私が懸けるは憧れの果て   作:折本装置

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「大学に進んで」

春休み。それは学生の特権であるらしい。

社会に出てしまうと休みは取りづらい、というのはもちろんだが春休みというもの自体が存在しないらしい。

そういう意味では、大学に進学できているのはありがたいことかもしれない。

社畜というゲーマーにとっては向かい風の状況を先延ばしにできるのだから。

 

 

「楽郎さん」

 

 

 

 隣にいる少女が、目をキラキラと輝かせて俺の方を覗き込んできた。

 綺麗な瞳に、目が覚めるような声に、釘付けになる。

 

 

 

 

「何か考えていましたか?」

「ああうん、ちょっとね」

 

 

 

 

 

 

 紅音と付き合い始めてから、もう2年が経過した。

 俺は華の大学生、紅音は眩い高校生になりました。

 ちなみに去年これを外道二人組に言ったら「便所に咲くタイプの花じゃん」と言われたのでペナルティのないゲームでPKしておいた。

 まあそのあと同じゲームで花火にされたんだけど。

 花火を打ち上げてその点数を競うコンテスト系クソゲーこと「ファイヤワーカー」、コンテスト系のゲームとは思えないくらい殺伐としてる。

 まあバグでプレイヤーを入れると結果がランダムに変動するからなんだけど。

 上振れを狙うならプレイヤーごと打ち上げるのが必須なんだよな。

 

 

 

「私にはわかりますよ!楽郎さんが考えていることと言ったらゲームのことだと!」

「まあうん、そうだね……」

 

 

 

 

 デート中に他のことを考えるなんて、普通の彼女なら怒りそうなもんだが、紅音はそうはならない。

 それなりに付き合いが長いことや、そもそも紅音もベクトルこそ違えど立派なゲーマーというだけあってゲームの話で盛り上がることも多い。

 何なら「ファイヤワーカー」も一緒にやったしなあ。

 リアルラックで最高乱数引いて最高得点だした時のカッツォの顔といったらもう、爆笑を禁じえなかった。

 

 

 

「結局、変わらないもんだな」

「何がですか?」

「色々だよ。俺のことも、君とのことも」

 

 

 

 まあ、紅音との関係に対してはとにもかくにもリアルで初めて出会った日の変化が大きすぎたというのはあるが。

 そこそこ勉強して、ゲームして、こうして紅音と過ごす。

 俺の生活は、あの時から、紅音の手を取った日から、ずっと変わっていない。

 多分、いつかは変化するときが来る。

 社畜になったり、旦那になったり、父親になったりして変わっていく。

 けれど。

 

 

「走りましょう!楽郎さん!」

「え、ちょっ、うおおおお!」

 

 

 

 

 俺の手を引いてくる彼女と一緒なら何とかなると、根拠もなくそう思えた。

 

 

 

「……んで、オフ会に遅刻した理由は?」

「普通に寝坊した」

「オーケー、生野菜の刑に処す」

 

 

 

 

 まあ、何とかなるか。

 

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