神次元ゲイムネプテューヌV〜審判を超えし者〜 作:namco
―――オオトリイ洞窟 深部
―離せ!離しなさいよ!
―ぴーぴーうるさいやつだな。それ以上騒ぐと、二度と喋れないようにしてやるぞ。
―やっぱりやめたほうがいいっちゅよ!こんなことしたら女神達、物凄く怒り狂うっちゅ!
―そんなに女神共が怖いのならさっさと帰れ。そもそも、ここに居ろなどと頼んだ覚えはない。
―おいらは親切で言ってやってるっちゅ!
アイエフを捜索中、洞窟内に響いてきた音を聞き取ったルドガーは全員に知らせる。
「話し声が聞こえる・・・近いぞ!」
「ホント!?あいちゃんが近くに!?」
「ああ。確かに聞こえた。急げば追いつくかもしれない!」
「よーし!待っててね、あいちゃん!!」
ルドガーからの知らせにいち早く反応したネプテューヌが勢いよく走り出した。
「ねぷちゃ〜ん、待って〜!」
後からプルルートも着いていく。
「ちょっと、罠があるかもしれないのに、そんなバカ正直に突っ込んだら危ないでしょ!?」
「・・・無駄よノワール。今のネプテューヌ達には聞こえてないわ。」
「まあ、大事な家族が攫われて穏やかじゃなくなるのは理解できますわ。」
「ましてや二度目の誘拐・・・しかも七賢人によるものならね。」
ノワール、ブラン、ベール、ミラの順番でネプテューヌの心情を推測する。
「気持ちはわかるが、早く行かないと置いていかれるぞ。」
「そうですね。行きましょう!」
ルドガーの言葉にネプギアが相槌を打つと、全員でネプテューヌを追いかけていった。
「やっと追いついた!あいちゃん!」
「あいえふちゃ〜ん!」
「ネプ子!プルルート様!」
ネプテューヌとプルルートが自分を救出しに来てくれたことに、アイエフの表情に明るさが戻る。
「憶せず来たか、女神共。その点だけは褒めてやろう。」
「ううう・・・やっぱり本人達を前にすると、決意が揺らぐっちゅ・・・。」
アイエフを誘拐した犯人―――マジェコンヌが前に出てそう言い放つ。
ネズミは女神を前にして体が若干震えていた。
「久しぶりだな、マジェコンヌ。だいたい10年ぶりか?アレだけプルルートに叩きのめされてまだ懲りてなかったのか?」
「黙れエージェント!あの屈辱を思い出させるな!」
「さあ、約束通り来たんだから、あいちゃんを返してもらうよ!」
「さもなくば、大変なことになりますわよ。」
ベールの忠告を聞いたあと、マジェコンヌは笑みを浮かべながら顔を押さえ、腹の底から大笑いをする。
「くくく・・・はーっはっはっは!どうやら貴様の言った通りだな!女神共は人質を無視して、私を大変な目に遭わせてくれるそうだ!」
指の隙間からアイエフの様子を覗きながらアイエフに向かって言う。
「私なんかどうなってもいいわよ。アンタをやっつけてくれればね。」
不安気な表情を浮かべながらもアイエフは気丈に振る舞う。
「・・・勘違いしているようだから言っておくけど、大変なことになるのは貴方達じゃないわ。」
「何?」
ブランの発言に首を傾げるマジェコンヌ。
「むしろ大変なことになるのは、ぷるるんの方と言うか・・・。」
「プルルート様が?」
ネプテューヌの補足にアイエフも首を傾げるが、その答えがすぐに現れる。
「あは・・・あはは・・・マジェコンヌさん、だっけ〜?あれだけお仕置きしたのに、またオイタするんだぁ〜・・・。」
黒い笑みを浮かべながらマジェコンヌに向かって言うプルルート。見ていて怖いものである。
「びくっ!?あわわわ、あわわわわ・・・!」
「ぢゅぢゅぢゅ!?こ、この感覚は・・・!」
「ひいっ!?な、なんだ・・・か、体が、勝手に震えて・・・!」
人質含めてプルルートの黒い笑みを見た三人は、身に刻まれた恐怖からその身を震わせる。
「おお、こうかはばつぐんだ!」
そんな状況を見てネプテューヌは呑気に言う。
「人質にまで効果を発揮してるけどね。」
「す、すみません。私も、プルルートさんの側、怖いです・・・。」
ノワールがその様子に呆れながら呟き、ネプギアは恐怖に震えながら呟いた。
「う、うううう・・・!?何だ、この恐怖は・・・震えが、止まらない・・・!?」
「アイエフさん、今ですわ!」
「・・・はっ!?今なら!」
ベールがアイエフに向かって言うと、アイエフは拘束が緩んでいることに気付き、その身に襲いかかっている恐怖を抑え込みながら立ち上がり抜け出す事に成功した。
「し、しまった!?」
「ぢゅーっ!?な、何をしてるっちゅか!?」
アイエフが抜け出したことによって不利な状況へと転んでしまったマジェコンヌとネズミ。
「ふ、震えが止まらんのだ!仕方ないだろう!くそっ、この私が・・・怯えるなんて・・・!」
かつて刻まれた恐怖によって身動きが取れずにいるマジェコンヌをよそにネプテューヌ達は喜びの声を上げていた。
「あいちゃん!無事でよかったよ!」
「うん!プルルート様、ありがとうござい・・・。」
アイエフがプルルートに向かって感謝の言葉を伝えようとしたその時。
「良かったぁ〜・・・おかえりぃ、あいえふちゃん〜・・・。」
怖い笑顔を浮かべながらアイエフに安堵の声を出すという、顔と声が一致しない妙な状態のプルルートに抱き着かれたアイエフは、かつて目の前で繰り広げられたアイリスハートとしてのプルルートの残虐性を目の当たりにした恐怖を思い出し、頭が許容量を超えてしまい、そして―――。
「―――きゅう。」
気絶したのであった。
「あ、アイエフさーーーーん!?」
気絶したアイエフをネプギアが介抱するが、目を回して意識を飛ばしてしまったのである。
「助かったと思ったその矢先に地獄の女王様・・・何と言うか、この子は色んな意味で災難だったわね。」
「・・・同情しかないわね。」
アイエフが気絶する様子を観ていたミラが呟き、それを聞いたブランが言い返した。
「さあ、人質となっていたあいちゃんもいないし、怒ったぷるるんを止めるものはなんもないよ!覚悟してよね!」
「うふふふ〜・・・マジェコンヌさん〜・・・?」
「・・・何だかこの状況、俺達が悪役になってる気がするんだが?」
「それは言わないお約束でしょ?実際は向こうが悪いんだから。」
ルドガーの呟きにノワールが言い返した。
「く、くそっ・・・体が、動かない・・・このままでは・・・やられる・・・?」
今だに恐怖に震える体を動かそうとするも、それが出来ずにただそこに立つしか出来ない。ジリジリと迫ってくる命の危機を感じていたその時―――。
「やれやれ、世話が焼けるっちゅね。」
マジェコンヌの前に救世主が現れる。
マジェコンヌの前に魔法陣が出現し、巨大な障壁となって女神達の行く道を阻む。
「な・・・?ネズミ、何のつもりだ?」
魔法障壁を展開したのはネズミだった。手に持っていたディスクから魔力を放ち、そこから魔法障壁を展開していたのだった。
「そんな状態で戦えるわけがないっちゅ。逃げるくらいの時間は、おいらが稼いでやるっちゅ。」
「ネ、ネズミの分際で愚弄する気か!?私は、女神なんかに!」
「意地の張りどころを間違えるんじゃないっちゅ!ここは逃げて生き延びるっちゅ!」
「な、何故だ?何故私の為にそこまで・・・?」
疑問に思うことをネズミにぶつけるマジェコンヌ。帰ってきた返答はこうだった。
「悪の・・・悪の組織にだって、友情はあるっちゅ!!」
「っ!?」
そう言い切ったネズミに対してマシェコンヌは雷に打たれたかのような衝撃が走り、震える体を無理矢理動かして踵を返す。
「礼は言わんぞ。それは・・・次に会った時だ!」
そう言ってマジェコンヌは出口らしき通路へと向かって走り出し、行方を眩ませたのであった。
マシェコンヌの姿が見えなくなったのを確認すると、魔法障壁を解除して女神達と改めて向き合う。
「行ったっちゅか・・・さあ、またせたっちゅね。お前達の相手は、この「ワレチュー」がするっちゅ!!」
ネズミ―――もとい、ワレチューが自信満々に言い切り、自身の周りに幾つもの魔法陣を展開して戦闘準備を整えた。
マジェコンヌとワレチューのやり取りを見ていた女神達は何故か涙を流しながら感動に打ち震えていた。
「やだ・・・あのネズミ、かっこいい・・・!」
「・・・敵ながら天晴としか言いようがないわ。」
「何よ・・・友情なんて言葉に、うるっときたわけじゃないんだから!」
「ノワールさん・・・ハンカチ使ってください。」
「これは、戦いづらくなってしまいましたね。」
「覚悟が決まってるか・・・。」
「腹をくくった奴ほど、手強いものはないって言うわよね・・・。」
ネプテューヌ、ブラン、ノワール、ネプギア、ベール、ルドガー、ミラの順番で言い、それぞれの反応を示す。
「ふ、オイラ達は所詮敵同士。余計な情けは無用っちゅ。とは言え、さすがに数に不利があるっちゅから・・・パワーアップさせてもらうっちゅ!」
そう言いながらワレチューはどこからともなくスイッチのような物を取り出し、それを押す。
「ポチッとなっちゅ!」
押した瞬間、ワレチューの周りの魔法陣から放たれたエネルギーがワレチューに注がれ、その体に変化が訪れる。
「ぢゅぢゅぢゅぢゅーーーーー!!」
小さかった体は巨大になり、腕は象の足のように太くなり、顔つきもまさに悪魔と言えるような風貌になり、女神達の前に立ちふさがった。
『グルルルル・・・!』
「変身した・・・?」
ワレチューの変化した姿にノワールは驚愕し、ネプテューヌが続けて言う。
「あれが、あのネズミなの!?」
『グオオオーーー!!』
変化したワレチューの咆哮が洞窟内に響き渡り、洞窟内を揺らす。
「何て大きな声・・・!」
あまりにも大きな咆哮に女神達は耳を塞ぎ、ベールは声を漏らす。
「うふふふふ・・・ネズミさん〜?」
そんな中でプルルートは平然と立っており、不敵な笑顔を浮かべながらワレチューと対峙する。
『ヂ、ヂュゥ・・・?』
プルルートの笑みを浮かべた表情を見たワレチューは、その満面の笑みに恐怖を感じ、思わず後ずさる。
「初めて会った時に〜、散々お仕置きしたのに〜、まぁだ分かってないんだ〜・・・。」
そう言いながらプルルートは変身して鞭剣を手に持ちながらワレチューに向かって言う。
「久しぶり過ぎて、あたしの怖さを忘れちゃったみたいねぇ・・・これはもう一度、調教し直さないとぉ・・・。」
『ヂュ、ヂュヂュ!?』
「んー、ぷるるんがそう言うんじゃ、しょーがないかー。」
「そうですわねわたくしは、見逃して差し上げてもよろしいと思っていたのですけれど・・・。」
変身したプルルートとワレチューのやり取りを見ていたネプテューヌとベールが言い、プルルートに続いて変身する。
「まあ、元はと言えば自業自得だもの。諦めてもらうしかないわ。」
太刀を構えてネプテューヌは言った。
「そうね。それに、私達だって色々ストレス溜まってるしー?」
「だな。わりーけど、ストレス発散のサンドバッグになってもらうぜ」
ノワールとブランも変身し、それぞれの得物である剣と斧を持って構える。
「あなたの男気に敬意を評し、手加減は一切せず、全力でお相手して差し上げますわ!」
ベールは風を切り裂く音を鳴らしながら槍を振り回し、ワレチューに槍先を向けて構える。
「わ、私も、やるからには全力で・・・!」
「ネプギア。悪いんだけど、あいちゃんを見てて。気絶している状態だと戦闘に巻き込みかねないから。」
「・・・うん。何となく、そんな気はしてたよ・・・。」
「・・・あたしも、今回は一緒に下がるから、機嫌直して。」
ネプギアもガンソードを構えようとするが、ネプテューヌに言われてしょぼくれながらミラとともに気絶したアイエフを連れて引き下がった。
「さて、これでだいたい全員が戦闘準備が出来た訳だが・・・俺からも一言言わせてくれ。」
ルドガーもスリークォーター骸殻に変身して槍を構えてワレチューに向かって言う。
「お前には聞きたいことが山ほどあるんだ・・・死ぬことはないにしても、死ぬ程の痛みは覚悟しとけ。」
『ヂュー・・・!?』
「ああ、やっぱり忘れちゃってるのねぇ・・・。」
プルルートは鞭剣を地面に叩きつけながら力強く言い放つ。
「あたしのことはぁ・・・女神様とお呼びっ!」
『ヂュヂュヂュゥーーー!!』
ワレチューは、たった今にしてこの瞬間、胸の内に浮かんだある言葉に埋め尽くされた。
『調子に乗ってカッコいいセリフで挑発するんじゃなかった。』
と。
戦闘は次回に続きます。