神次元ゲイムネプテューヌV〜審判を超えし者〜 作:namco
「まさかお前がここまで来るとは思わなかったな。ルドガー・・・。」
蝋燭が灯す薄暗い部屋の中で、ユリウスがルドガーと対峙する。
「ユリウス・・・どうしてこんなことを!」
「すべては、お前の為だ。」
「俺の?」
「おかしいと思わなかったか?お前のこれまでしてきたことの全てがあまりにも順調すぎたことに。一つの出来事が終われば、次の目的地が決まってそこに向かい、そこでまた一つの出来事が終わればまた次の目的地へと・・・このことになんの疑問も浮かばなかったのか?」
「まさか、俺の行動が全部、ユリウスの・・・。」
「そうだ。俺はあらゆる手を尽くしてお前がここに来れるように情報を操作していた。お前はこれまで自分で選んできたと思っていたようだが、その逆だ。お前は選ばされていたんだよ。」
「それじゃぁ・・・俺がここまでやってきたことや、仲間達の犠牲も、全部ユリウスの書いたシナリオ通りだったっていうのか!?」
「そうだと言ったら、お前はどうする?」
「そんなの・・・答えは決まってる!」
ルドガーは時計を取り出してフル骸殻へと変身する。
「ユリウスを倒して、すべてを終わらせる!そして、始めるんだ!」
「ふっ・・・そうこなくてはな。」
ユリウスも時計を取り出してフル骸殻へと変身する。
「もはや言葉はいらない。世界の命運は今、俺達の手の中にある!どちらが勝ち、どちらが望む未来を掴むのか!勝負だルドガー!!」
「うおおおお!!」
世界の命運を賭けた最後の戦いが始まり、ユリウスの双剣とルドガーの槍がぶつかり合った。
「・・・カーーーット!!」
激戦が始まるタイミングで、この場に似つかわしくない妙な掛け声が場を支配し、戦闘を中断させる。
「いいねいいね!今の最高!今撮れたシーン、そのまま使ってもいいくらいだよ!このまま次のシーンの撮影もしちゃおうぜ!」
二人は骸殻を解いて、声の主に向き合う。
「そうですか!次はどのシーンを取りますか?スピン監督。」
「案外ノリノリだなルドガー。」
今のシーンを撮影していた監督―――スピンと呼ばれた男と次の撮影の打ち合わせをしている様子にツッコミを入れるユリウス。
二人はどうやら映画の撮影を行っていたようだ。何故こうなったのかというと、話は数日前に遡る。
―――数日前 プラネテューヌ
「映画の撮影?」
ある日休みを満喫していたルドガーのもとにユリウスから電話が入り、ユリウスの出した話題を聞き返していた。
「ああ。実はこっちに来てから出来た知り合いのスピンという男から映画の撮影の話が来てな。アクションの出来る俳優の募集をしているんだ。」
「それで俺にどう関係するんだ?」
「何でも主役を務めるはずだった俳優が急に体調を崩してしまって撮影が出来なくなってしまってな。それで主役をやる人と似たような特徴を持った人物を探しているとき、俺に相談を持ちかけてきたんだ。」
「で、その似た特徴を持っていると思って俺に連絡してきたってか?」
「察しがよくて助かるよ。可能だったら引き受けてくれないかなと思ってな。」
「そこはイストワールと相談だな。撮影にどれくらいの期間が必要とか、色々話さなきゃな。」
「そうだな。もし引き受けてくれるなら、この話はリーンボックスからの依頼ってことにする。なるべく早めに頼む。撮影が迫ってるって話だ。」
「わかった。それじゃ。」
GHSを折り畳んで通話を終えるルドガー。早速このことをイストワールに知らせに行こうとするが、その前にルドガーの部屋の扉にノックがかかる。
「ルドガーさん。私です。よろしいですか?」
「噂をすれば、か。入っていいぞ。」
「失礼します。」
扉が開くと同時にイストワールが入ってきた。
「ルドガーさん。実は先程、リーンボックスからルドガーさんを指名した依頼が入りまして。」
「兄さんからの依頼だろ?さっきまでその話をしていたところだ。」
「そちらにも連絡が入ってましたか。なら話は早いです。一応ですが内容の確認をお願いします。」
イストワールはそう言うとルドガーのGHSに依頼の詳しい内容を転送する。
「えーっと、どれどれ・・・。」
ルドガーはGHSに転送された依頼内容を確認すると、リーンボックスへ向かうために準備をするのだった。
―――そして今に至る。
「次のシーンはアクションシーンなんだけど、にいちゃん、スポーツか何か得意だったりする?」
「スポーツとかはやったことはないですが、モンスターとの戦闘でよく体をよく動かしてますね。」
「ほお〜?ちょっと動いてみてくれる?にいちゃんが可能ならアクロバティックに。」
「任せてくださいよっと!」
ルドガーは監督の要望に答えるべく監督の目の前で連続でバク転をしたり、ジャンプして空中で体を捻って綺麗に着地したり、両腕を軸にして体を伸ばして地面スレスレに回転したりなど、体操選手顔負けの身体能力を披露する。
その様子を見ていた監督はルドガーのアクションに感動し、ハイテンション気味にルドガーに話しかける。
「おおーー!!最高ーー!!これなら少々派手なアクションも取れそうだねー!!よし!そうと決まれば早速撮影だー!!」
そう言って監督は他のスタッフ達の下へと走って行き、打ち合わせをするのであった。
「テンション高い人だな・・・。」
「あの人は映画を作るに当たって情熱が凄いからな。最高の映画を作るためにあちこち奔走しているからな。」
ルドガーの呟きに反応するようにユリウスが近付いてくる。
「あ、兄さん。」
「スピン監督はこのゲイムギョウ界においてたくさんの名作を生み出して来た名のある監督なんだ。あの人が動けばゲイムギョウ界が揺れると言われるほどのな。」
「そんなにすごい監督なのか・・・。」
「それだけじゃない。監督としても有名だが、同時に凄腕の演出家でもある。撮影する場面において的確な指示を出し、それぞれのシーンに置ける魅力を最大限に引き出すんだ。」
「へぇー。」
ユリウスとそんな会話をしていると、打ち合わせが終わったのかスピン監督が近付いてくる。
「次の撮影場所が決まったよー!場所は・・・!」
次の撮影場所を聞いた俺達は、意外な場所に一瞬呆けるのであった。
―――ジェットセット山道
「まさかプラネテューヌとラステイションの国境付近で撮影とはな。」
辺り一面が岩山で形成された山道を見渡しながら呟くルドガー。
移動中に監督やスタッフから聞いた話だと、この場所ならこれから取りたいシーンが取れる最適な地形だということなのでここを選んだとのことだ。
「ここなら、にいちゃん達の動きを最大限に活かしながら、アクションシーンを取ることが出来るよー!二人共、アクションは得意だろ?」
「まあ、得意と言ったら得意だな。」
監督からの問いかけにユリウスは答える。
「なら好きに動いてくれても良いよ~?明るく激しく鮮烈にね!そうしたほうがいいシーンが取れると思うから!」
そう言ってスピン監督はスタッフに指示を飛ばし、撮影するための準備に取りかかる。
そしてルドガーとユリウスも撮影のためにあらかじめ変身し、槍と双剣を構えて準備に入る。
「それじゃあ、開始するよ~?よーい・・・アクション!!」
「「はああーーー!!」」
クラッパーボードが鳴らされると同時にルドガーとユリウスは駆け出し、槍と双剣をぶつけ合った。
「はあっ!」
「せいっ!」
槍を持ったルドガーは横に凪ぎ払い、ユリウスはその攻撃をジャンプすることによって回避すると同時に剣を地面に突き刺そうとする。
「轟牙衝!」
「絶影!」
それを見たルドガーはユリウスと同様に瞬時に回避し、ユリウスより高い位置から流星のように、槍を突き出しながら落ちてくる。
「「蒼波刃!」」
互いの得物から放たれた衝撃波がぶつかり合い、その衝撃で撮影現場を軽く揺らした。
「お〜・・・好きに動いて良いと言ったけど、良い意味で期待を裏切ってくれるね〜!」
スピン監督がアクションシーンを見ながら興奮した様子で感想を呟く。監督は最初は躍動感のある派手なアクションを期待していた。だが現在はその期待を良い意味で裏切り、ド派手なアクションをルドガーとユリウスは繰り広げている。これ程の逸材が眠っていたことにスピン監督は興奮を表には出さず、ただこのアクションシーンを取ることに集中する。
「ぐあっ!?」
ユリウスがルドガーを蹴り飛ばし、距離を取らせる。
「強くなったな。だが、まだまだ甘い!お前に戦い方を教えたのは誰だと思っている!」
「うおおおっ!!」
ルドガーは立ち上がり、再びユリウスに向かって行き、槍を振るう。
このようにして途中で時折挟む台詞も、アクションシーンに潤いを持たせてくれる。派手なアクションは確かに観客の目を引く。だが単調な戦闘が長く続くと飽きが生まれてしまう。時折台詞や、追い込まれるシーンを挟むことによって潤いを持たせて一秒一秒に興奮や次の展開に期待を寄せるのだ。
すると、スタッフの一人が監督に近付き、あることを話す。
「監督、ヤバい情報が!」
「何だね?」
「エンシェントドラゴンがこちらに近付いてきているとのことです!」
「何だと!?」
スタッフから聞かされた情報にスピン監督は驚く。撮影は大事だが、流石に役者やスタッフ達を危険に晒す訳にはいかないと思い、すぐさま指示を飛ばす。
「全員聞いてくれ!!撮影は一旦中止!!近くにエンシェントドラゴンが近づいて来ている!!奴が過ぎ去るか、討伐されるまで離れるぞ!!」
撮影現場にいる全員に聞こえるように大声で指示を出し、逃げる準備をする。
しかし―――。
「待ってくれスピン監督。エンシェントドラゴンの討伐は、俺とルドガーに任せてくれないか?」
ユリウスとルドガーは違った。
「ああ。さっさと片付けて、撮影を再開させますよ。」
「何ならそのままカメラを回してくれてもいいぞ?これから起こるいいアクションを期待しててくれ。」
「にいちゃん達・・・。」
「行くぞ、ルドガー!」
「ああ!」
「「蒼波刃!!」」
「グオオオーーー!!」
岩影から現れたエンシェントドラゴンに向かっていくユリウスとルドガー。スタッフ達から遠ざけるべく衝撃波を放って押し出す。
岩影に押し戻されたエンシェントドラゴンは、ルドガーとユリウスを敵と見なし、排除すべく口から火炎放射を放つ。
「おっと!」
炎に飲まれそうだったユリウスは横に転がることで回避し、再びエンシェントドラゴンへと向かっていく。
「舞斑雪!」
機動力を削ぐべく足を狙うが、体を覆っている鱗が固く、剣が弾かれてしまう。
「くっ・・・!」
「絶影!」
ルドガーが頭上から狙うが、頭部も相当固いらしく、槍が弾かれてしまう。
「グオオオーーー!!」
エンシェントドラゴンは強靭な腕を目の前にいるルドガー目掛けて振り下ろし、潰さんとする。
「ぐぅっ!?」
エンシェントドラゴンの腕を真正面から受け止めたルドガーは、潰されまいと全身に力を入れて耐える。
エンシェントドラゴンの拳とルドガーの槍がぶつかった瞬間、地面は陥没し、一人と一体を中心に放射状にヒビが入る。
「ルドガー!!」
弟の危機を救うべくユリウスは駆け出し、エンシェントドラゴンの腕に向かって双剣を振り下ろす。
「重裂破!」
全体重を乗せた攻撃はエンシェントドラゴンの腕を弾き、ルドガーを拘束から抜け出させる。
「ありがとう兄さん。」
「礼は要らんさ。油断するなよ?」
「グオオオーーー!!」
体勢を立て直した二人は、咆哮を上げているエンシェントドラゴンに向かって、得物を構えた。
「素晴らしい・・・コイツは最高の映画になる・・・!」
ユリウスとルドガーが戦闘している間、カメラを回しているのはスピン監督と撮影スタッフ達だ。ユリウス達から逃げろと言われたが、監督の指示により撮影を続行することに決めたのだ。
もちろん、危なくなったらすぐに逃げるという条件でだ。
「あの~監督。ホントに逃げなくていいんですか?」
「バッカモーン!!今この瞬間を逃したら、次はいつ撮れるか分からんのだぞ!!このような千載一遇のチャンス、撮り逃すわけにはいかーん!!」
「すみません!」
「いいからカメラを回すんだよー!仮に今は使えなくとも、別のタイミングで使うんだよー!!」
「はい!!」
そんなやり取りをしている間に、戦闘は最終局面に写ろうとしている。
「ゼェ・・・ゼェ・・・!」
エンシェントドラゴンは、兄弟からの猛攻によって息を上げていた。兄弟の連携によって徐々に追い詰められ、立つことすらままならない程に体力を消耗し、体中に傷を負っていた。
「そろそろ決めるとするかルドガー!」
「ああ!いくぜ!!」
ルドガーとユリウスは同時に駆け出し、エンシェントドラゴンに向かって突撃する。
「「リンクチャージ・デュオ!!」」
兄弟からの突撃を受けたエンシェントドラゴンはそのまま押し倒され、地面に倒れる。
「「双砕迅!!」」
高速で駆け抜けつつも槍と双剣を交差させるようにして切りつける。
「「鷹爪落爆蹴!!」」
ルドガーが高く跳躍し、槍先から闇のエネルギー弾を連続で放ち、その後にユリウスがルドガーの足裏を蹴り、ルドガーもそれに合わせて同じく蹴り返してエンシェントドラゴンに向かって弾丸のごとく突撃する。
「グオオオーーー!!?」
腹を物凄い勢いで貫かれたエンシェントドラゴンは最早虫の息だ。
その状態のエンシェントドラゴンにとどめを刺すべく、最後の技を放つ。
「いくぞルドガー!」
「これが俺達の!!」
「「合体技だ!!」」
「「うおおおおおーーーー!!!」」
ルドガーが槍をもうひとつ生み出し、残像が見えるほどのスピードでエンシェントドラゴンを通り過ぎながら何度も切り刻み、ユリウスも同様に双剣を振るって何度も切り刻む。
「「奥義!!」」
止めにユリウスがエンシェントドラゴン目掛けて十字型の斬撃を放ち、その後をルドガーが槍を突き出しながら突撃し、ユリウスの放った斬撃を押し込むかのように突撃する。
「「祓砕斬!双牙!!」」
「グオ・・・オ・・・!」
二人の連携が止めとなり、エンシェントドラゴンは腹をぶち抜かれて絶命した。
「やったな。ルドガー。」
「ああ!」
変身を解いた二人はハイタッチを交わし、喜びを示す。
その様子を見ていた監督とスタッフ達は感極まり、二人に近付いた。
「ブラボー!!最っ高だったよーーー!!」
「やあスピン。無事だったか?」
「お陰様でねー!それよりも今の戦闘、最っ高だったよーーー!!お陰でいい映像が取れたよー!!さっき中断しちゃったやつも、後で撮影再開するから、準備しといてねー!」
そう言ってスピン監督はスタッフと打ち合わせすべくこの場を離れていった。
「あんなことがあったのに、アグレッシブな人だな・・・。」
「まあ、大事に至らなくてよかったじゃないか。これで撮影が再開できるんだ。」
「それもそうか。」
「さあ、撮影もクライマックスだ。気合い入れていくぞ。」
ユリウスがそう締め括ると、撮影現場へと戻り、ルドガーもそれに続いた。
―――リーンボックス 撮影スタジオ
「・・・カーット!よーしOK!!これで撮影終了だーー!!」
ラストシーンを撮り、監督が締めると同時に全身の力が抜けてホッとするルドガー。
それと同様にユリウスや撮影スタッフ達も一気に脱力し、やりきった感をさらけ出す。
「ふぅーーーやっと終わった・・・。」
「お疲れルドガー。これで、お前への依頼は完了だ。」
「いやー助かったよにいちゃん。あんたら兄弟のお陰で最高にいい映画が出来たよー。にいちゃんの報酬に俺からも追加しとくよー。」
「有難うございます。監督。」
「今夜行きつけの店で打ち上げ会があるんだよー。是非参加してくれよー。」
「わかりました。場所は何処ですか?」
「場所はユリウスが知ってるよー。後で一緒に来てくれればいいからねー。」
そう言って監督は数人のスタッフ達と一緒にスタジオから出ていった。
「映画撮影か・・・こんなにも大変だったんだな。」
「俺も偶にスピンの手伝いをしているが、現場を見るとかなり大変だと思うよ。」
ルドガーの呟きにユリウスが答える。
「依頼とはいえ、貴重な体験が出来たよ。ありがとな。兄さん。」
「礼を言うのはこっちだ。お前のお陰で映画が完成したんだからな。」
「それは違うと思うぞ?俺だけじゃなくて兄さんや監督、そしてスタッフの人達が一緒に頑張ったから出来たんだ。だから俺のお陰って言うのはちょっと違うと思うぞ?」
「言うようになったなお前。なら、今日の打ち上げ会で飲み比べといくか?」
「程々にしといてくれよ?昔、エレンピオスで兄さんが飲み会から帰ってきたとき介抱が大変だったんだからな。」
「ア、アレはリドウの奴が煽りに煽ってくるからカチンと来てな、それで引けなくなったというか・・・。」
「ハイハイ言い訳はいいから今夜は道案内よろしく。」
「話を聞けーーー!」
その日の夜、ユリウスとルドガーは打ち上げ会場である酒場で飲み比べをし、二人揃って酔い潰れるのはまた別の話である。
次回から本編に戻ります。