといってロビンに襲いかかるような事はしないだろうというのはアラバスタから空島の間に見ていてわかる。
むしろ心配なのはロビンじゃなくて俺のほうだ。
どんな結果になるかわからないが、うまくいけば中枢に食い込めるかもしれない。最悪の場合は七武海任命直後に解任でインペルダウン行きってところか。あいつらに対して海賊じゃないからなんてのは俺を守る盾にはならないからな。
実際の話ナミにはああ言ったが、無事に戻ってこれる保証がない以上信用できる相手にロビンを守ってもらいたいってのが本音なところだ。
もちろん交渉がうまくいくように頑張るつもりではあるんだけど…
分の悪い賭けは嫌いじゃないってのは誰のセリフだったかな。まぁやれるだけの事はやってみてダメならインペルダウン騒動のときに一緒に脱獄でもするか。
…って俺が黒ひげぶっ潰しちゃったから脱獄騒ぎもないんだった!