ROMAN DE ドォォォォン!! 作:霧鈴
今回は1つの状況をロビン視点>ハンマ視点で書いています。
ハンマが無事に帰ってきてくれた。
別に常に一緒にいるわけじゃないけれど、今回はいろいろとありすぎてすごく長い時間離れていたような気がするわ。
いろいろと話したい事があるのに、私に関する部分での変化が大きすぎて戸惑っているのかうまく言葉が出てこない…
何も知らない人からすれば私はただの賞金首。だけど古代兵器の存在なんかを知っている人からすれば私は、そんな危険物を蘇らせる可能性のある危険人物だと思われていることを知った。
なのに今度はそれを世界中に否定するかのように、世界政府が私の懸賞金を取り消してしまった。いいえ、正確に言えば取り消させた。
「ねぇロビン。ロビンの懸賞金取り消しになったんだけど、それって聞いてる?」
「ええ、政府の役人が突然やってきて、それだけを伝えられたわ」
「「…………………」」
いつも通り食事の準備をし、いつも通りハンマと一緒にご飯を食べる…だけど普段なら雑談しながら食べているはずなのに、いつも通りの言葉が出てこない。
ありがとう、なんて言葉では足りないくらいの事をハンマは私にしてくれている。
世界政府の役人が、
世界政府という巨大な相手に対して、ハンマがやったことがどれだけ大変だったのかなんて想像もつかない。1つ間違えればハンマだって犯罪者にされていてもおかしくないほどの綱渡りの交渉だったのだろう…というくらいしか私にはわからない。
世界政府に対して、どれだけの覚悟でどんな交渉をしたのかがわからないのに、私から「どんな話し合いだったの?」なんて簡単に聞いてもいいのかもわからない。だって、きっとハンマが世界政府と交渉したのだって、私のために頑張ってくれた事なんだもの。
だからせめて「大変だったよ」って言ってくれれば…話を聞くくらいしかできないけれど、それでも話すことによって内に抱え込まずに済むのであればと思う。
でもわざわざハンマにこれ以上気を使わせるわけにもいかないわね。いつも通りに聞けば、きっとハンマもいつも通りに答えてくれるはずよ。
「ハンマ…あなた、他に私に何か言うことがあるんじゃないかしら?」
「……え?」
「他に私に何か言うこととか、話しておくこととかない?」
「……心当たりしかなくて、どれの事なのかサッパリですハイ」
いつも通りのつもりだったけれど、やっぱり余裕がないのかなんだか問い詰めるような言い方になってしまったわ…それよりもちょっと聞き逃がせない答えが返ってきたのだけれど?
心当たりしかない…ちょっと待って。まさかと思うけれど、聖地マリージョアであった『地震』って…ハッキリと脳裏に思い浮かぶ光景になんだか頭が痛くなってきたわ。
あの巨大なレッドラインで地震なんて初めて聞いたんじゃないかしら?とか思っていたけれど、まさか…いえ、なんだかその答えを聞くのが怖いからそれはいいわ。きっと私には馴染みのあるリズムの地震だったことでしょうね…
私に何も言わずにさっさと青キジの自転車の後ろに乗って出かけていくと思ったら、まさかそんな事を考えていたの?
まぁそれは置いておきましょう。きっとただの地震だったのよ。それ以外考えられないわ。
それに知りたいのはそこじゃないもの。言いたくないのなら無理には聞かないけれど、七武海の説明を聞きに行って世界政府と交渉することになった経緯くらいは知りたいわ。
「海軍本部に行くって言ってたのに、世界政府と話をしてくるなんて驚いたわ」
「あー、それね。ちょこっと元帥に頼んだら快く承諾してくれたよ。五老星たちも俺の事を理解してくれてるみたいで、口より先に行動で示せっていう感じだったんだよね」
「そうなのね…」
まるで大したことじゃないようにすごく軽く言ってくれるけれど、元帥に頼んで世界政府のトップである五老星と会うなんて普通じゃ考えられないわ。
それだけでも普通じゃないのに、懸賞金の解除までやってのけてる。まさかと思うけれど、何かを犠牲にしたの?
そういえばあんな演説なんて世界政府や海軍らしくないわね。いくら民間人からの王下七武海だと言っても、それを中継までして知らしめる必要なんてないはず。
中継で言ってることはハンマらしい部分もあったけれど、まるで海軍と七武海は共にあるという事を示すためのプロパガンダのような…七武海と祭り上げながら実は使い潰すつもり?
それを承知でハンマは…まさか自分を犠牲にでもしたというの?
私とハンマは一緒にいてもう20年…子供の頃から今に至るまで、ずっとハンマは私を守ってくれている。それは海賊や賞金稼ぎなどから守ってくれているだけじゃない。
本当なら一番恐ろしいであろう『孤独』からも私を救ってくれた。
もうそれだけでも十分に大切にされていると理解しているけれど、それだけじゃなく今度は世界政府によって犯罪者に仕立て上げられた懸賞金すらもなくしてしまった。
すでにハンマから受けている恩は、もう返しきれないほど大きなものになっている。
せめて私もハンマを少しでも助けられるようにならないといけないわね。でもどうしたらいいのかわからない。
私も今まで通りじゃなくもっと違う考え方をするべきかしら?ハンマのような突拍子もない事は思いつく自信はないけれど、視野を広げて物事を考える必要はあるのかもしれない。
「ねぇハンマ。私はこれから変えていくべきかしら?」
「うーん…そうだな。ロビンは今のままでいてほしいな」
「……わかったわ。ハンマがそう言うならそのままでいくわ」
そう…ハンマは今の私のままでいいって事なのね。考え方を変えていくべきかって聞いた答えが「今のままでいいと思う」といったような意見ではなく「今のままでいてほしい」って言ったってことは、ハンマがそう望んでいるということ。
そう言ってくれるのなら、私は今の私のままでいながら守られるだけじゃなく隣に立てるようになってみせるわ。
悩むのはもうお終い。心配かけてごめんなさい。ちゃんと今までと同じいつも通りの私に戻るわね。
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海軍本部からウォーターセブンのロビンの元へと戻ってきたわけだが、なんかロビンの様子がおかしいというかそっけないというか…
いつもなら微笑みながら「お疲れ様」とか言ってくれるのに、今日はなんだか違う気がするんだよな。
俺なんかしたっけ?五老星にロビンの懸賞金を取り消しにしてもらって、戻るのにちょっと時間かかりそうだったから先に教えといてあげようと思って伝言お願いしたくらいだよな。
…これはもしかしてちゃんと伝言しなかったのか?さては政府の役人どもはサボりやがったな?
きっと役人たちは「なんで俺たちが元賞金首に懸賞金が取り消された事を伝えなくちゃいけねーんだよケッ」とか言ってバックレやがったんだ。
それならロビンの態度も納得だ。なんの成果も言わずに戻ってきたから「あなた何しにわざわざ行ったの?」ってことか。
確かに六老星にもなれてないし、懸賞金の取り消しだって別に大した成果ではないもんな。
これであの演説とか見られてたら羞恥死するかもしれないわ…
ロビンに「あなた何やってるの…?」とか冷めた目で見られかねん。違うんだ…ついテンション上がってしまっただけなんだ。
「ねぇロビン。ロビンの懸賞金取り消しになったんだけど、それって聞いてる?」
「ええ、政府の役人が突然やってきて、それだけを伝えられたわ」
「「…………………」」
あれ?政府の役人は仕事してたみたいだ。くっ、それならなんでロビンは何も言ってくれないんだ…?
俺の予想では「あら、私の懸賞金を取り消してくるなんてすごいじゃない。あなたも力ずくだけじゃなく交渉も上手になったのね」とか褒められると思ってたのに。
「ハンマ…あなた、他に私に何か言うことがあるんじゃないかしら?」
「……え?」
「他に私に何か言うこととか、話しておくこととかない?」
うそぉぉぉぉぉぉん!?もしかしなくてもロビン怒ってるの!?
もしかして俺が五老星との交渉のカードに使った「俺に何かあればロビンさんが黙ってないぜ?」を見透かされてるのか!?それとも黙っとくって約束だった古代兵器の話を出しちゃったからか!?なんでその場を見てないはずなのにバレるんだ……これが見聞色の覇気か!?
違うんだ!あれは
それとも五老星への要求がまだ足りなかったのか?ロビンだったら
くそ…俺はまだまだ精進が足りていなかったらしい。策士策に満足するってやつか…
あとは…あれか?ないとは思うけど勝手に懸賞金をなしにしちゃったのがマズかったのか?
実はロビンって心の中では「ふふふ、私は8900万ベリーの賞金首なのよ」みたいな感じで格下賞金首たちを見ては愉悦ってたのか?それなら怒ってるのも納得できる。…まぁこれは冗談だが。
いろいろと心当たりはあるがどうしたらいいかわからない。とりあえずわからないならわからないと言わないとロビンもわからないと思い、そのままを伝えてみることにした。
「……心当たりしかなくて、どれの事なのかサッパリですハイ」
「海軍本部に行くって言ってたのに、世界政府と話をしてくるなんて驚いたわ」
「あー、それね。ちょこっと元帥に頼んだら快く承諾してくれたよ。五老星たちも俺の事を理解してくれてるみたいで、口より先に行動で示せっていう感じだったんだよね」
「そうなのね…」
なんだそんな事か。まぁ考えてみればロビンは俺が聖地マリージョアや海軍本部で何をやってきたかなんて知ってるはずないもんな。
世界政府だって原因不明の地震で天竜人が死んだとかニュースにしないだろうし。いや、俺が演説で言っちゃってた気がするわ…まぁそれだけで俺がやったなんてわかるはずがない…ないよね?
それにあの演説も世界中に中継されているとはいえ、俺たちの船にもルフィたちの船にも映像電伝虫なんてあるわけないから知ってるはずもない。
「ねぇハンマ。私はこれから変えていくべきかしら?」
ロビンから突然「変えていったほうがいい?」なんて抽象的なふわっとした質問が飛んできた。正直言って「何を」変えたいのかを教えてほしい。
普通なら何を?って聞き返すんだろうが、俺の明晰な頭脳と今までのロビンとの付き合いの長さがあれば何をと聞くまでもなく聞きたい内容が理解できる。
つまりロビンは…イメチェンするべきか悩んでいるんだ!
本来ならば賞金首として海を進んでいくはずのロビンなわけだが、今のロビンは懸賞金を解除されて普通の女の子となっている。
そして俺だけしか知らない原作知識では、2年後のロビンは髪を上げているんだ。原作ロビンが何を思って2年の間にイメチェンしたのかはわからない。今はまだ2年後ではないが、うちのロビンは懸賞金を解除され普通の女の子になったのを機会に髪型を変えたりしたいと思ったんだろう。
もちろん懸賞金が解除されたからといってすぐにみんながそれを知るわけじゃないし、変装じゃないけど周囲からのいらん疑いを避けるためって意味もあるのかもしれないが。
だが本当の理由はそこじゃない。それらを建前にしながらもオシャレしてみたい的な乙女心な心境があるんだろう。「変えてみたいけど、でもなんか踏ん切りがつかないわ」みたいな。それを身近にいる俺に同意してもらい背中を押してもらいたかったんだな。
てことはあれだ。海軍本部から戻ってきてから、なんとなくいつもと空気が違ったのはロビンがそれを言い出すタイミングを見計らってたってことだ。
もしかしてナミが髪型変えてたり、ウォーターセブンで待ってる間にそのへんの女の子の髪型とか服装とかを見て内心では「いいなー」とか思ってたのかもしれないな。
そしてついにロビン自身も普通の女の子になれたから、今まであんまり考えてないようにしていた乙女心が刺激されたってことか。
なーんだ。わかってみれば大したことじゃなかったわ。
いやロビンからしたら多少の変化はあれども今までずっと同じような髪型だったわけだから、そこに変化をつけるっていうのは大きいイベントなのかもしれない。
道理で俺のことを褒めてくれないと思ったよ。つまり自分の事でいっぱいいっぱいになっちゃってたんだな。
一応今まではちょこちょこ服屋とか行っていろいろと似合う服とかは買ってたりしたけど、やっぱり他人から勧められるよりも自分の感性で良いと思った物を着たりしたいよな。
でも「自分は賞金首だから」っていう部分が知らないうちに自分を抑圧してしまっていたんだろう。
髪型もたまに提案したりしてたけど「このままでいいわ」ってやんわり断られてたし、でもそれが解き放たれたのが今っていうことか。
…だがすまないロビン。期待を裏切るようで悪いが、実は俺は『前髪はあったほうがいい派』に属しているんだ。
あとたまに料理作ってくれたりしてるときに、後ろをくくってるのとか好きなんだ…黙っていたけど実は『たまに見えるうなじっていいよね協会』の会員でもあるんだ。
俺だってできればロビンの希望に沿う答えを返してやりたい…返してやりたいところなんだが、今回ばかりは俺のわがままを通させてもらうつもりだ。
断腸の思いとはこの事かと思いながらも俺の答えは1つだけだ。そして俺たちの間に余計な言葉は必要ない。
きっとロビンならわかってくれると信じて俺の気持ちを伝えよう!でも即答したら何も考えてないっぽいから少々悩む仕草を見せて…
「うーん…そうだな。ロビンは今のままでいてほしいな」
「……わかったわ。ハンマがそう言うならそのままでいくわ」
やっぱりロビンだな。俺の気持ちをよくわかってくれているようで何よりだ。
しかしあれだな…これが所謂『原作を変える』ってやつか…これが後々どういったバタフライエフェクトを起こすのかわからないが…って髪型変えないくらいで何も起こるはずないわ。
つい、女の子が髪型を変えるのは大きな決断だ…みたいな知識に流されるところだった。しかもよくよく考えれば確かそれって失恋じゃねーか!
もしうちのロビン泣かせたやつがいたら、即刻叩き潰してハンマーの頑固な汚れにしてやるわ!