Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O- 作:きゃぷてん
ロズワール邸の入り口。そこにはレムとラムとスバルがいた。これから買い出しに行く予定である。
「買い物行くの?」
屋敷の入り口に到達したと同時に、声が聞こえてきた。
「ソウゴか。そ、買い出し行くんだよ」
「俺も付いて行っても良い?」
「俺は別にいいけど……二人はどうだ?」
スバルはレムとラムの方を見る。
「ラムは別に構わないわ」
「……レムも構いませんよ」
「じゃ、決まりだね」
そうして三人にもう一人が加わることになった。
◇◇◇◇
ロズワール邸の近くにはアーラム村という村がある。人口は200人前後といったところ。
ロズワールは貴族であるためいくつかの土地を領地として保有している。つまり、この村も彼の領地の一部であるのだ。
一部の住民を短いながらも紹介しておこう。
雰囲気がまるで村長のようなのでムラオサと呼ばれる老人。
スバルの尻を触るというセクハラをしては「若返った若返った」と笑う老婆。ちなみにこっちが本当の村長である。
青年団代表の角刈りの青年。
村にいる元気な子供達。リボンのカチューシャを付けた少女のペトラ。鼻水を垂らしてるマフラーの少年リュカ。小太りな少年ミルド。ツインテールの少女メイーナ。兄弟であるダインとカイン。
「スバルー」「肩車してー」「遊べー」
「ははは、お前ら元気だなあ!」
そんな子供達とスバルは遊んでいた。買い出し中に絡まれ、自然とそんな流れになったのだ。
その間に、レムラム姉妹は買い物をしようと最初の店へ行こうとした。
「ねえラム」
行こうとした時、ソウゴがラムを呼ぶ。
「ちょっとレムと二人で話したいんだけどさ、良い?」
「…………何かあっても自己責任よ。というか、その何かを起こさないためにラムが監視になってる訳だけど」
「あー大丈夫大丈夫。何かは起こさないから、その辺は安心して。すぐに終わらせるよ、なるべくだけど」
「……………………本当に、自己責任よ」
「分かってるって」
ラムの警告に対して軽い調子で応ずるソウゴ。
「……レムのことは警戒するに値しない、と思われてると捉えていいんですか?」
「ん〜?」
二人は民家を囲う煉瓦に座っていた。
「別にそーいうのじゃないよ。そもそも、状況的にレムだって俺のこと襲えないでしょ?」
「………………」
「今ここでレムが騒ぎを起こせば、村の人を巻き込んだ乱闘になる。そうすれば、村の人は皆レムやロズワールを責める。そうなるのはレム的にも望んでないはずだ。
というか俺たちを襲うこと自体、もう出来ないよね。皆にバレずに俺たちを殺すチャンスなんて、あの夜の一回だけだったでしょ。
本当は俺たち二人をバレないように殺して、山奥か何処かに死体を処理するつもりだった。でも失敗してエミリアやラムにも知られた。だから襲いたくても襲えない。そんな所じゃない?」
「……まあ、大体合ってます。ご丁寧なご推察をありがとうございます。…………それで、何を話したいんですか?」
「今日の晩御飯の相談! ……は冗談で。まあ、レムに関する話ってとこ」
「………………」
「実はベアトリスと色々話してさ」
◇◇◇◇
記憶の回想。
「まず、あの少女は————鬼族という種族なのかしら」
「鬼族……」
ソウゴはベアトリスの言葉を反復して呟く。
「そして当然、奴の姉も同種族となるかしら。鬼族は頭部に角を持ち、強靭な肉体と比類なき戦闘能力を持つ種族なのよ。が、数は少なく絶滅の危機に瀕していたかしら。姉妹の村も滅んで、生き残りがいるのかも不明なのよ」
鬼族についてすらすらと解説をするベアトリス。
「そして、鬼族の角。それはまさしく、鬼族にとっては重要な器官かしら。鬼族は角を顕現させることによって周囲のマナを喰らい尽くし、戦闘能力を高める。それを切られれば……」
「力を失う?」
「その通りかしら。で、姉妹の姉はその角が存在しないかしら。力の大半を失い、マナも、不足していてロズワールに注入してもらってるのよ。それでも常に身体は不調かしら」
ラムの重要な情報を、清々しいほどに淡々と説明するベアトリス。
「そして姉の角は、例の魔女教によって切り落とされた。
とある日の夜に村に魔女教が襲撃してきたのよ。当時の姉は魔法の才に溢れ、子供ながらに奴らと戦うことはできた。でも切り落とされてしまった。だから、妹は魔女教どもを憎んでいるのよ」
レムの魔女教に対する憎悪の理由を説明するベアトリス。
「妹は魔女の臭いを嗅ぐことができる。魔女の臭いとは、魔女から魔女に見初められたか目の敵にされたか、何かしら特別な扱いを受けて着く臭いなのよ。魔女教には全員着いてる臭いかしら。その臭いがお前と目つきの悪いアイツから臭うかしら」
「へえ、俺とスバルから」
「オマエ達が変な行動でもすれば、妹は早合点して殺しにかかるのよ。何もしなくても、早合点する可能性はあるけれど」
「何もしなくても襲うかもなんてやばいね」
「それほど魔女教を憎んでいるということかしら。自分のせいで角を失った姉を、今度こそ守る為に」
「……自分のせいって? 魔女教が切ったんじゃ?」
「正確には、魔女教との戦いの中で妹を庇いその隙を狙われたからなのよ。それに妹は罪悪感を感じているのかしら。……己の人生を捧げるほどに」
「………………」
「……今の妹は姉のためだけに生き続けている。そこに自分の人生の欠片もない……見苦しいったらありゃしないのよ」
最後の一言は吐き捨てるようであったが、レムのことを憐んでいるような表情をしているようにも思えた。
◇
「…………ベアトリス様から聞いたんですね」
「ごめんね、詮索するような真似しちゃって」
「気にはしません。謝る必要はありませんよ」
「ふぅん、ありがと」
ソウゴは青が澄んでいる空を見上げて、レムは地面を見ている。
しばらく喋らない間があった。
「レムはさ、今の生き方で楽しいの?」
その沈黙を破るソウゴの問いかけ。
「……レムには、楽しく生きる資格なんて無いですよ」
「自分のせいでラムが角を失ったから?」
その言葉と同時に、小さく風が吹く。その風はレムの髪を揺らした。
「それはレムのせいじゃない。悪いのは魔女教だろ」
「……分かってます。分かってますよ、それくらい。それでもレムに、楽しく生きる資格も、自分の人生を歩む資格もないんです」
「何で、そこまで自分を責めるの?」
「あの時の、あの時の自分が、許せないから」
レムの脳裏に、炎の世界が過ぎる。
炎の中で、小さな白が軌跡を残して飛んでいた。
その白を見ているときに、自分は何を考えていたか。
不幸を、嘲笑っていた。
「だから、レムは償わなければならないんです。この身を捧げてでも。姉様の代替品として、姉様が出来たことも全部出来なきゃいけないんです。
姉様が角を取り戻すために、この命が代償として必要なら……喜んで差し出せます。代替品なら、本物のために尽くさなければいけないんです」
考えたくも無い、が。
もしも、もしも姉が死んだとして、自殺をしようとしたとして。
自分も、後を追いかけるのだろう。同じように、死にゆくのだろう。
そんな想いがレムにあった。
「……レムにとって今の生き方で思う通りに生きれてるなら、俺は何も口出ししない…………って言いたいとこだけど、ちょっと破滅的じゃない? それ」
ずっと空を見ていたソウゴはそこでようやくレムの方に視線を向けた。
「破滅的でも構いません。それで、償いになるのなら」
「……そう。今は何を言ってもダメそうってのは分かった。じゃあこの話は終わり、付き合わせてごめんね」
ソウゴは煉瓦から立ち上がり、スバルや子供達の元へ行く。どうやら盛り上がってラジオ体操を始めているらしい。周りの大人達も興味を持って参加していた。
レムも煉瓦から立ち上がりラムの元へ歩き始める。そんなレムをソウゴは振り返って見た。
◇
回想、続き。
「ラムはその事を気付いてるの?」
「気付いてるかしら。少なくともお前達がやってくる前からは」
「なんとか……なってるなら今もレムがそんな状態なわけないか」
「…………姉も今の妹には色々思うところはあるかしら。それでも、どうにかすることは未だ出来ずにいるから今もなお耐え続けているのよ」
「………………」
ベアトリスの話を聞いて、ソウゴは黙りこくる。
「…………そっか。ありがとう、話してくれて」
しばらくして、ソウゴは表情一つ変えずに礼を言った。
「というか、毎回俺の質問に答えてくれるよね」
「何処かの誰かに比べて聞き分けが良いから答えてやってるのよ。変な勘違いはするなかしら」
「ふぅん……そうなの。それじゃ、この辺りで。じゃあね」
ソウゴは禁書庫の扉から外へ出た。
「……………………」
一人残されたベアトリスは、ソウゴの身に宿る力に密かに興味を抱いていた。後日、炎に焼かれるほどの地獄を味わうことになるのだが。
◇
「…………お互いに想い合ってても、すれ違うことはあるよね。そりゃ」
その言葉は誰にも聞こえず、喧騒に揉まれて消えた。
今回は原作でも書いてあったレムの「罪滅ぼし」「代替品」のところにフューチャーした話のつもり。レムのセリフはワシの解釈も含んでるから解釈違い起こしたらごめんな(予防線)