家畜の主   作:ビトレス・メンデス

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第一話

私は日光が嫌いだ。

木々の間、枝の間から差し込んでくる日光が憎い。

体内のプラーガのせいだろう。

人の気配は一切しない、獣すらも見かけない森の中だ。

その中にあった民家には人はいなかった。

いたのは目を血走らせた、ただの怪物だ。

 

「‥‥‥なるほど、確かに家畜(ガナード)が相応しいか」

 

体の中にある支配種プラーガのおかげだろう。

目の前の中年のガナードの血走った瞳は虚ろに変わった。

 

机の上にある鍋の中には酷い匂いの何かが入っている。

掃除はされていないようでホコリっぽい。

以前の生活を模倣しているだけで、人間的な生活などはできない。

その身体は死人であり、栄養の補給は必要ない。

それは真実なのだと再確認した。

 

「すまないな」

 

ガシッと頭を押さえつけると、捻る。

180度、悲鳴をあげることなくガナードは絶命し、死体は消えていく。

彼らも括りとしてはB.O.W.に含まれるのだろうか。

人為的に生み出されたのだから、含まれるのだろう。

どちらにしても生かしておく理由など微塵もない。

 

次にすることは家探し。

完全に強盗であるが、既に家主は人間ではないのでいい。

そんな考えで木造の屋内を散策していく。

食糧はとうに腐り、鍬や鎌からは少し血の匂いがする。

その中で辛うじて使えそうなものは弓と地図くらいのものであった。

 

作業場があった。

魔石灯は燃料はまだ残っているようで頼りない明かりが暗い室内を照らしている。

既に外は暗く、それは昼に素材を回収して弓の補修に矢の作成を行っていたためだ。

地図はいい情報はあまりなかった。

分かることはこの周辺が見知っていない土地であるということくらいだ。

似てはいるが、故郷とは似ても似つかない。

 

「‥‥‥わからん」

 

闇派閥(イヴィルス)の研究施設を見た時、いやあそこに連れ込まれた時からだ。

一日二日ではなく、一週間ほど馬車に揺られていた。

あんな施設はよく森に入って狩りをしていたのに見たことがなかったし、馬車から見えたのは整備された道であった。

故郷の村はここより田舎だった。

嫌な予感が的中したのがわかって、歯噛みする。

 

あの僻地以外にも研究施設があることは知っている。

もう既にプラーガの研究成果は外に出されていることも。

あの施設には大した記録は残っていなかったものの、それだけは分かった。

研究の記録、物資の入出、【タナトス】という神からの指示書。

家族も友人も、あの掃き溜めにいた人間は全て死んだ。

あの掃き溜めにいた人間は、だ。

 

「‥‥‥リサ」

 

こんな運命になるのは頭のどこかで予想がついていた。

母であるジェシカ、妹のリサ、父は既に他界して久しい。

私の名はジョージで、家名はトレヴァー。

そう、あの悲惨なトレヴァー一家と同じ家名なのである。

アンブレラという極悪非道な組織に捕らえられて父と母は容易く死に、娘であるリサは研究によって異常な生命力を獲得して知能が低下しながらも生き続けた。

その身体は新たなウイルスを生み、幼かった彼女は母の面影を探して最後は研究施設の爆破とともにこの世を去った。

 

母は殺したが、妹の姿はどこにもなかった。

しかし、死んだと見るのが濃厚だろう。

実験体として、人を人とも思わぬ扱いをされて失敗作として打ち捨てられる。

 

 

「‥‥‥」

 

どこにいるのだと頭を悩ませる。

施設のどこにもリサをどこに運んだかなどという記述のあった書類はなく、研究員に聞いてもめぼしい情報はなかった。

ここの他にどこに研究施設があるのか。

それを聞いてもダンマリ、どれだけ拷問しようとも知らないの一点張りだった。

恐らくは本当に知らなかったのだろう。

 

「オラリオ、か」

 

闇派閥(イヴィルス)】が壊そうとしている場所。

【世界の中心】と呼ばれ、世界で唯一【ダンジョン】が存在する都市である。

世界で一番繁栄している都市ともいえ、それが故に表裏も激しい。

光が強ければ闇もまた深いもの、治安維持を目的とする団体はいるらしい。

そもそも闇派閥(イヴィルス)の残党が存在していることすらわかっていないと思われる。

 

「行ってみるしかないか」

 

情報がなさすぎる。

ほぼ詰みともいえる状況だが、諦められないのだ。

化け物に成り果て、それでも生きているのは妹のため。

妹がいなければ今ここにいたかも怪しいくらいである。

 

この廃屋で得られた情報はほとんどない。

ここからオラリオに向かうにも地図がなく、この周辺に行商は来ないだろう。

研究施設に来るかもと考えを巡らせるが、最後の記録が一年も前である。

この僻地に誰かが来る可能性はゼロに等しい。

行商らしい死体がいくつかあったのがその予想の裏付けになる。

 

早くにここを離れてオラリオに向かいたい。

そう逸る気持ちを抑えて、この日は眠ることにする。

何よりも情報が必要なのだ。

しかし、リサのことはもう諦めているに等しい。

家族はもう居ないのだと割り切って生きていったほうがいいんだということは分かっている。

 

「‥‥‥寝よう」

 

もはや慣れた煎餅布団、埃まみれの布団に潜る。

もう壊れそうだが一夜は持ってくれるだろうと目を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

考えていたことはフラグになっているとはよく言う話ではある。

 

「ゴホッゴホッ」

 

平たくいえば落ちた。

ベッドがぶっ壊れて、床に落ちたのだ。

プラーガのおかげだろう、痛くはなかったけれどホコリによって咳き込む。

 

「古くなりすぎだろ」

 

舌打ちをして吐き捨てると埃を振り払いながら立ち上がる。

外を見るに早朝にもなっていない。

まだ夜空が見える時間帯のようだ。

 

ふぅと息を吐き、廃屋を出る。

現在の装備品は粗悪な弓と銃、腰に巻き付けた矢筒に入れた数本の矢のみだ。

地図は範囲が狭かったので直ぐに覚えられたからもう不要である。

空は星は見えない曇り空だ。

一寸先は闇と言った風景だが、夜目は利く。

 

「‥‥‥誰もいないな」

 

枯れた木が疎らにある街道を歩きながら呟く。

ガナードは生前の行動を模倣する。

この時間に起きている人はいないだろう、ならば見ないのも当然かと納得した。

 

やがて村が見えてきた。

寂れた寒村、特に特徴はなかったはずの村だ。

もう何も感じなくなってきたのが嫌になる。

 

村の中央に焚き火があり、炎が渦巻いていた。

チリチリと燃える音が耳に届いてよく燃えているのがよく分かる。

人であった。

十字架に磔にされて、もう人相も服装も分からないくらいになっているが人であるということくらいは分かる。

 

家々を回って一人、一人、と順々に殺していった。

もう既に死んでいる、そういう認識で虫を殺すように感情を殺して。

罪の意識は不思議と無かった。

自分のことを化け物だと認識していたからだろうか。

それともゲーム感覚で殺しているからだろうか。

分からないけれど、普通ではないことは分かる。

 

「終わり」

 

最後のガナードの首を捻った。

悲鳴をあげることなく絶命し、死体は消えていく。

死体は何も落とさない、そりゃそうだ。

現実ではそうに決まっている。

 

大した収穫はなく、そのまま村を出る。

やがて森を出て、野宿をしたり獣を狩ったり。

この村きり、生物兵器と出会うことはなかった。

あの森自体が実験施設だったということなのだろう。

あの森以外の研究施設がどこかは分からないが、遠く離れているだろうし気にするべきことではない。

探そうとしても探すのは至難の技だ。

【支配種】でのプラーガでも【従属種】のプラーガを察知することはできない。

他のウイルスの研究でもされていたらもっと難しいことになる。

闇派閥(イヴィルス)と関わりをもっている商会を襲って情報を得る方が簡単だ。

ならば、そのためにもオラリオに行くのが手っ取り早いと思われる。

 

「‥‥‥手遅れだよなぁ」

 

妹の末路を思う。

【リサ・トレヴァー】のようなものであればすぐにでも殺してやらなければならない。

私のように助かる可能性は限りなく低いだろう。

 

 

 

 

 




プラーガのように本人の意識を残したまま超人的な力を得るものはバイオ世界にはほぼないですよね。
どう頑張っても変異しちゃいますし。
そう考えればプラーガって凄いんやなって。
エヴリンは、本人の性格に大きく影響が出るのでそこが問題ですかねぇ。
私が一番好きなのはGウイルスです。
皆さんはどんなウイルスか真菌か寄生虫がお好きですか?


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