僕は中学2年生の頃に、自殺未遂をやらかした。
未遂になるとは完全に思わなかったけど。
当時の僕は中学一年生の時から、クラスメイトにいじめられていた。
担任は当然のようにスルー。
いじめっ子は無駄に信頼が高かったから、他の先生に相談しても無駄状態。
毎日復讐、死を考えるだけの生活だった。
奴らから付けられた傷で親に気付かれて………
なんて希望はなかった。
両親はいい意味で僕の事に興味がなかった。
殴られた顔で帰ってきても、帰ってこなくても気にしないような人達だった。
でも、悪い人たちでは無い。お年玉や、お小遣いはくれる。
体調が悪いと言えば、学校を休ませてくれる。
多分僕が不登校になっても何も文句を言わずに僕を居ないものとして扱うんだろう。
そんな生活が1年半ほど続いた。
できる限り最高の復讐をしてやりたかった。
その日の放課後。まだ先生がいるのにも関わらず、奴らは気にせずに僕を殴ったり蹴ったり。
痛みは感じない
クラスの全員で僕を笑っていた。
担任も「おいおい、あんまり派手にやるなよ」と。
「………」
僕は無言でサバイバルナイフを取り出した。
この時のために、研いでおいた。
それを見たいじめっ子は真っ青。担任はすぐこっちに走ってくる。
でも、それより前に、僕は自分の腹を切った。
痛みは感じない。
殴られすぎて慣れてしまったのか、興奮しているのか…
そして、腹の中から腸と思われるものを取り出して、目の前で倒れているいじめっ子の顔にぺちぺちと叩きつけた。
思いっきり叩いたわけじゃないから、痛みは無いだろう。
でもみんなは硬直していた。
「ほらほら、痛い?痛い?気持ち悪い?臭い?ねえ?ねえねえねえ」
僕は狂ったようにそう言って流れ続ける血をやつにぶっかけた。
これで、やつは永遠にトラウマになるだろうし、僕もようやくこの世からおさらばできる。
「あはは!!」
胸を何ヶ所も刺す。
シャワーの様に、血が流れる。
「血のシャワーはどう??あはははは!!あはははははは!!!」
僕は既に狂っていた。
「ハハッ…い、痛てぇ〜〜〜死ぬぅ〜〜〜〜ハハッ!!」
ようやく興奮が落ち着いたのか痛みを感じた。
でも、目の前の男の顔を見ただけで笑えてくる。
「最後にその顔を見れてよかった!!あは!!」
その後、狂ったように笑い続けた。
その笑い声を聞きつけて、他のクラスの先生が救急車に通報。
記憶は無かったが、その時僕は「今更呼んで助かるわけねえだろ!!あはははははは!!」と笑っていたらしい。
目が覚めると病院の中で、病室には先生、両親、いじめっ子の親、病院の先生がいた。
その時僕は酷く不機嫌な顔をしていた。
「ごめんなさい!」
と病院の先生以外の人が額を地に付ける勢いで謝った。
「………ああ。非条さん。裕也さんに服を汚してしまって申し訳ないと言っておいてください。あれだけ血を被ったら使い物にならないでしょうし…」
この言葉にそこに居た僕以外の全ての人が驚いた。
非条裕也ってやつが僕のいじめっ子だ。
こいつはモブだから、覚えなくていい。
「で、先生。なんで生きてるんですか?あの状況じゃ絶対助からないと思うんですけど」
驚いて頭を下げたまま硬直している人達を無視して先生に言った。
「う、うん。それはおいおい説明するよ。いきなり説明して混乱させてもいけないし」
説明されない方が混乱するだろ。
とも思ったが、とりあえずは納得。
「で、なんであんた達まで謝ってるの?」
今更情なんて無かったから、実の親をあんた達と呼んだ。
「まさか凪くんがここまで追い詰められてるとは思って無かった…」
今更自己紹介も遅いと思うけど、僕の名前は高野凪。
こっちは覚えておいてくれると助かる。
「いいよ。あんた達は暴力を振るわないだけ全然マシだし、僕がしたいようにしてくれてたから恨んではないよ。で、先生は?」
今度の先生は学校の担任の方である。
担任は医師の方だと思ったのかしばらく黙ったあと、あ、俺か。といった感じで話し出した。
「今まで無視して申し訳なかった。そして、あの時、止められなくて申し訳なかった」
「最早今更どうでもいいよ。で、非条さんは?」
「む、息子のした事…」
「いいよいいよ。あんたらが謝らなくて。だって僕あんたらの事知らないし」
他人に謝られてもねえ?
「じゃあ、混乱してるし物事の整理つけたいから、帰ってくれる?謝罪は後ね」
「…そういう事ですので、今日の所はお帰りください」
医師はそう言ったが、全員帰ろうとしない。
「人がいると、凪さんも緊張して何も出来ないので」
そう医師が言うと、ようやくゆっくりと部屋から出た。
入れ替わりに警察の人が入って来た。
「失礼します。今回の事件について…」
「事件じゃないよ。ただの自殺未遂だよ。帰ってくれないか?話ならまたいくらでもするから」
生きていたら…という意味ではあるが…
「は、はい。お邪魔しました…」
「……本当はもっと遅く伝えるつもりだったんだけど、君は冷静だから、今教えるよ」
「…うん?」
「シングラーはご存知かな?特異という意味のシンギュラリティから名付けられた名前だね」
「特異能力保持者。通称シングラーですね。過去の英雄や、悪魔と同等の能力を使えると言う」
「ああ。君はシングラーなんだ。だから、能力のおかげで、君は生きているんだ」
「………なるほど。なら、しょうがないですね」
非常に残念だったが、僕がシングラーだったのは悪い話ではない。むしろ、中学2だった当時の僕はすこし嬉しかったんだと思う。
「それで、ラプター……の事もご存知かな?」
「最近じゃ、ニュースにも良く取り上げられてるんで。シングラーが能力を私利私欲のために使った悪人をそう呼ぶんですよね?」
「そうだ。君には、そうなって欲しくなくてね…しばらく離れるから、何かあったらナースコールで呼びなさい。」
「ああ、ありがとうございます」
「いえいえ。それじゃあお大事にね」
…………
その後、毎日クラスメイトの誰かが謝罪に来てくれた。
その度追い返したが、正直入院生活は暇だったのでありがたい。
そもそも、無事なんだから入院しなくても良くない?
とも思ったが、何があったか分からないから、しばらく安静にするように…だとよ。
その後、僕は自分の能力をろくに確認もせず、退院出来た。
先生に、精神病院へ行くことを勧められたが、「この狂った頭はもう直らないです」と笑顔で言って、退院した。
これが、今から1年前のこと。
特に何事もなく過ごせて、高校にも進学できた。
事件後、いつもたまに僕が傷だらけで帰ってくるところを見ていたご近所さんは、数週間僕の姿が見えなくて心配していたそうだが…
「祖父が亡くなってしばらく実家に…僕おじいちゃんっ子だったので悲しくて泊まってたんですよ。両親は仕事あるから先に帰ってきたんですけどね。ね?」
それで誤魔化した。両親は、今更僕を甘やかして、僕の言うことに全て従ってくれている。
僕は家事などを手伝って、その度に母が泣きながらお礼を言ってくれたが、もう、この人たちは同居人ぐらいとしか思えない。
ちなみに祖父は僕か産まれる前に死んでいる。
死んでいるとはいえ、勝手に言ったことをほんの少しだけ申し訳なく思い、家の近くにある祖父の墓場を掃除しといた。