Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O-   作:きゃぷてん

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3章開始


3章
2019:メッセンジャーF &W


「匿名Wです。主を祝ってる奴です。……失礼、少しふざけました。この本によれば」

 

暗闇の空間の中、大時計の前で『逢魔降臨暦』を読んでいる青年が。

 

最初にふざけたのは、見逃してあげて欲しい。

 

「普通の高校生だった常磐ソウゴ。彼には魔王にして時の王者、オーマジオウとなる未来が待っていた」

 

ページに、オーマジオウが映る。

 

「異世界に転移した常磐ソウゴはロズワール邸へと招かれ、屋敷の住人達との紆余曲折にアナザーライダーの襲撃がありつつも、仮面ライダー響鬼の力を取り戻した」

 

次のページに、仮面ライダージオウ・響鬼アーマーが映る。

 

「常磐ソウゴが集めるべきライダーの力は残り9個。そんな中、開始が近づいているルグニカ王国の王選。常磐ソウゴ達に訪れる運命は、如何に」

 

 

「こうして朝早くから呼び出してすまないねーぇ」

 

「全然大丈夫だよ。それで、何の用なの?」

 

何処か間延びした男の声と、それに応える青年の声。

 

場所はロズワール邸の執務室だ。

 

男と青年も、どちらも上質そうな椅子に座って向き合っている。

 

「エミリア様の王選に関わる大事なお話……だーぁよ」

 

「————————」

 

 

「最後に腕を伸ばしてフィニーッシュ! ヴィクトリー!」

 

「ヴィクトリー!」

 

 アーラム村で村人達と共に元気にラジオ体操をしている男がいた。

 

彼の名前はナツキ・スバル。

 

伝説に生き神話を紡ぎ因縁に抗う男である。まあ嘘だが。

 

ラジオ体操を終えたスバルは子供達から差し出される紙に芋で作ったスタンプを押し始める。

 

それから一通り押し終えて

 

「エミリアたん、お待たせ!」

 

「ううん、大丈夫。スバル、お疲れ様でした」

 

エミリアが駆け寄ってきたスバルに労いの言葉をかける。

 

それから2人は屋敷へと戻り始める。歩きながら、しばらく雑談を交わした後に、やがて門が見え始めた。

 

「あら? 屋敷の前に、竜車が止まってるわね」

 

エミリアの呟きに、スバルは彼女と同じ方向を見る。そこにあるのは一見すると馬車だが、車体を引いているのは馬ではなく大きなトカゲだ。

 

「へぇ、はぁ、竜車って呼ぶのなアレ。王都の方で結構みたけど。引いてる竜って正式名称はある感じ?」

 

「えっと、あれは地竜って名前なの」

 

「なるほど地竜か」

 

王都にいた時、道路で沢山の竜車が走っていたことを思い出したスバルはエミリアから竜の正式名称を聞いた。そうして竜車の前に到着。

 

「はーっ、間近で見るとでっけーなぁ」

 

近くでよく見たらトカゲというより恐竜みてぇだ、と思いながら地竜を観察するスバル。 子供の頃に動物園に行ってキリンやらカバやらを見た時、思ったよりデカかったことを何となく思い出した。それだけに少し童心に帰って地竜のことを見ている。

 

「これはこれは、上から失礼を」

 

その声は竜車の御者台の方から聞こえてきた。そこに腰掛けているのは白い髪の老人。

 

「お帰りなさいませ。ただいま門の前を失礼させていただいております」

 

そう言いながら老人は地面へと降り立った。

 

「使者は既に屋敷の中に。今はメイザース辺境伯にお目通りしているかと」

 

「使者……ひょっとして?」

 

「ご想像の通り、王選に関してのことでしょう」

 

老人とエミリアのやり取りを聞いて、スバルは顔を上げた。王選という言葉にエミリアは顔を引き締め、スバルは眉を寄せた。

 

「正式には使者からのお話があることと思います。どうぞ、お屋敷へ」

 

「……ありがとう。スバル、行きましょう」

 

エミリアはそのまま歩き出す。スバルも彼女の背中を追うように小走りで歩き出した。

 

 

数分後、スバルは少々拗ねた表情をしていた。

 

何があったかと言えば、例の使者との会談に参加させてもらえなかったのだ。

 

意地悪のつもりじゃないのは充分分かっているし、参加したところで何の役にも立たないのも分かってる。でも、少しは関わりたいと思ってしまう。

 

物理的にも、精神的にも置いてけぼりされてることによる不満。それは澱のように積もってる。

 

 何か自分でもアプローチは出来ないか。そう考えた末

 

「ずっと表で待ってるのも退屈しません? 一服どーっすか?」

 

先程会った老人に、スバルは茶を勧めていた。わざわざ丁寧に、盆の上に乗せて。

 

御者台に腰掛けていた老人は軽く目を見開いてスバルを見る。

 

「これは失礼しました。また上から失礼を。お言葉に甘えましょう。少々、喉が渇いておりましたので」

 

「どもっす。好みが分からないので、最高級の茶にしときました」

 

それから、2人は会話をしばらく交わした。

 

側にいる地竜のこと、スバルが身体に負ってる傷を老人が見抜いたこと、老人の名はヴィルヘルムということ、ちょっとした恋バナ、ヴィルヘルムの素性————。

 

そんなことを話している時

 

「やっほ」

 

「お、ソウゴ」

 

2人の元にソウゴが現れた。

 

「なんか話してるみたいだから気になって来たんだけど……その人は?」

 

「ああ、この人はヴィルヘルムさんって言うんだ」

 

「ご紹介に預かりました、ヴィルヘルムです。今はカルステン家に仕えてる身にございます」

 

「ヴィルヘルムか。俺は常磐ソウゴ。王様になった男。よろしくね」

 

「王……?」

 

「あー! あー! こいつの言うことは気にしないでいただいて……」

 

ソウゴの言葉に訝しげに視線を向けるヴィルヘルムに対し、スバルは苦笑いをしながら誤魔化そうとしている。

 

「……どうやら、時間切れも来たようですな」

 

「え?」

 

スバルはヴィルヘルムの言葉に対し、間抜けに声を出した。

 

ヴィルヘルムは屋敷の方を見てたので、スバルも同じ方を向く。

 

「レムと、誰?」

 

屋敷からレムと、見知らぬ人物が出てきた。その見知らぬ人物が例の使者なのだろうとスバルは考えたが

 

「こーら、美人に見惚れるのは分かるけど、そんなにジッと見たら失礼じゃにゃい」

 

そう言ったのは亜麻色の髪をセミロングで切り揃えている愛らしい顔立ちの少女だ。

 

身長はスバルとほぼ同じぐらい。しかし、線の細さは華奢で、仕草一つ一つに女性らしさというよりあざとさが滲み出ている。

 

亜麻色の髪は白いリボンで飾られ、その頭部には、

 

「こうして目の前にしてみると、猫耳には魔性があるぜ」

 

「うにゃ?」

 

少女の髪と同じ色をした猫耳が震える。こうして猫耳を拝めたのは、スバルにとっては一種の感動モノだった。

 

「ただいまヴィル爺。待たせてごめんネ。退屈だったでしょ?」

 

「いえいえ、こちらの方が老骨の話し相手になってくださったので、思いの外楽しい時間を過ごせました」

 

「みゅー?」

 

少女がスバルの方を見つめる。

 

「あー、君がエミリア様の言ってた男の子ネ」

 

上から下までスバルの身体を観察した後、少女は納得したように手を叩いた。

 

そして、彼女は予想外の行動に。

 

「ヘアッ!?」

 

「はいはい動かにゃい。今調べてるから」

 

変な声を上げるスバルに対し、少女は彼の首に腕を回し身体を抱き寄せる。

 

「はむっ」

 

「ヘエッ!?」

 

更に耳を甘噛みしてきた。悲鳴を上げたスバルに笑いかけ、少女は満足げに抱擁を解く。

 

「何見せられたんだろう」

 

そう思わず溢したのは、ソウゴだった。

 

「可愛い反応。で、聞いてた通り体の水の中の流れが淀んじゃってるネ。どうにかするにも、今日は時間がないから無理かにゃー」

 

「な、何をしやがってくれましたわよ!?」

 

「ちょーっとしたお体チェックと甘噛みのサービス」

 

少女はウィンクしながらそう答える。

 

「それにしても、何にも聞かされてないみたいだね」

 

「んあ? そりゃどういう」

 

「自分の体のこととか、それに関する取引とかの諸々?」

 

「その諸々を聞かせてくれりゃ助かるんだが」

 

「えーどうしよ……んにゃん!」

 

「そこまでにしておくべきでしょうな、フェリス」

 

スバルを揶揄う素振りをしてる少女をヴィルヘルムが嗜めた。

 

「もーヴィル爺ったら真面目すぎぃ」

 

「スバル殿にはお茶の恩義がありますのでな」

 

唇を尖らせて不満そうにしてる少女にヴィルヘルムは表情を変えずに答えた。

 

「……そういえばそこの君はだーれー?」

 

「俺? 俺は常磐ソウゴ、王様になった男だ」

 

「……フゥン?」

 

「何でお前はそれを躊躇いもせず言うのかなー……」

 

ソウゴの名乗りに首を傾げる少女にスバルは呆れてる様子だった。

 

「……ん? トキワ・ソウゴ?」

 

眉を顰めながらソウゴの名前を反芻する少女。

 

「うん? 常磐ソウゴだけど」

 

「……へぇ、はぁ、君かぁ」

 

「? 何?」

 

「いーや、こっちの話ー」

 

ソウゴに対して妙な反応をする少女。ソウゴ本人は軽く首を傾げるだけだ。

 

「そろそろお時間ですな」

 

「ごめんネー。もう今日はお暇。早く愛しのクルシュ様のところに戻らないと」

 

ヴィルヘルムが一礼し、少女はウィンクをする。

 

「クルシュ様?」

 

「覚えておくといいよ。いずれ、この国の王になられるお方の名前だから」

 

少女はスバルに対し、これまでの軽い調子のない真剣味のある声でそう告げた。

 

「ご馳走様でした。ではスバル殿、ご健勝で」

 

ヴィルヘルムは空になったカップをスバルが持つ盆の上に戻す。

 

その後すぐに御台の上に乗り、地竜を操るための手綱を握った。

 

「それじゃ、挨拶もまだだけど、フェリちゃんも忙しいからまたネ」

 

「え? でも、聞きたいことが……!」

 

「それは素直にエミリア様に聞いたほうが良いと思うよ。それじゃあ縁があれば王都で。じゃネ〜」

 

少女は微笑みだけ残して竜車の中へと消えてゆく。

 

「では」

 

口惜しげに手を引いたスバルに、ヴィルヘルムが短く残して手綱を鳴らす。

 

地竜は鳴き声をあげ、車輪が回り始める。そのまま一気に加速して、スバル達の前から遠ざかっていった。

 

 

「使者としてのお役目は果たせましたかな?」

 

「それはもちろん。フェリちゃんがクルシュ様にお願いされたこと、失敗するにゃんてありえないじゃにやい。ヴィル爺ったら心配性なんだからー」

 

竜車にてその会話は交わされている。

 

「それより、フェリちゃんとしてはヴィル爺が待ってる間にあの子とお話してたのが意外だったかなー。ヴィル爺は人と話すのなんて嫌いでしょ?」

 

「それはとんでもない誤解ですよ」

 

「そっかそっか、ごめんネ。話すより斬る方が好きなだけだもんネ」

 

「……それもひどい誤解ですな」

 

揶揄するような言葉にヴィルヘルムはそれ以上の言葉を用いない。反応が少ないことに、少女は不満げに口をぐらせる。

 

「つーまんにゃい。フェリちゃんとのお話は、さっきの男の子とのお話より楽しくないんだ? 特別なこと何にも感じにやかったけど、そんなに気に入ったの? あんなだけど実はすごい強いとか、その才能の片鱗が見えた!」

 

「それはありませんな。彼は素人……毛も生えていない素人です。そして目を引くような才覚もありはしない。凡庸な存在であることに間違いないでしょうな」

 

「それじゃどうして? そういうの、ヴィルが一番嫌いな性質じゃにゃいの」

 

いちいちヴィルヘルムを性格が悪い人間にでも仕立て上げようとしてくる少女。

 

その言葉にヴィルヘルムは、

 

「目が」

 

「目?」

 

「あの少年の目が、少しばかり気になったのです。あれは、死域に踏み込んだことのある目です。寸前で立ち帰り、戻ったものはいくらかいます。ですが……」

 

言葉を切り、ヴィルヘルムは静かに瞑目する。

 

「あれは何度かの死域から舞い戻ったものの目です。そのような存在を私は知りません。故に、興味を惹かれたというところでしょうな」

 

「ふーん、よくわかんにゃい」

 

だが、感嘆するヴィルヘルムの言葉を、少女は無理解の言葉であっさり両断。今度こそ苦笑するヴィルヘルムに、しかし少女は「でも」と言葉を続けた。

 

「今のヴィル爺の言葉がどうであれ、きっと平坦な道は歩けないよね、あの子。『剣鬼』ヴィルヘルム・ヴァン・アストレアに気に入られるなんて、『魔女』に魅入られるのと変わらない不吉なんだから」

 

「……魔女と並べ立てられるとは、誇っていいものなのでしょうか……」

 

少女の言葉にヴィルヘルムは変わらず苦笑いを続ける。

 

「そういえば、もう1人の青年……トキワ・ソウゴと言いましたか。どうやら彼のことを知っているように見えましたが……お知り合いでしたかな?」

 

「いーや初対面だよ。知り合いだったら色々お話してるってー。名前だけは聞いてたんだよネ。何でも、"腸狩り"とやり合えたって話だよ」

 

「……ほう」

 

彼が。と少女の話を聞いたヴィルヘルムが呟く。

 

「まぁでも……正直に言うと、変な子かなー。王様とか名乗られちゃあ第一印象もネー。ヴィル爺はどう思うー?」

 

「……確かに、変わっていることは否めません。ですが……彼のあの目は……」

 

「? どしたの?」

 

ヴィルヘルムが言葉を途切れさせてる様子に少女が問いかけた。

 

「……いえ、何でもありませぬ」

 

「……そっか」

 

気になったが、それ以上深追いするのはやめた方が良いと判断し、納得した素振りを見せる少女。

 

(…………あれは……)

 

ソウゴの目が脳の中で回想される。

 

彼もまた、スバルのように死域から舞い戻った者の目だ。

 

だが、同時に

 

(クルシュ様に—————)

 

一瞬、一瞬だったが。

 

自分が仕えている主と、その目が重なった。




ヴィルヘルムの英語表記調べたらWから始まってた
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