神次元ゲイムネプテューヌV〜審判を超えし者〜 作:namco
「エルも約束する!もうウソつかないし、トマトだって食べる!」
「ルドガーが助けてくれたこと‥‥‥スープの味も、ぜったい忘れないっ!」
「本当、本当だから!」
「約束・・・。」
時歪の因子化で体が消滅し、魂となった俺はさまよいながら共に旅をした相棒---エルとの約束を思い浮かべる。
最初は生意気な子供だと思っていた。だけど、一緒に旅をしていく内にかけがえのない存在となっていた。
だからこそ俺は願う。これからの未来を歩いていくエルに。
(エルに、幸せが訪れますように。)
そう願いながら、俺は長い眠りについた。
「・・・ううっ・・・。」
眠気に襲われながら俺は目を覚ます。
「俺は・・・一体・・・?」
俺は今、硬い地面の上に仰向けになって倒れていた。あの時、カナンの地でエルを助けるために時歪の因子化して消滅したはずだった。なのに、何故俺に体がある?
俺は色々と確かめるために起き上がり、辺りを見渡した。
「ここは・・・。」
見渡せば、レンガでできた床や壁、壁に生えている草や苔などの植物。壁に触れて見てみると、相当の年月が過ぎたような様子を見受けられる。
どうやらここは何かの遺跡らしい。俺は歩いてこの遺跡を探索することにした。
・・・何故か俺のそばにあった荷物袋を持って。
歩き続けていると、広い場所に出た。どうやらここが遺跡の一番奥で行き止まりらしい。
俺は荷物を降ろして、さっきは色々と混乱して頭が回らなかったが改めて荷物の中身をチェックする。
「ええと・・・入っているのは・・・。」
荷物袋の中身をチェックしたところ、入っていた道具は以下の通りだ。
・双剣クランデュアル、双銃クランズオート、重鎚クランズウェイト
・携帯端末GHS
・アローサルオーブ
・壊れた金の懐中時計と銀の懐中時計
入っていた種類は少ないが、時計が入っていたのはありがたい。これにはいい思い出がなかったが、ずっと使ってきた馴染みのあるものだ。捨てたくても、捨てられるものじゃない。それに・・・銀色の時計は兄さんの形見だからな。
俺はとりあえず地面に座り、休憩することにした。さっきから歩き回って疲れた。
座って休憩しようとしたところ、目の前が一瞬光り、思わず目を瞑った。光ったのは一瞬で、目を開けるとそこには、何かが浮いていた。その数は三つだった。俺はその内の一つを手に取って眺めた。
「結晶・・・か?」
それはアメジストのような結晶で、掌くらいの大きさだった。一体何の結晶かわからないがもっと見ようとしたところ、俺がこの部屋に入ってきた方向から人の気配がしたので俺は近くの瓦礫の裏に隠れた。
「(誰だ・・・?)」
部屋の入り口から現れたのは、おとぎ話に出てくる魔女のような格好をした女性と、通常より少しでかいネズミが二足歩行で入ってきた。
「今日の回収するポイントはここっチュね。」
「そうだな。さっさと回収するぞ。」
話し声が聞こえた。どうやら話をしているのはあの二人、いや、一人と一匹らしい。て言うかネズミって喋れたんだな。新しい発見だ。
そんなことを思っている間に一人と一匹は・・・めんどくさいな。二人は既に入口から移動しており、何かを探すように部屋中を歩き回った。
「チュ?」
ネズミが何か見つけたようだ。さっきまで俺が座っていた場所だ。
「オバハン。あったっちゅ。しかも二つ。」
「二つだと?それとオバハンはやめろ。」
「まさか二つも取れるとは思わなかったっちゅ。きっとオバハンが今までと違うことをしたからこうなったっちゅね。」
「おい、クソネズミ・・・。死にたくなければその呼び方はやめな。」
どうやらあの二人は俺の持っているものと同じものを探していたらしい。
「ちゅ?」
「どうした?目的のものは手に入ったんだ。」
「いや、なんだか人の気配がしたような気がしたっちゅ。」
「人の気配?」
俺は二人の会話を聞いて一瞬、心臓が強く動いた。まさか、バレてる!?
「こんな辺鄙(へんぴ)な場所に私達以外の人間が来るものか。」
「・・・いや、どうやら来たみたいっちゅ。」
「む?」
「あなた達!今すぐそれをこっちに渡しなさい!!」
「ノワール!一体全体どうしたってのさ!」
・・・どうやらバレてないみたいだ。びっくりした。寿命が三年くらい縮んだぞ。俺は入口から来た人達がどのような人物なのか確かめるために、瓦礫から身をはみ出さないように覗く。
そこにいたのは、黒く長い髪をツインテールにした露出の多い黒い服の少女が先に来た二人に対して強盗まがいみたいなことを言っていた。そして、薄紫のショートヘアーにジャージのような服を着た少女が後から入ってきた。
「なんだ?お前達は?」
「よくわからないっちゅけど・・・お前達も、これが目当てのようっちゅね。」
なんだかよくわからない状況になってきた。先に来た二人が結晶のようなものを手に入れて帰ると思ったら、そのあとにまた二人の少女が入ってきて、黒髪の少女が先に来た二人の持っている結晶をよこせと言ってきた。
だいたいこんなところか?
俺はあそこにいる人達からもっと情報が聞けないかどうか聞き耳を立てると、ある会話が耳に入ってきた。
「あの二人が持っている結晶・・・「女神メモリー」よ。」
「へー、あれが女神メモリー・・・なんですと!?」
女神メモリー?この結晶の名前か?
「小うるさい連中だな・・・む?おい・・・もしかして貴様がネプテューヌ・・・か?」
「え?なんで私の名前知ってんの?」
どうやらあの紫の少女の名はネプテューヌというらしい。そして先程ネプテューヌが呼んでいた少女の名前はノワールと言ったか。・・・まあ、今はそういうのは置いといて。
そのあとは色々とごちゃごちゃした会話が繰り広げられていたが、若干だが魔女みたいな人の闘気みたいなのが少しだけ膨れ上がった。
「ネズミ・・・貴様はこれを持って先に戻れ。こいつらの相手は私がする。」
「ちゅ?いいっちゅか?」
「あなた一人で私達の相手をするっていうの?」
確かに黒髪の少女---ノワールの言いたいこともわかる。数では不利な状況にある。だが、魔女みたいな人は笑みを崩さずに言う。
「ああ。光栄に思うがいい・・・。」
一拍置いて。
「七賢人が一人、マジェコンヌ様が、直々に貴様達をあの世に送ってやるんだからな!」
自身の名を名乗った。
「なんですって!?」
「しちけんじんって!しちけんじんって言った、今!?」
七賢人?なんだそれは?何かの組織か?
「ぢゅー!?な、なに自分からバラしてるっちゅか!?」
あのネズミの慌てようだとどうやらバラしてはいけないものだったらしい。
「構うものか。どうせこいつらは、この世から消えていなくなるんだからな。」
・・・なんだろう。なんだかフラグみたいなものが立った気がする。
「まーいいっちゅ。オバハンがどうなろうと知ったことがないっちゅからね。それじゃ、ばいばいちゅー。」
ネズミが女神メモリーを持って部屋から出て行ってしまった。
「待ちなさい!それは置いていきな・・・。」
「待つのは貴様だ。私が貴様達の相手をしてやると言っただろう。」
ノワールが追いかけようとするが、マジェコンヌに阻まれる。
「何、心配するな。ネプテューヌのついでに、貴様もしっかり殺してやる。」
「私がついで・・・ですって?なめられたものね。」
マジェコンヌの物言いにノワールは怒りに身を震わせる。
「ノワールはまだいいよ。私なんて、自分の知らないところで、勝手に因縁の相手にされちゃってるんだよ?」
「さて、いつまで軽口を叩いていられるかな?」
マジェコンヌが不敵に笑う。
「あっさり殺すのは趣味ではない。せいぜいみっともなく、無様に足掻いてみせろ。」
そう言うとマジェコンヌは、先ほどよりも闘気が膨れ上がったと思ったら光に包まれた。
「え?なのこのオバサン・・・まさか変身する!?」
変身だと!?俺と少女---ネプテューヌが驚いたと同時に光は晴れる。光が晴れたその場所には、機械的な翼を持ち、ダブルセイバーを手にした獣のような顔をした「何か」がいた。
「ククク・・・冥土の土産だ。」
変身した者---マジェコンヌは、さらに何倍もの闘気を身に纏わせながら言った。
「この私の姿、しかと目に焼き付けておけ!・・・それから。」
マジェコンヌがダブルセイバーを振りかざしたと思ったら、俺が隠れている瓦礫のある方向に振り下ろし、衝撃波を撃ち出してきた。
「そこに隠れている奴もだ!」
「うおっ!?」
俺は咄嗟に避けて瓦礫から離れる。そのすぐ後に衝撃波が通り過ぎ、俺が隠れていた瓦礫が木っ端微塵に砕けた。
「やはりそこにいたか。」
「え?誰?」
ネプテューヌは俺を見て首を傾げる。いきなり見知らぬ人間が現れれば疑問に思うのは当然だろう。
「ちょっと!あなたの手に持ってるそれって!」
「まさか、女神メモリー!?」
ネプテューヌとノワールが俺の手に持っているもの---女神メモリーを見て驚く。
「ほう。今日は珍しいことが次々と起きるな。まさか女神メモリーが全部で三つも見つかるとは・・・。」
マジェコンヌは俺にダブルセイバーを向けて言った。
「そこの男。その手に持っているものをこちらに渡せ。そうすればこの場は見逃してやる。」
「何・・・?」
「お前が持っているには惜しすぎるものだ。早くこちらに渡せ。」
マジェコンヌはダブルセイバーの持っていない方の手を俺に向けて差し出し、渡すように要求してきた。
「そいつに渡しちゃダメ!!」
「そうだよ!渡しちゃダメだよ!」
ノワールとネプテューヌからも渡すなと言われる。俺はマジェコンヌと向き合い、選択する。渡すか、渡さないか。
「(どうする?)」
L1:渡す (どうする?) R1:断る
→R1:断る
「事情はわからないが、あんたみたいな怪しい奴に渡したくない。」
「そうか・・・ならば。」
俺が断るとマジェコンヌはダブルセイバーを構えて言った。
「ここで全員殺して、メモリーを奪うまでだ!!」
マジェコンヌが戦闘態勢に入ると同時に、ポケットに女神メモリーをしまって俺も双剣クランデュアルを構えて戦闘態勢に入った。
「喰らえっ!」
「喰らうか!」
マジェコンヌがダブルセイバーを振り回し、俺はそれを横に回避する。
「蒼波刃!」
「ふんっ!」
風の衝撃波を放つがマジェコンヌはそれをダブルセイバーで叩き落とすようにして打ち消す。
「私たちもいることを忘れないでよね!」
「ねっぷねぷにしてやんよー!」
先程の少女達も戦闘に加わり、それぞれ剣を構えてマジェコンヌに突っ込む。
「喰らいなさい!」
ノワールがレイピアを振るうと、マジェコンヌはダブルセイバーで滑らせるようにして防ぎ、ノワールを蹴り飛ばした。
「きゃ!?」
「てりゃー!!」
「ぬるい。」
ネプテューヌの上空からの兜割りを横に避けるようにして回避し、ダブルセイバーの腹でネプテューヌを吹っ飛ばす。
「ねぷっ!?」
吹っ飛ばされた勢いでネプテューヌは転がり、壁に激突する。
「鳴時雨!」
「ふん!」
ネプテューヌと入れ替わるようにマジェコンヌに突っ込む俺は、回避されないよう様々な方向から剣を振るうがそれらは全て弾かれる。
「お前はなかなかやるようだな。だがまだまだだな!」
「ぐっ!」
マジェコンヌは俺を蹴り飛ばそうとするが、咄嗟に双剣を交差させて吹っ飛ぶのを防ぎ、地面を軽く滑る。転ばないように必死に足に力を入れて堪える。
「はっ!」
「くっ!」
バランスを取ろうとしたときマジェコンヌがダブルセイバーを構えてこちらに向かってきたので、俺は転がることで回避し、クランデュアルから双銃クランズオートに持ち替えてマジェコンヌに向けて撃った。
「何っ!?」
マジェコンヌは流石に予想していなかったのか咄嗟にダブルセイバーで銃弾を防ぐ。
「今よっ!」
「オッケー!」
マジェコンヌが隙を見せると、ネプテューヌとノワールが一斉に畳み掛け、マジェコンヌに一閃した。
「ぐおっ!?」
「やった!」
「どんなものよ!」
マジェコンヌがネプテューヌ達の攻撃を喰らって体勢を崩し、膝をつく。
・・・が。
「調子に・・・乗るなーー!!」
マジェコンヌが身の回りにエネルギーを集めて爆発させ、俺達は衝撃に負けて吹っ飛ばされ、壁に叩きつけられた。
「がぁ!?」
「うわ!?」
「きゃぁ!?」
壁に叩きつけられると同時に俺のポケットから壊れた金の懐中時計と女神メモリーが飛び出して横に落ちた。
「がはっ・・・!」
「お前が素直に女神メモリーを渡していれば、こんなことにはならなかったものを・・・。」
マジェコンヌが変身を解いて倒れている俺達に向かって歩いてくる。
「そん、な・・・手も足も、出ないなんて・・・。」
「ううう・・・こんな強いなんて聞いてないよ・・・。」
ネプテューヌ達も倒れており、起き上がる様子がない。
「弱い、弱すぎるな。ああ、イライラする!なんで私は、こんな雑魚を相手にムキになっていたんだ!?」
マジェコンヌが苛立ちを顔に出しながらネプテューヌを睨みつける。
「知らないよ・・・。そっちが勝手に絡んできたのに・・・。」
「黙れ!その声を聞くと、余計に腹が立つ!」
そう言ってネプテューヌを踏みつける。
「あだっー!?」
「ネプテューヌ・・・!」
「チッ、ああ、もういい。終わりにしてやる。せいぜい派手にくたばりな!」
マジェコンヌがダブルセイバーを出現させてネプテューヌ達に狙いを定める。
「終わり、なの・・・?悔しい・・・私が・・・私が女神だったら、こんな奴なんかに・・・!」
「ううう・・・変身さえできれば、こんなオバサン楽勝なのに・・・。」
「さあ、死にな!」
ダブルセイバーが振り下ろされ、ネプテューヌに刺さろうとしたその時。
---ガキン!
「っ!?」
突然飛んできた、いや、伸びてきた「何か」に弾かれ、マジェコンヌごと吹っ飛んだ。吹っ飛ばされている最中に体勢を立て直し、着地する。
「ッ・・・!?誰だ、邪魔をするな!?」
「あらあら、無様ねえ・・・でも、とっても素敵・・・。」
部屋の入り口からまた新たな人物がやって来る。
・・・なんだ?この、口調は穏やかだというのに背筋がゾクゾクとする感覚は?
俺は起き上がって、入ってきた人物の正体を確かめるために入口を見た。
「可愛い女の子達が醜悪な下衆に蹂躙される様を見るのは、いつ見ても興奮するわ・・・。」
右手にはなにやら動物の尻尾、というより先ほどのネズミを持って引きずっており、左手には鞭のような剣---蛇腹剣を持った露出の多いボディースーツを身に纏った、青く長い髪に赤い目をした、正しく「女王様」と言える雰囲気を出している長身の女性がいた。
「な、な・・・なんで変身してるのよ!プルルート!」
マジェコンヌが女性に聞こうとしたが、その前にノワールが女性のことを知っていたらしく、名前で呼んでいた。
「え、嘘?ええええ!?あの女王様っぽい人が、ほんわかのんびり天然さんのぷるるんなの!?」
ネプテューヌはかなり驚いているらしく、かなり動揺していた。
動揺しているのはこっちだ。変身している?先程俺もかなり間近でマジェコンヌの変身シーンを見ているから思ったことだが、この世界には骸殻能力者みたいに変身する人が多いのか?
「貴様・・・女神だな。」
「ご名答。プラネテューヌの女神、アイリスハートよ。まあ、この姿を見れば、頭の空っぽのおバカさんでもわかると思うけどぉ?。」
また新しい単語が出てきた。女神?プラネテューヌ?ああ、もう色々とわからんことがありすぎて頭の中がパンクしそうだ。
そのあともなんだか二人で会話しているようだが、俺はそんなに頭がいい方ではないから会話の流れがうまくつかめない。
そんなことを思っていたら女性---アイリスハートがネプテューヌとノワールにあるものを見せつける。
「なんだか知らない人もいるけど、まあいいわ。二人共、これな〜んだ?」
「それは・・・!」
「女神メモリー!」
「そうよ・・・。二人が欲しくて欲しくて仕方のないものよ?欲しいかしら?」
手の中にある女神メモリーを見せびらかしながら二人に問う。
「欲しいに決まってるでしょ!」
「わたしも!わたしもほしい!」
「そっかあ、欲しいんだ・・・。だったら、二人にこれを上げる代わりに、あたしに何を差し出すのかしらぁ?」
等価交換ということか。欲しければこちらに何かを差し出せと。・・・言いたい事は分からなくもないな。世の中は全て等価交換で成り立っているものだからな。品物を買うために金を払う。それと同じ理由で、何かを得るために同等かそれ以上の何かを差し出す。世界はそういうふうにできている。
「ぐっ・・・!」
「ぷるるんってば何?何がお望みなの?・・・はっ!もしかして、私の体!?体を要求するの!?」
おいバカ!そんなことを言えば相手は・・・!
「バ、バカ!この状態のプルルートにそんな冗談は通じないんだからね!」
やっぱりか!
「ねぷちゃんの体か・・・。ふふ、うふふふふ!悪くないわねぇ・・・!」
あ〜あ、言わんこっちゃない。
「おおおおお?背中にすごい悪寒が走ったんですけど?ねえ、ぷるるん。やっぱり・・・。」
もう知らんぞ俺は。
「やっぱりやーめた、なんて言わないわよね・・?」
・・・もう考えるのが疲れてきた。いちいち心の中で突っ込むのが面倒になってきた。
その後もメモリーをどうするかの会話が繰り広げられていたが、雰囲気からしてそろそろ終わりそうだ。
「・・・で、そこのあなた。」
「・・・俺?」
終わると思ったら今度は俺にきた。
「そう、あなたよ。なかなかイケてるお兄さん?」
「俺に何か・・・?」
「そうね、特に用ってほどのものじゃないけど・・・。」
一息ついて言う。
「・・・とりあえず、聞きたいことは後にするわ。力を貸してくれないかしら?」
「何?」
「あたしたち、ある目的のためにここに来たんだけど、あのオバサンを倒さない限り帰れそうにないから手伝って欲しいって言ってるの。」
なんだ。そういうことか。確かに、この状況じゃ遺跡から出られそうにないし、俺が今いる場所の把握もできない。そうするためにやることは。
「ああ。このまま座っていても仕方ないしな。協力する。」
「ふふふ。素直な子は好きよ。」
そう言ってアイリスハートは、俺に向けて手をかざし術のようなものを発生させる。すると、俺の体から傷が消えていき、痛みも引いていった。
「これは・・・!」
「サービスよ。だから、頑張ってね。」
アイリスハートは俺から離れるとマジェコンヌと向き合う。
「お待たせぇ。あなた、なかなか素直でいい子ちゃんなのねぇ。」
「ふん。くだらない茶番に付き合うのが面倒だっただけだ。」
腕を組みながらしゃべるマジェコンヌ。本当に面倒そうな表情をしていた。
「しかし、いいのか?そいつらは貴様のお友達なんだろう?」
「ええ、そうよぉ。それが何か?」
「それを使って女神になれる素質を持った人間が、百万人に一人存在するかどうかだ。」
なんのことを言っている?
「もし資質のない人間が女神メモリーを使えばどうなるか・・・知らないわけではないだろう?」
「あ・・・。」
マジェコンヌの言葉にノワールが固まる。
「なあ、どういう事なんだ?」
「あらぁ、知らないの?」
「なら私が簡単に教えてやろう。」
マジェコンヌが説明を始める。
「女神メモリーは莫大な力を秘めてはいるがその分、適合者を選ぶのだ。メモリーの力を扱えるかどうかをな。使ったものが見事適合すれば、そこの女神のように力を得ることができる。しかし・・・。」
「しかし?」
「メモリーに適合しなかった場合は、醜い化け物となる。」
「!?」
女神メモリーに適合しなかった場合は醜い化け物に!?ということは!?
俺はネプテューヌ達を見る。その中で一番不安そうな顔を見せているのはノワールだ。
それはそうだ。使えば女神になれるかもしれないが、同時に化け物になるかもしれないものなのだ。不安になるのは当然だ。
「大丈夫よぉ、ノワールちゃん。もし化け物になったとしても、あたしがたっぷりかわいがってあげるからぁ。もちろん、ねぷちゃんもね。」
・・・セリフだけ聞くと愛に満ちたいい話なんだろうけど、この状況ではアブない言葉に聞こえてしまうのはなぜだろうか。
「そう、だったわ・・・。なりたいって思っていても、資質がなかったら、わたしは・・・。」
ノワールの表情が不安に満ちている。当たり前だ。誰だって化け物になりたくない。
「よーっし!いちばんネプテューヌ!いっきまーす!」
・・・少しは場の空気を読み取って欲しいな。
ネプテューヌは女神メモリーを掲げて力を開放しようとするネプテューヌ。それを見たノワールは慌てる。
「ちょっとネプテューヌ!?不安とかためらいとかそういうのは!?」
「あたしが先に女神になるんだもんねー!」
「ちょっと待ちなさいってば!女神になるのは私が先よ!」
二人が女神メモリーを掲げて秘めた力を解放しようする。すると次の瞬間。
「なに!?この反応は・・・!?」
二人の間に光の奔流が発生し、辺りはまばゆい光に包まれる。
奔流が収まった時、そこにいたのは少女の姿をしたネプテューヌ達ではなく、身長が伸び、スタイルが成長した女性がそこにいたのだ。
「これが、あたしの・・・女神としての姿・・・?」
「この姿になるのは久しぶりね。」
「ふ、ふふふ、あははははは!そうよね!あたしが女神になれないはずがないんだわ!!ははははは!!」
「・・・なんだか向こうのノワールと印象が違うわね。」
紫髪の三つ編みの女性---ネプテューヌは女神化したことに驚いてはおらず、長い銀髪の女性---ノワールはかなりテンションが上がっていた。
「バカな・・・!こんなの、確率的にありえるのか!?」
「事実を前にして確率なんて意味はあるのかしら?」
「ふふふ、さすがはあたしのお友達。」
「さーて、さっきはよくもやってくれたわね。たっぷりと仕返しさせてもらうわ!!」
二人は手に武器を出現させて構える。ネプテューヌは刀状の剣を、ノワールは大剣を持ってマジェコンヌに対峙する。
「くっ!こうなれば、そこにあるものだけでも!」
マジェコンヌは俺の方に向かってきて地に落ちていたメモリーを拾おうとする。が、俺はマジェコンヌより早く動いてメモリーと時計を拾って避けた。
「それをよこせ!」
「断る!」
「なぜ拒む!それはお前が持っていても仕方のないものだろう!?」
マジェコンヌは支局当然のことを言う。確かに、コイツは俺が持っていても仕方のないものだ。だが、俺は思ったことを言う。
「確かに、持っていても仕方ない。だがな、あんたみたいな悪党みたいな奴には渡したくはないな!」
それを聞いたマジェコンヌは、もう一度変身して俺にダブルセイバーを向けて言った。
「そうか・・・。ならば、殺してから奪ってやる!」
言うと同時にマジェコンヌは一気に近づきて斬り掛かってくる。俺はとっさに避けるが、完全に躱せなかったのか、発生した斬撃波で体を切り裂かれる。
「ぐあッ!?」
切り裂かれた部分から血が流れ、地面を濡らす。
「まだだ!」
マジェコンヌがさらに斬り掛ろうとする。
「ッ!ねぷちゃん!ノワールちゃん!」
「ええ!」
「ったくもう、しょうがないわね!」
ネプテューヌ達が俺の援護に入ろうとするが、マジェコンヌの放った魔弾によって行手を阻まれる。
「くっ!」
「きゃっ!」
「うぅ!」
どうやらマジェコンヌの放った魔弾はただの魔弾ではないらしく、受けた相手を痺れさせるモノみたいだ。ネプテューヌ達は痺れて動けなくなってしまった。
「これで邪魔は入らなくなった。あとは貴様から奪うだけだ。」
「・・・どうしても欲しいって言うのかよ。」
俺は切り裂かれた部分を押さえ、女神メモリーと時計を持ちながら問う。
「ああ。理由は言えないがな。」
「そうか・・・だったら。」
俺は女神メモリーを持って掲げる。
「なおさら渡すわけにはいかないな!」
「!?」
俺は女神メモリーの力を開放しようと、時計の力を使う要領で自身の体内のマナをメモリーに流し込んだ。
「ぐぅ!?うううう!?」
マナを流し込んだ瞬間、俺の体内がぐちゃぐちゃに掻き回されるような感覚と痛みが俺を襲った。これが、女神メモリーの力なのか!?
「バカが!さっきの話を聞いていなかったのか!?素質のない人間がメモリーを使えば、化け物になるということを!!」
忘れていたわけじゃない。俺は既に一度死んだ身なんだ。やるべき事も終えて死んだ俺に、何をしろって言うんだ。自暴自棄になったわけじゃない。ただ・・・。
「(俺はただ、自分が信じるもののために戦って、約束を果たしたんだ。それだけで十分なんだ。)」
「ちっ!ここで化け物になられても面倒だ!メモリーが消える前に何としてでも!!」
マジェコンヌがダブルセイバーを突き出して刺そうとしてくる。
「(でもな、今はこうして生きて立ってるんだ。まだ、生きていていいんだって言うんなら、俺は・・・!)」
「俺は・・・!今度こそ幸せを掴んで!生きて、生きて生きて、生き抜いてやるーーーー!!」
ダブルセイバーが刺さろうとした次の瞬間。
---カッ!!
ネプテューヌ達と同じように光の奔流が発生し、マジェコンヌを吹っ飛ばした。
「ぐぅ!?なんだ!?」
「これって!?」
「まさか!?」
「あらあら。」
マジェコンヌが驚いている最中(さなか)、麻痺から回復した女神達が光の奔流を見つめる。
光の奔流の中、俺は不思議な感覚に見舞われていた。体の中を掻き回されるような不快感は既に消え、逆に力が体の内から溢れてくるような感じだった。この感覚は・・・一体!?
そう思っていると、俺のポケットから壊れた金の懐中時計が飛び出し、女神メモリーと一緒に宙に浮く。
「・・・?」
宙に浮いている時計とメモリーが脈を打つように光って点滅をし始め、その輝きが早く、強くなる。やがて二つはどちらからともなく近付き合い、光り輝きながら合わさって一つとなった。
「っ!?」
光が収まると、そこには壊れる前の状態の綺麗な金の懐中時計があった。俺はそれを手に取ると、中身を開く。時を刻むリズムと同時に針が動いていた。
なぜ直ったのか理屈は分からない。が、この力が今の俺にできることだというのなら、俺は戦おう。
そう思って俺は時計を前にかざして、あの力を開放する。クルスニクの一族に受け継がれてきた、あの力---骸殻の力を。
力を解放した瞬間、俺の周りに無数の歯車が現れ、何度も俺の体を貫いていく。一筋の閃光が額を貫いた時、俺の体に漆黒の鎧が形成され、体全体を覆っていく。
鎧が顔まで形成されたとき、光の奔流も止まり、辺りの景色が通常のものとなる。
「な・・・、なんだと!?」
マジェコンヌが俺の変身した姿---骸殻を見て驚愕する。
「馬鹿な、ありえん・・・!女神は普通は女がなるもの!ましてや、男であるお前がなるなど、絶対にありえない!!」
マジェコンヌは今起こっている現実を否定するかのように狼狽える。そしていつの間にか痺れが取れていた女神達もそれを見ていた。
「嘘・・・!変身しちゃった!?」
「まさか・・・!こんなことって!!」
「あらぁ、ホントに今日は私を楽しませてくれるわよねぇ・・・。」
ノワールが驚愕し、他も女神も驚いていた。
俺は右手に武器---クルスニクの槍を出現させてマジェコンヌに向けた。
「あんたをここで倒す。覚悟しろ・・!」
「はん!変身したからといって調子に乗るな。下手に力をつけられる前に、ここで葬り去ってやる!」
「ホント元気がいいわねぇ・・・あ、そうそう。一つ言い忘れてたことがあったの。」
「なんだ?今更命乞いか?」
「そんなんじゃないわよぅ。簡単に言わせてもらうとぉ・・・。」
アイリスハートが蛇腹剣を地面に叩きつけて言う。
「あたしのお友達を勝手にいじめたこと、後悔させてあげるわ!!」
俺はマジェコンヌに一気に近づき、槍を下から打ち上げるように一閃する。
「アッパーブライス!」
「くっ!」
「後ろががら空きよ!」
「ぐあッ!」
マジェコンヌが後ろに避けた先にはノワールがいて、背中を切り飛ばされる。
「私もいることを忘れないで!」
飛ばされた先にはネプテューヌがおり、剣に炎を纏わせて斧のように叩きつける。
「ブレイズブレイク!」
「ぐっ!」
咄嗟にダブルセイバーで防ぐが、勢いに押されて地面を後ずさってしまう。
「ほらほら、もっと行くわよぉ!」
ネプテューヌと交代するように前に出て、蛇腹剣を直剣状にしてV字型に切りつける。
「ファイティングヴァイパー!」
「ぐおぁっ!?」
襲ってきた電撃の感覚に今度はマジェコンヌが動けなくなってしまう。
「止めはあなたに譲るわぁ。しっかりきめなさい。」
「ああ!うおおお!!」
アイリスハートの言葉に相槌を打つと、俺は左手にもう一本の槍を出現させ、高速の乱舞を叩き込む。
「双針乱舞・・・!」
「あああああ!!」
乱舞を叩き込まれたマジェコンヌは吹っ飛ばされ、そのショックで変身が解除されてしまう。
「形勢逆転・・・だな。」
「あらぁ、もう終わりぃ?つまんなぁい。」
「あら、口で言う割には大したことなかったわね。」
「本調子とまではいかないけど、なんとかなったわね。」
倒れ伏していたマジェコンヌは立ち上がり、女神を睨みつける。
「くそ・・・、女神ごときに、この私が・・・!」
「あら、その女神ごときに圧倒されてるのは誰かしら?」
「グ・・・・!覚えていろ!!」
今時使い古されたセリフを吐き捨てながら足元に転がっていたネズミを回収して遺跡から出て行った。
「・・・逃してよかったの?捕まえて情報を引き出すことも出来たかもしれないのに。」
「別にいいわぁ。あの人いじめがいなさそうだし、つまんないわぁ。」
「あなたがそう言うなら・・・。ところで、今更だけどあなた誰?」
ネプテューヌが俺に聞いてくる。今更かよ!?まあこっちも状況が状況で聞くに聞けなかったけど。
「そうだったわ。あなた一体何者?女神メモリーを使って無事だなんて・・・。ましてや、女神は女がなるものなのに、なぜあなたが使って平気でいられるの?」
「それ、あたしも興味あるわぁ。聞かせてくれないかしらぁ?」
詰め寄るな。そして一気に聞くな。俺だって正直混乱してるんだ。とにかく、今はこれくらいしか言えないが、変身を解いて自己紹介をしておく。
「・・・俺はルドガー・ウィル・クルスニク。あんたらは?」
「わたしはネプテューヌ。この姿での名は「パープルハート」よ。」
「あたしはノワール。この姿での名は「ブラックハート」よ。」
「あたしはプルルートよぉ。この姿の時は「アイリスハート」だけどぉ。」
それぞれの自己紹介が終わり本題に入ろうとするが、ネプテューヌが提案する。
「早速聞きたいところだけど、ひとまず教会に帰ってからでもいいかしら?ここじゃモンスターも出るし、落ち着いた場所で話したいのだけど。」
「・・・確かにそうね。ここじゃ落ち着いて話もできないわ。」
「すまないな。」
そう言って俺達はお互いに状況の整理をつけるために、遺跡から出るのであった。
女神と名乗る三人の女性と出会ったルドガー。女神が住む教会でここが異世界だということを知る。この世界で生きるためにルドガーはある選択をする。
次回、神次元ゲイムネプテューヌV〜審判を超えし者〜
「職業確保。女神直属特務エージェント」
「ま、なるようになるさ。」