私が懸けるは憧れの果て   作:折本装置

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はじまりはじまり




「ふわあ、ねっむ」

 

 

 日曜日、我らが陽務家では食事を一緒に取ることが義務付けられている。

 趣味に没頭しすぎるあまり

 いやあ、今回のクソゲーーー通称「見えへん・メルヘン」もひどかった。

 いや、なんでランダムに視界がブラックアウトするんだよ。

 その状態が戦闘中に起こったら負け確じゃねえか。

 せっかくグラフィックのクオリティは高いのに台無しである。

 後完全ランダムってのもひどい。

 本当に規則性があるわけではなく、完全な乱数らしい。

 いつ起きるのか、どれくらいの間隔で起きるのかというのもまちまち。

 オンラインならまだわかるけどオフラインゲーでこれはさすがにひどすぎる。

 なんであんなバグがあるのか、本当に小一時間問い詰めてやりたい。

 噂では、エンディングの映像が特に神だと聞いていたのに、そのタイミングでブラックアウトしたせいで見えないし。

 やはり乱数はクソ。

 はっきりわかんだね。

 

 

 テーブルの上に雑誌が置いてある。

 まーた妹様か。

 どうせまた鉛筆魔王の雑誌だろ?そろそろあいつを邪教から救い出さねばなるまい。

 と、思っていたんだけど、違った。

 それはファッション誌や芸能誌のようなペンシルゴンが載っている類のものではない。 

 というか、ある意味あいつや瑠美から最も縁遠いと思える雑誌だった。

 

 

「陸上雑誌?」

 

 

 このあたりの地域に関する、陸上競技についての雑誌らしいんだが、なんで瑠美がこんなの買ってるんだ?

 陸上ね、俺はジョギングはするけどそれぐらいでぶっちゃけ碌にやってない。

 ああでも、陸上関係のクソゲーはやったなあ。

 ひょっとして買うものを間違えたとか?

 いや、瑠美は邪教徒ではあるが、だからこそそんな間違いを犯すとは思えない。

 しかし、陸上雑誌に何の用があるんだ?

 天音永遠の雑誌でもなければ、自分の読モとして載っている雑誌でもなく、バイトの求人雑誌でもない。

 陸上関係の施設でバイトするつもりなのか?

 いやそれ以前にこの表紙の女の子、中学生だろうか?どっか見たような気が。

 

 

「あれ、お兄ちゃん陸上興味あったっけ?」

「それこっちのセリフだぞ、ていうか瑠美が買ったんじゃあないのか?」

「この表紙の子、クラスメートでね、隠岐紅音さんっていうんだけど、こないだ陸上の大会で優勝したんだって」

「へえー」

 

 

 なるほど。それが理由で雑誌に載ったから買った、と。

 まあクラスメートが雑誌に載れば買うこともある、か。

 雑ピもとい暁ハート先生もそういう雑誌に載ったりしてるんかな、載ったら盛大にいじってーー祝ってやろうと心に決めているんだが。

 クラスメートが雑誌に載るなんて素晴らしい、晒し者に――もといお祝いとしてクラスで回し読みしないとな!

 

 

「ただいま!みんな帰ったぞ!」

「あらお帰りなさいお父さん!今日も大きいわねえ」

「おう、今日は大物のカツオが釣れたんだ」

「まーた、マグロサバト事件の悲劇が繰り返されてしまうのか。どうやって処分するの?」

「いやあ、なに、足が速いとはいえたたきにすればある程度はもつだろうさ、ガハハハハハ、さて今から捌いていくか」

「ちょっとお父さん、またここで捌く気?朝から食欲なくすようなことしないでよ!」

「結局サバトになりそうだなあ」

 

 

 まあいいや、とりあえず朝食は大事だ。

 今日のゲームのためにもね。

 そう思いながら、冷蔵庫で冷やしておいたライオットブラッドを開ける。今日は無印だ。

 朝食をとりながらも、俺は違和感を覚えていた。

 隠岐紅音、おきあかねかあ。

 どこかで聞いたような気がするな、なんだっけ?

 ギャルゲーのヒロインとかじゃないよな?

 朝食をとりながらも、そのことがなぜか頭から離れなかった。

 

 




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