劣等感を抱いた卑屈な子を歓迎し、上がり調子な出来る奴に唾を吐く部にようこそ!!!!! 作:胡椒こしょこしょ
くせぇから狂人の中に放り込んでやるよ!!!!!!!!!!!
朝起きる。
今日も普通だ。
普通の生活。
起床すれば朝食を食べて、反抗期の妹に洗面所を取れながらも用意をして学校に登校する。
そんなモブAの日常。
それでも本当のモブは気にしないのだろう。
だが俺はただのモブなんかじゃない。
俺は昔は神童って呼ばれていたんだ。
絵だって大会の常連だったし、楽器だって弾けたんだ。
年を経るごとに才能は枯れて行って、今や俺は得意なことは何もない平凡な男。
俺は落ちぶれたのだ、天才から。
だから俺は悔しいし、今イケてる奴らを見て嘲笑する日々を送っている。
今サッカーやってモテてるイケメンも、悪いことしてブイブイ言わせてるウェイ系も、今をときめく芸能人もいづれは俺のように賞味期限が切れて残るのはモブだけだった。
そんなことも知らずに我が物顔で世の中歩いているなんて面白くないか!?
今の内に楽しんでいろよ、上がり調子で順調なリア充さんよ。
お前らが枯れはてた時に、俺はほらなって指さして笑ってやんよバーーーカ!
もちろん、そんなことはお首も出さずに今日も俺は間抜けなモブ面を晒しながら登校していた。
はぁ~~~、幸せな奴みんな死なねぇかなぁ。
終末説とか何回か出てるんだから真面目に終わらせろや、ノス〇ラダムスゥゥ!!!
「...へぇ、あの子、いいじゃん。」
そうやって間抜け面を晒しているから、俺は俺を見てしたり顔を浮かべている少女の存在に気づけなかったのだ。
◇
「うぉぉぉ!三宅っちマジパないべ?やっぱカッケーわ!アイドルになれるわ!!!」
「ハハ、野見山は大袈裟だよ。」
「いや本当に彪雅はなれるっしょ。ウチ、応募しよっか!?マジで伝説の始まりっしょ!!」
昼休み。
教室の中。
ウェイウェイウェイウェイうるせぇなぁ。
鳴いてんじゃねぇよ猿山の猿かよ。
一般的に言う陽キャ。
いや陰陽思想で言う所の陽キャの代表格たちの話を盗み聞きする。
すると、彪雅と呼ばれた少年、サッカー部主将である三宅彪雅は爽やかに笑うと、横の典型的なギャルである蓮向居に返答する。
「御免、美由。俺はほら...今はサッカーに集中したいから。」
そう言うと横の取り巻きウェイ(ヒト科ヒト目ヒトデナシ)の一人であるロン毛の野見山が口を開いた。
「っかぁぁ~~~!!!マジでかっけぇ!本当、一生ついていくわキャプテン!!」
まるで死にかけの鴉のような声を上げるウェイ山。
それに調子の良い事言って!と小突くギャル向居と三宅は笑いあう。
その付近に居る可愛いからギャル向居に囲われているキョロ充の女ァ!も笑っていた。
何が面白くてそんなに笑ってるんですかね?
顎外して一生笑う事しか出来ないようにしてやろうか?
それにしても二枚目のサッカー部主将に三枚目のロン毛ウェイ、そしてギャルでお山の大将のような女とキョロ充女共。
よくまぁここまでウェイのテンプレートが集まった物である。
少しは独創性とかないのかよ。
見ててつまんねぇわ。
もうその時点でお前らヤバいって分かってる?
分からないとヤバいって分かってんのか死んでくれ。
そう頭の中でグチグチと思っていると、急に凄い勢いで教室の扉が開く。
開けた張本人は一人の女子生徒だ。
ポニーテールで凛として引き締まった眉根の美人な少女。
一目見て恵体と分かり、胸もデカいが背も高い。
一目見て目立つ少女である。
ネクタイの色的にも上級生であると分か....ん?なんだこの色は。
見たことねぇぞあの色。
もしかしてアレ校則違反じゃねぇの?
良いのアレ?
そう思っていると、彼女は開口一番こう叫んだ。
「私が、今朝見た見込みがあると思ったしょぼくれたクズ少年を知らないかッ!!!!」
...いや、アンタが良いなと思った人を俺たちが知るわけないでしょ。
てか見込みがあるとか思っておきながらしょぼくれたクズ少年ってそれ本当に見込みがあるのか?
普通にゴミみたいな人間じゃねぇかしょぼくれたクズ少年って。
聞いたことねぇよ、しょぼくれたって所が余計に残念感増してるよ!
教室中がざわめき出す。
それもそうだ、だって意味分かんねぇもん。
それに知らない奴だ。
お前誰だってところがほとんどだろう....。
「うわ...出たよ、あの先輩だ。」
「本当だ、チュパカブラ先輩だ....」
「知ってる!伝説の伝説先輩でしょ!?関わりたくねぇなぁ....」
教室中の生徒たちがボソボソと話している。
てかなんだチュパカブラ先輩ってそれもうUMAじゃねぇか。
伝説の伝説先輩も意味分からねぇよ、伝説ってことしか分からねぇだろうが。
ただ周りを見ると、どこか厄介者な先輩ということが分かる。
なんだみんな....知ってるのか?
もしかして俺が斜に構えている間にハブられてるクラスLINEで話題になったような人なのか?
俺が戸惑っていると、急にその伝説の伝説先輩がドアを全力でぶっ叩いた。
「なんだ貴様らァ!!高校生の癖に質問にも答えられないのか!!!??お前らさぁ、一体テストとかでどうしてるんだぁ!?えぇ!!!???この人の名前を答えなさいって聞かれてザワ・ザワって毎回答えてんのかよォ低能がさァ!!!」
そういってブチ切れるチュパカブラ先輩。
うわっ、やっぱコイツやば....。
今まで見た中でぶっち切りでヤバい奴だよ。
美人が台無しな顔でブチギレてるよ....。
もうアレ、般若じゃん。
あとザワ・ザワってなんだ、一番の低能はお前だろうが。
そう思っていると、不意にそのやべぇ先輩と目が合った。
するとその先輩は表情を一変させて満面の笑みを浮かべる。
「なんだぁ~なんだなんだお前ぇ~。こんな所に居たのかよお前、えぇ~?先輩の私が探してる様見て喜んでたのかよお前可愛いじゃねぇか~、後で殴ってやるからなぁ~。」
そう言ってこちらに歩み寄ってくる。
え、なんだコイツ....なんでコッチ来るの!?
「えっ、なんすか先輩。なんか俺に用なんすか?多分人違いですよ、てか誰なんですか?」
俺が問うと、俺の目の前で立ち止まって笑みを浮かべた。
「は?言う必要ねェだろ。あと人違いじゃねぇ。私の目を見てみろ、そんなミスを犯す目してねぇだろ。」
白眼を剥いてた。
え.....なにこの人、本当に怖い......。
何故白眼剥きだした?
理解できない....宇宙人を目の前にしたときってこんな気持ちなんだね母さん。
するとその人は俺の肩を持つ。
「お前なんかくっさい独白とかしてそうな顔だもん。私はなぁ....お前のような人材が欲しかったんだよ!!!!おらっ、こっち来い!!!!」
そう言って引っ張ろうとしてくる。
こんなキ〇ガイに連れていかれて堪るか!
野生の勘だが、碌なことにならないことは確定だ!
「ちょっ、やめてくださ....痛っ!いったぁ!!肩外れるってアンタ腕の力どうなってんだ!!」
肩を握りしめた手がまったく振り払えない。
寧ろ余計な抵抗すれば肩がぶっ壊れるように感じる。
この細腕のどこからこんな力が出てるんだよ!?
わけわかんねぇよコイツ!!!!
「おっすおすおすおっす!おら行くぞ~。」
そのまま部屋の外まで引っ張られていく。
ダメだ、彼女の引っ張る方向に足を進めなきゃ肩が外れる...っていうか腕が取れそうだ!
コイツ、本当に人間かよ!おかしいだろ!!
てかそれ以前に....
「お前誰だよぉォォォ!!!!!」
一人の少年が外に連れ出される。
しかし彼の悲痛な叫びは彼の居ない教室でもまるで生きた証かのように木霊して残っていた。
◇
連れられたのは特別棟の中のある教室。
中にはなにやら呪術的な物や意味の分からない形のしゃれこうべに顕微鏡を噛ませた物など作った意図も分からなければ用途も分からない得体の知れない物が所せましと置いてある。
そこのパイプ椅子に座らされていた。
「...ここはなんなんですか?教室に帰してくれませんか?」
俺がそう言うと、彼女は首を振る。
「悪いがそれは出来ない。まだ役者が揃ってないからな。....おい、なんで私がお前に謝ってんだよ、生意気だな後輩よぉ?」
「えぇ....」
自分で言って自分でキレだす女。
結局誰だか分からずじまいだし、力強いしで怖くて仕方がない。
すると、彼女が思いついたかのように声を上げた。
「あっ、そうだ。この部活がどういう部活か当てっこしようぜぇ!私、最近見たマンガかアニメか映画か、小説でこんな描写あったんだよ。」
「なんで視聴媒体の記憶がガバガバなんだよ....、あーもういいっすよ。俺が勝ったら外に出してください。」
「おー。じゃあいくぞ~。ヒントはこの内装だ!!」
そう言って彼女は胸を張った。
えぇ....ヒントが難しかないか?
しかし周りを見回す。
目に入るのは意味の分からないオブジェに科学雑誌にムー。
そしてその部分だけ何故か部屋から浮いている高級そうな茶器。
「...オカルト部、ですか?」
俺が恐る恐る答える。
すると彼女は目を瞑って仁王立ちする。
どっちだ...正解か......?
すると目をカッと見開いた。
「ちーがーいーまーすー!!ブー!!ブッブー!!ブッブッブー!!!!ブーーーーー!!!!!」
「...唾掛かってんだよ、いい加減にしろよ先輩。」
こんな真正面から唾を吐きかけられたことは初めてだ。
もう最後らへん唾かけるのが目的になってるじゃねぇか。
てかオカルト部じゃない?!
オカルト部じゃなくてこの有様なの??
一体どうなってるんだ、まったく分からんぞ。
一通り俺に唾を吐きかけ終わると、したり顔でそいつは言った。
「ダメダメな哀れな後輩君に教えてやろう。この部活は....『劣等感を抱いた卑屈な子を歓迎し、上がり調子な出来る奴に唾を吐く部』だっ!!!部長の宝田那由他、よろしくな!!!!」
「分かるわけねェだろそんなのッ!!!!てか名前が長ぇ!!!!」
そんな部活聞いたことも見たこともねぇよ。
てか学校の部活紹介でもいなかったじゃねぇか!!
本当に学校に認可されてるのかよ!!?
ま、まぁ?
この頭おかしい奴の名前が分かっただけでも僥倖だ。
そうじゃないとなんて読んでいいか分からないから、頭の中でも愚痴の吐きようがないからな。
俺が言うと同時に部屋の扉が開く。
すると、部屋の中へ二人の女子生徒が入ってきた。
一人は眠そうな顔をしたぼさぼさ髪の眼鏡の少女。
そしてもう一人は勝気そうな目をした巻き髪の育ちの好さそうな少女が入ってきた。
なんだ、まともそうな人じゃん。
少なくとも部屋の入り方がまともだもん。
扉で台バンしてキレ散らかさないもん。
「おっ、来たかカス共。おせぇよ。」
すると縦ロールとボサ眼鏡が口を開く。
「あなたが早すぎるんじゃなくて?私、ちゃんと集合時間は守ったつもりですわ。」
「へぇ~、その子が新入部員君かぁ~。言った通り腐った汚泥みたいな人間性してるねぇ~。」
縦ロールは那由他先輩に詰め寄り、ボサ眼鏡はこちらの顔をまじまじと見て口を開く。
えっ、てか人間性否定されなかった今。
めっちゃほんわかした喋り方だったから追いつかなかったけど、滅茶苦茶言われてたよね俺。
腐った汚泥ってなんだよ、もう最底辺の極限みたいな語感になってるじゃねぇかよ。
てか新入部員って言わなかった!?
「ちょっ、那由他先輩?し、新入部員ってどういう....」
「おいおい、そんなことよりさっさと自己紹介しろよ。後輩君が困ってるだろ?また地球投げされたいのか?」
すると、二人に那由他先輩は明るい調子で呼びかけた。
てか明るい調子で滅茶苦茶物騒な事言ってるんだけど....。
すると二人はこちらを見て、自己紹介を始めた。
「...まぁそれもそうですわね。私、財前朋絵と申しますわ。同学年だから分かりまして?ざ・い・ぜ・ん朋絵、学園長の孫でしてよ~、恐れ敬いなさい?」
「あ~、ボクは麻生理那由他。那由他先輩で良いよ~。これでもここの部長なんだぁ~。」
マジか....噂の学園長の孫ってこんな部活に入ってたのか?
同学年に居ることは知ってたが、正直興味なかったから知らなかったが...え~、マジかよ。
ん?てか...。
「え、すいません。そこの那由他先輩が自分が部長だって言ってましたけど....そのっ、『劣等感を抱いた卑屈な子を歓迎し、上がり調子な出来る奴に唾を吐く部』の部長だって。」
ここに俺を連れてきた先輩を指さす。
すると彼女は他所を向いて口笛を吹き始めた。
そして俺が言った言葉を聞いて那由他先輩が笑いだす。
「えぇ?あの子は牟居美碌ちゃんだよ?それにここはそんな変な部活じゃなくて新聞部なのだぁ~。」
なにもかも違うじゃねぇか、どうなってんだ!?
あんなナチュラルに嘘吐く人なんか俺始めただぞ....。
俺があそこのヤバい女に戦慄していると、那由他先輩の隣の財前さんは口を開く。
「補足するなら今は部ですらないですわ。同好会ですわね。」
「え...どういうこと?なんで同好会なのにこんなデカい部室があるの?新聞部ですらないとなると頭こんがらがるんだけど....」
するとほわほわと机に突っ伏しながらふにゃっとした笑顔を見せた。
「ボク達真面目に新聞書いているのにぃ~、なぜか同好会に格下げになったんだぁ~。」
「絶対に真面目に書いてないでしょ。少なくともそこの美碌先輩は真面目じゃないでしょ。」
あんなヤバいのに新聞なんか書けるわけない。
てか違う部活の名前言ってたし....
「はぁ?私の新聞が一番まともだし!お前あんま舐めてっとぶっ殺すぞ。」
「じゃあ何書いたんですか?」
「この神月市でのチュパカブラの目撃情報。」
ゴリゴリのオカルト誌に掲載されるような内容じゃねぇか。
校内新聞でそりゃないでしょ。
てかチュパカブラ先輩の由来そこか!!
そう思っていると、他の二人も口を開く。
「私はまだ一年生ですから今は近場で私の会社に取り込まれる予定の中小企業の生活の変化を取材してますわ。取材しててニヤケが止まりませんわね。」
「ボクはクラスター爆弾の作り方かなぁ....」
「どれもこれも校内新聞の内容じゃねぇよ....。」
てか財前さん畜生過ぎない?
傷に塩塗り込む様な真似してるんだけど....
そう思っていると、面倒そうに財前は口を開く。
「まぁ私のおじい様に頼んでいるから何も活動しなくてもこの同好会はなくなりませんわ。だから普段は新聞も書きませんの。所詮暇つぶしでしてよ。」
「もうそれ新聞同好会じゃねぇじゃん....。」
ただの駄弁り部屋だよここ。
すると、急に美碌先輩が近寄ってくる。
そして紙を机に叩きつけた。
「それじゃ、この書類を書いて入部してくれ。頼むぜ~。」
見ると、既に俺の名前が書かれていた。
なんで名前知ってるんだよ....つかなんで名前知ってるなら教室に来た時に呼ばねぇんだよ。
すると、急にまた机を殴りだした。
「わぁっ!な、なんですか....?」
「いや、なんも返事しねぇから話聞いてねぇのかと思って。」
返事出来ないだろ。
理解が追いついてないんだから。
困ったな....なんか変な部活に絡まれているぞ.....
こんな面倒くさい場所に入るなんてとんでもない、関わりたくすらないんだが...。
そう思うと、不意に時計が目に入る。
ちょうど授業が始まる時間。
これ幸いと立ち上がる。
「あ、あのすいません!もう授業始まるので、この話は後日に....」
そう言って出口へと走る。
上手いぞ...これなら彼女たちも授業に出ないといけないから防げない。
そして次の時間にはとんずらこいちまえば良いってわけだ。
扉に手をかけて開ける。
すると、扉の向こうには...びっしりと足の踏み場もない程に黒服サングラスのガタイの良い男の人達が並んでいた。
「え...えっ、えっ?な、なにこれ.....?」
「お戻りください。」
「えっ、でも授業.....」
「お戻りなさい!!!」
強い調子で言われるので、なんか怖くなって部屋に戻る。
すると財前が口をまた開き出す。
「私の黒服どもですわ。今日はあなたはこの紙を書くまで部屋から出られませんわ。....安心なさって?お爺様に連絡して今日、あなたはこれからの授業に出なくても良いのでしてよ。」
「そ、そんな....無茶苦茶な.....」
他の2人も授業の始まっている時間にも関わらず、慌てることすらしない。
彼女達も俺と同じなのだろうか?
「な、なんで俺がこの部活に入らないといけないんですか!!見込みがあるとか意味分かんねぇよ、てかなにもかも意味分かんねぇんだよ!!!」
もう怒涛の畳みかけについていけずに内心を全て吐露してしまう。
すると彼女達は口々に理由を語りだす。
「私はなぁ、てめぇの目を見た時にビビッと来たんだ。『あっ、コイツ....色々理屈付けてるけど自分よりすげぇ奴に嫉妬してるだけじゃん』ってな。俺はなァ、そういう器の小さいクズが好きなんだよ。サンドバッ...人材としてはこれ以上ねぇだろ。」
人材はサンドバックとは読まない!
それにしても....結構痛い所付いてくるじゃん。
エスパーか?
「僕はねぇまたここを同好会じゃなくて部活に戻したいんだ~。その為にはあと一人必要なんだって!だから君には人身御...部員になってほしいなって。」
こいつ、今部員の事人身御供って言おうとしなかったか?
まぁこの人の理由はまだ分かる。
だが、それに付き合ってやる理由はない!
「私、この部活では立場が一番低いんですの。だから私より下の下僕が欲しいんですわ。」
コイツもうはっきり下僕って言い出したよ。
他の二人と違って隠そうともしないよ。
てか理事長の孫でこんなに権力振るってる奴が一番弱いってどういうことなんだよ....。
しかし、消めた。
今ので俺が取るべき行動は大体わかったのだ。
それは....。
「嫌です!絶対に入りません!!うおおおおおお!!!!」
そう言って出入り口へと走り続ける。
黒服も押しのけて絶対に教室に帰ってやる!
いけるか分からんけど!!
そうして足を踏み込んだ瞬間。
「おいおい、間違えて部室から出ようとしてるぞ。しょうがないなぁ~、後輩君は。一人で書類書けなかったら将来が心配だぜ、やれやれ。」
「いだっ!痛い痛い痛い痛い!か、身体が動かないんだけど!!!?先輩っ!なにした!?おい、なにしたかって聞いてんだよ!!!」
いつの間にか背後に回っていた美碌先輩に腕を掴み上げられる。
すると途端に身体全体が動かなくなった。
えっ、なにこれ....体中が猛烈に痛い上に、指一つ動かせない....!
なにしたんだよこれ、どうなってんだ!?
そう思っていると、美碌先輩は笑顔で言葉を続ける。
「はは、大袈裟だなぁ....おい、大袈裟だろ。さっさと来いドグサレが....チッ..ペッ!!」
なんか笑ったと思ったら急に切れて唾を地面に吐き出した。
やっぱこの人おかしいよ....。
思考回路どうなってんだ...!?
そう思っていると、彼女が誘導する通りに身体が勝手に動き出した。
マジで何してんのこの人...本当にエスパーなの?
チュパカブラなのこの人?
あ~~~、もう痛くて頭がおかしくなりそう!!!
席に無理やりつかせられると、彼女は書類を一通り見ると一言呟く。
「拇印が必要なのか....。探すの怠いな...親指の表面擦り剝いてインクの代わりにするか?」
「おい、何しようとしてるんだ美碌先輩!!...牟居美碌!!!普通に探せ!人の親指なんだと思ってんだ!!?」
人の親指を机で擦り始めた牟居美碌にそう言うと、財前が笑顔をこちらに向けた。
「ここにありましてよ。」
よしっ!でかした!!
...いや、全然でかしてない!!
状況はまったく好転していない。
こんな頭のおかしい奴がいるような部活に入らされそうになっている現状はなにも変わってない!
誰か助けて!誰か....那由他先輩!比較的まともっぽい那由他先輩!!
助けを求めて彼女を見る。
「ふふ~がんばれ~美碌ちゃん~。」
...よく考えてみたらこの人、まともそうではあっても俺の味方じゃないんだよなぁ。
まとも=味方ではない。
考えてみれば分かる話だ。
ぐっ、嫌だ....ただでさえ部活が嫌なのに、こんな....キチな所なんてぇぇ......
なんとか抵抗しようとするも、彼女の誘導でインクに親指を突く。
そしてそのまま....。
ああああ!!やめろぉぉおお!!!!!
「...おしっ、これでテメェは後輩だ。今日からは美碌様か牟居パイセン呼びな?...じゃ、部員が増えてわけだし、洗礼を始めっかっ!!!」
あぁ...拇印、しちゃった.....
項垂れる俺を尻目に途端に美碌先輩は後輩いびりのテンションでゴキゴキと拳を鳴らし始める。
「先輩、確か毎回病院送りにしているんですって、楽しみですわ下僕君?今回は私の調教もしてあげましてよ。大盤振る舞いですわね。」
「まぁ、この部活から抜けれなくなるくらいにはやってもいいよ二人とも。」
ぎらついた笑みを浮かべる財前に、残酷な宣告をする那由他先輩。
そうやって二人は椅子に座った俺にじりじりと手を近づけた。
病院送りって....
なんでこんなキチに絡まれることに....
「こ、こんな....今日は厄日だぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
今度は特別棟に俺の声が響く。
しかしその後は声どころか足音も聞こえなくなった。
死んだのかもしれんわ。
記憶無くなってたし、覚えてないわ。
かくして、俺はこの頭のいかれた、常識の通用しない部活に無理やり入部させられたのである。
なんだこれは、たまげたなぁ......