良家出身の0さん   作:wanaza

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3年ぶりの更新ってまじ?


日本人形

「人形なんです。何ていうか、昔ながらの、日本人形ってやつ」

 

 Aさんは、そう言って話し始めた。

 

 その当時、Aさんは幼稚園に行き始めたかどうかくらいの年齢だったそうだ。

 

「私の家は、昔ながらの布団で家族みんなでごろ寝、っていうスタイルで。で、その寝てる部屋に、何体か人形があったんです」

 

 なんでも、父方と母方の両方の祖父母が、初孫であるAさんのために張り切って、五月人形とその日本人形をそれぞれで揃えたそうだ。

 

「と言っても、五月人形はまだあれ期間限定みたいな感じなのでマシだったんですけど。日本人形はガラスのケースに入れたままでほとんど放置だったんです」

 

 そしてその日本人形が。

 

「髪が伸びる……いえ、伸びていたんです。あの時は確かに」

 

 

 それは夜中のことだった。その日は妙に眠れなかったのだという。

 

「幼い頃だったので、時計の数字が見たこともない数字で。いえ、普通に10時とか11時とかそれくらいなんですけど、当時はその時間まで起きていることも怖かったんです」

 

 家族全員の就寝時間が基本的に早かったそうで、その時間であっても、Aさんのご両親はすでにぐっすり眠っていたそうだ。

 

「怒られる、ってその時は思ってて。とんでもない、夜更かしをしちゃってるなって」

 

 それも相まって、Aさんはなんとか眠ろうと目をつぶっていたそうだ。けれど、眠ろうと思えば思うほど、目が冴えていく。

 その時だった。

 

 ガタン。

 

「音がしたんです」

 

 何かを、外す音。Aさんはそっちの方を向いた。

 するとそこには日本人形が、立っていた。

 何をするでもなく、ただただ立っていた。

 それだけではなく。

 しゅるしゅる。しゅるしゅる、と。

 何かが床を這うような音もして。

 

「伸びたん、です。毛が。みるみる間に」

 

 その毛は、そのまま、Aさんのご両親を覆うように伸びていき━━

 

「そこから先は、分かりません。お布団を被ってしまったので」

 

 翌朝、ご両親に何も変化はなかった。

 今では、あれはきっと夢だったとAさんは思う。

 

 

 けれど。

 

「私は、あの人形が、怖い、です。今でも」

 

 

 

 

 

 

 

 

 割と何でも伸ばせばいいっていうものではない、ということを体験できる機会なんて、意外と頻繁にある。

 例えば、発売日とか。いやでもあれは、元がもっとひどいから発売日が伸びているのか。だが、それにしても、発売日をのばして、追加パッチで余計にバグり散らかす数々の敗北者達(クソゲー)の例は枚挙にいとまがない。じゃなければ、俺こと陽務楽郎のゲーム棚が溢れるなんてことにはならないはずだ。

 クソゲーは勝手に畑から生えてくるわけではないのだ。多分。なんか毎年、年末になると増えていくような気もしなくはないが、きっと気の所為だ。うん。

 で、である。

 

「見間違え、だったりしない?」

「お、同じものを見ているので、恐らくは本物、かと……」

「だよねえ」

 

 いつもの放課後。

 いつも通り玲さんと、帰路につき。

 そして前から歩いてきたのは、日本人形。当然誰かが、手に持ってるとかそういうこともなく、自立してきっちり歩いていた。でもこの場合、日本人形を持って歩いている生きている人間の方が怖かったりするんじゃないだろうか。

 あとなんか、みるみる間に毛が伸びていってる。めっちゃ伸びてる。指向性を持って、俺の方にその伸びた毛が向かってくる。

 けどなんかこう、あれだ。

 

「こういうのって、夕方に見ても、あんまり怖くないね」

「そうでしょうか」

 

 玲さんは何やら空を見上げていた。

 俺も、それにならって空を見上げたら━━突然、とっぷりと日が暮れる。

 

「え」

 

 バチ!

 音がした。

 バチバチバチ!

 音を立てて、あたりが暗くなっていく。太陽が陰ったとかではなく、突然日が暮れたとしか言いようが無い変化。

 だが、いつもであれば道を照らす街灯も、何故か今日は点らず、暗いまま。

 

「え????」

「その……逢魔が時、ですので」

「そういうことかあ……そういうことか?」

 

 なんでもありなのかよ、怪異は。

 

「でも、楽郎君。ご安心ください」

 

 玲さんは、むんという感じで、拳を構えた。

 

「普通ならば、どうにもならない、怪異」

 

 その場でリズミカルに軽くジャンプする玲さん。

 

「ですが……斎賀流に……限り!」

 

 破裂音。

 

「命なき命を、絶つ。そういう技が、あるのです」

 

かくんと、その場に付した元歩く日本人形。

 

 

良家って、すごい。そう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

別解

 

 

 ああ、どうした。何をそんなに落ち着いているのかって?まあ確かに、会社でもらった私宛のバレンタインの中身が、蠢いているのは確かだ。

 人形が歩いているのはどう考えても異常事態だろう?それはそうなのだが、何分、どこぞの誰かさんとセット扱いされてたせいか、よくこういう全くもって嬉しくない贈り物を、巻き添えで私にまでされることが多かったからな。

 慣れた。

 あまり騒ぐな。確かに、人形━━いわばヒトガタを見立てにして、呪うということは使い古されているがゆえに、時と場合によってはかなり危険だが。

 こういうやつは。

 

 破ぁ!

 

 これで終わりだ。

 何をしたかって?

 

 理屈は簡単だ。怪異の本体は、怪しく異なるものであることだ。それは呪でも変わらん。そういうものだと理解しろ。で、あるならば、今回の日本人形の最も異なる部分は、人形なのに髪が伸びるという点だろう。ならば、そこをどうにかしてやれば…………要点を早く言え?

 

 塩酸をぶっかけただけだが?

 

 別の贈り物を使うのはある意味危険ではあったが、まあ仕方がない。

 だから、あまり騒ぐな。

 

「これを変って思う僕がおかしいのかなあ!?」

 

 やかましいぞ、京極。斎賀流には塩酸が必要な技術もあるんだ。

 

「そんなわけないでしょ!!!!!???」

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