Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O- 作:きゃぷてん
介人「これまでのドンジオ……」
ソノイ「センシャルでエキゾチック!! オリエンタルノートッ!!」プシュッ
ソノニ「(プシュッ)ゴージャスで、ロマンチック!! フローラルノート!!」
ソノザ「ミステリアスでハーバル!!(プシュッ) ウッディーノート!!」
ソノイ「暴太郎戦隊……」
(アバタロウセンタイ……) ※エコーです
(ドンフレグランス……) ※エコーです
ソノイ「ドンフレグランス!!」
ソノイ「お前ら全員(プシュッ)……匂ってやるぜ!!」
(※プシュッは香水の音です)
タロウ「違う違う!! これまでのドンジオは!!」
タロウ「中身は赤身だ!! 鉄火丼レッド!!」カアンッ!
猿原「天まで昇るぜ!! 天丼ブルー!!」カアンッ!
はるか「卵はふわとろ!! カツ丼イエロー!!」カアンッ!
犬塚「海苔を散らせ!! 海鮮丼ブラック!!」カアンッ!
雉野「ァベェニ生姜がポイントォ!! ギュュュウドォォォンピィィィンク!!」カアンッ!
パシッ パシッ パシッ(手を繋ぐ音)
バッ(食事処の提灯が広げられる音)
タロウ「暴太郎戦隊!!」カアンッ!
5人「ドンブリーズ!!」
カアンッ!カアンッ!
タロウ「払ってやるぜ!! どんぶり勘定でなァ!!」
はるか「ってそれも違うでしょうがァ!!」
はるか「異世界へと飛んでしまった桃井タロウ。そんな彼を迎えに行く為、私達ドンブラザーズもまだ見ぬ異世界へと飛ぶ決意をしたのであった! そう言うわけで! もう一つのどん最終話、とくとご覧あれ!」
来たるかな また来たるのかな 春風や
…………突然俳句から始めてすまない。猿原真一だ。
まず、最近の私の出来事を少しばかり語ろう。
私は戦いに疲れポイントを使って休暇を取り、漫画家として売れっ子だった過去の時代に戻った『はるちゃん』こと鬼頭はるかを迎えに行った。
それでその時間軸での他のドンブラザーズのメンバーとの邂逅やら、未来からの刺客が襲来やらと、色々あったのだ。
その後、どうにか私達は元の時間軸へと帰還を果たすことは出来たのである。
それでもって、
「ほーほっほっほっほっほっほっほっほっ!! ほっほっほっほおうほっほほうほっほああーーーーーー!!」
私は……私は今……。
はるちゃんと……ドライブデートを……しているんだ……。
「ほーーーーーーーーーーうほっほほっほうほあああーーーーーー!! 全力全開!! エンジン全開!! マッハ全開!! 爆走じゃァァァァァァァァァァァァァ!! ヒャッハァァァァァァァァァァァァ!!」
「はるちゃん!! 目を覚ますんだ!! はるちゃん!! 自分の本能に飲み込まれてはいけない!!」
今。
はるちゃんが。
運転を担当しているのだが。
それはそれはまぁ。
荒いったら、荒い。
ドリフトは決めるわ。
急カーブはするわ。
おかげさまで車内に体をぶつけまくるわと。
とにかく、ヤバいのだ。
こういう時こそ空想の力が必要なのかもしれないが、空想しようにもする暇がない。
いくらはるちゃんといえどこんなデートは勘弁願う。
「ふっふっふゥゥゥゥゥゥゥゥゥう!! ドリフトするの気持ち良すぎでしょ!! 音速超えてもまだまだ足りねェぜェェェェェェェェェ!!」
もはやはるちゃんは別世界へとトんでしまっている。
私の声はもはや届いていないだろう。
「誰か!! 誰か助けてェェェェェェェェェ!! ライダー助けてェェェェェェェェェ!! 出してェェェェェェェェェェ!!」
果たしてこのドライブデートに終着点はあるのだろうか。
それはまさしく神のみぞ知るのだろう……。
誰でもいい……桃井タロウでも……ジロウでも……雉野でも……犬塚翼でもいいから……。
助けて……。
「ヨホホホほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほほっほーーーーーーーーーーうほっほああーーーーーー!!」
「うわァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!」
◇◇◇◇
現代の時間軸にて。
「あ」
鬼頭はるかは彼女の叔母である鬼頭ゆり子の頼みで買い物の為、外に出ていた。
その帰り道、彼女は空にある物を見た。
「虹だ。朝は雨だったからなぁ」
今は晴れているが、朝は雨だったことを思い出すはるか。
視線を戻し帰宅しようとした時、彼女はある女性を目にする。
その女性は、空に浮かぶ虹に向けて手に持っているカメラで撮影をしていた。
「あれって……もしかして……」
はるかはその女性の後ろ姿に覚えがあった。
「あの……」
はるかは駆け寄りその女性に声を掛ける。声を掛けられた彼女は振り返った。
「カメラマンの前田真利菜さんですよね?」
カメラで撮影していた女性の名は前田真利菜。はるかが一時期ドンブラザーズを脱退していた際、彼女がオニシスターの後任を担当していたのだ。
「貴方は……」
だが、はるかが再びオニシスターになったことにより、真利菜がドンブラザーズとして活動していた記憶は無くなった。その為、はるかとの出会いの記憶も真利菜は覚えていないのである。
「あっ……私、鬼頭はるかです!」
「鬼頭はるか……あぁ、あの漫画家の!」
「虹、撮ってらっしゃったんですか?」
「はい、そうです。本当はもっとちゃんと準備したかったんですけど。良い虹の写真を狙うには、雨が降る前から準備しなきゃいけないんです。晴れた時こそ、奇跡の瞬間がやって来ますからね!」
真利菜は空の虹を見上げて、生き生きとした笑顔でそう言った。
(……変わった甲斐があったかも)
一度は解決した盗作問題をまた被ることになってしまったが、彼女が、真利菜が被るよりかはマシかもしれないと、はるかは思う。
かつてはるかがオニシスターをやめて真利菜が後任になった時、今度は彼女の撮った写真が盗作だと呼ばれ始めたのだ。
(今思えば、アレも未来の真利菜さんでも来てたのかな)
自分を盗作と訴えた椎名ナオキが未来の自分だったことを思い出し、はるかは考えた。
「あ、すいません。少し熱くなっちゃって」
「いえいえ、そんなこと!」
細かいことはいいかなと思い、真利菜との会話にはるかは戻る。
「そうだ、近々個展をやる予定なんです。もし良かったら見にきてください!」
「そうなんですか? じゃあ是非!」
「……お互い頑張りましょう。はるかさんも盗作の疑い晴らしてくださいね!」
「えっ……」
真利菜の言葉に、はるかは予想外の言葉を投げかけられ思わず戸惑いの表情を浮かべた。
「私、貴方の漫画読んでみたんですけど……あんなに情熱の籠った漫画が盗作だなんて、私にはとても思えません。きっと、何か深い訳があるんだと思います。それに……何だか貴方とは初めて会った気がしません」
「真利菜さん………………ありがとうございます。私、盗作が晴れるような漫画をきっと描いて見せます! だから……真利菜さんも人を感動させるような写真、これからも沢山撮ってください!」
「……勿論です! …………あっ、すみません、私はこの後用事があるので、これで!」
「あっ、はい。個展、今度必ず見に行きますから!」
去り際にそう言われ、会釈して去っていく真利菜。はるかは彼女の背中を見つめる。
はるかは空を見上げた後、家へ帰宅する為、歩き始める。
鬼が見た虹は、とても美しかった。
◇◇◇◇
「入るよ」
「らっしゃい!」
猿原真一はラーメンの屋台に来ていた。
「何にしやしょう?」
仕入れをしていた屋台の店主は猿原に訪ねる。彼の名は白井。かつてサルブラザーであった男であり、猿原からしたら先代と呼べる人物だ。
かつてはサルブラザーの力を手に入れたがそれを私利私欲なことに使い怠惰な性格になり始め、ドンブラザーズの資格も失い以前の職場からも追い出され職無しの流れ者であったが、とある一件から心を入れ替えて新たにラーメン屋として再出発をした。
席についた猿原は貼ってある札を見る。彼の視線は、『空想のラーメン 時価』に注がれていた。
「空想のラーメンを」
「あいよ!」
猿原の注文を受け、白井は準備を始めた。
「お待ち、メンマ大盛り!」
しばらくして、準備が終わり白井はラーメンの器を差し出し、それを猿原が受け取った。
……が、その器の中は空であった。スープの一滴も入っていない。
「ふっ、相変わらず分かっているな」
だが猿原はそれに対して文句を言うことは無く、器を受け取りテーブルに置いた。
「いただきます」
猿原が手を合わせてそう言った後、右手に割り箸を持つ。
それを器の中へ入れ、まるで麺を掴むような動作をすると口へと運んで啜る音を立てる。傍から見れば、それは落語家の芸のようであった。
「うん、美味い!」
だが、猿原本人は真面目に食事をしている。これは彼曰く「空想の力」であり、「想像力は時に現実と同等の力を持つ」とも語っている。つまり、一見食していないように見えても、彼にとってそれは真面目な食事なのだ。
「それで、最近どうです? モンスターとの戦いは」
白井は仕込みをしながら猿原に問う。
「ふむ……トラブルはあったりするが……まぁ上手いことはやっているよ」
「そうですか、なら良かった。……本当なら俺がやるべきことだったんでしょうけど。今からでも間に合いますかね? サルブラザー2とか」
「ううん、それはどうだろうなぁ?」
「ははっ、冗談ですよ。はい、サービスの替え玉」
「おっ、どうも」
猿原は白井から替え玉の皿を受け取る。皿の上にはやはりと言うべきか、麺は乗ってなかった。
◇◇◇◇
ぐうっ、と腹の音が聞こえる。
「もう昼か……どっかで飯でも食うか」
その音の発生源は犬塚翼だった。腹をさふりながら、彼は店を探すために歩く。
しばらく歩くと店を発見。入ろうと歩いた時。
「ああっ、貴方は!」
誰かが声を上げた。その声の方を見ると。
「お前は……」
「久しぶりですね!」
犬塚の目の前にいたのは金髪のパーマに黒いジャケットを着ていて、ギターケースを抱える男。その名も乾龍二。
乾はバンドマンであり、訳あってイヌブラザーに変身したことがあり、犬塚とも関わりがある。
「お待たせしました!」
店員が犬塚と乾の元へ料理を運ぶ。両者とも生姜焼き定食だ。二人とも「いただきます」と言って食べ始める。
ちなみに彼らの傍には、大食漢の太い男性がいた。その男は既に何十杯もカツ丼を平らげていた。最初に店へ入った時、犬塚と乾はその光景に軽く引いた。彼は元天装鬼の男である。
「それで、最近どうだ? 彼女とか、夢とか」
食事の途中、犬塚が乾に聞く。
「夢については……諦めました」
「…………そうか、すまん」
余計なことを聞いてしまった。そう思った犬塚は、乾に謝罪する。
「いえ、良いんです。それに……新しい夢も見つけましたから」
「新しい夢?」
「彼女を幸せにする。それが新しい夢です」
誇らしげな笑みを浮かべてそう告げる乾。
「その為に、今は働き口を探してるところです! それに、音楽の夢も完全に諦めた訳じゃないんです。これからは動画サイトにぼちぼち投稿して、あわよくばスカウトされたりー……なんて」
「……そうか、頑張れよ。応援している」
意気揚々と語る乾を見て、微笑む犬塚。それと同時に、いつか自分も恋人である夏美を取り戻すことを想った。
◇◇◇◇
「いただきます」
ロズワール邸の大食堂で椅子についていた桃井タロウが目の前の朝食を前にしている。
まずはサラダを食べる。キャベツのシャキシャキとした歯応えを味わいながら、トマトを咀嚼し甘酸っぱい感触が口内で弾けている。
キャベツとトマトとは言ったが、正式名称は不明だ。
サラダを完食し終えた後、次にパンに手をつけた。ちぎって口の中へと運んでゆく。
そのパンは固すぎず柔らかすぎず芳醇な香りが漂い、中の生地もモチモチとした食感であり、シンプルな素材でありながら美味しいパンであった。
こちらも正式名称は不明だが、外見はロールパンと同じであった。
パンを食べた後、ついにスープへと移った。
その際、タロウと共に同席していたスバルとエミリアとロズワールの後ろに立っているレムとラムは彼の方に一斉に視線を向けた。4人とも緊張した目つきだ。
タロウが食そうとしているスープを担当したのはレムであった。早い話、32点の批評を貰った前回のリベンジなのである。
スプーンで野菜やら鶏肉やらを掬って口に運び、最後はスープを全て掬い飲み干したのであった。
「ご馳走様でした」
スプーンを置き、手を合わせるタロウ。
「あのー……どうでしょうか? 今回のスープ……」
「うん、少し腕を上げたな」
「おっ、これは割と良い評価を貰える感じ……!?」
レムに尋ねられ頷きながら言ったタロウ。その反応にスバルは期待した表情をするが、
「42点だ」
「いやまだ低いんかいっ!」
「相変わらず厳しいようだねーぇ」
タロウが下した点数を聞いてスバルはギャグ漫画もかくやという勢いでツッコミを入れた。ロズワールも苦笑いしている。エミリアも同様で、ソウゴは微笑みながら食事を続けていた。
「何事もすぐにとはいかないからな。研鑽して積み重ねていけ」
「……成る程、分かりました。精進します」
タロウからそう言われ、レムは気を引き締めたような表情で返答した。近くにいたラムは機嫌が悪そうである。
「タロウさん……こういう時って大体お世辞でも高い点数にするべきっすよ?」
「世辞など言ったところで、相手の為にならないから不要だ。俺は真っ当な評価しか付けない」
「その評価の基準が高すぎるっつーか……誰も彼もがアンタみたいな天才ってわけじゃないんすよ」
スバルのその何気ない軽いノリの一言に、ずっと真顔であったタロウの表情が少しばかり翳りを見せた。
「あ……」
それに気づいたエミリアは不安を浮かべた顔で小さく声を上げる。レムもそれに気づいたのか気まずい表情。
ソウゴも表情こそ変えてないが、タロウのことを見ている。
しかし、スバルはタロウの顔と2人の反応に気づくことはなく、言葉を続ける。
「というかさー、俺がいうのもなんだけどアンタは謙遜ってもんを……」
「バルス、よしなさい」
そこへスバルを止める声が入った。それはラムであった。
「ラム、お前は良いのかよ?」
「別に良いわけじゃないわ。ただ、これ以上不毛な争いを続けようとするバルスが見るに堪えなかっただけよ」
「いや見るに堪えないて」
「ロウタが低評価を下そうが、更に腕を磨いて目にモノ見せてやればいいだけよ。レムが」
「いやそうだけど。そうだけどアンタじゃないんかい」
真面目に言ってるのか、ふざけているのか分からないラムの発言にツッコミを入れていくスバル。一方のエミリアとレムは良い方に場が和み、ホッとする。
そして、ラムの介入の意図を察していたタロウは密かに微笑んでいた。ソウゴはそれに気づき、同じように微笑んだ。
◇◇◇◇
「アァァァアァ…………!! 誰か、誰か俺に自由を教えてくれェェェェェェェェェ!!」
街中では新たなヒトツ鬼が出現し、暴れていた。その名は預言鬼。
預言鬼が暴れている最中、突如として街中に五つの影が出現する。
タロウことドンモモタロウを除く、ドンブラザーズのメンバーであった。
「! ヒトツ鬼!」
預言鬼の存在に真っ先に気付いたのはオニシスター。
その声によりサルブラザー、イヌブラザー、直前まで会社のアレコレで電話をしていたのであろうキジブラザー、腕立て伏せをしていたドンドラゴクウも預言鬼に気づき、臨戦態勢に移った。
「! お前らァ、俺に自由を教えろォォォォォォォォォ!!」
預言鬼はドンブラザーズに気付き襲いかかる。
タロウなら「自分で見つけろ!」なんて一蹴しそうだなァなんて思いながらオニシスターはフルコンボウで迎撃する。
サルブラザーは自慢の剛腕で殴りかかり、ドンドラゴクウは龍虎之戟でリーチを活かしながら刺突攻撃。キジブラザーは空から奇襲をかけ、イヌブラザーはドンブラスターによる射撃攻撃を行う。
その攻撃を一斉に受けた預言鬼は倒れるが、
「え!? 木!?」
倒れていたのは預言鬼の鎧を纏った大木であった。
オニシスターが驚いてる間に、後ろから悲鳴が聞こえる。預言鬼の攻撃をキジブラザーとイヌブラザーが受けたのだ。
「問題! 自由とは何だ!?」
突如として預言鬼が問題をドンブラザーズに向けて出題する。
「自由か……自由というのは、何者にも縛られないこと。だが、真の自由というは人の心それぞれにあり……」
「長い! 不正解!」
「ぐあーっ!」
サルブラザーが答えるが、少し長かったのが預言鬼の癪に触ったらしく電撃を喰らってしまう。
「僕に任せてください!」
ドンドラゴクウが預言鬼に迫ろうとする。
だが預言鬼は何処からかミサイルを発射し、地面に着弾させ爆発させる。ドンドラゴクウは後ずさるが、爆炎の中から預言鬼が現れ、両手に氷を纏った状態でパンチを繰り出す。
咄嗟にそれを避け、その後も繰り出されるパンチをいなしながら、刺突を喰らわせるドンドラゴクウ。
対する預言鬼も長槍を取り出してそれを振りかざす。それを龍虎之戟で受け止め、お互いに刃で打ち合いをしばらく続けると、互いに競り合いとなる。
そして、そのタイミングで異変は訪れた。
「あっ、あれは……!」
異変にまず気づいたのはオニシスターだった。彼女の視線の先に”それ”はあった。
「あのオーロラ!」
桃井タロウを異世界へと連れ去った灰色のオーロラカーテンがあった。
オニシスターが立ち上がった瞬間、それは彼女含むドンブラザーズの元へ迫り、彼らと預言鬼を一瞬で飲み込んだ。
「! ここは……」
オニシスターが辺りを見回すと、そこは何処かの荒野。辺りには誰もいない。他のメンバーも周りを見回している。
「ふっ! はあっ!」
一方、謎の場所へ転移してもドンドラゴクウは変わらず預言鬼と戦い続けていた。
「ぐあっ!」
だがその時、彼の脇腹に光弾が命中してその体を吹き飛ばす。
その光弾が飛んできた方向にサルブラザーは視線を向ける。するとそこには、
「! お前は……アナザードンブラザーズ……!」
赤い異形————もとい、アナザードンブラザーズがいた。
「アァアアア……! 総理大臣ンン……!」
彼の後ろには魔王鬼も居た。ついに決戦の時。
ロズワール邸では、庭でタロウ達が洗濯をしていた。
『ドン! ブラスター!』
服を干していたタロウの目の前にドンブラスターが現れる。
「現れたか」
タロウはただ一言そう言った。
◇◇◇◇
「ふっ! はあっ! ぐっ!」
サルブラザーがアナザードンブラザーズにパンチをするがそれを受け流され、逆にパンチを喰らわされる。
「はあっ! グエーッ!」
オニシスターがフルコンボウで殴りかかるが同じ黄色の棍棒で受け止められ、逆に殴り返された。
「うわあっ!」
「ぐあっ!」
キジブラザーとイヌブラザーがドンブラスターを使って撃つがそれを避けられると飛行して攻撃され、地面に着地した後は黒い星形手裏剣で攻撃される。
「はあっ!」
「ふんっ!」
ドンドラゴクウと加勢したドントラボルトも切り掛かるがその攻撃を金の槍で受け止め弾き返し、そのまま切って彼らを後退させる。
そしてアナザードンブラザーズは黒刀を構えると、みるみるその刀身に赤黒いエネルギーが満たされてゆき、剣を振るうと大きな斬撃をドンブラザーズに放った。
斬撃が直撃すると大きな爆発が起き、六人の悲鳴が混ざって響き渡る。
爆炎が晴れると、変身解除した状態の六人が倒れていた。
「あいつ……! 強い!」
「だが……! このまま終わるわけにはいかないだろう!」
はるかと猿原に続くように、他のメンバーも立ち上がりそれぞれ武器を構える。
しかしそれも無駄だと言わんとばかりに、アナザードンブラザーズは再び刀身にエネルギーを溜める。
その時だった。
「ッ!」
突如飛んできた赤色の複数の光弾がアナザードンブラザーズに命中し、後退させる。
その光弾に一同は振り返ると、そこには、
「タロウ……!」
赤いサングラスを掛けている桃井タロウがいた。それと、常磐ソウゴ達も。
「まだ行けるな、お供達」
「あぁ」
「うん!」
「ふんっ……」
「はい!」
「勿論ですッ!」
「言われるまでもない……!」
タロウの問いかけに猿原、はるか、犬塚、雉野、ジロウ、裏ジロウはそれぞれ答える。
「ふふっ……良いお供だね!」
『ジクウドライバー!』
ソウゴはそう言いながら笑い、ジクウドライバーを腰に当てる。両端から噴き出すようにベルトが形成され、ぐるりと回り装着。
『Zi-O!』
ベゼルを回しジオウライドウォッチを起動させ、彼から見て右側のD'9スロットに装填した後、天面のライドオンリューザーと呼ばれるボタンを押してロックを解除し、ジクウサーキュラー、もといベルトが傾く。
彼が腰を落とし、左腕を右肩近くまで上げる動きをすると同時に、タロウ達もドンブラスター、もしくは龍虎之戟のギアテーブルにアバタロウギアをセットし、それぞれ構えた。
「変身!!」
「「「「「「「アバターチェンジ!」」」」」」」
八人の声が重なる。異なっていた道が交わって行く。
『ぃよぉ〜ッ!』
ドンブラスターを使う五人が金色の桃のエンブレムが刻まれたスクラッチギアを回すと、合いの手が聞こえた。
『ドン! ドン! ドン! ドンブラコオッ! ア・バ・タ・ロォ〜!』
四回ほど回した後、再び声。だがその次に放たれる声はバラバラで、『ドンブラコ!』やら『ウッキウキ! ウキウッキ!』やら『福は内! 鬼も内!』やら『ワンダフル!』やら『トリッキィー!』やらと、違いは間違いじゃないとでも言わんばかりに、とにかく個性を押し出していた。
『ドラ! ドラ! ドラゴォーン!』『タイ! タイ! タイガァー!』と一方の2人の武器も独自の音声を放っている。
やがて七人は武器を天に掲げトリガーを引き絞り、ソウゴは上げていた左腕を振り下ろして傾かせたベルトを、ジクウサーキュラーを回転させる。
『ライダァー! タァーイム!』
その声と同時にソウゴは回転する巨大なリングに囲まれると体が黒いボディに変化しはじめ、七人は天から降ってきたアバタロウギア型のエネルギー、アバターデータが体を通り抜けアバタロウスキンがその身に纏われる。
『仮面! ライダァー! ジ・オーウッ!』
『ドン! モモタロォ〜! よっ! 日本一ッ!』
『サルブラザァ〜! よっ! ムッキムキィ!』
『オニシスタァ〜! よっ! 鬼に金棒ッ!』
『イヌブラザァ〜! よっ! ワンダフルッ!』
『キジブラザァ〜! よっ! トリッキィ〜!』
『超一龍ッ! アチョォーーーーーー!!』
『エクストラッ! ホアチョーーーーーーッ!』
色とりどりのスーツとマスクが装着され、変身完了。
そして……仮面ライダージオウと、ドンブラザーズ達が今ここに————!
「………………あれっ?」
その時、同行してきたエミリアが何かに気づき声を上げた。
「タロウさん…………何処行ったの?」
見れば————変身したであろう桃井タロウが、その場に居なかった。
それを聞いた他のメンバーもタロウが居ないことに気づき周囲を見渡す。
「ハーハッハッハッ!」
『ぃよぉ〜ッ!』
その時、何処か遠くから甲高い笑い声と合いの手が聞こえた。
声がした方を一同が見ると————。
「ハッハッハッハッ! ハーハッハッハッ!」
何故か数人の天女が舞い踊る中、神輿に担がれたドンモモタロウがやって来たのだ————。
「「「「え????」」」」
スバルとエミリアとレムとラムが思わず出した声は、それはそれは綺麗に重なった。
「え? え? え? な、な、な、何? 何アレ? え? な、何? え? 何? え? ホントに何? え? は? え? ん?」
スバルは戸惑いに戸惑っていた。本当に戸惑っていた。それ以外に彼の今の状態を表すことは出来なかった。
「タロウさん………………?」
「タロウくん………………?」
「ロウタ………………?」
エミリアとレムとラムも、呆然とした顔でドンモモタロウを見つめていた。
「やぁやぁやぁ! 祭りだ祭りだァ! 踊れ! 歌え!」
天女によって紙吹雪が舞い、複数人の祭り男によって担がれている神輿の上にその存在感を強調する赤色の巨大なバイク————エンヤライドンに搭乗しているドンモモタロウは、桃のエンブレムが入った扇子を扇ぎ、高らかに声を上げる。
「袖振り合うも他生の縁! 躓く石も縁の端くれ! 共に踊れば繋がる縁! この世は楽園ッ! 悩みなんざ! 吹っ飛ばせェ! 笑え笑え! ハッーハッハッハッ!」
「…………いや笑えねェよ!!」
スバルは盛大にツッコミを入れた。しかしそれに構わず、ドンモモタロウは笑っていた。
ドンモモタロウはエンヤライドンのハンドルを回し、エンジンを噴かす。
やがて担がれていた神輿から盛大にジャンプして地面に着地して走り出す。しばらくした所でドリフトを決めて華麗に停車した。
エンヤライドンから降りて悠々と歩き、他ドンブラザーズのメンバーの元へ赴く。
「お供達! 名乗るぞ!」
「名乗る……?」
スバルはこれ以上何をやるんだよ、と言いたげな顔でドンモモタロウを見る。
「聞けえェェ!」
だがドンモモタロウはそんな視線を気には止めない。アナザードンブラザーズを視線に据え、高らかに告げた。
「桃から生まれたァッ! ドンッ! モモタロォ〜ッ!」『よっ! 日本一ッ!』
「浮世におさらば〜。サルブラザー!」『よっ! ムッキムキィ!』
「漫画のマスター! オニシスター!」『よっ! 鬼に金棒ッ!』
「逃げ足No.1! イヌブラザー!」『よっ! ワンダフルッ!』
「鳥は堅実! キジブラザー!」『よっ! トリッキィ〜!』
「筋骨隆々! ドンドラゴクウ!」『超一龍!』
「俺が最強……! ドントラボルト……!」『エクストラッ!』
「暴太郎戦隊ィ!」
全員が名乗りを上げ、最後にドンモモタロウが自身らが何の戦隊であるかを告げる。暴太郎とは何なのか全然分からないが。
「「「「「「「ドンブラザーズ!!」」」」」」」
何処からかクラッカーから噴出されたような紙吹雪が飛び出し舞う。それはおめでたいお祭りごとのように。
「お……おおー…………」
「かっ…………かっこいい…………!」
こくこくの頷きながらその名乗りの勢いに気圧されるスバル。一方でエミリアはまるでヒーローショーを観る子どものように目を輝かせていた。
「おい」
名乗る際、右手で扇子を掲げオニシスターに支えられた状態になっていたドンモモタロウがジオウ達を見る。
「お前達も名乗れ」
「……へっ?」
素っ頓狂な声を出したのはスバルであった。急に名乗りをドンモモタロウからせがまれた為であった。
「いや……突然名乗れって言われても……」
「時の王者、仮面ライダージオウ!」『Zi-O!』
「いや名乗ったー!?」
ジオウが威勢よく名乗り、戸惑いから一転、ツッコミを入れた。
「ロズワール・L・メイザース辺境伯が使用人筆頭。もとい、スバルくん専属の万能お役立ちメイド、レム!」
「レム……!?」
「ロズワール・L・メイザース辺境伯が使用人。もとい、レムのただ一人の姉、ラム!」
「ラム……!?」
「……わ、私はエミリア! ただのエミリア! 大精霊パックを従える精霊術師にして、やがてルグニカ王国の未来を担う者!」
「あ、ちなみにパックは僕のことね!」
エミリアが名乗った後、何処からかパックが出て来てそう言った。
「…………み、皆……名乗っちゃったよォ〜!?」
「おい、お前も早く名乗れ」
「へっ」
「ウダウダするな、早くしろ」
「エッ、アッ、アッ、アッ、アッ…………ハイ……」
ドンモモタロウに妙に圧のある言葉に、スバルは生返事で返した。
「……お、俺の名前はナツキ・スバル! 元無知蒙昧にして天下不滅の無一文! 今はロズワール邸の下男!」
「ほう、やれば出来るじゃないか」
「……そりゃどうも……」
ドンモモタロウの褒めの言葉をスバルに送るが、本人は嬉しそうでは無かった。
「さァ、祭りだ! 行くぞォォォォ!」
「よォし! 何か行ける気がする!」
ザングラソードを持ったドンモモタロウと字換銃剣ジカンギレードを持ったジオウがわざわざ待っていてくれたアナザードンブラザーズ(と、魔王鬼と預言鬼)目掛けて駆け出す。
そしてそれに続くように、他のメンツも走り出した。キジブラザーは飛んでいた。
「そりゃァ!」
「ハアッ!」
アナザードンブラザーズに斬りかかるドンモモタロウとジオウ。相手も黒刀で迎撃、激しい剣戟が繰り広げられる。
「ケンケンケェーン!」
「喰らいなッ!」
魔王鬼にキジブラザーの羽による斬撃、イヌブラザーにより放たれる光弾が飛ぶ。
「行くわよ!」
「腕の見せ所だね!」
エミリアが掌を魔王鬼に向けると氷柱が放たれる。パックも腕を振るい氷柱を放った。
「せェい!」
「おらァッ!」
ドンドラゴクウの刺突攻撃とドントラボルトのジャンプにより振り下ろされる斬撃攻撃を魔王鬼は見舞われる。
「ふんっ!」
「はあっ!」
サルブラザーの剛腕とオニシスターのフルコンボウの一撃が預言鬼にダメージを与える。
「はあっ!」
「フーラッ!」
モーニングスターの鎖を振り回して勢いをつけ投げ飛ばすレムと杖から風の斬撃を放つラム。
「……なあ、俺の出番あるか?」
「あるんじゃないかしら。肉壁としての出番が」
「いやオイオイ」
屋敷の倉庫から剣を拝借してきていたスバルだが、自分以外のメンツが明らかに善戦してるので、出番ある? と純粋な疑問を投げかけた。その後のラムの発言にすぐツッコんだが。
「つーか本当にお供に鬼がいたんだな……」
スバルはオニシスターを見る。特に頭部にある銀色の角を。
ちなみに当の本人はというと。
「いやーこんな……こんな漫画でしか見ないようなメイド服着て……その上バリバリ戦うメイドさんとかマジでいたんすね! はーっ異世界スゲー!」
「……姉様、何ですかこの人……」
「きっと頭がアレなのよ」
レムとラムを見てテンションを上げていた。彼女の漫画家魂に火がついたらしい。
「そこのメイドさん! この戦いが終わったら勿論! 取材させてもらってもいいですよね!?」
「へっ!? 取材!?」
「はい! そうです! 返答はハイかYESしか受け付けませんので!」
「断らせる気ねェな!?」
オニシスターの言葉にツッコむスバル。何か今日沢山ツッコんでる気がするなァと内心で彼は思っていた。
「はっ! ラムとレムを取材しようだなんて、良い度胸をしてるじゃない。高くつくわよ?」
「ヘッヘッヘッ、話が分かるようで助かりますぜ姉貴!」
「いや姉貴て」
見るからに手をゴマスリして悪徳商人のような雰囲気を醸し出すオニシスター。そしてツッコミのスバル。
「ふむ……ここで一句」
「え?」
「異世界で 新たな出会い 巡り合う」
「????????」
急に俳句を詠み出したサルブラザーにスバルは虚無の顔で茫然としていた。ツッコむ気力を失くしたのだろうか。
虚無顔になってるスバルの横で、青き猿の風流人は満足げに頷いていた。
『タイムチャージ!』
『ヘイ! ヘイ! ヘイ! ヘイ! カモォン!』
ジオウがジカンギレードのギレードリューズというスイッチを押し、ドンモモタロウはザングラソードのスクラッチを回す。
『5……! 4……!』
『アーバタロ斬! アーバタロ斬!』
ジカンギレードのカウントダウンが始まる。その横では陽気な歌が聞こえる。
「ふっ!」
『3……! 2……!』
「そらあっ!」
『1……!』
アナザードンブラザーズの黒刀を受け止めると、二人でそれを弾き飛ばす。
『ゼロ・タァイム!』
カウントダウンがゼロを迎えた瞬間、二人は己の得物のトリガーを引き絞る。
「ザングラソード!」
『必殺奥義! アバタロ斬!』
「快桃乱麻ァ!」
「……ジカンギレード!」
『ギリギリ斬りィ!』
「時々刻々!」
刀身にエネルギーが迸り、二振りの光り輝く剣がアナザードンブラザーズに振るわれ、その体を後ろへと飛ばす。
「さっきの技名どう?」
「45点だ!」
「きびし〜」
ドンモモタロウの技名への評価に対し、何処か茶化したようにジオウは言った。
「はあっ!」
「ふんっ!」
ドンドラゴクウとドントラボルトが龍虎之戟から金と銀の斬撃を魔王鬼へと飛ばす。
イヌブラザーとキジブラザーもドンブラスターで黒と桃の光弾を照射。
エミリアとパックも氷柱の雨を降らせる。
「エル・ヒューマッ!」
「エル・フーラッ!」
レムとラムの氷柱と風の斬撃が飛び、サルブラザーとオニシスターによる青と琥珀色の光弾が預言鬼に向かって飛んだ。
『スレスレ撃ちィ!』
ジオウの『ジュウ』というマゼンタの文字型の光弾と、ドンモモタロウの紅白の光弾がアナザードンブラザーズに命中する。
腕で防ぎながらも後退するアナザードンブラザーズ。腕を下ろした後、黄色の銃、アナザードンブラスターを構える。
彼が片方の手を上げると、何処からか鳥の咆哮が聴こえた。
やがてその手に掴んだのは、錆び付いた黄金の不死鳥、アナザーオミコシフェニックス。それをアナザードンブラスターに装着。
『パァーリィータァィィィィム……!』
その瞬間、アナザードンブラザーズの体を漆黒のオーラが包み込んだ。
そのオーロラが晴れると、彼の身体には錆び付いた黄金の鎧とボロボロのマントが纏われていた。頭からはゴツゴツとした歪な角が生えており、極悪非道で欲に塗れた醜悪な鬼のようにも見える。
その名も、アナザーゴールドンブラザーズ。
そして手を広げて天を仰ぐと、彼を中心に漆黒のドームが発生する。
すると、カラフル且つサイケデリックな外見が特徴の怪人の大群が現れた。その名もアノーニ。
本来はドンブラザーズの世界と隣り合わせの別世界、脳人レイヤーに住む怪人であるが、今回はアナザーゴールドンブラザーズが生み出した者。さしずめアナザーアノーニと言ったところだろう。
怪人はアナザーアノーニだけではない。欲望の怪人、ヒトツ鬼も現れていた。
一般的なヒトツ鬼であるベニツ鬼にシソツ鬼だけでなく、ドンブラザーズがかつて戦った歴代のヒトツ鬼までもが現れていた。これはさしずめアナザーヒトツ鬼だ。
そして更には、獣人の群れまで出現していた。
獣人とは、今や滅んだ脳人世界・イデオンにて世界を維持する資源としてより効率の良い存在を求めたドン王家によって創られた人工生命体。 しかし結果は失敗に終わり、現実世界の人間を襲いコピーして成り代わり始め世界を侵食する存在となった。
獣人にはランクが存在しており、猫、鶴、ペンギンの三つである。右に行くほど、それは強力な個体となる。
今回の、さしずめアナザー獣人達はネコクローを装備している猫の獣人であった。
「な、何だよこれ!? 怪人が、こんなに…………!」
大量に出現した怪人達を見て驚愕するスバル。
「ほう、面白い! 俺達が相手してやる!」
そう言って、ドンモモタロウが突撃する。それに続くように、ジオウ達も突撃する。
「くっ! ふっ! はあっ!」
オニシスターはフルコンボウを使ってヒトツ鬼やアノーニ達と戦っていた。
「! この音は…………!?」
その最中、彼女はある音を聞いた。それは、まるでバイクの走行音のような。
すると、オーロラカーテンが現れる。無限の可能性を手繰り寄せる、世界の銀幕が。
その向こうに、一つの影がこちらに向かっていた。
やがてその影は大きくなり、銀幕から飛び出した。
現れたのは大きなライトが目立つ青色のバイクに乗り、ヘルメットを被った青緑のスーツの男だった。男はウィリーをしながら走行しており、しばらく走って前車輪を地面につけると、ドリフトを決めて華麗に停車する。
男はヘルメットを脱いでバイクから降りる。
男は茶髪で端正な顔立ちをしており、その瞳の色は青。余談だが、何故かボトムはスラックスとハーフパンツの重ね履きをしていた。
「桃井タロウ!」
男はドンモモタロウを、桃井タロウを呼ぶ。呼ばれた本人は男を見た。
「ソノイ!」
男の名はソノイ。彼は脳人レイヤーと呼ばれる異次元世界に住んでおり、人間とは異なる高次元存在の”脳人”である。ちなみに彼は絵画鑑賞が趣味であり、同時に脳人のファッションリーダーでもある。
「私達も加勢しよう。アナザードンブラザーズは、私達脳人にとっても敵だ!」
そう言うと彼の後ろに再びオーロラカーテンが出現して二人の人物が現れる。
まず一人は女性であり、その名はソノニ。
白い瞳を持つ彼女は、ニーハイソックスに見えるフェイクニーソにフットカバーと白いローファー、中に短めのショートパンツを履いているミニスカートにへそ出しの上着と、些か刺激の強い白い衣装で統一されているショートヘアの美しく妖艶な女性。人間の恋愛に興味を持っている。
もう一人の男性はソノザ。茶色の瞳を持つ彼は遊牧民を思わせる茶色い衣服とブーツを身に着けており、やや長めの黒髪を後ろに纏めており、柄の部分が長槍の形状をした傘を常に所持していた。人間の喜怒哀楽に興味を持っている。
「ソノニ、ソノザ、行くぞ!」
「ええ」
「おう!」
ソノイの言葉に二人は応じ、三人は左腕を胸にかざす。腕には全員脳人ブレスが装着されており、それぞれ異なるデザインをしていた。それに彼らは触れる。
触れた瞬間、そのブレスの装飾が巨大化して脳人シールドとなると、彼らの体が光に包まれ、シールドが胸部に装着されて光が晴れる。
光が晴れて現れたその姿は、ジオウやドンブラザーズと同じように全身に鎧を纏った姿だった。
ソノイはメインカラーが紺青の仮面の騎士のようなスキン”バロンクロス“を身に纏った形態。その手には悪き存在を一刀両断する両刃の剣、“一級剣バロンソード“を装備していた。
ソノニはメインカラーが白のスキン“コロンドレス“。額には羽根のような意匠があり、鳥を思わせる金で縁取られた装甲が特徴。頭には小さな角が2本ある。 武装は“二重弓コンドルアロー“。双剣に分離して二刀流で戦うこともできる。
ソノザはメインカラーが茶色のスキン“カゲスタイル“。銀色の武骨な装甲に包まれている。頭部には短い3本の角と渦巻きのような意匠がある。
武装は持っている傘が変化した十字の刃を持つ槍“三刃槍カゲスピア“。これによる激しい三段突きが彼の得意技。
「清廉潔白完全主義、ソノイ!」
「美しい花には棘がある。愛を知りたい、ソノニ!」
「思い込んだら一直線! ソノザ!」
「「「脳人三人衆!! 見・参!!」」」
彼らが武器を構えてポーズを決めると、突如背後から爆発が起き、青と白色と茶色の煙が舞い上がった。
「アンタらも名乗るんかァい! しかもなんか爆発したァ!?」
「行くぞ!」
ツッコミを入れるスバルをよそにしながら、三人は怪人の大群に突撃した。
「はるかさん!」
敵を倒していたオニシスターは自分の名前を呼ばれ振り返る。近くにいたサルブラザーとイヌブラザーも振り返った。その視線の先には、またオーロラカーテンが。
そしてそのオーロラカーテンから三人の人影が現れた。その人物達を見て、オニシスター達は驚愕する。
「真利菜さん!?」
「白井!」
「お前……!」
現れたのは、前田真利菜と白井と乾龍二だった。
三人は、全員共通としてその手にドンブラスターを持っていた。
「真利菜さん、何で…………」
「目の前にドンブラスターが現れて、これに触れたら全て思い出したんです。それでオーロラに……」
「俺もラーメンの仕込みをしていたら、この銃がね」
「俺は路上ライブの帰りにな」
事情を説明し、オニシスターの疑問に答える真利菜達。
「とにかく、私達も一緒に戦います!」
「加勢させてもらうよ、兄さん!」
「イヌブラザーに今日限りの限定復帰だ!」
そう言って、真利菜、白井、乾の三人はブラスターのギアテーブルにアバタロウギアをセットして構える。
「「「アバターチェンジ!!」」」
『ぃよぉ〜ッ!!』
合いの手と共にスクラッチギアを回す。
『ドン! ドン! ドン! ドンブラコッ!』
そして、天に掲げトリガーを引き絞る。
『オニシスター! よっ! 鬼に金棒ッ!』
『サルブラザー! よっ! ムッキムキィ!』
『イヌブラザー! よっ! ワンダフルッ!』
彼らの体をアバタロウギア型のエネルギーが体を通り抜けデータが実体化し、スキンが纏われた。
「おおーッ! これは熱い展開! よし! 皆さんも何か名乗りしてください!」
「へ!? な、名乗り!?」
「へー、そんなのするのか」
「名乗りか、昔考えたなぁ」
オニシスターの突然の頼みに、真利菜オニシスターは素っ頓狂な声を上げ、白井サルブラザーは知らなかったという感じであり、乾イヌブラザーはノスタルジーに浸っていた。
オニシスターは「さ、早く早く」と見たそうにしている。そんな彼女に気押され、真利菜オニシスターは向き直って咳払いする。
「写真のマスター! オニシスター!」
「怠けにおさらば! サルブラザー!」
「ギターテクNo.1! イヌブラザー!」
「おォーっ!」
三人の名乗りを見て感嘆の声を上げるオニシスター。
名乗った三人はそれぞれ怪人の群れへと向かう。
『What's up!?』
次にカーテンから現れたのはザングラソードによく似たマゼンタの刀身とシアンの刃を持つ刀。
オーラを纏いひとりでに浮いていたそれのスクラッチギアが回転する。
やがて刀からエネルギーが放出されると、それは人型へと形成し、紫色の鎧の戦士が姿を現した。
『DON!
現れた戦士の名はドンムラサメ。所々装飾に違いはあるが、ドンモモタロウとその容姿が似ていた。彼はドン王家によって生み出された獣人に対抗する為、脳人の元老院が開発した兵器である。
『———— 戦いなさい、ムラサメ』
ドンムラサメの脳内に女性の声が響く。声の主の名はマザー。正体は不明であるが、彼女によってドンムラサメは備わっていない筈の自我が芽生え、脳人レイヤーを脱走したのだ。
『アナザードンブラザーズは、存在してはならぬもの!』
「———— はい、マザー」
マザーの言葉を受け、ドンムラサメは背負っていた刀改め、ニンジャークソードを逆手に持ち、構える。
『あっ、その前に貴方も名乗りなさい、ムラサメ』
「…………ジョーズに目覚めた、ドンムラサメ…………!」『ドン! ムラ・サメェ!』
そして、目の前にいる怪人達を見据えて駆け出した。
銀幕が出現し、戦場に再び人が現れる。それは椅子に座っている五色田介人であった。
本を読んでいた彼は、戦士達の戦いに視線を向ける。
椅子から降りると、何処からか銃を取り出す。その名は全界変身銃ギアトリンガー。カラーはレッドのそれは鳥の頭を模していて、銃口はガトリングのそれになっていた。
天面の水色のカバーを開き、アバタロウギアとは別のギアを取り出す。その名もセンタイギア。金色の縁で彩られており、45の文字と戦士の姿が彫られている。
ギアテーブルにゼンカイザーギアをセットして、カバーを閉じた。
「チェンジ全開」
そう呟くと同時に、ギアトリンガーの横に付いてあるハンドルを回し始める。それに比例するように、銃口も回転していた。
『45・バァァァァァァン!』
しばらく回すと甲高い声が鳴り響く。その後、一定のリズムで『バンバン!』という声が鳴り、介人はギアトリンガーを突き出してトリガーを引いた。
『ババン! ババン! ババン! ババン! ババババァァァァァァン! ゼェェェェェェンカイザァァァァァァ!』
撃ち出された光弾はゼンカイザーギアの形を取り、介人の体を通過する。
白黒のスーツが身に纏われ、マスクが装着されるとゼンカイザーブラックへ変身完了。
「ふっ!」
マントを翻しギアトリンガーを構え、トリガーを引きながら駆け出した。
「やあっ!」
「はあっ!」
「おりゃあっ!」
場面は再びオニシスターとサルブラザーとイヌブラザーの戦いに移る。
「……あん?」
ふと、イヌブラザーは戦場の中で何かを見た。
「ちょっと待て!? 何だあれは!?」
イヌブラザーが声を上げたのにオニシスターとサルブラザーが気付く。彼の見てる方向に二人も視線を移すと、そこには、
「く、車ァ!?」
驚く声を上げたのはオニシスターであった。何と、車がこちらに向かってくるのだ。怪人達を轢きながら。
しばらく走ってきて停車すると、ドアが開いて中から人が降りてきた。その人物は、
「大丈夫ですかはるかさん!」
「みっ、未来の私!?」
それはなんと、もう一人の鬼頭はるかであった。そして彼女は、オニシスターが言ったように未来の鬼頭はるかである。
そして、もう一人車から人が降りる。
「ひ、久しぶり……って程でもないか……過去のはるちゃん……おえ……」
「未来の……猿原……さん? 大丈夫?」
それは同じように未来の猿原真一だった。だが、顔は真っ青な状態で今にも吐きそうだった。
「な、何があったんだ……未来の私……?」
恐る恐る尋ねるサルブラザー。
「い、いやぁ…………少しばかり…………はるちゃんとドライブデートをしてね…………おっ、おえええ…………」
「あぁ…………」
未来の猿原の説明を聞いて、何かを察して未来のはるかを見るサルブラザー。
「とりあえず、色々とヤバい状況っていうのは分かります。一緒に戦いましょう! さ、しんちゃん!」
未来はるかがしゃがんでいた未来猿原の腕を掴み立ち上がらせる。彼はよろついていた。
「…………頑張れ!」
サルブラザーはただそう言った。
「「アバターチェンジ!!」」
『ドンブラコォ!』
スクラッチギアを回してトリガーを引き絞る。二人の体をギア型のエネルギーが通過し、スーツを形成して変身完了。
『オニシスタァ〜!』
『サルブラザァ〜!』
二人が変身完了したと同時に、再びバイクの走行音がした。
「あれは……!」
『DON!
ドンムラサメがバイクに乗って走っていた。しかしよく見れば、バイクと同じようにマスクや体に黄金のラインが施されている。
「未来のムラサメ!」
そう、彼は未来のドンムラサメである。かつて、未来の鬼頭はるかを狙う刺客として到来したのだ。
「ふん………………」
怪人達を轢きながらバイクを停車し、ニンジャークソードを構え駆ける。
「はっ! ふんっ!」
ソノイがバロンソードで敵を連続で切り裂く。
「ソーノーイー君」
突如何者かに呼ばれ振り返るソノイ。すると、そこには右手に白い手袋をつけ、深紅のコートを着ている男が居た。
「お前は……ソノシ!」
ソノシと呼ばれた男は手を振って不敵に微笑む。彼も同じく脳人であり、監察官という立場でソノイ達脳人三人衆の上官である。
「何をしに来た!」
「そんな怖い声を上げなくても、今日は君達と戦いに来たわけじゃあないんだよ」
剣を突きつけるソノイにそう言って、アナザーゴールドンブラザーズを見るソノシ。
「元老院の命令でね。君達と同じように、私達もあのアナザードンブラザーズを倒しに来たってワケ」
「私達?」
ソノイが疑問の声を上げた時、ソノシの後ろにオーロラカーテンが出現し、二人の人影が現れる。
一人は紫の瞳に、紫色のブラウスをお洒落に着こなしている美麗な容貌の女性。
もう一人は、灰色の瞳に髪型をオールバックにして灰色の毛皮を羽織っている筋肉質で剛健な男性。
「ソノゴ、ソノロク、行くヨ」
「うふふ……たっぷり可愛がってあげるわァ……♡」
「纏めて叩き潰してやるゥ……!」
ソノシの言葉に続けるように、妖艶な笑みを浮かべるソノゴと獰猛な笑みを浮かべるソノロク。
三人は左腕を翳して、装着してある脳人ブレスに触れる。ブレスの装飾が脳人シールドとなり体が光に包まれ、シールドが装着されて光が晴れ、鎧を纏った姿となる。
ソノシはメインカラーが深紅で赤い鳥のような意匠があるスキン“アカハデマスク“。その手には“
ソノゴは額から後頭部にかけて曲がった角が特徴的なスキン“ナショナルフィット“。五速剣“キッドレイピア“を武装し、五つ星級の素早い剣さばきを得意とする。
ソノロクは頭に二対の羽根の様な物が生えたスキン“超硬クリスタル“。六棘棒サンゼンコン“でロックオンした敵を容赦なく叩き潰す。
「清潔第一、ソノシ!」
「美貌一番、ソノゴ!」
「親切大好きィ! ソノロク!」
「我ら……」
ソノシのその一言に続けるように、他二人も武器を構える。
「「「脳人監視隊!!」」」
脳人三人衆の時とは違い、彼らの後ろで爆発は起きなかった。
「さァ、消毒の時間よ……!」
ソノシはそう言って駆け出す。ソノゴとソノロクもそれに続いた。
「……………………」
その戦いを、崖の上から見つめている者がいた。それは、キジブラザーこと雉野つよしの妻であるみほだった。
だが、その表情は真顔であり、何処か様子が違う。
「鶴の獣人よ」
鶴の獣人と呼ばれ振り返った彼女が見据えた先にいたのは、警官の制服を着ている中年の男性。彼の名前は寺崎、ドンドラゴクウこと桃谷ジロウの育ての親である。
「ペンギンの獣人……お前も来ていたのか」
そう言われた寺崎————ペンギンの獣人は、アナザードンブラザーズを見る。
「彼らがあの者を倒せなければ、全てが終わる」
「ああ………………何もかも、無くなる」
そう言って、それぞれ違うところを見る二人。寺崎はドンドラゴクウを、みほはキジブラザーを見ていた。
「………………手を貸すとしよう」
「………………これも
みほと寺崎は、その体に淡い水色のオーラを纏うと、瞬く間にその体が異形の者へと変化させた。
みほは鶴の獣人へ、寺崎はペンギンの獣人へ。前者は鶴の姿を模した片刃剣、“ツルサーベル“を持ち、後者は構えを取って、崖から飛び上がり戦いの最中へ飛び込んだ。
立ち上がりし全勢力。
交わってゆく縁。
熱狂の祭りが、DONッと幕を開ける————!
えっ?最終話じゃないだろって?上下巻完結タイプだからセーフ!まあCMタイムってことで、多少はね?