ROMAN DE ドォォォォン!! 作:霧鈴
スプーンのオールで必死に
気候が安定していたし波も静かだったから良かったけど、よく考えたら少し海面が揺れるだけで転覆の可能性があったんだよな。
ここが何ブルーかわからないけど、こんだけ気候が安定してるんだしたぶん偉大なる航路ではないと思う。
島にある港町に着いて、そこの人に聞いてみたところどうやらウエストブルーのようだ。
イーストブルーだったらフーシャ村とか行ってシャンクスに覇気を教えてもらうとかも考えられたけど、ウエストブルーだと何があるのかまったくわからない。
あと時系列に関しては、まったくではないがほとんど覚えてないので流れに身を任せようと思う。
ひとまず食堂に入り、持ってきた小銭でちょっとだけでいいからと頼み込んでお肉の切れ端を焼いてもらい、お椀に戻ってから巨大化させて食らいつく。マジでうまい!
ちなみに小銭で切れ端を焼いてくれって言ったのを同情されたのか、店のおばちゃんはタダでいいからと肉だけでなく野菜の切れ端も付けてくれた。
さすがに宿で寝られるほどお金もないのでお椀の中で一泊し、当面の資金を稼ぐのと身体を鍛えるために港で仕事の手伝いなんかさせてもらえないかを頼んでみたところ、またもや子供が1人で生きていこうとしている事に同情されたのか即決でオーケーをもらえた。
両親は?とか聞かれることもあったが、俺はこの身体の生みの親たちを知らないため「遭難して気がついたら1人だった」と言えば勝手に解釈してくれる上に、ご飯を奢ってもらったりと良い事ずくめだった。
なかなか人情味溢れる良い町だ。将来俺が
そうやって町の人の好意に甘えながら昼間は港で仕事の手伝いをして、終われば浜辺で身体や能力を鍛えたり、武装色の覇気の訓練をしたりして過ごしていた。
能力のほうも巨大化させてから手を離しても元に戻るということはなくなり、俺が意図的に戻そうと思わない限りはそのままを維持させることに成功した。物によるけど。
後は巨大化させる大きさをもっともっと大きくできるように訓練していくだけだ。
ちなみに武装色の覇気のほうはまったくうまくいかない。
腕や足に力を入れてみても、眠っている潜在能力を解放するような感じでやってみてもうんともすんとも言わない。潜在能力があるかどうかは別として。
こっちは無人島に居た頃からまったく進んでいないといってもいいだろう。
やっぱり何かきっかけがないと使えないんだろうな。そうじゃなかったら普通に戦ってる海賊や海軍が覇気使いだらけになってるはずだし。
しばらくそんな事を繰り返していたある日、浜辺にいた俺は海に2本の線があることに気付いた。
近くまで寄っていって見てみると、それは氷のようで結構遠くまで続いているようだ。
自然現象で海の上に氷の線ができるなんてあり得ないし、何か意味でもあるのかと思いずっと眺めていたら、その氷の線の間を小さな船がこっちに向かって来ているのが見えた。
じーーーっとそれを見ていたら、小粒のようだった船は小舟であることがわかり、そこに俺と同じくらいの女の子が1人で乗っている事がわかった。
黒髪でおかっぱの女の子が浜辺に着いたので、累計年齢でいえば俺のほうが年上だしと思い声をかけてみることにした。
「ねぇ、君は1人でこの島にやってきたの?」
「…うん」
「お父さんとかお母さんは?」
「……もういないの」
やっちまった!1人でボートみたいな小舟でやってきたんだから、それくらいはもっと考えるべきだった!
だがまだ大丈夫だ俺!きっとこの子もわかってくれるはずだ。気を取り直して自己紹介でもしてこの凍った空気を和ませるんだ。
「そっか…ところで君の名前はなんていうの?」
「…わたしはニコ・ロビン」
「…えっ?き、君はニコ・ロビンっていうの?」
「うん。どうしてそんな事を聞くの?」
ニコ・ロビンってあのニコ・ロビンだよな?なんでニコ・ロビンが小さい女の子で1人で船旅なんてしてるんだ?同姓同名の別人とかそんな可能性もあるのか?それともここはパラレルワールドで、この世界のニコ・ロビンは幼女枠なのか?
なんか頭が混乱してきたがとにかく俺も自己紹介しないと…って言っても俺ってこの身体の名前知らないぞ?
もういっそ適当に名前名乗るか。ロマンを目指すハンマー使いだから…ハマン、何か違う気がするな。しかも様を付けないと怒られそうな感じがする。もうハンマとかでいいや。
「いや、ちょっとどこかで聞いたことがあったかと勘違いしちゃってね。俺はハンマ。よろしくね」
「うん、よろしくハンマ」
「ロビンはこの町に何か目的があって来たの?」
「………ぐすっ」
「あーあー余計な事を聞いたよね!とにかく俺もこの町に最近来たばかりなんだけど、良かったら友達にならない?」
「…いいの?」
「もちろんさ!なんなら俺の事はハンマでも、お兄ちゃんでも、にぃにでも、好きに呼んでいいんだからね!」
「ふふ、ハンマおもしろいね」
ふう、危ないところだった。幼女を泣かせるとか犯罪者もいいところだぜ。
そこからはロビンと一緒に行動するようになり、仲良くなるのに時間はかからなかった。
これには累計年齢は別として、外見年齢があんまり変わらないというのも大きかったんだろうな。
ある時ロビンが自分は化け物だと虐められていたということを聞かされた。どうやら悪魔の実の能力があるから他人とは違うということが原因らしかった。
だが『原作知識持ち現在進行系能力者』の俺にはそんなことまったく関係ない!
てか初日からお椀を巨大化させて家代わりに使ってるのを見せてるから、もしかしたら自分と同じかもと思って教えてくれたのかもしれないな。
俺が遭難して無人島で悪魔の実を食べた事とかを話したら、ロビンも同じように自分がどうしてここに来たのかを教えてくれた。
自分が今まで過ごしていたオハラという島が、歴史を研究していたことによって滅ぼされてしまった事や、お母さんやクローバー博士といった身近な人たちがみんないなくなってしまった事。
その時に助けようとしてくれた巨人のサウロに助けられ、最後はクザンという氷の能力者に見逃されてこの島に着いたということだった。
それを聞いてやっと思い出した。ロビンの過去編じゃん!と…
つまりまだ原作始まってなかったよ。もしかしてまだルフィたちって生まれてすらいないんじゃないのか?
確かロビンってこれから賞金稼ぎやらに追われながら生きていくんだったっけか…
そのあたりは確か詳しい描写はあんまりなかったはず。俺が覚えてる限りではだけど。
…この場合どうしたらいいんだろう。どうすれば最善なのかがわからん。
てかもう超仲良しになっちゃったのに、賞金目的でロビンを捕まえるなんてできるはずもない。
そのあたりはもう適当でいいや。俺の目的は世界にロマンを知らしめることだ。
思考を放棄してなるようになるさと気楽に構えていたら、どうやらロビンの手配書がこの町にも回ってきたようだった。
町の人たちも「この子どこかで見たことがあるな」と噂しているため、さすがに気づかれるのも時間の問題だと思った俺はロビンの手を引いて走り出し、お椀に飛び乗り島を出ることにした。
「きゃっ。ハンマ、突然どうしたの?」
「ロビン、どうやらロビンの手配書が出回ったみたいだ。町の人たちも見たことがあると噂していた。追いかけられる前に島を出るぞ」
「えっ?…その、ハンマはそれでいいの?わたしを捕まえたらお金もらえるんだよ?」
「そう言われてもロビンとはもう友達だからな。それにお金なんて、今の俺ならそのへんの海賊でも叩き潰したら簡単に手に入るさ。でも友達はハンマーじゃ手に入らないだろ?」
ロビンはいずれ賞金首として世界中から狙われることを薄々理解していたのかもしれない。
涙目で自分を突き出せば賞金が手に入ると言うロビン…
友達だからと一緒にお椀の船で飛び出した俺に感極まったのか抱き着いてくるロビン…
あれだ。ロビン、いや、ロリンちゃん可愛い!!!!
この子もしかしてメロメロの実食べてるの!?
もう今の俺なら賞金稼ぎの10人や100人くらい、簡単に叩き潰せるよ!?
原作どおりに進めるべきかと悩んだけど、ロリンちゃん可愛すぎてもう手放せないよ!!
よしもうクロコダイルにもルフィにもロリンちゃんはやらん!!
てか歴史が知りたいなら、レイリーかシャンクスにでも聞けばいいじゃん!
俺がんばって頭下げて教えてもらえるように頼み込むよ!
ダメならレイリーの住んでる島とかシャンクスの船とか叩き潰してからお願いしてあげるよ!
やべぇ思考が変な方向に飛んでいった…
ロリンちゃん破壊力すごすぎだろ。
まぁ冷静に考えてもロビンを狙ってくる賞金稼ぎたちが相手なら、ロビンを守りながら実戦経験を積むことができるし、一緒にいるってだけでメリットがあるんだからまさしく一石二鳥だ。
今の俺が木槌を能力全開で巨大化させてもせいぜい10メートルがいいところだ。
しかもまだ子供の身体だから全開で巨大化させると疲労がすごい。
まぁまだ原作始まってない時期だし気長に頑張るしかないか。
お椀の船に乗りスプーンのオールで漕ぎ続けて、一旦俺が遭難した無人島まで戻ってきた。
さすがに手配書にびっくりして急いで出てきてしまったので、どこに島があるのかわからないまま海に漕ぎ出すにはリスクが大きすぎると判断したためだ。
ロビンも急に連れてこられたので、これからどこかの島に行くにしても一旦落ち着いて話し合わないとな。
「ロビン、とりあえず急いでたから俺が遭難した無人島に逃げてきたんだけど、これからどうしようか?」
「わたしがいたらきっと賞金稼ぎとかに狙われるよね…」
「いや、むしろ俺の経験値稼ぎに丁度いい。クククッ、賞金稼ぎにはせいぜい俺の糧になってもらうさ」
「ハンマ、笑い方怖いよ」
おっと、ロリンちゃんを怖がらせちゃいけないな。自重しろ俺。
森で取ってきた果実を巨大化させて、2人で食べながら今後について話し合っていく。
ロリンちゃんはどうやら考古学の博士号だけでなく、簡単な航海術についても頭に入っているようで違う島に行くくらいならなんとかなるらしい。
そっか。世界の歴史を調べたり研究したりする以上は、当然の事ながら世界地図とかも頭に入ってるってことだもんな。
そして俺がいるから食料もそこまで気にしなくても大丈夫になる。下手すりゃリンゴ1個あればルフィでも満腹にすることができるからな。
これなら後はまともな船があれば、とりあえず航海することはできるということだ。
「ねぇハンマ。わたしね、お母さんやクローバー博士たちみたいに世界の歴史を知りたいの。どうしてオハラがあんな目に遭わなくちゃいけなかったのかもちゃんと知りたいの」
「うん、知りたいと思うのは良い事だと思うよ。ロビンならきっと歴史を全部知ることができるさ」
「うん、それでね。
「もちろんさ!でも1個ロビンにお願いしてもいい?」
「どうしたの?」
「お願いお兄ちゃんって言ってみて」
「?…おねがいおにいちゃん」
「ロビンはほんと可愛いな!ロビンが歴史を知れるように、立ちふさがる敵は俺が全部叩き潰してあげるからね!」
「…ハンマってたまによくわからないね」
ふう、答えは得たよ。やっぱりロリンちゃん超可愛い。
そういや覇気のコツは疑わない事とかなんとかだった気がする。
つまりロリンちゃんがいれば俺はもっともっと強くなれるということだ!
なるほど。人は1人では強くなれないっていうのはこういうことだったんだな!
俺は今その言葉の意味を身を以て知ったぜ。
さすがに俺が