Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O- 作:きゃぷてん
「ヴィクトリー!」
スバルが両手を掲げると、住民達も彼の言葉を同じように叫んだ。
ラジオ体操をやり切って、住民やスバル達は互いにハイタッチをする。
「で、余興は終わったの?」
「余興なんて大したもんじゃねーよ。子供達と体操してたら大人達も悪ノリしただけだ」
冷めた目で出迎えるラムにスバルはそう言った。あははは、と笑うスバルはふと袖を引っ張られたことに気づく。
見ると、青髪でおさげの髪型をしている少女がいた。
「どした? 言いたいことあるなら聞くぜ?」
しゃがんで目線を合わせてやるスバル。少女は別の場所を指差した。
「……もう少しだけなら待っても良いわ」
「お気遣い感謝するぜ、姉様」
許可が降りたので、少女に手を引かれついて行くスバル。
ついて行ったのは村の奥で、その場には他の子供達もいた。
青髪の少女が子犬を抱いて戻ってきた。
「おお、可愛い犬っころじゃねーか」
フワフワとしてそうな褐色の体毛を持つ犬に歓喜の表情を浮かべるスバル。
見た感じ赤子のようにも見える子犬に彼も愛らしさを感じ、撫でようと手を伸ばしかけるが、
「ウウウ……」
「いやおいおい……何か不機嫌になったぞ……?」
何故か毛を立てて威嚇し始める。スバルも思わず困惑する。
子供達もいつも大人しいのにー、スバル何やったのーと言っている。
「悪いなあ、怖がらせたか?」
愛想笑いを浮かべるスバルに、子犬がふいに頭を下げた。「お」と声を漏らし、頭を撫でようとする。
「おー、予想通りのフワフワだ。触ってて気持ちいいぜ。……ん? どうしたんだここ? 怪我でもしたのか?」
犬の頭頂部の丸くハゲてる部分があり、そこを触るとガブッと手を噛んだ。
「あげー!」
痛みに思わず手を引き抜くスバル。傷がついてる部分をさする。
「いったー……触っちゃダメなやつだったか。地雷踏んだわ」
「ははははは!」「触りすぎるから!」「噛まれてやんのー」
「うるせーガキンチョ共! いたた……」
子供達の、特に男児は爆笑。スバルはそんな子供達に怒りながら傷を押さえる。
「ちょっと大丈夫ー?」
と、側で見ていたソウゴがスバルに駆け寄ってきて、傷を見ようとする。
「あれ? この子、怖がってる」
見ると、青髪の子が抱えてる犬がソウゴに怯えたような目線を向けていた。
どうしたのー、と子供達も心配している。やがて、ソウゴが子犬に視線を向けた時————子犬は一層怯えて、少女の腕から抜けて逃げ出した。
子供達は不思議そうにしており、青髪の少女も戸惑った様子。
「あの犬、どうしたんだ? 急に逃げ出しやがった」
「………………」
スバルが傷を押さえながら不審そうにしている中、ソウゴは犬が去った先を見つめいてた。
◇
屋敷に帰宅して夕方になった後、買い出した物で晩御飯の支度をした。そしてそのまま食事をした。
「よっ。俺は元気してるけどそっちは元気か?」
「オマエを見たせいで上がりかけていた元気が下がったかしら」
気軽そうに手を挙げて尋ねてくるスバルに眉を顰めてそう返したベアトリス。
「ひっでェ〜」
「で、何しにきたのよ?」
「暇つぶし」
「帰れかしら」
何故かドヤ顔で言ったスバル。そんな彼にベアトリスは辛辣な反応。
「釣れねーこと言うなよォ。俺とお前の深ーい仲じゃねーか」
そう言いながら彼女の下へ歩み寄るスバル。
「そういう気色の悪い発言はオマエにある呪いのせいと解釈していいのかしら?」
「…………は? 呪い?」
ベアトリスの発言を聞いて、思わず口を開けてポカンとした表情をスバルはした。
「そ、それってどういうことだ?」
「どうもなにも、オマエは呪詛師によって呪いを植え付けられているのよ」
「…………それってほっといたらどうなる?」
「病魔に侵されるか、一定の行動を禁じられるか、純粋に命を奪うか。まあ、人の役に立つ呪いはないかしら」
「すううううっ…………それ、どうにかすることはできないっすかねー?」
「できないのよ」
「——————」
俺、死んだわ。
脳内でそう呟いて、頭が真っ白になるスバル。だが、ベアトリスの次の一言で現実に引き戻された。
「ただし、それは発動した呪いに限るかしら」
「え?」
「発動前は呪いはただの術式。技術があれば解けるのよ」
「…………それってもしかして、ベアトリス……ベアトリス大先生様は解呪をすることができるのですか?」
「命が関わったら急に態度を改めやがったのよ。まあ、解呪はできるかしら」
「じゃあお願いしますしてください! 何でもしますから!」
「オマエになんでもできるなんて期待はしてないけれど……さっきの間抜け面に免じて解呪してやるのよ」
(こいつ謀りやがった……)
どうにかすることができない、と言われた瞬間、自身は酷い顔をしていたのだろうとスバルは思った。それを見てベアトリスは愉悦を覚えていたのだろう。
そうこうしているうちに、ベアトリスの光の宿った手がスバルの身体に触れる。
「…………おいおい、これは…………」
呪いが植え付けられたのだろう部分から黒い靄が発生していた。その位置を見て、スバルは目を見開いた。
その靄をベアトリスは掴み取り、握り潰した。
「まったく、忌まわしいったらありゃしないのよ」
「…………なあ、黒い靄が出てた場所が呪いが植え付けられた場所か?」
「そうなのよ。呪詛師は対象に触れることによって呪いを植え付けるかしら」
「…………呪いってさ、動物でも出来たりする?」
「出来るとしたらそれは魔獣かしら。魔女が生み出した生物とされるから、出来てもおかしい話ではないのよ」
「…………ワリィ、急用が出来たっ!」
スバルは急いで部屋から抜け出した。部屋から抜け出した後、目の前には窓があった。
そこからは外の景色が見えた。
どんな景色かというと、アーラム村があるだろう所に赤い炎が発生していた。
「マジかよっ!」
スバルは一目散に走り出す。
「スバル!」
走ってる途中、声をかけられた。その主はソウゴで、隣にはフード付きのローブを纏うエミリアもいた。
「ソウゴ! エミリア!」
「村で火事が起こってる。スバルも気付いてるよね?」
「ああ。こんなことになるなんて……!」
「早く行きましょう! 村の人たちを助けないと!」
こうして3人になり再び走り出す。しばらく走ったあと、玄関についた。そこではたまたある人物たちと合流した。
「レム! ラム! ここにいるってことは……」
「村で火事が起こってるから行こうとしているわ。……バルス達はともかく、エミリア様はここにいるべきです」
「そんな! どうして!?」
「万が一、これが何者かによる放火だとしたら、貴方の身に危険が及ぶ可能性があります。ですので、屋敷に……」
「今は村が大変なのよ? ロズワールも居ないから、皆で協力すべきだって思うわ」
「ロズワール様が不在だからこそです。いざという時にお守りできない可能性も……」
「だとしても、私は行くわ! こんな大変な時に、村の人を助けないでいるなんてできないもの!」
「エミリア様……」
「まあ、もしもの時は僕がいるから安心してもいいよ?」
パックが虚空から出現してエミリアへの援護発言をした。
「……分かりました。お願いします、大精霊様。そしてエミリア様、決して無理をなさらぬよう」
「分かったわ。無理はしない」
「ラムは屋敷の守りをします。レムは……村に一緒に行ってちょうだい」
「……わかりました、姉様」
「エミリア様……レムのことも頼みます」
「ええ、勿論」
そのように話は纏まる。
「よし、行こう!」
ソウゴの一言でラムを除く一行は屋敷から出動した。
◇
村では悲鳴が響き渡っていた。民家は火で燃えて、その中で人々は何かから逃げようとしていた。
やがて、村にソウゴ達が現着。
「あいつらは……何だ!?」
スバルの視線の先には、二つの異形が存在していた。
ボロボロのロングコートを纏い、頭が荒削りの赤い石で出来た指輪の異形と、仁王像を思わせる羽衣を纏った二本の金棒を持つ紫色の鬼の異形。
「アナザーウィザードとアナザー響鬼……!」
「知ってるの?」
「あれはアナザーライダー。俺が前に戦った敵なんだ。でも細かい説明は後。俺が消化するから、エミリアやレムはちょっとの間アナザーライダーの相手して! スバルは村の人の避難を!」
『ジオウ!』『ウィザード!』
「変身!」
『ジ・オーウッ!』『ウィ・ザード!』
ソウゴはジオウ・ウィザードアーマーに変身して水の魔法を使って消化活動を始める。
「わかった! 行きましょう、レム!」
「はい!」
エミリアがアナザーウィザードへ、レムがアナザー響鬼の相手をしようとする。
「後レム! これ!」
ジオウがレムに向けて何かを投げ渡した。彼女がそれを受け止めて見ると愛用のモーニングスターが。
「探してきといた!」
「……ありがとうございます!」
何故わざわざ自身のために武器を探してくれたのか————そんな疑問が浮かび上がるが、今はそんなことを考えている暇はないと切り捨てて戦いにレムは臨む。
スバルは村人の避難誘導を行う。スバルは一人の青年を避難させようとした。
「アンタ! 早く逃げるんだ!」
「で、ですが! 子供達が!」
「子供達!? 子供達がどうしたんだ!?」
「いないんです! 暗くなる前まではいたんですが、突如いなくなって……! その後にあの怪物が!」
「なっ、嘘だろ…………!? まさか、魔獣が!?」
スバルは森の方を向く。その先に攫われたであろう子供達がいるかと踏んで。
「とにかくアンタは逃げろ! 俺たちでどうにかする!」
そう言って青年を逃すスバル。まずはこの混乱を治めるのが最優先だと彼は判断した。
甲高く金属がぶつかる音がした。
アナザー響鬼の持つ金棒……アナザー音撃棒とモーニングスターがぶつかる音だ。
モーニングスターの鉄球を真正面から金棒を突き出して受け止め、そのまま弾き返したのである。
一瞬はよろめくが体勢を立て直し、再び鉄球を振るう。その鉄球を今度は蹴りで弾き返した。そしてその威力は、先程の金棒の威力の比ではない。
とてつもない勢いで帰ってきた鉄球。どうにかそれを受け止めるレムだが、その衝撃に後ずさった。
(なんて威力……!)
レムは鎖越しにでもアナザー響鬼の力を感じ取っていた。
アナザー響鬼のオリジナルたる仮面ライダー響鬼。音撃棒による攻撃や火を使った攻撃が得意だが、最も特筆すべき点はそのフィジカル。
響鬼は基本フォームの時点で40tのキック力を誇り、その特性はアナザー響鬼にも受け継がれていた。だが今の彼がそのパワーと同等なのか、それとも上回っているのかは、定かではない。
アナザー響鬼が棒を構える。先端に火が宿り、それがレムに飛ばされた。
「ヒューマ!」
レムが手を突き出し叫ぶと、薄く形成された氷のシールドが張られる。炎弾がぶつかると共に砕けた。
エミリアとアナザーウィザードは魔法の撃ち合い状態だった。
エミリアの氷とアナザーウィザードの炎弾。お互い当たってはその場で相殺されの繰り返しだった。
流石にこのままではまずいというのはエミリアも理解していた。エミリアは精霊使いのため大気中のマナを使うが、それも無限ではないのでいつかは尽きてしまう。それだけは避けたいところだった。
もし、ここでエミリアが避けようものなら炎弾は彼女を追いかけるだろう。そこでエミリアはある行動に出た。
「!」
なんと、アナザーウィザードの真上に飛び上がったのだ。そして間髪入れずエミリアは氷を放ち、アナザーウィザードはそれを食らった。
エミリアが地上に降りると、アナザーウィザードは氷の中に閉じ込められていた。ふぅ、と彼女が息を吐いた時、氷にヒビが入った。
「!?」
エミリアが身構えた時、氷は砕け散った。中からは炎を纏ったアナザーウィザードが。あらかじめ炎の鎧を作っておくことで対策していたのだ。人間の身体であれば自殺行為だが、アナザーライダーの身体だからこそ出来た芸当である。
驚いていたエミリアは直様アナザーウィザードの元へ駆け出しハイキック。魔法の撃ち合いに持ち込まれる前に格闘戦にしようと彼女は考えた。
しかしアナザーウィザードは身体に風を纏い、飛んでキックを避けた。滞空して際に、氷柱を撃ってきた。
「!」
エミリアは氷のシールドを顕現させて防ぐ。アナザーウィザードが地面へ着地した時、素早く駆け出してスライディングをした。当然それは避けられるが、エミリアは地面に手をついて氷の木を生成し跳んだアナザーウィザードを追いかける。
アナザーウィザードは氷の木を火を使って溶かすが、その隙にもう片方の手で氷柱を出して攻撃をするエミリア。
だがその氷をアナザーウィザードは自身の身体を水にすることで避けた。
「!?」
それにエミリアは驚愕した。それに彼女はさっきからアナザーウィザードの戦い方に違和感のような、既視感を感じていた。そもそも、ウィザードという名前も聞いた事がある。
そう、つい最近、というかついさっき身近で見たような————。
「はあああっ!」
「!」
水から元の身体に戻ったアナザーウィザードへ横から火事の消化を終えたジオウが炎のキックを放った。
避けられるが連続でキックを行うジオウ。魔法陣から水の鎖を出現させ拘束しようとするがアナザーウィザードは土の壁を作り防ごうとする。
「あっ……」
『ウィ・ザード!』
そこでエミリアは気づいた。アナザーウィザードとジオウの変身音で一部分だけ名前が共通してることと、どちらも魔法を使っていることを。
何故そんな共通点が両者にあるのかは分からないが、ジオウが加勢として来てくれたのは有り難かった。
水の鎖が土の壁を貫通しアナザーウィザードを拘束した。
『ウィザード! ギリギリスラッシュ!』
『エグゼイド! ギリギリスラッシュ!』
2本のジカンギレードで二刀流にし、ウォッチを装填して必殺技を発動。
マゼンタと氷の斬撃が飛び、アナザーウィザードに命中した。
それによって吹き飛んだアナザーウィザードはアナザー響鬼の下に転がる。立ち上がってレムと交戦中だったアナザー響鬼に目配せをした後、両者は村の奥の森へ駆け込んだ。
「待て!」
「ソウゴ!」
追いかけようとしたジオウの下にスバルがやって来る。
「村の子ども達が行方不明なんだ!」
「え……!?」
「そんな……!」
スバルの言葉に驚愕するジオウとエミリア。
「もしかしたら、あの怪物どもが森の中に連れ去ったのかもしれねぇ! 助けにいかねぇと! それにもしかしたら、呪いも植え付けられてるかも」
「呪い? スバル、どういうこと?」
エミリアがスバルの言葉に疑問を持ち問う。
「実は、昼間子供が連れてきた犬に噛まれてな。その噛んだ犬が、呪いを植え付ける魔獣だったんだ! 森の奥に犬がいたとしたら……!」
「魔獣? そんな……」
レムが森の方へ向かってある箇所を見た。しかしその後に目を見開く。
「結界が切れてる……!」
「結界? それが切れるとどうなるんだ?」
スバルがレムに尋ねる。そして彼女が見てた箇所を見ると、光を失った宝石が木に取り付けられていた。
「魔獣が、村の中に入ってきます」
「じゃあ確定だな……! こん中で呪いを解けるのは?」
「もしかしたらパックが出来るかもしれないけど……パック、どう?」
「できるよ〜」
エミリアから呼ばれたパックが出てきてそう言った。
「だったら大助かりだな」
「じゃあ行くしかないね、森に!」
ジオウの一言で今度は森へ行くことになった。
◇
一行は森の中で子供達やアナザーライダーを捜索する。
「生き物の匂いがします……!」
「怪物? 子供達?」
「分かりませんが、獣の匂いはしません」
そのまま一同はレムがした匂いのほうへ進む。その後、森を抜けて小さな丘へ出た。そこには、
「子供達だ!」
スバルが駆け出して子供達の安否を確かめる。
「よかった、生きてるぞ!」
「いえ、ですが衰弱が酷いです。スバルくんの言う通り呪いがかけられてるのかも……」
スバルが明るい顔をするが、すぐにレムが現実的な一言を告げる。
「パック、どう?」
「んー、どれどれ……難しくはないけど、数は多いね。時間がかかるかも」
「とにかく助けてくれ!」
「はいはい、お任せあれ〜」
パックが治療を始める。
「すばる……?」
治療を進めているうちに、ペトラが目を見開いた。
「ペトラ! 良かった……! 無理すんな、今呪いを……」
「一人……後一人の子が……」
「え?」
スバルが周囲を見るが、昼間の青髪の子供がいなかった。
「青髪の子がいない……! 違うとこにいるのか……!? 探さないと!」
「待ってください、スバルくん。ここにいなくて連れて行かれたのなら、もう……」
「分かってるよ、でも……ダメだったとしてもちゃんと遺体は持ち帰りたい。それに、俺はペトラの意思を汲みたいんだ」
「俺も、最後の子も探すべきだと思うな」
スバルの考えに便乗するように言ったジオウ。
「ですが……それにどうしてそこまで。スバルくんとソウゴくんには関係が……」
「関係はあるよ。俺はペトラ達と遊んで、やりたいことも聞いたし、ラジオ体操またやろうって約束した。だから、俺はペトラの意思を汲んでやりたい」
「スバルくん……」
「俺は王様だからさ。民の願いを聞き入れるのは王様の務めでしょ?」
「王様……?」
「あー、気にしなくて良いから」
ソウゴの言葉を聞いて怪訝そうにしたレムにそう言ったスバル。
「レム、行かせてあげて」
レムにエミリアが声を掛ける。
「エミリア様」
「私も最後まで探さなきゃいけないと思う。ここは私とパックに任せて。もう一人の子とあの怪物を」
「……わかりました」
その場をエミリア達に任せ、スバル達は青髪の子供とアナザーライダーの捜索をすることになった。