Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O-   作:きゃぷてん

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2019:マヨナカの鬼人②

 ロズワール邸の玄関の扉が勢いよく開かれる。そこから飛び出てきたのはラムだ。

 夜のロズワール邸の庭園を走るラムの表情は焦燥感で満ちている。肌に冷たい風を感じながら。

 

早く、はやく、ハヤク、行かなければならない。自分のたった1人の妹の下へ。

 

 そうして、ラムがロズワール邸の門から出て行くのは遅くなかった。

 

「ーーーームッ!」

 

ああ、どうして彼女は先走ってしまったんだ。主人からも注意しておくように言われたのに。彼女に先走らないよう、念を押した筈なのに。

 何故、彼女は行ってしまった?

 

「おいッーーーー!」

 

 それは愛、故なのか。

 

「ラムッ!」

 

 耳の中に甲高い声が入り込んだ。それで驚いたからなのか、ラムは足を止める。

 声がした方を見ると、下を向いて手を膝につきながら息を連続で吐き続けるナツキ・スバルが。

 

「バルス…………何でここに」

 

「はぁっ……はあっ……それはっ……こっちの台詞、だっての……」

 

 ヨロヨロと疲労感満載の顔でラムに近付くスバル。ただでさえ三白眼で目付きが悪いのに、余計に悪人臭が強い顔になっていた。

 

「バルス、悪いけどラムは今急いでるの。貴方に構ってる暇は…………」

 

「レムを追いかけてるんだろ?」

 

 その言葉を聞いた瞬間、ラムは目を丸くする。

 

「…………何で貴方が」

 

「そこは後々説明するつもりだよ。とにかく、一緒に協力してレムを探そう。……まあ、つっても」

 

 スバルは隣に目を向ける。

 

「こんだけ派手にやってりゃ、手分けなんてしなくてもすぐに見つかりそうだけどな」

 

 明らかに戦闘をした時に倒れたであろう木が、森の奥に沢山転がっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 場所は森の何処かに移る。

 拳と拳がぶつかり音が、森の中で響いた。

 

「ふぅんっ!」

 

 一度後ろに引いていたレムがジオウの下へ走った後、軽くジャンプして体を右後ろに捻って回し蹴り。それを左手で掴むジオウ。

 右足を掴まれ一瞬宙に浮くが、すぐに空いていた左足でジオウの肩を蹴る。それによってジオウは掴んでいた足を放してしまい、レムが地面に着地。

 

「いった……!」

 

 ジオウの変身しているとはいえ、その蹴りの威力は高いらしく、肩を押さえる。しかし相手はそれを待とうとせず、再び突撃。ジオウも当然それに気付く。

 

「はあっ!」

 

 ジオウは左手を思いっきり突き出すと、突如腕が如意棒の如く伸びた。

 驚くレムをよそに、その手は足を掴んでそのまま彼女を木にぶつけようと投げた。

 

「ッ! ぬぅぅぅぅぅんッ!」

 

 投げられたレムは、なんと激突しそうになった木に着地し、そのまま踏み台にしてその勢いでジオウの下へ飛んでいったのだ。軽い離れ業である。

 そのままレムは拳を握り、ジオウにパンチをしようとする。

 その時ジオウは驚きながらもすぐさま地面から土の厚壁を生成した。そしてその土壁はレムのパンチを受け止めた。だが、後ろに退いたレムが氷柱を土壁に向かって放つ。複数飛んだそれは、次々と刺さって壁にヒビを入れ、やがて轟音を立てて砕け散り、土煙が舞った。

 そしてその土煙の中にジオウを串刺しにせんともう一度氷柱を複数放つ。それが煙の中に呑まれてゆくのはすぐであった。

 段々と土煙が晴れてゆく。そこには氷柱によって串刺しになったジオウがーーーー

 

『フィニッシュタイム!』

 

 いなかったが、代わりにドゴーン! と激音が後ろから響いた。

 

『クウガ! スレスレシューティング!』

 

 レムは振り返ったが、時すでに遅し。

 ジオウが左手に持っていたジカンギレードの引き金が引かれていた。

 

 ーーーーーードスッ。

 

 瞬間、肉を裂く音が聞こえた。

 不可視の空気弾が放たれ、それがレムの右肩を撃ち抜き、直後、血が噴水のように吹き始めた。

 

「ーーーーがぁぁぁぁッ!」

 

 それが激痛であったことは、言うまでも無い。

 

 そして別の場所では。

 

「! おいラム、今なんか声が……」

 

「ええ、聞こえたわ」

 

先程の声は、スバルとラムに届いていた。

 2人はお互いを見て頷いた後、声がした方へと走ってゆく。

 

「ッ! ふんっ!」

 

レムは今も血を流している傷口に手を当て、淡い水色のオーラが発生する。彼女が使う水魔法による回復魔法である。

 回復している間は苦悶の表情を浮かべていた。まもなくして、魔法による止血は終わった。

 レムはジオウの方を振り向く。相変わらず彼女の理性は取り戻せていない。狂気を纏った笑顔はなくなっていたが、憎悪の宿った目が、唸り声を上げてジオウを睨みつけていた。

 

 そうして、レムは再びジオウに襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、まだかよラム?」

 

「急かさないで、バルス。ラムも今集中してるの。それと、せっかちな男は嫌われるわよ」

 

「でもせっかちは悪いことじゃないし…………」

 

 どんな言い訳だ。そう思いながら、ラムは瞑目し『千里眼』を使用中。

 『千里眼』とは、ラムの持つ能力であり、人だけに限らず他の生き物と視界を共有する力である。波長の合う生物の視界を借り、また別の生き物の視界を借りて距離を伸ばすことで文字通り千里を見渡すことが出来るのである。

 そして彼女は、その千里眼を使って妹であるレムを捜索中であり、現在いる場所は、レムと思いし声が聞こえてきた場所である。

 

「てか荒れ放題だよなぁ、ここら一帯。後処理どうすんだよ」

 

 そこには木が倒れた跡やら、地面に穴が空いた跡やらと、被害の跡が著しく残っていた。

 

「! 見つけたわ、こっちよ!」

 

レムを見つけたらしいラムは咄嗟に走り出す。

 

「ちょっ、待てよ!」

 

スバルは慌てて彼女を追いかけた。

 森の中は複雑で、ただでさえ今は夜で真っ暗だ。そんな中でも、ラムは躊躇うことなく進んでゆく。スバルはそんなラムを追いかける。足元の石や倒れている木につまづかないよう注意しながら。

 そこそこの距離を走った。スバルの肺が悲鳴を上げ始めた頃、ラムは突如足を止めた。スバルも同じく足を止めて、膝に手をつけて呼吸を荒げる。

 

「はぁっ、はあっ…………どうした、ラム?」

 

「しっ」

 

ラムは振り向いて左人差し指を口に当てる。彼女は前に視線を向け、スバルもそれに続いて視線を向けた。すると、そこにはーーーー

 

「ぬぅんっ!」

 

「ぐっ! おりゃあっ!」

 

時計を模した仮面に右フックを打ち込む水髪の少女。相対している仮面男は、仕返しとばかりに少女の脇腹にキック。

 

「ソウゴとレムだ!」

 

 レムと常磐ソウゴ……もとい、仮面ライダージオウが戦闘中。

 ジオウは仮面で顔を隠しているので、どんな表情かは当然分からない。しかしレムは素顔で戦っているので表情は分かる。

 それは憎悪やら殺意やら、かと思えば焦燥やら。決して良い感情が篭っているとは言えない。少しでも戦いの邪魔をしたら、地平線の彼方に吹っ飛ばされそうなくらい、今のレムはスバルにとって怖く見えた。

 そしてレムの姿を見ても、その戦いが余程激戦であったことを物語る。

 仕立ての良かったメイド服は引き裂かれており、その下の白い肌には無残な裂傷が刻まれている。鮮やかな青い髪は乱れ、服には大量に出血した跡が残っている。

 

「……ん?」

 

 スバルはふと、レムの額に何かが生えてるのを見た。

 

「あれは……角?」

 

 レムの額から生えている白色の角。スバルにはそれが、彼女の険しい表情と、血で染まっているのが相まって、あるものを連想する。

 

「……まるで鬼だ」

 

 それは彼の故郷……日本に伝わる民話や郷土信仰に登場する架空の存在。

 

「おりゃ!」

 

ジオウがジカンギレード・ケンモードで突きの一撃を繰り出す。しかし、手応えは無く、剣は宙を切った。

 そしてどういう訳かジオウは、刀身を重く感じているのか、腕が少し下に下がっていた。

 

「!」

 

 当然と言えば当然だろう。何せ、ジカンギレードの上にレムが乗っかているのだから。

 

「ふんっ!」

 

「ぐあっ!」

 

 レムがジオウの顔に飛び蹴り。まともに喰らってしまったジオウは吹っ飛んで倒れる。

 これによって大きな隙を見せたジオウ。レムがそのチャンスを逃す筈が無く、彼女はジャンプして彼に飛び乗る。

 

「ふんっ!」

 

「がはあっ!」

 

 馬乗りの状態でジオウに拳を振るうレム。ジオウは完全に好きにやられる状態。

 

「魔女ッ! 魔女ぉッ! 死ねッ! 死ねぇッ!」

 

「おいおいおいおいおい! 今のレムどう見てもおかしいぞ!?」

 

 普段のレムは基本冷静で、完璧に仕事をこなすイメージがスバルにはあった。だが、今のレムは、そのイメージとは遠くかけ離れていた。明確な殺意で、怒り狂いジオウを殺そうとしている。理性を失った、ただの獣と化していた。

 

「今のレムは暴走状態よ。理性を失ってる」

 

「マジかよ!? どうすりゃ……」

 

「あの子の額にある角に大きな衝撃を与えれば、あの子を止めることが出来るわ」

 

「成る程! じゃあやってやる! この拳で!」

 

そしてスバルは咄嗟にレムの下へ駆け出す。

 

「ちょっ、バルス! 待ちなさい!」

 

 ラムが慌てて引き止めるが、もうスバルはレムのすぐそばに。

 

「レム! 目ぇ覚ませぇぇぇぇぇぇ!」

 

「! スバル!?」

 

大声で呼ばれ、それに気付き振り向くレム。ジオウもスバルを見て少々驚いた様子。そして、肝心のスバルはレムにその渾身の一撃をーーーー

 

「ふんっ」

 

「ごへっ!?」

 

 与えることは叶わなかった。逆にレムに一撃喰らわされてしまった。

 

「れ、れ……む……こ、股間は反則…………」

 

 股間を押さえながら蹲るスバル。そんなスバルをレムは足で一蹴り。

 

「ぎゃああああああああ!!」

 

「スバルーーーー!」

 

 そのまま木へ衝突して地面へ墜落。スバル、気絶。

 

「あの、馬鹿…………ッ!」

 

 苦虫を噛み潰した表情で頭を抱えるラム。

 

「ッ! 今だっ」

 

 しかし、スバルのその行動も無駄ではなかったらしい。ジオウはレムがこちらに振り向いた瞬間、彼女に手を向ける。

 

「ッ!? ぐあッ!?」

 

鼻を手で覆ってジオウから急いで飛んで退避するレム。

 仮面ライダーウィザードのスメルの力で鼻が曲がる程の激臭をレムに放った。レムが離れたことによって体が自由になり、起き上がるジオウ。

 

「トワキ!」

 

 ラムがジオウ、ソウゴを呼ぶ。先程スバルがジオウを見てソウゴの名を呼んでいたので、彼がソウゴであることは確認済み。

 

「ラム!」

 

「説明は後! 今あなたが戦ってるレムは見ての通り暴走状態よ。額から生えてる角に大きな衝撃を与えれば、レムは元に戻るわ!」

 

「……分かった、やってみる!」

 

 ジオウはジカンギレード・ジュウモードにビルドライドウォッチをセット。

 

『フィニッシュタイム!』

 

 待機状態。ジオウは出現した魔法陣に手を突っ込み、もう一つのジカンギレードを取り出す。それにもビルドライドウォッチがセットされている。

同時に引き金を引いた。

 

『『ビルド! スレスレシューティング!』』

 

 一つからは複数のスマートフォンのアプリアイコンのような物が。もう一つからは、紫色の蝙蝠の大群が出現。

 アプリアイコンはレムの周りをぐるぐると旋回し、蝙蝠達は纏わりつくようにレムの周りを飛ぶ。

 レムはそれを厄介だというような表情で追い払おうとする。

 

『ダブル!』

 

その間にジオウはダブルライドウォッチを起動。

 ドライバーからウィザードライドウォッチを抜き取り、ダブルライドウォッチを装填。

 そしてロックを解除しドライバーを回転させる。

 

『アーマーターイム! サイクロン! ジョーカー! ダ・ブ・ルー!』

 

 ベルトから仮面ライダーダブルを模したアーマーが出現し、それがジオウの下へと装着される。ダブルアーマーへの変身が完了。

 

「はあっ!」

 

 ダブルアーマーの右肩に装着されているライトサイクロンが緑光を放つ。

 そしてジオウが右手を伸ばすと、緑色の竜巻が出現し、高速でレムに迫った。

 レムの周りにいた紫色の蝙蝠は退散し、アプリアイコンも消え去る。その直後に、竜巻がレムを巻き込んだ。

 彼女は竜巻の中で洗濯機で洗われている洗濯物の如く、ぐるぐるとすごい勢いで回っている。

 彼女は竜巻に抵抗できず、ただただ目を回すのみ。

 

『フィニッシュタイム!』

 

竜巻の下にいたジオウは、その間に再びベルトの操作。

 

『ダブル!』

 

ダブルアーマーの左肩に装着されているレフトジョーカーが紫色に光り輝く。

 ジオウは左手を構え溜めのポーズに入ると、手に紫色のエネルギーが収束する。

 今も竜巻の中で目を回すレム。すると突如、竜巻がすっ、と止んで、そのまま地面へと頭から真っ逆さま。

 先程まで目を回しっぱなしだったレムには、着地を取る態勢など取ることは出来ず、完全にグロッキー状態。

 だが彼女は、朦朧とした意識の中で、あるものだけははっきりと捉えることが出来た。

 

「ねえ……さま……」

 

見開いた目でこちらを見つめる愛しき我が姉。

 

『マキシマム! ターイムブレーク!』

 

自身の姉に手を伸ばそうとした瞬間、頭に大きな衝撃が走り、そこで意識が途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レムッ!」

 

ラムはすぐさまジオウが抱えているレムの下へ駆け寄る。

 レムは、ジオウの腕の中で眠っている。それを見てラムは安堵の表情。

 

「…………ラム。とりあえず、2人を早く屋敷に運ぼう。俺がスバルを運ぶから、ラムはレムを頼める?」

 

「ええ、分かったわ」

 

 抱えていたレムをラムに預けたジオウは、未だ地面で伸びているスバルの下に行き、彼をおんぶして、屋敷へと向かう。ラムも、レムをおんぶしてジオウへと続いた。

 

「レム…………」

 

 ラムは自身の背で眠る妹を不安げな表情で見る。

 

「…………起きたら、この子と話し合わなきゃならないわね」




せっかちは悪いことじゃない(至言)
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