ROMAN DE ドォォォォン!! 作:霧鈴
「さてハンマ。ここには私と君しかいないわけだが、私が何を言いたいのかわかっているね?」
「うん?何が言いたいのかサッパリわからないんだけど?」
「あまり私を侮ってもらっては困るな。聖地マリージョアを襲った隕石か何かが大量に降り注いだような破壊痕、地震はその振動だろうな。そして君の能力や戦い方、七武海就任と五老星への言葉。疑わないほうがおかしいだろう?」
「元帥、俺が言いたいのはそこじゃない。それに俺は五老星への言葉を違えたりはしていないぞ」
なぜかセンゴク元帥に呼び出されて、暗に「お前がやったんだろ」と言われている。まぁちょっと考えればわかることだし別に完全犯罪がやりたかったわけじゃないからいいんだけど。
巨大な何かで叩き潰されたマリージョア、凶器は見つからない、俺はハンマーを巨大化させて戦ってる。これだけ材料があれば疑って当然だな。
「…これがお前の言っていた『行動で示す』ということだとでも言うのか?」
「では元帥。逆に聞くが、今回の出来事に対して誰が悲しむというんだ?」
「なんだと…?」
「不幸な奴隷がいなくなり、お守りをする役人は他の仕事ができ、護衛だなんだと戦力や人員を割かれていた海軍は治安維持や海賊捕縛に専念できる。ああ、奴隷を売りつけていたやつらは悲しむかもな。金づる…おっと、取引相手がいなくなって」
「……だがあそこには奴隷にされていた者たちもいたんだぞ」
「そこは言わないほうがいい。その奴隷にされ虐げられていた者たちを見て見ぬフリをしてきたのは海軍であり、それを命を絶つという形で終わらせたのは
「…………だが!」
「今回の悲しい出来事を乗り越えて、新たに民間人が七武海となり海軍と協力し、世界に平穏をではなく
センゴク元帥も思うところはあるんだろうが、俺から言わせれば海軍って組織は『正義』を語っていても決して『善』の組織ではない。
だからこそ悪しき権力者たちの大半が原因不明の天災事故に遭ってしまった今が変わるチャンスでもある。
そうすれば人々の海軍に対する評価も一転し海兵志望の者たちだって増えてくるだろうし、海兵たちはきっと正義を心に刻んで前に進んでくれるだろう。
世界政府だって天竜人の大半がいなくなって、マイナスだった評価のこれ以上の下落を止めたんだから十分だろ?
そんなことをセンゴク元帥に言ってみた。まぁ海兵たちだって本部に勤務する者たちは誰かしら天竜人の横暴を見ているし聞いているだろうから、いなくなっても喜ぶ者こそいても悲しむ者なんていないだろう。
もしいたとしても原因不明の天災なんだから仕方ない。本当に偉大なる航路の気候ってのは怖いな。クワバラクワバラ。
さて、それじゃあスピーチの言葉でも考えようかな。元帥からは「スピーチで何を話すか事前に報告しろ」と釘を刺されている。
もしこれが海賊の中での話なら「諸君、私は戦争が好きだ」とかやるんだけど、海兵たちの前と中継でやるには場違いだ。
まぁ大まかなところはさっき元帥に伝えた内容だし、多少誇張して海兵たちの正義感を煽ってやれば大丈夫だろう。
…そういえばロビンは今頃どの辺りにいるのかな?
俺が「六老星になろう計画」を思いついて、忘れないうちに実行したくて急いで来ちゃったけど…考えたらどうやってロビンと合流すればいいんだろ?
俺たちの船に電伝虫は置いてないし、メリー号もたぶん電伝虫はなかったはずだ。やべぇ…連絡を取るどころか居場所すらわからんぞコレ。
もはやぼんやりとしか覚えてない事も多くなってきた原作知識を思い出そうとしてみる…えーと、空島行ってその後どこに行くんだったっけ?見たら思い出すんだけどなぁ…こんなことならどこかに書き留めておけばよかったわ。
こうなったらロビンと別れた島まで戻ってそこからログを辿るか?でもそれだといつまで経っても追いつけそうにないな…
最悪元帥に頼み込んで送ってもらうか?海軍って偉大なる航路のどの島が次どこに繋がってるかとか全部把握してるのかな…海兵たちと一緒に偉大なる航路を進む冒険なんて気まずくて嫌だぞ。
まぁそんなことにはならないだろうが。今の俺にはロビンの代わりに知将が近くにいる。困った時は相談すれば何かしらの解決案を提示してくれるだろう。
ひとまずロビンとの合流については棚上げとし、まずは海兵たちや世界中へと放送されるはずの中継の中でどういった演説をするのが効果的かを考えることにした。
てか俺って背中で語る無骨系ロマンチストじゃなかったっけな…なんで演説とかすることになってるんだ?
キャラがブレすぎてよくわからなくなってきた。なんのキャラかわからんが…
「ハンマよ。これからお前の七武海入りを海兵たちだけでなく全世界に知らせることになる。準備はいいな?」
「ああ、もちろんだ。ちゃんと世界中にこれから時代は変わることをアピールしてくるよ」
王下七武海に加入した俺の最初の仕事だ。聖地マリージョアの事故?あれは事故だし原因不明だから俺の仕事にはカウントされない。
いよいよ海兵たちの前で、そして中継で世界中に新たな七武海加入を伝える時が来た。
本来ならば実力と知名度のある海賊がその地位につく。もしくは将来性を鑑みて今のうちに世界政府の傘下に入れておこうとした場合かな。
そして海軍からすれば七武海と言えども海賊だから一定の警戒は必要なんだろうが、俺の事はある程度事前に通達されていたようで
それにしてもセンゴク元帥は俺の情報について少々誇張して周知してあるようだった。
なんだよ…「賞金には目もくれず海賊を見つけたらとりあえず叩き潰す」とか「海賊を蹂躙する遊びが大好き」とか「近づいたらとにかく最初にハンマー叩きつけてからその後に誰なのか確認する」とかさ!
これもう青キジの逆恨みだろ!?センゴク元帥のちょっとした意趣返しも入ってるかもしれないけど、大半の心当たりは青キジじゃねーかよ!
おかげで海兵たちは海賊を見るような警戒心じゃなくて、いきなり襲いかかってこないかっていう俺からしてみれば心外な警戒をされてたわ。俺と目が合うとビクッとされるとか、おかしいだろここ海軍本部だろうが。
ちなみに三大将たちにも事前に挨拶はしておいた。
青キジは面識あったから「お前さん、面倒な事やってるな…」と呆れ顔。ちなみに俺の印象情報バラまいたのアンタだろって文句言ったら不思議そうな顔して「見たままを伝えただけだ」って言われた…
黄猿からは「がんばってねぇ」と応援してるのかしてないのかわからん声援をもらい、赤犬には「民間人の七武海じゃと?…海賊に食われんように精々頑張ることじゃけぇ」とたぶん声援の言葉をもらった。
中将たちも俺の事は聞いていたらしいが、まぁ俺が叩き潰してる相手は全部海賊とかだったから「結構暴れてるみたいだな」とかそんな事を言われただけだった。
面倒だったのは海軍の英雄ガーブ中将だ。ちょっと話の種になるかと思って「ルフィは元気にしてたよ」って教えてあげたんだけど、そこからガープ中将に捕まってしまい延々と孫自慢された。
いや自慢するのは構わんがアンタの家族全員お尋ね者になっとるがな…と思っても口には出さず、もらったせんべい食べて聞き流してた。
ガーブ中将の話を聞き流しながら思い出したが、エースって結局どうなってるんだろ?
今もまだ黒ひげ探してウロウロしてるんだろうか?もういない相手を探し続けるとかよくやるな。エースがずっと探し続ける事になったその原因は俺だが…
一応見かけたら「もう黒ひげはいないよ、やったね家族の元に戻れるよ!」って言ってあげようと思ってたんだけど、エースって偉大なる航路をログとか関係なく単独で走り回ってるからどこにいるかわからんし。
どうせだから白ひげのほうに伝えるか?でも「なんでそんなことを知ってる?」って言われても面倒だし、やっぱり放置の方向でいこうっと。
すでに海兵たちは広場に整列し話が始まるのを待っている。自分でこの場を提案しておいてなんだけど、これはなかなか見ることができない光景だな。
20年ほど前に海賊王として処刑される寸前のロジャーの言葉で大海賊時代が幕を開けた。人々がロマンを求めて、力を求めて、富を求めて、様々な人間たちが大海原の先に夢を見て海賊旗を掲げ海へと飛び出していった。
本人にどういう意図があっての発言なのかは誰にもわからないだろうが、1つの時代を築き上げた人物だと言っても過言ではないだろう。
残念なのは死の間際にそうなってしまった事だ。もし今もまだ生きていたら、更に人々に夢を魅せていたのかもしれない。
俺もロマンを求める身だ。世界中に俺の言葉を届けるなんていうこんな機会は滅多にないのだから、やはりここは俺も世界にロマンを示してみたいという気持ちが大きい。
いや、むしろこの好機を逃せば世界に知らしめることなんてできないかもしれない。
そうだよ、今すぐに世界にロマンを知らしめることはできなくても、俺という存在をまず認識させておけばいいんだ。
そのためにはただの挨拶じゃ意味がない。何かインパクトのある演説にして、みんなの記憶に俺という存在の爪痕を残さないと「ふーん」で終わってしまうかもしれない。
いや、逆に考えろ。もし演説が失敗したら力で示せばいいんだよ。と言っても海兵相手に大立ち回りするって意味じゃない。
目下、規則正しく並んでいる大勢の海兵たちの頭上を覆って余りある巨大なハンマー、これがそのまま勢いよく降ってきたら…そう思わせることができればそれだけで十分なアピールになるわ。
…なんだ、答えはこんなに近くにあったのか。
よし!やることは決まった。ここから『鉄槌のハンマ』のスタートだ!
五老星との会談で勢いのまま決めちゃったけど、なかなか良いネーミングの二つ名になってる気がする。
この鉄槌は俺の武器である金槌のことだ。そしてこの金槌はロビンからのプレゼントだ。
つまり…世間に対しては『ロビンには常に俺がいる。ロビンに何かあったら叩き潰す』という表明であり、五老星たち世界政府には『俺にはロビンがついている。お前ら大人しくしてないと古代兵器のボタン押しちゃうかもよ?』という脅しとなる。
この金槌がロビンからのプレゼントということを誰も知らないなんて事は気にしない。
そのあたりはこれからの演説でアピールすればいいだけなんだから…決してその場しのぎの言い訳ではない。
センゴク元帥の言葉が終わりいよいよ次は俺の番が来る。
こんな俺がどこまでやれるかわからんが、きっとこれが後世に名を残す偉大な第一歩になるはずだ。
一歩一歩と足を進め、海兵たちの視線を一身に受けながら壇上へと歩いていく。
気合は十分!
覚悟も完了!
演説が失敗した時の対処も用意済み!
頭に描くは前世知識にある演説の得意なキャラクターたち!
「親愛なる海兵戦友諸君!そしてこの中継を見ている世界中の諸君!私が新たに王下七武海を担うことになった鉄槌のハンマである!」