神次元ゲイムネプテューヌV〜審判を超えし者〜 作:namco
また何日かの時が流れた。
子供達の誘拐事件が再発しないようにあれから警備を強化するという呼び掛けくらいしか出来ないが、それでも何もしないよりはマシだろうという話で各教会との話し合いは終了した。
そんなある日―――。
「虎牙破斬!」
「アサルトダンス!」
今日もイストワールから斡旋された依頼を受けてモンスター退治に勤(いそ)しむルドガーとミラ。
ラステイションの湿地にて討伐目標であるモンスターを斬り伏せると、一息ついた。
「これで今日の仕事は終わりだな。」
「ええ。討ち漏らしとかは無いわよね?」
「ああ。今ので最後だ。」
「そう。なら早く帰って夕食の支度を・・・。」
踵を返してプラネテューヌに帰ろうとしたその時―――。
「グルルル・・・!」
「ん?」
どこからか獣の唸り声のようなものが聞こえてきた。
モンスター討伐の騒ぎを聞きつけてやって来たのかもしれない。
「聞こえるか?ミラ。」
「ええ。意外と近いわね・・・。」
唸り声が聞こえてきた方向に目を向けつつ、何時でも迎撃出来るように剣を構える。
しばらくすると、奥の茂みから何かが出してきた。
「グルルル・・・!」
それは巨大な狼型のモンスターであった。しかしただのモンスターではなかった。
見た目は危険種のフェンリスヴォルフに似てはいるが、種類が異なるモンスターの体の一部が取り付けられていたのだ。
背中は鳥型の危険種モンスターの翼が、両肩には四足歩行戦車型の砲台が取り付けられていて、かつて戦ったキメラのようなモンスターと特徴が類似しており、明らかに自然発生したモンスターではなかった。
「まさかコイツは・・・!」
「ええ。前に見たやつと同じ奴よ!」
「来るぞ!」
「グオオオーーー!!」
こうして謎のモンスター、キメラウルフとの戦闘が始まった。
最初は強靭な脚力で駆け回り、爪や牙で地上で戦っていたのだが、キメラウルフは攻撃をルドガー達に対処されると、途中から背中の翼を羽ばたかせて空に浮かび、両肩の砲台からマシンガンのように弾丸を放ち、自分に近付けさせないように二人を牽制する。
しかし、ルドガーは持っている武器を双銃に切り替えてキメラウルフの翼目掛けて弾丸を放ち、ミラは風の精霊術を放つ。
「トライスパロー!」
「ウィンドランス!」
「グオゥッ!?」
二人の攻撃が命中した瞬間にキメラウルフはバランスを崩して地面に落ちる。
地面に落ちたのを確認した二人は一気に仕留めるべくキメラウルフ目掛けて駆け出す。
「合わせてくれミラ!」
「そっちこそ!」
「「カタラクトリボルバー!!」」
ミラの放った光の槍をルドガーが掴み取ると、キメラウルフに叩き付けると爆発が起こり、キメラウルフは肉片残さず消滅した。
「以前戦ったキメラみたいな奴程じゃなかったな。」
「ええ。けど何でまたアイツみたいなのが・・・。」
「その辺もイストワールに報告だな。」
「変な出来事の前触れじゃなきゃいいけど。」
「言うな。それを言ったら発生するぞ。」
そう言いながら二人はプラネテューヌへと帰るのであった。
―――プラネテューヌ 教会
「ただいま・・・あだ!?」
「ねぷてぬのばか!もうしらない!!」
「ふぎゅっ!?」
「それはこっちのセリフだよ!」
ドアを開けようとした瞬間、ルドガーは開けられたドアに勢いよくぶつかって吹っ飛ばされ、さらに飛び出してきた誰かに腹と顔を踏み潰されて意識が一瞬だけ飛んだのであった。
「ちょっとルドガー?大丈夫なの?」
何者かに踏みつけられたルドガーをミラは心配して駆け寄る。
「あ、ああ。何とか。」
顔面に足跡を着けられたルドガーは、ミラの手を借りて立ち上がった。
「あ、ルドガーさん。お帰りなさい。」
「ただいまイストワール。何があった?」
「実は・・・。」
イストワールはルドガー達が出かけている間に何が起こったのかを説明する。
「最初に言いますと、ネプテューヌさんとピーシェさんが喧嘩してしまったんです。」
「喧嘩?何でだ?あの二人結構仲良かったろ?」
「どうしたもこうしたもないよ!あたしが楽しみにしてたプレミアムプリン食べちゃったんだよ!」
「プリンを食われた?」
「しかもただのプリンじゃないんだよ!予約した人しか買えない超限定のプレミアムプリンなんだよ!!三ヶ月前から予約していたのに!今日やっと届いたっていうのに!誰かが間違って食べないように「ねぷの」って名前まで書いてたのに!それをピー子が食べたんだよ!!」
「それは・・・災難だったな・・・。」
「何よりも一番許せないのは、勝手に食べておきながら悪びれもせず「美味しかった!」って言った事だよ!!勝手に食べてごめんなさいの言葉すらないんだよ!!これが怒らずにいられる?って話だよ!!」
プリンを勝手に食べられたことにご立腹のようだ。
普段は滅多に怒らないネプテューヌだが、大好物のプリンを食べられてかなり怒っていた。
「それで言い合いになったってことか。」
「ふんだ!ピー子なんか知るもんか!」
そう言ってネプテューヌは自室へと引っ込んでしまった。
「こりゃしばらく放って置くしかないな。」
「お姉ちゃんの機嫌を直すにはやっぱり同じ物を用意するしかないんでしょうか。」
「かもな・・・って居たのかネプギア。」
「やっぱりルドガーさんからも扱いが雑に・・・。」
「ネプテューヌもそうだけど、ピーシェのことも放って置けないわね。そろそろ夜になりそうだから、早いところ迎えに行かないと。」
ミラは窓の外の日の傾き具合を見て言う。
「そうだな。危ないことに巻き込まれる前にピーシェを探さないとな。ちょっと行ってくる。」
ルドガーはピーシェを探すためにもう一度出掛けるのであった。
「ピーシェー!どこだー!?」
ピーシェを探し始めて1時間近くが経過したが、未だに見つからない。
日もだいぶ暮れてしまい、ほぼ夜に近くなっていた。
「はぁ、どこに行ったんだ?」
思い当たりそうな場所は殆ど探し尽くした。
公園、ゲームセンター、図書館、おもちゃ屋・・・好奇心が旺盛なピーシェが行きそうな場所はすべて探した。だが見つからなかった。
このままでは直に夜になり、見つけるのが困難になってくる。早く見つけなければと思ったその時。
「ん?」
足に何かがぶつかった感触がしたので足元を見てみると、そこには布製の赤い玉みたいなものがあった。
「これは・・・。」
拾ってよく見てみると見覚えがあるものだった。
「これって、ピーシェの髪飾り?」
そう。ピーシェがいつも頭に着けている髪飾りだったのだ。
その髪飾りが落ちていたのならばこの付近にいるはずだ。
「うわあああ!?」
「!?」
悲鳴が聞こえた。聞き覚えのある声だった。すぐ近くの路地裏から聞こえた。
「ピーシェ!!」
ルドガーは髪飾りをポケットに仕舞いながら悲鳴が聞こえてきた路地裏に進んで行った。
「あ、あああ・・・。」
「ほら嬢ちゃん。何も怖くないから、お兄さんと一緒に楽しいところへ行こうね・・・ゲヘヘ。」
ピーシェは現在、迷い込んだ路地裏にてチンピラらしき男に絡まれていた。
今まで感じたことのない恐怖にピーシェは足が竦んで逃げるという選択が頭から抜けていた。
「さあ、お兄さんと一緒に・・・。」
「ウチの子に何しとんじゃごらああ!!」
「あべしっ!?」
今まさに誘拐しようとしたチンピラにルドガーがドロップキックを放ち、路地裏のゴミ箱へとシュートしたのであった。
「ふぅ・・・。ピーシェ。」
「ぴぃっ!?」
チンピラを蹴り飛ばした後、ピーシェと向き合うルドガー。それに対して怒られると思い目に涙を浮かべ、ルドガーが手を伸ばした瞬間にピーシェは打(ぶ)たれてしまうと思い目をギュッと閉じる。そして次の瞬間。
―――ポン。
「・・・ふえ?」
「心配したんだからな。」
頭に手が載せられたのであった。
「う、うう・・・!」
―――うわあああん!!
目の前の恐怖から解放された瞬間、安堵感から大声でピーシェは泣き、ルドガーはピーシェの背中を落ち着くまで撫で続けた。
「落ち着いたか?」
「うん・・・。」
「なら帰るぞ。皆が心配してる。」
泣き終えたピーシェの手を引いて、ルドガーは立ち上がって教会へと帰ろうしたとき、ピーシェが尋ねる。
「ねえ、るどがーは・・・おこらないの?」
「何に対してだ?」
「おうちとびだしたこととか、ねぷてぬのぷりんたべたこと・・・。」
ルドガーは意外に思った。この年で善悪の区別がつき、自分がやった事が悪い事だという認識が出来ることに。
ルドガーはその質問に対してもう一度しゃがみ込み、ピーシェに目線を合わせて話す。
「確かに、ピーシェのやったことは悪い事だ。皆を心配させたし、ネプテューヌのプリンを勝手に食べた事はダメな事だ。ピーシェだって、アイエフやコンパがいつの間にかいなくなると、どこに行ったんだって不安になったりするだろ?」
「うん・・・。」
「そして、自分が食べようと思ってたオヤツとか誰かに勝手に食べられたりすると、悲しい気持ちになったりするだろ?そういう事を他の人に感じさせちゃいけないんだ。」
「うん・・・。」
「さっきだって、俺が来るのがあと少し遅かったら、捕まって別の所に連れ去られて、二度とネプテューヌ達に会えなくなるかもしれなかったんだ。わかるな?」
「うん。わかる。」
「わかったなら、二度とこういう事をしないこと。そして、ネプテューヌにプリンを勝手に食べた事を謝ること。出来るな?」
「ねぷてぬ、ゆるしてくれるかな・・・?」
「大丈夫だ。俺も許してくれるように話すよ。だから、まずはごめんなさいからだ。出来るな?」
「うん。」
「いい子だ。それじゃ、帰ろうか。」
「うん!」
そう言ってもう一度立ち上がり、ピーシェの手を引いて帰ろうとしたその時。
「残念だけどその願いは叶わないわよ。」
「!?」
聞き慣れない声が聞こえたため、確かめようと後ろを向いた瞬間、顔に何かを吹き掛けられる。
「グッ!?」
「るどがー!?」
「悪いけど、少し眠ってもらうわよ。」
顔にスプレー状の何かを吹き掛けられた瞬間から眠気が襲い掛かり、意識が朦朧としてくる。
「ピーシェ・・・逃げろ・・・!」
眠気に抗いながらもピーシェに逃げるように言う。
「う、うん!」
今度は足が竦むことなく逃げるという行動に移すことが出来たため、路地裏から逃げようとしたその時。
「残念、逃げられないぜ?」
聞き覚えのある声が路地裏に響いた。
「この声は・・・!」
「ぴぃ!?」
「おっと、騒ぐなよ嬢ちゃん。」
「ピーシェ・・・!」
「ごめんね。ちょっとこの子が必要だから、貰っていくわね。」
「さっさとずらかるぜ?騒ぎを聞きつけた警備兵が来ちまう。」
朦朧とする意識の中、襲撃してきた犯人の正体を見ようと目を見開いた瞬間、ルドガーの思考が一時停止した。
一時停止した思考の中で、忘れていた記憶の欠片が合わさっていき、一人の人物像が浮かび上がる。
自分がエレンピオスにまだ居た頃、就職初日にてテロに巻き込まれ、治療のために多額の治療費を請求し、平和条約を結ぶための会場にテロリストを先導して分史世界のミラを消滅させ、最後にクランスピア社から脱出する際に最後の壁となった、厭味ったらしい医療エージェントの男。その名は―――。
「リ、ドウ・・・!」
その男の名を呟いた瞬間、ルドガーは一気に脱力し、意識を深い闇へと落とした。
ルドガーが倒れてから数時間後、ルドガーの近くに一人の男が歩み寄って来る。
「・・・。」
男はルドガーを担いで、プラネテューヌの教会方面へと歩いて行った。
次回予告
ピーシェが誘拐されてから空気が重い日々が続いていた。
ピーシェを見つけるために世界中を捜索していたが、そんなある日、新しい国が建国されるという衝撃的なニュースが発表されて世界は大きく変動していく。
そんな中、ある男が教会を訪ねてくる。その男は、ルドガーにとって深い関わりを持つ相手だった。
次回―――新国家、エディン建国
「久しぶりだな。ルドガー」