ROMAN DE ドォォォォン!!   作:霧鈴

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38.

 

 

 

今、俺の目の前には白ひげ海賊団の2番隊隊長である火拳のエースが捕まって座っている。

 

なんでこいつがここにいるかというと…部下たちが賞金首を捕まえて修行するのに、シャボンディ諸島だけじゃ飽き足らずウロウロと海に出たのが原因だったらしい。さらにその海に出る原因は魚人島に行く前に「偉大なる航路をウロチョロしてみれば?」っていう俺の言葉だった。その言葉通りにどこかの無人島でキャンプしてたらいつの間にか参加している男がいて、そのまま騒ぎながら一緒になって飲み食いしてたら突然寝たんだそうだ。

 

上半身裸のその男の背中一面にはまるで見せつけているかのように白ひげのシンボルが描かれていて、ついでにバロックワークスにいたヤツらなんかは手配書もちゃんと見ている。更にいくら新世界の海賊だからといって…いや、新世界の海賊だからこそ、その戦い方や武勇伝なんかは前半の海だろうと伝わってくるもんらしい。

 

普通に戦って勝てるわけがないとわかっていたようで、さすがにどうするべきか迷った部下たちは『とりあえず捕まえてハンマさんに決めてもらおう』となったということだった。起きている時に襲いかかれば返り討ちになっていた可能性のほうが高かったが、寝てるそいつに海楼石の手錠をかけるのは簡単だったって報告された。

 

なんで海楼石の手錠を持ってるかって?海軍から受け取るのをこいつらに任せてたからだ。

 

そして俺を呼んでくるヤツと見張りをするヤツに分かれて俺の到着を待っていたらしい。

 

もちろんそいつも起きてから抵抗しようとしたらしいが、海楼石の手錠のせいで能力は使えないし…暴れようとしても痺れ薬とかを使われてまともに抵抗することをさせず簡単に連れてくることができたということだった。

 

それを聞かされて思った事は『こいつがここで出てくるかぁ……』だ。

 

いくら俺でも七武海や六老星になろうとしたり戦争を回避しようとしたキッカケの人物の事はまだ忘れてない。こいつが黒ひげに負けて海軍に連行され処刑される事になったからあの戦争が発生したんだからな。魚人島ではいつか白ひげをぶっ叩いてやると思ってたけど、まだその時じゃないとわざわざ回避したはずの戦争を起こしてやるわけにもいかんよなぁ……

 

「とりあえず初めましてだな。俺は七武海の鉄槌…でわかるか?」

 

「あぁ…噂くらいはな」

 

「ならいい。んでポートガス・D・エース…お前はなんで前半の海にいたんだ?」

 

一応俺の頭にあるあやふやな知識との違いがあるのか確認のために聞いてみたがだんまりを決め込んで答えようとしない。尋問なら脅すなり矢継ぎ早に詰問するなりすればいいんだろうけど、しばらく黙って待ってみたことで何か変わったのかエースが重い口を開いてくれた。

 

その結果エースの部下だったティーチが仲間殺しをして逃げたのを追っていて、ところがある時からまったく足取りを掴めなくなったということだった。それでも手当り次第に走り回って探してみたが一切痕跡も見つからず、新しい情報を求めると共に新世界との境であるシャボンディ諸島の近くへと戻ってみることにしたらしい。

 

なるほど…そこでバーベキューしている俺の部下(仮)がいて、一緒に盛り上がっていたら捕まったのか。

 

「エース、お前の探してる黒ひげは俺が殺しちゃった」

 

「……は?」

 

「お前の探してる黒ひげは俺が殺しちゃった」

 

「2回言うんじゃねェ!それは…本当なのか?」

 

「死体はない。地面のシミになってるからな」

 

別に隠す理由もないので俺がやったと教えてやったんだが、あまりの衝撃になかなか信じられないようだ。まぁ仇のはずの相手がミンチどころかシミになってるとか普通は思わないもんな。でもそうか…今考えれば俺はエースの代わりに仇討ちをしてやったわけだ。つまり白ひげにとっても俺に大きな借りができたと言っても過言ではないかもしれん。

 

「そうか…」

 

「そういうことだ。思い残すことがなくなって良かったな」

 

「…なんだと?」

 

殺された仲間の事を考えていたのか知らんがエースよ、今の状況で思いを馳せている余裕があるのか?仲間が誰もいない中で更に海楼石の手錠で能力も身動きも封じられて、しかも周りは七武海の俺とその仲間たち…どこをどう考えても人生の詰みだろ。

 

「ハンマさん、でも白ひげって仲間の死を許さないって噂じゃ…」

 

「そんなもん誰だってそうだろ。俺だってお前らが死んだらたぶん仇討ちくらいするぞ」

 

「ハンマさん…そうじゃなくって、下手したら戦争になるんじゃないっすか?」

 

周りでこの状況を固唾を飲んで見守っていた1人が戦争を示唆してくるが、こいつらにとってその心配は当然だろうな。この世界じゃないけど実際に戦争になったしね。じゃあ戦争が怖いからエースをこのまま見逃すのかと言えば、そんなことをしていて新世界でやっていけるわけもないしそんなつもりもない。

 

それに海軍に引き渡すくらいならビッグマムやカイドウに『ポーネグリフと交換』でエースを渡したほうが俺とロビンにとってメリットがでかいだろう。あいつらに「ロジャーの息子やるからお前の持ってる石碑くれ」って言えば納得してくれるんじゃないだろうか。

 

その結果ビッグマムやカイドウと白ひげが戦争になったところで海軍も政府も困らんだろ…たぶん。

 

もしそれすらもせずに今度の戦争になるかもしれない火種を取り除く方法があるとすれば…例えばエースを殺して、死体を白ひげのところに持っていって「エースは勇敢に戦った。最後の言葉は『すまねぇオヤジ…』だった」とか言えばいい。そんで黒ひげは俺が殺したって言えば、そこに嘘は言ってないしバレないだろ。

 

これならエースは穏やかにフェードアウトし、白ひげ海賊団はエースを悼むだけで済む。

 

とりあえず『ポーネグリフ引換券』にするか『亡骸との涙の再会』にするかはロビンに決めてもらおう。

 

「ねぇロビン。エースを殺して白ひげに送り届けるのと、ビッグマムやカイドウが持ってるだろうポーネグリフと交換するならどっちがいいと思う?」

 

「ビッグマムやカイドウがポーネグリフを持っているの?」

 

「それはわかんないけど、持ってないのなら交換しなければいいだけじゃない?」

 

「……白ひげはポーネグリフを持っていないような話し方だけど、それで言うなら白ひげも持っていても不思議じゃないんじゃないかしら」

 

っ!?そういえば白ひげがポーネグリフを持っていないかどうかなんてわからないんだ!

 

そう考えると話が変わってくる。やっぱりロビンに相談して良かったぁ…確かビッグマムとカイドウは本拠地というか自分の城を持っているけど、白ひげがどうなのかなんて聞いたこともなかったや。白ひげの縄張りなんてどこからどこまでなのかもわからんし、せっかく情報が手に入る札を持ってるんだから切り捨てるにはもったいないが過ぎる。

 

それにいくら白ひげでもエースの死体を持っていったからって自分が持ってるポーネグリフを見せてくれるとは限らない。それなら生きているエースを持っていったほうが好感度は稼げるだろう。

 

しかしそうなるとエースがどこかでヘマやらかして捕まる可能性だって残ったままになるが、もうそうなったらそうなった時だ。どうせアレコレ考えたところでうまくいく保証なんてないんだから当初の予定通り俺が強くなれば何も問題ない。

 

ただ何もせずにこのまま白ひげに引き渡すのもアレだから、悪いが保険だけはかけさせてもらおうか。

 

「エース、今から俺と決闘だ。俺が勝てば白ひげのところに戻って大人しくしてろ。少なくとも白ひげが死ぬまで傍にいろ」

 

「…おれが勝てば?」

 

「このまま解放してやる。それじゃいくぞ!」

 

「待て!その前にこの手錠を…ゴブッ」

 

フハハハハ!俺はエースの焦った声なんて聞き届けずにそのままハンマーを振り下ろしてやった!

 

悪いが俺は「今から」と言ったぞ?海楼石の手錠を外してからなんて言ってねェ!むしろ覇気も使わず巨大木槌で殴っただけ温情ある采配だと感謝してもらいたいもんだ。周りは「さすがに汚ェ…」とか「相変わらずえげつねェ…」とかドン引きしてるけど、なんでお互いが万全の状態でヨーイドンだと思ってたんだ。

 

そもそもお前らだってシャボンディ諸島で容赦ない海賊狩りしてただろ…そのせいで海軍からもシャッキーからも文句言われたんだからお前らに言われる筋合いはないはずだぞ。

 

それにこれでエースはフラフラすることなく白ひげの船にいることになり、俺たちは白ひげからポーネグリフを見せてもらえる。持ってなかったとしても『持ってない』ということがわかればそれでいいんだ。

 

「うっ…ぐぅ…」

 

「起きたか?決闘は俺の勝ちだな」

 

「クソ…」

 

意識を取り戻したエースに勝ちを告げてみたが文句はないらしい。ここでゴネるなら言葉責めでもしようかと思ってたけど、さすがに思うところはあれど言っても仕方ないということは理解できていたようだ。

 

このまま白ひげの船に連れて行かれると考えているんだろうが、それは甘いぞエースよ。

 

とりあえずこの無人島に居ても仕方ないしそろそろ移動しよう。

 

「ロビン、それじゃシャボンディ諸島に戻ろっか」

 

「ええ、まさかこんなことになるなんてね」

 

「白ひげがポーネグリフ持ってるといいね」

 

「高望みはしていないけれど…ええそうね、あるといいわね」

 

みんなでバーベキューの片付けをしつつ船出の準備をしていくが、それを見ているエースは少し驚いたような表情をしていた。こいつもまさか俺たちが後片付けまできちんとしているとは思っていなかったんだろう。

 

バロックワークス時代の部下たちは俺が率先して暴れていたせいで荒事よりもサバイバルに長けているからな。しかもそれぞれにきちんと役割分担ができていて、1つの集団としては非常に練度が高いと言っても過言ではない。

 

これで新世界での自衛ができるくらいになれればロビンが心配している事もなくなるんだけどなぁ…

 

 

 

……

………

 

 

 

「ただいまシャッキー!」

 

「おかえりなさい。今度はどこに行ってたの?」

 

「ちょっと迷子を拾ってね。ところで白ひげと連絡取れないかな?」

 

「それは…あなたたちの後ろにいる彼が関係しているってことでいいのかしら?」

 

シャッキーからミルクを出してもらいつつ、ついでに白ひげと連絡取れないか聞いてみたんだけどエースの事気になるよね。ここにいるのは俺とロビンとエースだけだ。部下たちは休んだり遊んだり、飯食ったり海賊捕まえたりしてるらしいから放っておいてる。

 

一応部下が捕まえて紆余曲折あった末に白ひげのところに戻すことになったと教えてあげて、ついでにエースにも何か食べ物を用意してもらえるように頼んでおいた。無人島ではバーベキューを食べたものの捕まってからは何も口にしていなかったらしく、エースの分もちゃんと用意しても毒を警戒してなのか食べなかったと聞いている。

 

まぁそれは当然の反応っちゃ反応なんだけどさすがにぼったくるけどお店であるシャッキーの料理なら食べないってことはないだろう。

 

「エース、この店はぼったくりバーだけど美味しいから食べとけ」

 

「…せめて食いにくいから手錠外してくれよ」

 

「いやお前自分の立場考えろよ」

 

背中にデカデカと白ひげ海賊団のマークを背負ってるヤツと俺が仲良く歩いてたら「鉄槌は白ひげと秘密裏に結託している」とか言われるかもしれないだろ。それでも手錠付けてる状態で襲われたらひとたまりもないだろうからって連れてきてやってるんだからむしろ感謝してほしいもんだぞ。

 

さすがに後ろ手に手錠なんてかけてるエースに「あ~ん」とかする気にもなれんし、されたエースもイヤだろうから手錠は前にしてやってるんだ。

 

「ふふっ、鉄槌ちゃん。あなたって本当に見てて飽きないわね。次は何をしでかすのかしら」

 

「割りと普通の事しかしてなくない?どっちかっていうと七武海になってから務めも果たしてないくらいにゆっくりしてるつもりなんだけどね」

 

「ハンマはそう思ってるかもしれないけど、見ているほうはそうは思わないものなのよ」

 

どうやら俺が思っているよりロビンは別のことを考えてたりするのかな?少なくとも七武海になってからって同僚に挨拶に行ったくらいで、後はシャボンディ諸島にいるからみんなが心配とか懸念するような事って起きてないはずなんだよな。

 

せいぜい部下たちが集まってきてシャボンディ諸島や周辺の海域で海賊を捕まえて海軍に突き出してるくらいで、これはどっちかというと島の平和の一端を担っているはずだ。聖地マリージョアの天気が悪くてハンマーが降ってきたのは異常気象だから仕方ないし、ロビンを連れ去ろうとした人さらいについては『まだ』何もしていない。

 

そんな事を思い出し無実であると自信を深めていたところでレイリーが帰ってきたらしい。そしてついでにルフィたちも一緒だったようだ。

 

「エェェスゥ!?なんでここにいるんだ!?」

 

「ルフィ!?」

 

ボロボロのルフィたちはまずエースを見て驚いていた。あと手錠ついてる状態で飯食ってたから驚きは余計に大きかったのかもしれない。まぁここにいて手錠かけられてて俺もいるってなれば予想するまでもないことだしな。

 

それでもエースからきちんと「鉄槌に負けて捕まっちまった」と聞くまでは信じられなかったようだった。とはいえ最近ルフィたちに修行を課して毎度ボコボコにしてるのは俺だし、更に俺の部下たちは容赦なく海賊を捕まえまくってるから納得できる部分もあるんだろう。

 

「なぁハンマ!!エースはおれの兄ちゃんなんだ!だから助けてやってくれ!!」

 

「…エースは今から自分の船に戻るから心配すんな。それよりしばらくは積もった話でもしとけ」

 

「そっか!ありがとな!!」

 

捕まえた海賊たちは全員海軍に引き渡されてる事も知ってるからか、いくらルフィといえど目の前でエースが捕まっててこれから引き渡されるかもしれないと思えばヘルプコールも当然っちゃ当然の反応だろうな。これがどこか他所の海賊とかなら助けようとするだろうし、たまたま俺だったから頼めばどうにかなるかもしれないと考えたのかもしれない。

 

まぁそんな事を頼まれる前にエースは白ひげのところに戻すってことで結論出てるから関係ないんだけど、わざわざそんなこっちの都合を話してやる必要もないだろう。

 

手錠付きとはいえ飯食って元気な様子のエースに安心したからか、そして無事にシャボンディ諸島までやってきたルフィを見たからか2人は楽しそうに話している。この時を除けば次にエースと会おうとすれば白ひげの船に行かないといけないから存分に話しておくといい。

 

もしかしたらレイリーのほうも何かエースに言いたいことがあるのかもしれないけど、そこは割って入るようなことはせずに楽しそうに眺めながら酒を飲んでいる。どうせならロジャー海賊団の武勇伝とか話してあげればいいのに…

 

「鉄槌ちゃん、白ひげの船と連絡が取れたわよ」

 

俺とロビンもシャッキーに作ってもらったご飯を食べつつゆっくりしていたら、どうやら白ひげと連絡を取ってくれていたっぽいシャッキーが電伝虫を持ってきてくれた。

 

 

 

『…エースは無事なんだろうなァ』

 

 

 

 

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