ROMAN DE ドォォォォン!!   作:霧鈴

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23.思惑の相違だドン!

 

 

『親愛なる海兵戦友諸君!そしてこの中継を見ている世界中の諸君!私が新たに王下七武海を担うことになった鉄槌のハンマである!』

 

 

 

 

 

「…始まったか」

 

「そのようだな…まったく、厄介な男が現れたものだ」

 

「だがまだ許容範囲だ。アレも使い方次第では我々にとって大きな駒となることも事実」

 

「然り…すべてを信用するわけではないが、あの男が()()()()()()()()()()()以上、今のところあの言葉が全て口先だけというわけではないのだろう」

 

「何を考えているのかなど些事よ。果たして世界の安寧を保つことができるのか、我々が求めるはその一点のみ」

 

 

世界を動かす5人の老人は、今世界中に放送されている1人の男を眺めながら話し合っていた。

 

王下七武海の一角、サー・クロコダイルが国家転覆を企み、破れたという報告は入っていた。

急ぎ次の者を選定する必要があると言っていた矢先、アラバスタ国王ネフェルタリ・コブラより1人の男が推薦されてきた。

 

聞けば海賊や賞金稼ぎでもないその男は「海賊に対する抑止とするはずの力を海賊が担うからこうなる。ならば民間より力ある者がその地位につく事こそが、王下七武海の本来の在り方ではないだろうか」と言っていたらしいのだ。

 

無論、そんな事は言われるまでもない。だが、この大海賊時代に力ある者は海軍として正義のために海兵となるか、海賊となり海を跋扈しているのだ。

 

しかし、だからこそこのネフェルタリ・コブラからの書簡は説得力のあるものだった。王下七武海の一角を落としたというだけでなく、クロコダイルは悪魔の実の能力者の中でも最強と言われるロギア系の能力者なのだ。

並の者たちでは傷つけることすらできず敗れるだろう、そのロギアの能力者を相手にして一方的に勝ったというのは確かに捨て置くには惜しい人材とも思える。

 

センゴクに見定めるようにと伝え、その結果「思想、思考に反乱の予兆なし」との事だったので王下七武海へと任命してやれば、今度はセンゴクを通し「五老星と会談がしたい」ということだった。

 

 

 

「しかし、思い返しても厄介な男だったな」

 

「どこまで知っているのか…底の見えないヤツよ」

 

「だがセンゴクの懸念は至極当然のことだ。今のうちに枷を付けておきたいというのは妥当な判断だな」

 

「その枷がどこまで縛れるものかが疑問だが…もはや過ぎた話か」

 

「うむ、我らは約定を果たした。ならば次はヤツの番だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

王下七武海の面談の一環として五老星との会談が行われた最後、五老星は別室にて元帥の監視の元待機するその男を残し最終判断を話し合っていた。

 

「センゴクはなぜあの男を推すような言動をしたのか…」

 

「最初に海軍本部でヤツと話したのはセンゴクだ。何か意図があっての事だろう」

 

「だが新世界で通用する程度ならば他にも多くいる。無論海賊や賞金首ではない力ある者が抑止力となる事は望ましいことではあるが…」

 

「いや待て。ヤツの言っていた能力を考えればセンゴクの懸念も理解できる。ならば今のうちに取り込んでおかねば厄災へとなりかねん」

 

「何を…いや、そうか。確かにその通りだな。まったく面倒な組み合わせだ」

 

力があるだけならば他にいくらでもいる…確かにそうだろう。偉大なる航路には懸賞金が億を超える者たちも多くおり、多種多様な能力者たちがその覇権を求めて研鑽している魔の海なのだから。

だが五老星はその男との会談の内容を思い返し、ハンマという男の危険性を理解した。いや、ハンマとニコ・ロビンという2人の危険性と言うべきか。

 

答え合わせではないが、五老星たちは己等の行き着いた答えを口にしていく。

 

「まず最初にあの男が自ら言った能力である『心の声を大きくして聞くことができる』について、これは真偽のほどはわからぬ。ただ、センゴクの二つ名である『仏』という名が悪魔の実の能力にかかっているのかと言っていた以上、やはりそういった能力の使い方ができるのかもしれん」

 

「うむ、何よりヤツはあの一族の呼び名を我々の前で口にした。よもや偶然であるはずもないな…次にオハラの生き残りであるニコ・ロビンについてだが、恐らく古代兵器の情報を知っているのは間違いないだろう。何よりもヤツらはクロコダイルを()()()()()()倒している。先程あの男は我々に古代兵器を悪用しないような言い回しをしておった。単なる口先だけとも取れるが…」

 

「そんな言葉は何の保証にもならぬ。それにヤツは言っておっただろう。オハラの生き残りに手を出せば持てる全ての手段を使うと…それは逆にあの男に何かあった場合はオハラの生き残りもまた手段を選ばぬという事だろう。つまり互いが弱みでもあり逆鱗でもあるということ…」

 

「あの男は自身の能力で、オハラの生き残りは古代兵器でお互いを守っているということか。それだけならばまずはオハラの生き残りを始末し、あの男には大将なりを向かわせて抑えれば済む話ではあるのだがな…」

 

「まったく厄介な組み合わせだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のだから…いや、だからこそ敵対しないための措置として、そして我らの管轄下で動向を把握しておくための七武海か。センゴクがあの男を引き込もうとするような言動もそこだろうな」

 

 

古代兵器は世界にとって危険となる。そして何より古代文字を扱えるというのが問題だ。だがその古代兵器を呼び起こす可能性のある人物の隣には、同じような災害を巻き起こしかねないだけの力を持った男がいた。

 

大きくする能力…これだけならば、そして今まで使用されてきた能力の使い方ならばまだ良い。

 

しかしその力を制限せずに使った場合、被害を考えるのも馬鹿らしいほどのものとなるだろう。少なくとも報告では海賊船を、その船を覆うほどの巨大なハンマーで叩き潰しているらしい。

片手で持てる程度の金槌がそれだけの大きさになっているのだ。つまりヤツの能力の上限が100倍や200倍程度の大きさではないことは明白だ。そして目撃の報告がある以上は少なくともそれだけの巨大化が実際にできているというのは間違いない。

 

もしそれを大砲などに使われた場合など、どうなるか見当もつかないのだ。仮に少なく見積もって100倍にできたとして、30cmほどの砲弾だった場合はその能力で30mの砲弾となって飛んでくるのだから。そして200mの射程の大砲だった場合、20km先から飛んでくるかもしれない。そう単純なものではないが、脅威のほどは察して余りある。

 

更にあの男はクロコダイルすらも倒しているところから、覇気も自在に使いこなしている可能性が高い。

そんな男が形振り構わず暴れだしたとしたら、例え海軍であろうと一筋縄ではいかないだろう。

 

そして本人が言っていたような『負の心』を大きくするなどできるのならば、争いを巻き起こし世界中を混乱に陥れるなど容易いものだろう。

 

世に現れた時から海賊を狩り続け、更にはあの一族の名を持つ者すらも葬っている…確かにそれだけの力を持ちながら我々に対しては『仲間に入れてもらおうと思ってきた』と言っていたのだから、語っていた言葉にも一定の信憑性はあるのかもしれない。

 

言葉通りに受け取ればそんな大きな力を持つ上に、どこまでかはわからないが世界の秘密を知るほどの者が助力しに現れたとなる。当然ながらそんな風に受け止める者は1人もいなかったが…

 

 

そして問題はすぐにやってきた。

 

 

夜中、突然大きな振動が聖地マリージョアを襲ったのだ。地震など起こるはずがないにも関わらず、まるで何か巨大な物が降り注いでいるかのような爆音と振動、そして悲鳴が続いていった。

すぐさま聖地にいたサイファーポールの人間が事態の把握に向かったが、夜中で視界が悪い上に天竜人たちの建物は全壊しており生存は絶望的だろうということだった。

 

翌朝には海軍本部からも海兵を呼び寄せて調査を行ったが、やはり原因はわからず不明のままとなった。

最初は過去にもあった天竜人襲撃事件の再来かと思われたが、奴隷たちを逃したような形跡はなく天竜人諸共葬られていた。

天竜人に対して、マリージョアに対して襲撃を仕掛けてきたのであればこのパンゲア城を残しておくというのは有り得ない。

 

つまり世界貴族は必要ないが世界政府は必要としているということか…

 

当然の事だが、この聖地マリージョアの警備は厳重なものである。もちろん過去にも例があるように、まったく外部からの侵入者が入れないというわけではないが。

 

サイファーポールは今回の襲撃を行いそうな海賊などを洗い出しているが、聖地マリージョアの周辺に海賊船などは近寄っておらず今回のような襲撃をできるような相手は見当たらなかった。

五老星の元へも当然原因不明として報告が上がってきているが、犯人など予想するまでもないことだった。

 

王下七武海として突如現れ、どこまでかはわからないが明らかに何かは知っている男…五老星に対しては敵対こそしていないが、味方というには謎と危険が大きすぎる。

 

まず間違いなくヤツだろう…()()()()()()()()()というだけということか…

 

他の天竜人たちは奴隷も建物も全て壊滅させられているのに、パンゲア城と城にいた奴隷などは何もされていないのだ。

それはつまり、これだけの被害がありながら世界政府の機能は停止していないということ。

これが意図されたものではないというほうがおかしい。

 

もちろん世界貴族である天竜人たちがいらぬ恨みを抱かれていたという可能性もないことはないが、それなら自分たちもその対象に入っているはずだしその線はないのだろう。

今すぐにでも呼び出して問い質し、返答如何ではインペルダウン送りにするということも頭に浮かんだ。

 

だが、用意周到なあの男は「世界中に新たな七武海を海軍と共に知らせる」という案によってその選択肢を断つつもりだろう。すでに海軍や政府はその準備に取りかかっているし、内部ではもう周知されている。

 

ここで七武海任命を取りやめインペルダウンへ送るとなると、様々なところでいらぬ誤解を招きかねない上に均衡にすら新たなヒビを入れる可能性もある。

更にオハラの生き残りがどういった行動に出るかも懸念される上に、あの男から聞いた場所を辿り世界政府の役人が探しだした事で判明した、オハラの生き残りがいる場所は()()()()()()()()()()()()というではないか…つまり今、影の諜報員が在り処を突き止めようとしている()()にも手をかけようとしているのかもしれないのだ。

 

ならば非常に忌々しいことだが、今は静観していてやろう。

 

 

 

 

 

 

 

そんな、新たな七武海となった男の演説が終わりを迎えた。その映し出される映像を見ながら五老星の面々は渋い表情を崩さない。

 

「どうやらヤツは扇動も得意のようだな。ただ海賊を打ち倒し七武海の責を全うだけすれば良いものを…忌々しい男だ」

 

「我々に対してあれほどの大言を吐いたのだ。あの程度はヤツにとって予定調和なのだろう」

 

「原因不明の事故などと、どの口が言うか。面の皮が厚い道化めが」

 

「ヤツが本当に真実を知りながらも我々の元に来たのであれば、これ以上は余計な事を起こすまい。そうでなければ最初から来なければ良いだけの話なのだからな」

 

「うむ、ならば我々はあの男1人に目を奪われている場合ではない。そう、全ては…」

 

 

 

 

「「「「「世界の安寧のために」」」」」

 

 

 

 

 

 

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