Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O- 作:きゃぷてん
その後、謎のオーロラによって俺はヒトツ鬼と謎の敵と共に、異世界へと転移するのであった……」
「タロウが何処かに消えちゃったの。何か知らない?」
鬼頭はるかは、目の前で座り込んでいる男に問いただす。
そもそも彼女は今どこにいるのか。それはバーチャル刑務所という亜空間。周囲には積み重なっている電子回路の模様が特徴的な巨大な青色の壁が回転していた。
彼女だけでなく、猿原に雉野にジロウも訪れていた。
そして、彼女の目の前にいる男は桃井陣。彼は箱型の牢獄に収監されている状態だ。
桃井陣は桃井タロウの父親である。しかし、実の父ではない。
かつて21年前に時空の裂け目から落ちてきた桃のカプセルの中に入っていた赤子のタロウを偶然見つけ、彼を拾い育て始めたのである。
しかし、桃井タロウ……ドンモモタロウを育ててしまったのが罪となったらしく、現在は投獄され、守護人としての役割を与えられているのだ。
「結論から言えば、タロウは別の世界へと消えた」
「別の世界……? そんなことが……」
「あのオーロラはヒトツ鬼の力なんですか?」
猿原が顎に手をやり、雉野が率直な疑問を投げかける。
「いや違う。ついでに言っておくと脳人や獣人の仕業でもない」
「だったらあのオーロラは一体!」
ジロウが声を上げ詰め寄った。
「あのオーロラの正体は分からない。が、あれは時折この世界に出現する。そして出現する度に、人々を何処か別の世界へと連れ去ってゆく……」
「……正に神隠し、と言った所か。ではもう一つ聞かせてくれ。あの赤い怪物は何なんだ? どうやら私達の力を使っていた。しかも背中には『ドンブラザーズ』と書かれていたぞ」
猿原は戦いの中で、異形の背中に書かれていた文字を思い出しながら陣に問う。
「あれは————」
◇◇◇◇
ロズワール邸の食堂にて、ソウゴ達は集まっていた。
「それにしてもすごいわ、モモイさんもソウゴみたいに変身ができるのね!」
目を輝かせ歓喜の声を上げたのはエミリアだ。そんな彼女の視線の先にはスープを飲んでいる桃井タロウが居た。
戦いの後に立ち話もなんだから、と屋敷へと案内されたのだ。
そして村に現れた謎の怪物達のことと、変身したタロウと共に怪物と戦ったことをエミリア達に話し、今に至る。
「それで、何ていう名前なの? ソウゴみたいに仮面ライダー?」
「ドンモモタロウだ」
「ドンモモタロウ? 変わった名前ね。どうやって変身するの? ソウゴみたいにベルトとウォッチ?」
「ドンブラスターという銃とアバタロウギアというものを使う。それによって変身が可能になる」
「へえ、そうなんだ!」
やはり目を輝かせるエミリア。
「しっかしドンモモタロウ、ねー…………さては犬とか猿とか雉……って感じのお供がいたりする?」
冗談めかした様子でスバルがタロウに尋ねる。
「よく分かったな。それに加えて鬼と龍と虎のお供もいる」
「へぇ鬼と龍と虎……いや鬼!? 桃太郎の敵じゃん!? 良いの!?」
「敵ではない、お供だ」
「いやそれは分かったから……」
「そのお供? も変身するの?」
スバルが苦笑いする横で再びタロウに問いかけるエミリア。
「ああ。それで俺はお供達と共に、暴太郎戦隊ドンブラザーズとして活動している」
「あ、あばたろう? そりゃまたすげぇ名前だな……」
「ふふ」
奇抜な名前に困惑の表情を浮かべるスバル。しかしエミリアは目を輝かせている。よほど気に入ったらしい。
ソウゴが傍でそんなやりとりに微笑んでいる。
「あはーぁ。とにかく、改めて感謝すぅーるよ。モモイ・タロウ君。君は村の危機を救ってくれたみたいだからね。私はあの村の領主だ、何かお礼が出来ればいいんだけれど」
もう一人の人物もそんなやりとりに微笑んだ後、発言する。それはロズワールだ。
「必要ない……と言いたいところだが、あいにく俺はこの世界については何も知らない。住居も金も持っていない。読み書きについても分からない。それらを支援してくれれば有り難いのだが」
「ふーぅむ、なるほどなるほど。どうやら訳ありのようだけど……下手に詮索するのはやめておこう。分かった、君の部屋と資金を用意しよう。読み書きについては今日の夜にラムかレムに教えに行かせる。いいね? 二人とも」
「「はい、ロズワール様」」
一瞬のズレもないステレオな音声で返事をするメイド姉妹。
「感謝する」
タロウは頭を下げ、礼を言う。
そんな時、タロウは料理を完食した。
「ご馳走様」
「どーよ。レムの料理は。美味いだろ?」
「ああ、美味かった。32点だ」
タロウのその答えを聞き、自分の料理でもないのに自信ありげに尋ねた質問者のスバルはずっこけそうな勢いで体勢を崩した。
「ちょ、ちょーっとそりゃ過小評価すぎやしませんかねー?」
「中々手厳しいねぇ〜」
「失礼ですがお客様、レムの料理は少なくとも100点はあるかと思われますが……」
「32点だ」
苦笑いのスバルとロズワール。評価を貰った本人であるレムも何も言ってないが同じ顔だ。
そんな彼らの後から出たのはラムだった。しかし、タロウはその答えを変えない。
「そこまで言うのであればお客様にも作ってもらいましょうか」
ラムは眉を顰めると、突如タロウにそんな挑戦を叩きつける。
「ね、姉様、レムは気にしてませんから……」
「いいえ、これはレムだけの問題じゃないのよ。お客様はレムの料理にケチを付けた。レムが許しても、ラムが許せないわ」
「良いだろう。受けてたってやる」
立ち上がる桃井タロウ。
両者は稲妻が走る勢いでその視線を交える。ゴングの音が聞こえた気がした。
「どんな流れだよ……」
「仲が良いみたいだねぇ〜」
「良い……のかなぁ」
「うーん……良いんじゃないかしら?」
上から呆れ顔のスバル、微笑みのロズワール、首を傾げるソウゴ、微苦笑のエミリア。
しばらくして。
「完成した、食ってみろ」
屋敷の厨房を借りたタロウが料理を完成させ運んできて、椅子に座っているラムの前に置く。
「お手並み拝見、ね」
スプーンを手に取り、目の前に置かれたスープを掬い、口へと運ぶラム。
「こ……これは……………ッ!」
目をかっ開き、わなわなと震える。
「美味い…………ッ!」
「言葉遣い崩れてんぞ!? そんなに美味かったのか!?」
ラムなら美味しい料理を食べた時、「美味しい」とでも言うのだとばかり思っていたスバルは、それが崩れたことに驚愕する。
ラムの言葉遣いを崩す料理がどれだけ美味いのかと、ソウゴがウィザードライドウォッチのコピーの力で生成したスプーンを受け取り、スープを掬い飲んでみた。
「こ…………これは………………」
その時————。
スバルの脳内に————。
電撃が走る————。
何だァ……………………。
何だァ、これはァ……………………?
何だこれはァァァァァァァァァァァァ!?これがァ!!!!これがこの世の物なのかァァァァァァァァ!?美味い美味い美味い美味い旨いィィィィィィィィィィ!!旨すぎりゅよォォォォォォォォォォォォん!!!!スープの出汁についてはよく分からないがァ!!これは間違いなく良い出汁を使っているなァ!!こりゃあ酒のつまみに合うぜェェェェェェェェェ!!まぁ酒は飲んだことねェけどォ!!未成年だからなァ!!スハハハハハハハハハハハハァ!!食欲よォォォォォォォ!!今ァァァァァァァ!!スープを飲み干してェェェェェェ!!!そりゃあァァァァァァ!!!愛ある完食だァァァァァァ!!!!んぎぃぃぃぃぃみみみみみみみみみみみみみみみィィィィィィん!!これ程までにィィィ!!!!これ程までにィィィ!!!!美味いスープを飲んだことがなァァァァァァい!!天に昇るゥゥゥゥゥゥ!!天に昇るゥゥゥゥゥゥ!!痺れるゥゥゥゥゥゥ!!痺れるゥゥゥゥゥゥ!!脳がァ!!!!脳が震えるゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!!!!直に脳を揺らすゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!脳内の快楽物質ドバドバ出ちゃうよォォォォォォォォォ!!これが新時代かァァァァァァァァァァァァ!!!!これは世界中のスープ界隈を全部変えちまうぜェ!!変えちまうぜェェェェェェェェェェ!!!!この果てしないスープの旨さが世界にもっと届くようにするべきじゃないのかァァ!?うォォォォォォ!!!!スープは最強ォォォォォォ!!!くぁwせdrftgyふじこlpォォォォォォ!!
後に————。
ナツキ・スバルはこの瞬間を————。
奇跡の3秒間と呼んだという————。
「美味い……美味すぎる……」
気づけば、スバルを涙を零していた。
それは悲しみの涙であり、感動の涙でもある。
これから、自分はこれ以上のスープでもない限り絶対に満足することが出来ないだろうという悲しみと。
同時に、新時代を見出すほどに素晴らしいスープと出会い、それを味わえたと言う感動。
二つの感情が混ざり合い、彼の涙腺を緩め、雫をこの世界へと産み落とす————。
「す、スバル? 大丈夫? 泣いちゃってるよ?」
「大丈夫さ、エミリアたん…………。ただ…………スープの真理を…………見ただけだよ…………ああ、素晴らしい…………例えるなら……そう、まるで今宵の月のように」
「ごめんスバル、ちょっと何言ってるか分からない。月も出てないよ?」
(姉様とスバル君をこんなに感動させるなんて…………モモイ・タロウ。恐ろしい男です…………)
彼らのやり取りの中で、タロウにレムは戦慄していた。
「……そういえば、ソウゴ達は村で怪物と戦ったのよね? もしかして最近倒したアナザーライダー?」
話題転換と言わんばかりにエミリアがソウゴに問う。後ろでは、レムがタロウのスープを飲みラムと全く同じ顔をしていた。
「あー……一体はそうだけどもう一体は分からないな」
「「アナザーライダー?」」
偶然にも、別々の世界にいる桃井タロウと鬼頭はるかの声が重なった。
「そうだ、それが君達が戦った怪物の名前だ。そしてあれは、アナザードンブラザーズ」
「アナザードンブラザーズ……」
陣によって告げられた名前を反復するように呟くはるか。
「アナザーライダーはライダーの歴史か力そのものを奪って誕生する。アンタはライダーじゃなくて戦隊だから、アナザーセンタイってところかな」
「成る程、奴が俺達の力を使っていたのはそういうことか」
ソウゴの説明に、タロウは納得が行った様子で言った。
「今はまだ何ともないが、奴は私達の世界の歴史を大きく揺らがす存在。このままだと、いずれドンブラザーズの歴史は消えてなくなる」
「そんな!」
ドンブラザーズの歴史が消える。つまり、それはタロウ達との出会いも無かったことになると言っているようなものだ。陣の宣告に悲痛そうな表情のはるか。
「……どうすればそれを止められる?」
「簡単だよ。ドンブラザーズの力で、アナザードンブラザーズを倒すんだ」
「成る程な、確かに簡単だ」
ソウゴの答えにタロウは腕を組んで言った。顔は変わっていないが、最初の問いより少し声が明るい。
「だったら私達も異世界に行かないと!」
「でも、どうすれば」
同じ時、アナザーを倒すには自分達の力が必要だと知ったはるかは他のメンバーを見て言った。その後に問うのは雉野。
「……そうだ! マスターに頼んでみよう! どうにかしてくれるかも!」
「いやいや、流石にいくら彼でもそんなことは……」
はるかの提案に、猿原は「ないない」、とでも言わんばかりに手を振った。
その後、喫茶店『どんぶら』にて。
「マスター、異世界に行ける方法ってありますか?」
「あるよ」
(あるのか……)
はるかの質問に即答したマスターである五色田介人に内心で突っ込む猿原であった。
「……とはいえ、転移をする為には準備が必要だ。少し時間をくれ。準備が出来次第呼ぼう」
「! ありがとうございます!」
希望が見えて、はるかは表情を明るくし介人に深々とお辞儀をした。
「一体がアナザーライダーなのは分かったわ。じゃあもう一体は何なの?」
事情を聞いたその後、エミリアは質問を再びする。
「あれはヒトツ鬼だ」
そして答えたのはタロウ。
「ヒトツ鬼? 何それ?」
「ヒトツ鬼は人の欲望から生まれる存在。憑依した人間の欲望を暴走させ、自我を失った人間の体を使いその姿を現す。倒せばヒトツ鬼を祓えるが、人によっては何回も取り憑かれる者もいる。俺たちドンブラザーズの主なる敵だ」
「へぇー…………」
エミリアはこくこくと小さく頷き声を漏らす。
「まぁとにかく、これで俺はアンタ達とは縁が出来たわけだ。それにしばらく居候させてもらう身だ、何か手伝えることがあれば言ってくれ」
「うぅむ、手伝えることかぁ。お客人に苦労はさせたくないんだけれどねーぇ」
「気にするな、出来る範囲であれば何でもする」
タロウからそう言われ、ロズワールは「ふむ」と顎に手を添え、視線を下に向けて考える素振りを見せる。
「……じゃ、お言葉に甘えちゃおうかーぁな」
◇◇◇◇
「そう言うわけで、アンタ達とはしばらくの間同僚となる。よろしくな」
そこには、執事のスーツをバッチリと着こなしているタロウがいた。ちょうどいいサイズがあったらしい。
「……じゃ、しばらくの間よろしくね、お客様改めロウタ」
「俺はタロウだ。ロウタなんて名前じゃない」
「すんませんこいつこういう奴なんすよ……」
ラムに付けられた渾名について指摘するタロウ。それにスバルは苦笑いしながら言った。
「しかし、この屋敷は随分と使用人の数が少ないな。こんなに大きければもっと人数が必要だと思うが」
「今は人数が増やせないの。事情があるから」
「ふぅん。まぁいい。それで、屋敷の家事だがまず何をすればいい」
タロウはラムの回答を軽く流し、指示を彼女から貰おうとする。
「……まずは食器洗いをしてもらおうかしら」
「分かった、洗い方は心得ている。それ用の用具と洗剤について教えてくれれば後は出来る」
数分後、厨房にて。
「す、すげぇ……ピッカピカだ……まるで新品みてぇ……」
「それにすごく手際が良いです……かなり手慣れてるように見えます」
スバルは陶芸品でも扱うような慎重な手つきで持っている皿を見て驚愕し、レムも同じく驚愕気味の顔で皿を見ていた。
「……………………」
ラムは腕を組んで何とも言えない表情。
「終わった、次は何をすればいい?」
「……次は浴室の掃除を」
「分かった、道具を…………」
数分後、風呂場にて。
「す、すげぇ…………雑巾一つで…………めっちゃピカピカに…………」
「しかも雑巾掛けをする速さが高速のそれでした…………人間業とは思えません…………」
「こんなんが新人とか各方面に失礼だろ……」
流星の如く輝いている風呂場の床を驚愕の表情で見つめるスバル。レムも同じ驚愕の表情だ。
「……………………」
再び何とも言えない表情のラム。
「終わった、次は?」
「…………次は」
その後、庭園の手入れ、寝台の布団干し、洗濯、部屋の掃除、夕飯の支度、等々。
タロウはどれも完璧な仕事ぶりを成し遂げたのであった。
◇◇◇◇
「それで、どーぅだい? タロウくんは」
夜、ロズワールの執務室にロズワール本人とラムがいた。
「……正直、ロウタの仕事の出来は完璧です。それこそ、レムに匹敵するくらいには。途中からはバルスの仕事にも指導を入れてました」
ラムの脳内にタロウがスバルに「ダメだダメだ! 成っていない!」と言っている光景が浮かぶ。
「君にそこまで言わせる辺り、余程すごいようだーぁね、彼は。その割には不服そうに見えるようだけれど……さてはレムの料理の件が気に入らないのかーぁな?」
「…………いいえ、決っっっして。そのようなことはございません」
「ふふ、そーぉうかい」
何故か"決して"の部分に力が込もっていた。まあ本心は違うということだろう。
そんな様子のラムに微笑むロズワール。
(……まぁ、彼も想定外の存在だが……私の悲願の為に利用できるのなら利用したいものだーぁね……)
「しかしあのロウタも何故か読み書きだけはできません……。今はレムが教えてますがきっと四苦八苦してることでしょう……」
ロズワールが自身の目的を思う中、悪い笑顔を浮かべ始めるラム。彼女の脳内では勉強に苦戦しているタロウの姿が浮かんでいた。
「これでどうだ。イ文字とロ文字とハ文字を暗記して全部書いたぞ」
「………………えっと、全問正解です」
そんな彼女がレムからタロウが一晩で読み書きを完全に習得したことを知り、虚無の顔になるのは就寝前のことであった。
◇◇◇◇
カッポーン、という効果音でもしそうなロズワール邸の夜の大浴場。
「どう? こんなでっかい風呂に入れるなんて贅沢でしょ」
「ああ、確かに贅沢だ。こんなに大きな風呂に入れる機会なんて中々無いからな」
浴槽の中には二人の男……桃井タロウと常磐ソウゴがいた。
「聞きたいんだけどさ、タロウは何でドンブラザーズとして戦ってるの? ヒトツ鬼って人の欲望から生まれるし、実質終わりなき戦いでしょ?」
「決まってる、それが俺の使命だからだ。例えヒトツ鬼が、10年、20年、未来永劫出てこようとも、俺は戦い続ける」
「……そっか」
視線を下に向けこくこくと頷いた後、向き直りそう言ったソウゴ。
「そういうアンタは、何故仮面ライダーとして戦っている?」
「そりゃあ、俺が王様だからだよ」
「王様……そういえば、出会い頭にも言っていたな。改めて聞くが、それはどう言う意味なんだ?」
「どう言う意味って……そのまんまの意味だけど。俺が王様ってこと」
「ふぅん……何故王様だ?」
「世界を良くしたい、民が幸せでいて欲しいからだよ。その為なら命を賭けても惜しく無い、仮面ライダーになったのも民を守る為だ。生まれた時からそうするって決めていた、気がする」
「……王様というのは大変だ。人の上に立つということは、酷な判断もしなければならないということだからな。それでもアンタは……」
「行けるよ」
タロウの言葉を途中で切るように、ソウゴは言い切る。
「1人じゃ大変かもしれない。でも、俺には仲間がいる。一緒に命を賭けてくれる仲間が。だから行ける。そんな気がする」
「……そうか」
ソウゴの顔は何処か清々しかった。その顔を見たタロウは、表情を変えず言った。
「アンタにもいるだろ? 仲間」
「仲間じゃない、お供だ」
「……はいはい、そうだったそうだった」
「まぁ、まだまだ未熟だが、お供達も最近はよくやっている方だ。それに、二度も命を助けてもらったこともあったからな。奴らとの縁も、悪くはないものだった」
タロウの脳にドンブラザーズのメンバー達との出会いの記憶が、戦いの記憶が、日常の記憶が駆け巡る。
「……そんなに好きなんだ? お供達のこと」
「? 何を急に……」
「だってお供のこと語ってる時、笑ってたよ? タロウ」
ソウゴから指摘され、思わず口を触るタロウ。
「これは……」
「……大事にしなよ、お供達のこと。その人達との出会いは……より良い未来へ進む為の大切な縁だと思うから」
「……………………」
「……そろそろ、上がろうかな」
ゆっくりと水面に視線を向けたタロウをよそにソウゴは立ち上がり、足を上げて浴槽から出た。
◇◇◇◇
現実世界では。
鬼頭はるかは液晶タブレットに絵を描いてた。漫画家である彼女は盗作の汚名を晴らす為、面白い漫画を描こうと日々奮闘中なのだ。
ふと、彼女はペンを止める。
(待っててね、タロウ…………必ず迎えに行くから!)
向こう側の世界にいるであろうドンブラザーズのリーダーに思いを馳せ、漫画を書き始めるのを再開した。
猿原真一は、自身の邸宅にて夜の月を眺めながら、筆と縦に細長い白紙の色紙を持っていた。
「ここで一句」
そう言うと、色紙に筆で文字を書き始める。
『夜の月や 天に昇りて 咲き誇る』
どうやら月を見てインスピレーションが来たのか、俳句を詠んだ。
本人はその出来に満足してるのか、うんうんと言った様子で頷いている。
「ただいまぁ、みほちゃん!」
「おかえり、つよしくん!」
会社での仕事を終えた雉野つよしが扉を開けると、奥から妻である雉野みほの声がした。
「ちょうど料理も出来上がったところなんだ、一緒に食べよ?」
「うん、勿論!」
みほの誘いに満面の笑みで応じるつよし。
上着をハンガーにかけ鞄を置いた後、みほと椅子に座り、両者共に「いただきます」と言ってご飯を食べ始めた。ちなみにオムライスである。
「美味しいなぁ、やっぱりみほちゃんの料理は最高だよ!」
「そう? つよしくんに喜んでくれて嬉しいな」
犬塚翼は路地を歩いていた。
「犬塚さーん!」
後ろから声が聞こえて、翼は振り返る。するとそこには走ってきた桃谷ジロウが。
「お前か。どうした?」
「いえ、お仕事の帰りで、これからご飯食べに行こうかと思って! あ、良かったら犬塚さんも一緒にどうです? 僕が奢っちゃいますよ!」
「良いのか? ……じゃ、喜んで」
「よし! じゃあ行きましょう! オススメのお店知ってるんですよ!」
桃井タロウは、自身に与えられた部屋のベッドに入り、天井を見つめていた。
「……………………」
『……大事にしなよ、お供達のこと。その人達との出会いは……より良い未来へ進む為の大切な縁だと思うから』
タロウは、ソウゴのその言葉が何故か心に残っていた。
「より良い未来か……」
呟くタロウ。ソウゴの言葉は、頭の何処かには置いておこう。そう思いながら、タロウは眠りについた。
声:桃井タロウ
じかーいじかい
ついにドンジオが最終回!
敵との決戦の時だ。異世界に集結するお供達。何?まさかお前達は!
ドン最終話「2022:どんぶらオールスター」
めでたしめでたし!