胸の痛みに耐えながらも家の扉を開けようとすると 庭から弟の
「おかえり〜ねぇちゃん」
ギュッと強く抱き締められた電子はお返しに雷滝にギュッとしかえした。
「ただいま雷滝、抱きついてきてくれるのは嬉しいけどいきよいよくとびつくとあぶないからやめようね」
「うんわかった!!」
花が咲く様な笑顔を見せる弟にさっきまで抱いていた暗い気持ちも少しは柔んだような気がした。
「それじゃあお家に入ろう、今日はお母さんがハンバーグを作ってくれるんだって雷滝も好きでしょ?」
「本当!? やったぁ〜早く入ろうよおかあさんおねいちゃん」
電子よりも小さい手で必死に手を掴んで引っ張る弟を可愛いと思いながらお母さんと一緒に玄関を開け台所へと急いだ。
「おかあさん! 僕のハンバーグにはチーズ入れてねおっきいやつ」
「はいはい、分かったわよ分かったから少し離れてなさい火を使うから危ないわよ」
コンロの近くで飛び跳ねる雷滝に母はそう言い雷滝を少し離れた所に連れていった。
「お母さん、私は大根おろしをつけてね」
「はいはい分かったわよ、ちゃんとつけてあげるからお皿とかテーブルにならべて置いてくれる?』
「は〜い」
電子は そう言いながらテーブルにお皿を並べていると玄関が開く音が聴こえた。
「ただいま〜今帰ったぞ〜」
「あ! おとうさんが帰ってきた、おかえりなさい」
ドタドタと忙しなく歩き回る雷滝はお父さんに飛びつき思っいきり抱きついた。
「ぐぉ、雷滝いきなり飛びかかってくるのやめてくれないかぁ、お父さん痛いから」
「あ! ごめんなさい〜」
「雷滝さっき私が言ったばっかりなのにもう忘れたの?」
「うぅ、だってぇ〜」
「だってぇじゃあ無い」
電光が少し怒ったような声で凄むと雷滝はしゅんと縮こまってしまう。
「あははは、お前たちはほんとに仲がいいな」
「お帰りなさいあなた」
豪快に笑うお父さんにお母さんが手を拭きながら出迎える。
「あぁただいま母さん、今日も賑やかだなウチは」
「えぇ、ほんとに騒がしいくらいね」
一緒に笑い合う母と父を見て電光と雷滝はそれに釣られるように笑い合った。
笑い声と共に漂う美味しそうな匂いに父はグゥ〜と言うお腹の虫を鳴らした。
「さっきからいい匂いがするから父さんお腹がなっちゃったよ、母さん今日の晩御飯は何だい?」
「今日はねハンバーグと唐揚げその他盛りだくさんよ」
「いいねぇ〜昼は時間がなくてあんまり食えなかったからお腹空いたよ」
お腹をさすりながらそういう父は 思い出したかのように電光に言った。
「あ、そう言えば今日は電光の個性を診断してもらう日だったねだから電光の好物ばかりがある訳だ、それでどうだった電光の個性は?」
そう言った瞬間電光と母の顔に影がさし、さっきまでの明るい雰囲気が消えていった。
「 あ、あなたその話は後でゆっくり話すから とりあえず着替えましょう」
慌てたように 話を途中で終わらせ 父を 寝室へと引っ張っていった行った。
「あかあさんどうしたんだろ?」
雷滝のその言葉を聞いて電光は顔を俯かせていく、すると電光の様子に気づいたのか心配する様子で電光に話しかけた。
「おねいちゃんだいじょうぶ? ぐわい悪かったらおくすり飲む?」
「だ、だいじょうぶよ心配してくれてありがとう、それよりもご飯の前に一緒にお風呂はいろ?」
「う、うん」
そう言い父の着替えを手伝っている母に雷滝とお風呂に入ってくると伝えながら風呂場へと向かう。
「……おねいちゃん本当にだいじょうぶ? 無理してない?」
体も洗い湯船に一緒に入っていると雷滝首を傾けながら再び同じ事を聞いてきた。
「だから大丈夫よ、心配しないでホントに何でもないから」
何度も同じことを聞いてくる弟に 心配してくれていると分かっていながらも電光は少しイラついていた。
「で、でもおねいちゃん何だか元気無いから、お医者さんで何か言われたの?」
弟の言葉に先程言われたばかりの医者の言葉が脳裏によぎりまたあの時の嫌な気持ちが溢れ出てきた。
「……何でもないわよ、ほんとに気にしないで」
「でもおねいちゃんお医者さんから帰ってきてからなんだか変だよ、何かあったんでしょ」
「いい加減にして!! 何でもないって言ってるの、これ以上しつこく言うならもう二度とアンタとはお風呂にも入らないし一緒に遊ばないから!!」
しつこく言ってくる弟の言葉が段々と自分を追い詰めていく感じに耐えきれず電光は雷滝を叩き自分の怒りをぶつけてしまった。
「……わたしもう出る」
心配してくれた弟に対して叩き自分の怒りをぶつけてしまった事に対する罪悪感と弟の今にも泣きそうな顔に耐えきれず風呂場を出て行ってしまった。
「わたし、何やってるんだろう……」
電光は医者から言われたヒーローにはなれないという言葉が頭から離れずにいた、自分の夢を憧れを否定されたあの言葉が。
それをしつこく聞いてくる 弟に対する怒り 心配してくれた弟に怒りをぶつけてしまった事に対する罪悪感、いろんな感情が渦巻きあって電光は今、失意の中にいた。
ヒーローを夢見たあの日からヒーローになる為に父や母に色々な事を教わり、どんな個性が出るか期待して想像を膨らませたりしていつか、オールマイトの様な笑ってどんな人でも助けられるそんなかっこいいヒーローになれる様に期待に胸を膨らませていた筈なのに、そんな夢や希望はたった一言で打ち消された。
「わたし最低だな……」
紙も拭ききれておらずぽたぽたと地面に 水滴を垂らしながら 廊下を歩いていると 台所から 母が出てきた。
「電光どうしたの雷滝は? 一緒に入ってたんじゃあないの?」
「お風呂だよ……もうあがると思うから体拭いてあげて」
「……電光どうしたのお風呂に入る前と全然雰囲気違うわよ?」
「何でもないよ……お母さん今日、わたしやっぱりご飯いらないもう寝るね」
心配する母を横目に電光は何かを耐えるように唇を噛み締めながら子ども部屋へと走って行った。
僅かに聞こえる弟の泣く声を耳の奥に感じながら。
「電光…………」
電光はいそいそと子供部屋へと向かい 布団敷き 毛布を被りながら 今日の出来事をしばらく振り返っていると 扉が開き 母が入ってきた。
「電光、お風呂で何があったの?」
電光の側へと歩み寄りそのすぐ側で座る母の姿を毛布の隙間から見ながら電光は母の言葉を耳にするも返事を返さずにいた。
「電光、雷滝ね泣いてたわよお姉ちゃんが怒ったって」
「……そうだよわたしが泣かせたの」
俯く電光に母は毛布を被り浮かび上がっていた頭に手を置きながらなで始めて言った。
「どうして泣かせたりしたの? 雷滝痛がってたわよ」
優しい声でそう言う母に電光は母のぬくもりのせいか胸の奥で溜め込んでいた思いを話し始めた。
「お医者さんでわたしはヒーローになれないって言われたあの言葉がわたしには本当につらくて今までのわたしの頑張りも夢も何もかも否定されたような感じがして本当につらかったの、だからあの時のことをしつこく聞いてくる雷滝にはらがたってつい、たたいちゃったの……わたし最低だった雷滝は悪くないのにわたしの事を心配してくれてああいったのにわたし……わたし……本当にごめんなさい!!」
「……そう、そうだったのごめんなさいね電光の本当の気持ちを分かってあげられなくて、あの時本当ならすぐに母親としてこう言うべきだったのにね」
泣きながらも自分の気持ちを正直に話す電光に母は優しく電光を抱きしめながら言った。
「電光はヒーローになれるわよ、だってこんなにも優しくて自分のした悪い事で胸を痛めてちゃんと反省して謝れるんですもの、だから大丈夫電光はヒーローになれるわよ」
母のその言葉に電光は胸の中にあったモヤモヤが一気に晴れ、胸の中に言葉に仕切れないほどの気持ちが溢れて涙で顔がぐちゃぐちゃになりながらも母の胸の中で泣き続けた。
母は涙で服が濡れようとも鼻水で汚れようとも母はその大きく心地よい胸で小さな我が子を包みながらその頭を優しくなで続けた。