Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O-   作:きゃぷてん

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何事もなかったかのように


2019:ゴートゥーシティー

「王都に行くんだろ? 俺、ついていくから!」

 

客人が帰り、肩の力が抜ける。そんな応接室の空気を、スバルはものの見事に砕いた。

 

「ほーらね?」

 

「そうね……」

 

にやけ面のロズワールに、疲れたようなエミリアの応答が重なる。

 

二人だけでわかり合う態度にスバルが唇を尖らせると、エミリアはため息をこぼした。

 

「あのね、遊びにいくわけじゃないの。大事な呼び出しで……そう、大事なことなの」

 

「わかってるって、王選絡みなんだろ? 国を揺るがす一大事なのは承知してるって。その上でお願い! 連れていって!」

 

拝み倒すようにスバルは手を合わせる。

 

その懇願にエミリアは困った顔で他の面々の顔を見渡すが

 

「あ、わーぁたしのことは気になさらず、御心のまーあま選ばれるがよろしいかと」

 

「この茶葉の香り……まさかラムの秘蔵の……バルスならやりかねない……!」

 

ロズワールはにやけ面で傍観者気取りで、ラムは何かに驚愕していて反応が薄い。

 

「いいじゃないですか、連れて行ってさしあげたら。王都にはスバルくんのお知り合いもいらっしゃるみたいですし、顔を見せて安心させてさしあげないと」

 

これまでならば常識的な反応を期待できたはずのレムは、今やスバルに全面的に味方する立場になっている始末である。

 

「……ソウゴ〜……」

 

「どうするかは2人に任せるけど」

 

エミリアは縋るようにソウゴの方を見たが、こっちの判断に任せるといった感じで、スバルを止めるつもりはないらしい。

 

「……そもそも、スバルは一緒にきてどうするつもりなの? 王選は大事な話し合いをする場所で、私も自分で手いっぱいだからスバルに構ってあげられないわ。それに今回の集まりは、これまでとは本当の意味で違うってお話だし……」

 

「じゃ、なおさらだよ。エミリアたんが王様になれるかどうかの瀬戸際で、そこに関われないとか俺、泣いちゃうから。端っこでいいから関わらしてほしいんだ」

 

「そんなだから連れていけないって言ってるの。スバルを連れていったら、無理しそうな気がするし……」

 

「俺が無理してそれでエミリアたんの助けになるならいいんだよ。無理がしてぇんだ。な? つかそれにさ、戦いに行くわけでもねぇんだろ? 大丈夫だって」

 

「でも……」

 

「はいはい、そこまで。どーぉにも話が進まないから、ちゃかっと片付けよう」

 

手を叩いたのはロズワールだ。

 

「結論、スバルくんは王都についてきたまえ。これ、雇い主としての命令ね」

 

「ロズワール!?」

 

「やたっ! マジサンキューロズっち!」

 

渋っていたエミリアの意見を真っ向から覆すロズワール。その言葉にエミリアは不意を突かれた顔をし、スバルは親指を立てて喜ぶ。

 

「ただし、スバルくんが王都についてくるのはあくまで治療目的。王選云々ってーぇのとはぜーえんぜん別のお話。おわかり?」

 

「ほえ? 治療目的?」

 

「魔獣との戦いの折、君は枯渇したゲートを酷使して魔法を使った。肉体の負傷は癒えても、その治癒はまた別の問題だ。君自身、心当たりはあるんじゃーあないかね」

 

「……そんな目に見えないもんで調子が悪いって言われてもな〜……」

 

「スバル。体の中を循環するマナは生き物の生命線なの。その流れが滞るってことは、命の循環そのものに支障をきたすっていうことなのよ」

 

体の怪我とは別に、手足の重さなどの後遺症はヴィルヘルムにも会話の中で指摘された。

見抜かれていたことにバツが悪い顔をするスバルだが、エミリアの懇願は振り切れない。

 

「俺の体のピンチはわかった。で、それが王都で治療って話とどう繋がる?」

 

「君の治療には最高峰の治癒術師の力が必要だ。スバルくんは使者には会ったかな?」

 

「あのネコミミっ子のことか」

 

「あの子が、王都でもとびっきり優秀な水の魔法の使い手だーあよ。その力を借りれば、君の体の不調を回復することも可能だろう。癖のある子だから、協力を取り付けるのにはエミリア様も苦労されたもんなんだからねーえ」

 

「ちょっと、ロズワール! それは……」

 

意図的に口を滑らせた感のあるロズワールは、エミリアの憤慨にも素知らぬ顔だ。

 

「……エミリアたん、マジで? 俺のために? じゃ、エミリアたんも俺の王都行きに賛成になるんじゃ……」

 

「……スバルのことだから調子に乗って無理するかもって、さっきも言ったでしょ? スバルはやんちゃ坊主な所もあるし」

 

「やんちゃ坊主ってきょうび聞かねぇな……」

 

小声で呟きながら首をひねるスバルに、エミリアが悔し紛れに舌を出して会議終了。

 

「そーぉれじゃ、話はまとまったね。スバルくんも王都行きに同行。諸々の準備に一日を当てて、明後日の朝には出発。それでいーい?」

 

「わかったわ」「意義なーし」「承知しました、ロズワール様」「はーい」

 

ロズワールの締めの言葉に、室内にいた4人がそれぞれの応答。

 

そうして、ロズワール邸の面々の王都行きの方針は定まったのだった。

 

 

「……お前も行くんだよな、何気に」

 

「まあね〜、色々と」

 

2日後の早朝。

 

屋敷の門前にスバルとソウゴがいた。

 

今回の王都行きについて、ソウゴも同行することにスバルが言及する。

 

「俺もさ、せっかくならラインハルトとかに会いたいし」

 

「ほーん……そっか。まぁそうだよな」

 

まぁあの時から時間も経ってるし、顔も合わせたくはなるだろうと、スバルは思った。

 

「スバル、ソウゴ、早く乗りましょ!」

 

「あ、おう!」

 

スバルとソウゴの目の前にある竜車の客室からエミリアが顔を出す。彼女に促された2人は中へ乗り込んだ。

 

 

時間が経ち、王都へと到着した。

 

が、その道中は穏やかなものではなかった。

 

スバルが少し身体を乗り出しすぎたことで、竜車の外へ投げ出されてしまったのである。

 

 右手首に命綱をつけてたおかげで地面への激突は免れてレムに助けてもらったものの、ロズワールの膝枕で目覚めることにはなったが。

 

「へへっ、死ぬかと思った」

 

「笑いごとじゃないでしょ、もう」

 

先の出来事を回想し乾いた笑いを浮かべるスバルにエミリアは軽く怒ってる様子。

 

「で、今はどこ行ってるの?」

 

二人に同行してるソウゴが尋ねる。

 

「今はちょーっと、とあるお店に用があって……お、ここだ」

 

スバルの視線の先にあるのは、どうやら果物屋のようだった。看板にはイ文字で『カドモン』と書かれている。

 

そこで店番をしているのは顔に刀傷を負った強面の男だ。とても堅気の人間には見えない。

 

「どうも〜、儲かってる?」

 

「あ? 兄ちゃんは……ああ、だいぶ前に来てた無一文の坊主じゃねぇか。買い物もしねぇで帰った冷やかしの」

 

「言い方! だがしかーし、今の俺は一文なしじゃあないぜ! なんせ職を手にしてるからな! それに何も買えなかったのは俺も気になってたし?」

 

「なるほどな。そりゃ義理堅いことじゃねぇか、気に入ったぜ」

 

気前よく笑った男は店の奥に木箱を探しに行った。

 

「誰?」

 

「俺が初めてここに来た時の第一接触者ってとこだな。せっかくだから挨拶しに来たかったんだ」

 

男と完全に初対面のソウゴに対してスバルが説明する。

 

そのうち、男が戻ってくると木箱をカウンターに置いた。その中には赤くて丸い瑞々しい果実がある。

 

「ほれ、リンガだ。何個買うんだ? 今は一個で銅貨二枚だ」

 

「ここはでっかく、10個注文させていただきましょう! で、リンガ一個で銅貨二枚ってことは……10個だと銀貨二枚で良い感じ?」

 

「おいおい、今の貨幣の交換比率知らねぇのかよ。銀貨は今、一枚で銅貨九枚分だ」

 

「じゃあ銀貨二枚と銅貨二枚だな。ほい」

 

袋から貨幣を取り出して男に手渡す。それを見た男は黙った後、肩をすくめてため息を吐く。

 

「兄ちゃん、もちっと他人は疑った方が良いぞ。通貨の交換比率の変動は市場の入り口、そこの立て看板に書いてあるんだ。それも見ないでいたら、タチの悪い商人に食い物にされるぞ」

 

「わざわざそう言ってくれる辺り、おっちゃん超良い人だよなぁ」

 

王都のような大きい都市となれば悪意ある人間もいるだろう。そんな中でわざわざ忠告してくれる男にスバルはヘラヘラと笑う。

 

「なに、わざわざ買えなかったこと気にして来てくれた奴が、後で素寒貧にされるなんて夢見が悪いだけだ」

 

「男のツンデレ誰得っすね!」

 

「とっととこれ持ってけ! 毎度あり!」

 

そのままリンガが入った袋を受け取り、スバル達は店から離れていくことになった。

 

 

「一つおまけしてくれるなんて、やっぱあのおっちゃん良い人だわ」

 

リンガを手の中で弄った後、袋の中にしまうスバル。

 

どうやら果物屋の店主はリンガ一つをオマケにつけていたらしい。その人の良さにスバルは心地よい気分で笑った。

 

現在、一同が向かっているのは衛兵の詰め所だった。エミリア曰く、そこに行けばラインハルトと連絡を取れるらしい。

 

「にしてもエミリアたん、詰め所から連絡ってどうすんの? なんか遠くの人とやり取りできる道具とかある感じ?」

 

「んー、対話鏡なら置いてあると思うわ」

 

「対話鏡?」

 

「対になってる鏡同士で、映した相手と会話が出来るミーティアなの。数が多いから色んなところで利用されてるらしいわ」

 

「電話の異世界版みたいな感じか。鏡って部分は魔法っぽいけど。いずれにせよ、それでラインハルトと話せたら良いな。

 そういえばエミリアたん、明日からあるっていう王選の話なんだけど……」

 

スバルがふと王選についての話題を切り出そうとする。今のエミリアは緊張や警戒も見られないし、上手いこと交渉できるかも、と思ったからだ。

 

「……スバル、何回も言ってるでしょう。ここに連れてきたのは色んな約束を守らせるのと身体の治療のため。私のことは気にしなくていいから」

 

しかし、表情を消してその目に憂いを宿したエミリアの態度ははっきりとしたもの。スバルの目論見は一瞬で打ち砕かれた。

 

「気にしないでって……俺はさ! エミリアの力になりたいんだよ! 俺に出来ることがあるなら、どうにかしたいんだ」

 

こうなればと、素直な気持ちを打ち明けるスバル。ゴリ押しすれば行けるかもという打算もあるが、尽くすつもりでいるという気持ちは本物だ。

 

「……どうして? どうしてスバルはそんなにしようとしてくれるの?」

 

「……それは……ッ」

 

スバルの献身の態度にエミリアは困惑しているようだった。

 

それに答えようにも、スバルは言葉を詰まらせる。

 

「……ほら! 俺達、仲間だしさ! それに俺、正直これまであんま役に立ってないし? やっぱちゃんと、何か貢献できることはしなきゃだなーって思ってるしさ」

 

逃げた。仲間だからだとか、自分も貢献すべきとか、ありきたりな理由に逃げてしまった。

 

それに気づいてるのか、そうではないのか不明だが、エミリアは釈然としない態度でいる。

 

「……その気持ちはすごーく嬉しいわ、ありがとう。でも私は、本当に大丈夫だから」

 

しかしそれを詮索しようとは思わなかったらしく、スバルの言葉への礼と自分の意見だけをきっぱりと伝えた。

 

「行きましょう、早くしないと日が暮れちゃうわ」

 

そのまま足音を立てながら再び歩き出したエミリア。

 

「…………ああ」

 

スバルは短く返事して、彼女に着いて行く。

 

「………………」

 

さっきまでのやり取りを黙って見ていたソウゴは、無表情のまま歩き出した。

 

(俺にも力がありゃあなって、そう思うよ)

 

エミリアの背中を見つめながら、スバルは思う。

 

自分もソウゴやレムのように戦うことが出来れば、エミリアから頼りにしてもらえる筈なのにと、切実に思う。

 

自身にとって一番の恩人である少女に、何もしてやれないむず痒さはもどかしい。

 

そうだ。彼女は、自分が最初にこの世界に来て、己の心を救ってくれたのだ。

 

今のでエミリアが己に対して何か気持ちのズレのような、形容しにくいものを抱いてしまっていないか。そんな不安が生まれる。

 

エミリアに限ってそれはない————と、思いたいところではあるが。

 

今思えば、己は彼女のことをよく知っているのだろうか。

 

ナツキ・スバルの知るエミリアはハーフエルフで、ルグニカ王国の王候補という立場にあり、今は支援者であるロズワールの保護下にあるということ。

 

素直で純朴で強がりでお人好しで、他人のために損することをいとわない性格で、お姉さんぶるわりには抜けているところが多くて、おまけに騙されやすそうでもある。

 

スバルが知るのは、彼女のそんな上っ面な部分のことばかり。

 

彼女の内面や内情、それどころか王を目指す経緯や理由も、知ろうとしてこなかった。

 

考えみれば色々と論外である。上面だけで中身を知ろうとしてないとは。

 

澱のように積み重なる己の浅薄への嫌悪。

 

そうしながら歩いているうちに

 

「ついたわ、ここよ」

 

立ち止まったエミリアが目の前にある建物を見上げる。

 

石造の堅牢で無骨な建物。衛兵の詰め所である。

 

「ここが王都を見回る衛兵の詰め所。貴族街に出入りする人達の身分を確かめたりとか、そんなこともするみたい」

 

「検問とか関所の役割もあるわけか。それでこんな所に」

 

「なんか……如何にもって感じする」

 

エミリアからの解説にうんうんとスバルは頷き、建物の外見を見て感想を漏らすソウゴ。

 

「おや、これは珍しいところで」

 

詰め所の扉が開かれ、そこから1人の青年が現れる。

 

「お久しぶりです、エミリア様。その後、お変わりはありませんか?」

 

青年は恭しくエミリアに対し一例。

 

「ええ、ありがとう。特に変わりないわ。ユリウスも、元気そうで」

 

「覚えていただいて光栄です。エミリア様も、その美しさは増すばかりで」

 

ユリウスと呼ばれた青年は穏和な笑みを浮かべながら、エミリアの容貌を称賛。

 

彼は紫色の髪を丁寧にセットしているようで、身長は大体180センチ前後。

 

煌びやかな装飾と竜の意匠がなされた制服を纏い、腰にはレイピア風の細い剣を携えていた。

 

体つきは細身であり、しなやかと表現すべきところ。琥珀色の瞳も太陽に照らされ、美しく輝く。

 

「でも近衛の貴方が詰め所にいるなんて、その方が珍しいんじゃない?」

 

「兵士たちへの慰労と街の視察を兼ねて、というところです。友人の頼みで足を運んだのですが、たまには友誼を優先してみるのも良いかもしれません。こうして可憐な花のお目にかかることができたのですから」

 

慣れた仕草でエミリアの手を取り、その場に跪くユリウス。

 

それから彼は息つく暇もなく、彼女の手の甲にそっと口づける。

 

呆然と、その一連の流れを見送ってしまったスバル。一拍遅れて感情が沸騰し、その顔にはワナワナと、明らかに怒りの表情が宿っていた。

 

「ありがとう、ユリウス。それからいきなりで悪いんだけど、ちょっと用事があって、お城の方に取り次いでもらいたいの」

 

「ああ、それで詰め所を訪れたのですね。……用と言うのは、そちらの彼と関係が?」

 

エミリアの申し出を聞き、ユリウスが声の調子を落としてスバルを見やる。

 

その視線の見下した感が気に入らず、スバルはガン付けのつもりで睨みつけた。

 

「……服装に見合わない品性と態度だ。初対面の相手に見せる姿ではないな」

 

「ご忠告感謝だ。俺の方からも一個だけ忠告してやる。その格好でカレーうどん食べるのは、汁が跳ねたら目立つからやめた方がいいぜ」

 

「それはわざわざありがとう。"かれーうどん"とはなにか分からないが……それを食べる機会があれば、気にかけることにしよう」

 

決して友好的ではない笑みを交換し、スバルは馬の合わない相手だと理解した。

 

そこで次に、ソウゴがユリウスに声をかける。

 

「アンタ、ラインハルトとは知り合いなの? 服が一緒みたいだけど」

 

「ああ、彼とは同じ騎士団にいるからね。仲間とでも言うべきか。そういう君も、彼の友人かな?」

 

「うーん、大分前に知り合ったばかりって感じかなぁ。それ以来全然会えてないから、ここに来たって感じなんだけど」

 

「なるほど、それが用件というわけか」

 

ソウゴの話を聞いて納得したように頷いたユリウス。

 

「それならば、対話鏡へ。本来はこのような雑多な場所へ、エミリア様をお連れするのは心苦しいのですが」

 

「そういうことは気にしなくて大丈夫だから、お願い」

 

「では、中へ」

 

ユリウスが先導するように中へ戻ろうとし、スバルも足を踏み出す。

 

だが、その間に立つエミリアが道を遮るようにして振り返った。

 

「スバルは待ってて」

 

「ほえ?」

 

呆気に取られるスバルに、エミリアはその長い感を農わせて目を伏せる。

 

「本当は来てほしいけど、ユリウスがいい顔をしないと思うから待ってて」

 

「何それ。俺よりあいつのご機嫌伺いすんのかよ。あんな気障ったらしいヤローの」

 

「そうじゃないの。ユリウスの機嫌を損ねるからって話じゃなくて、きっとスバルが嫌な思いをするから。お願い、わかって」

 

「嫌な思いならすでに十分したんですけど。あの野郎、気安くエミリアたんの可愛い手をべろべろ舐め回しやがって……!」

 

「あまり長引かせないようにして戻るから、いい子で待ってて。お願いよ」

 

優しい言い方ではあったが、拒絶の色も多少はあった。

 

「……ソウゴ、良かったらスバルと一緒に居てくれない? 心配だから、一応」

 

「あ、大丈夫だよ全然。じゃあその辺散歩でもしとくよ」

 

「ん、分かったわ。それじゃあお願い」

 

ソウゴに任せた後、ユリウスと共に扉の中へ入ってゆくエミリア。

 

それを見ていたスバルは口をつぐむしかなかった。

 

「……俺、超かっこ悪い」

 

苦虫を噛み潰した顔で溢した。

 

「まぁまぁ、元気出しなって、スバル」

 

そんな彼の肩を叩き励ますソウゴ。その励ましを無言で受け取ったスバルは落としていた面を上げる。

 

「ん?」

 

スバルはふと、視界の端を掠めた違和感に眉を寄せた。

 

「おい、あれ!」

 

「んー?」

 

ソウゴはスバルが指差した方向を見る。

 

そこにはドレスの少女が、みすぼらしい格好の男たちに路地へ連れ込まれる光景が。

 

その光景に、スバルは眉を顰め、余り口には出しにくい嫌な想像をした。

 

「……ヤバそうな雰囲気しかしねぇんだけど」

 

「ちょっと見に行くよ」

 

「え? おい!」

 

スタスタと歩き出すソウゴを少し慌てて追いかけるスバル。

 

「てめえ、クソアマ!ふざけてんじゃねえぞ!」

 

そうして路地に入ってすぐ聞こえてきた怒声に、スバルは自分の見たものが間違っていなかったのだと確言した。

 

「ふざけてんなよ、女ァ! その結麗な顔を吹っ飛ばしてやろうか、ああ!?」

 

「やいやい騒ぐでない、凡愚。品性の足りん輩は因縁の付け方にも品がないの」

 

言い争う声。細い路地で一人の少女が、逃げ道を塞がれて三人の男に囲まれていた。

 

スバルはその少女の容姿が思わず目に焼きついた。

 

色めく橙色の髪は太陽を映したように輝き、バレッタで一つにまとめられて背中に流されている。赤い真紅のドレスが、少女の美しさを印象付けていた。

 

首元や耳、手指を飾る装飾品の数々は素人目にも一級品とわかるものばかり。

 

その華々しい装飾品の数々に、一切見劣りしない飛び抜けた容姿。

 

挑戦的なつり目がちの赤い瞳。薄い挑色の唇に、雪のように白い肌が映える。

 

そんな少女を取り囲み、男たちは猛然と荒々しい声を上げている。

 

しかし少女の方は腕を組み、人並み外れて豊かな胸を持ち上げるようにして悠然と構えている。

 

その仕草が男たちのさらなる反感を買っているようで、見てはいられない。

 

「ねぇ、やめなよ」

 

そんな時、スバルの前にいるソウゴが声を上げた。その声に3人組の男が振り返る。

 

「なんだぁ、テメェ」

 

その中の1人……髪色が派手な水色の男がソウゴを睨んだ。

 

(あ……こいつら、トンチンカンじゃねぇか)

 

スバルは3人組を見て思い出した。彼らは最初に王都に来た時、自分に絡んできた者達だ。トンチンカンというのはスバルが3人のことを勝手にそう呼んでるだけである。

 

「女の前だからってカッコつけてんじゃねぇぞ、アァ? クソガキ」

 

「だったらアンタ達がその人に絡むのやめなよ」

 

「舐めてやがんなぁオイ。そんなテメェに現実を教えてや————ごっ!?」

 

水髪の男が殴りかかるより先に、ソウゴの拳が飛ぶのが速かった。男の顔は思い切り歪み、それを見たスバルが口を尖らせて驚く。

 

「テメェ!」

 

残りの2人がソウゴに向かって駆け出した。

 

拳を避けた後、まずは小柄な男の顔を掴み、地面に叩きつける。

 

「え—————ぐ!?」

 

そのまま大柄の男に対し、足払い。浮遊感を感じながら地面に倒れた後、背中に強い衝撃を感じた。ソウゴが肘で打ったのだ。

 

「このやろ……! 調子乗ってんじゃねぇぞォ!」

 

さっきの水髪の男がナイフを出して、突きつける。これで怯えるはず————口角を吊り上げてそう疑わなかった男だが、

 

「来なよ」

 

ナイフを見ても臆さず、目の前の男を無表情で見つめるソウゴ。男の目論見は、呆気なく崩された。

 

手を下ろし、こちらを見ている。それだけなのに、威圧感があった。

 

「ッ……! うおおおお!」

 

ソウゴの佇まいに、逆に男が臆してしまった。どうにかなるビジョンが一つも浮かばない。

 

その怯えを打ち消すように、勢いのままに突進。だがそれも受け流され、逆に手刀でナイフを地面に叩き落とされた。

 

「こっ」

 

そのまま腹に膝蹴りを喰らわされる。ソウゴが離れた後、身体を震わせながら男は蹲った。

 

「手加減はしたけど、大丈夫そう?」

 

一息吐いた後、ソウゴは男達を見下ろしながら告げた。

 

「ッ……! お、おい! 行くぞ!」

 

3人組は立ち上がり、そのままスバルの横を抜けて一目散に逃げてった。

 

「おお……変身しなくても普通につえぇ……」

 

見事なまでに3人を卸していったソウゴの姿を見て思わず感嘆の声を漏らしたスバル。

 

「ねぇ」

 

「なんじゃ、物乞いか? くれてやるようなものはないぞ」

 

「おいおい、助けたのにその態度はねぇだろうよ」

 

ソウゴが安否を確認しようとした時、目の前の少女の言葉を聞いたスバルは突っかかる。

 

「助けた? ……ああ、さっきのは妾を助けるためか。気づかなかった」

 

「いや嘘だろ? どうなのよそれは」

 

「別に貴様らがおらずとも妾には何の問題もなかった。どうにでもなった問題をたまたまどうにかしただけで、己の手柄のように誇るなど滑稽でしかないわ」

 

「助けられた後にそりゃ後出しジャンケンな発言だぜ。助けなくても自分は強いから平気ってか?」

 

「違う、もっと単純なことよ。この世界は妾の都合の良いように出来ておる。故に妾に不利益は起こらん。妾が救われたのは妾のおかげである。つまりは妾の手柄じゃ。それを横取りでもする気か?」

 

(え、こわ)

 

自分中心すぎて心の中で思わず溢したスバル。美少女の正体は大分面倒な輩だったと分かり、完全に気分は萎えた。

 

側にいるソウゴの反応を見るが、特に何かしらの反応もなく、少女の言葉を聞いてるだけだった。

 

まぁこういうのは相手にしない方がセオリーだよな……とスバルが思ってた時

 

「先の喧嘩、割って入る必要も無かったようじゃな」

 

「ん? おお、ロム爺か!?」

 

路地の奥から1人の大男が現れる。それはかつて盗品蔵で出会ったロム爺という男だった。

 

「誰じゃこの爺は」

 

「あー、こいつはロム爺。貧民街の裏の顔ってとこかな」

 

「ロム爺、怪我は大丈夫なの?」

 

「あれから時間も経っている。もう平気じゃ、痛みもせんわい」

 

少女に対しスバルが紹介してる間、ソウゴはロム爺に傷の安否を聞いていた。

 

「ところで、お前さんら……フェルトがどこに行ったかは知らんか?」

 

「ん? 聞いてねーの? ラインハルトの奴が連れてったって話だけど」

 

「ラインハルト……あの剣聖の? 何故じゃ?」

 

「そういえば気絶してたんだったな。話分かんなくて当然か」

 

「ラインハルトに話は聞こうとしたけど、質問に答えることは出来ないって言ってたよ」

 

ロム爺からの問いにスバルとソウゴがそれぞれ答える。

 

「そうか……ふむ、よりによってアストレア家か」

 

「どしたん?」

 

「いや、こっちの話じゃ」

 

「そっか。あ、ラインハルトと話せるかもだから、なんかあったら教えるぜ」

 

「そうか、礼を言っとこう。ああ、儂と連絡を取るなら、商い通りに"カドモン"って店がある。そこの強面に儂の名を出せば話がつくぞ。それじゃあ、儂は行かせてもらうぞ」

 

「おう、分かった。じゃなー」

 

路地の入り口から去っていくロム爺に手を振って見送ったスバル。

 

「……と言う訳で、俺達もそろそろ」

 

「待つがいい」

 

スバルを呼び止めたのは少女だった。

 

「えーっと、なんすか?」

 

「その袋の中身はなんじゃ、見せよ」

 

袋を下ろすように顎で示す少女にスバルは反感を持つが、変に逆らうのも良くないと思い袋の口を開けて見せる。

 

「見ても分からんな。この果実はなんじゃ」

 

「どう見てもリンガだろ。見たことねぇの?」

 

「嘘をつけ。リンガは白い実の果実じゃ。このような赤い色ではない」

 

「いや、剥いたら白いけど。剥く前はみんなこんなんだろ?」

 

言い返すスバルに、少女は表情から色を消していた。

 

「もしかして、皮剥く前のリンガ見たことねーの?」

 

「ふむ、確かに食卓に並んだものしか見たことはないな。分かった、寄越すが良い」

 

「ええ……ほいよ」

 

スバルは一つくらいなら、と渋々とリンガを渡す。

 

少女はリンガを受け取った後、握り心地を確かめるように軽く掌で回した。

 

と、そのリンガ目掛けて少女の手刀により縦、横と四つにリンガが寸断された。

 

「ひょえ」

 

それを見たスバルが間抜けた声を漏らしてる間、少女は指先についた果汁を舌で舐め取り、白い断面を満足げに見やる。

 

「甘酸っぱい……この味は確かにリンガの味じゃ。命拾いしたな」

 

「命拾いて……いや、もういい。とりあえず、ご満足いただけましたかね?」

 

「面白い。残りのそれも全部寄越すがよい。一つ残らず割って確かめる」

 

「傍若無人すぎない?」

 

少女の発言に冷静に突っ込んだ後、眉を顰める。

 

「どうして全部お前にやらなきゃなんねーんだよ。折角買ったってのによ。それにこれは男と男の絆のリンガで……」

 

「既言はよい。ならばこうせよ」

 

少女はスバルの抱えるリンガの袋を指差すと、その唇を横に裂いて機然と笑った。

 

「賭け、でどうじゃ?」

 

「賭けぇ?」

 

「そう、簡単な賭けじゃ。そうさな。投げた硬貨の表裏を当てるような簡単な賭けでよい。一回につき、リンガ一個を賭ける。どうじゃ?」

 

コイントスを提案されて、しかしスバルは彼女の提案を鼻で笑う。

 

「お前の言い分はメチャクチャだ。そもそも前提からしておかしい。その賭けには俺のメリットがねぇよ」

 

「もちろん、貴様への見返りも用意する。そうじゃな……」

 

考え込むように唇に触れる少女。それから彼女は艶めかしい流し目をスバルに送り、 腕を組んでその豊かな胸を持ち上げてみせる。

 

「貴様が賭けに勝った場合、妾の胸を触らせてやろう。それでどうじゃ?」

 

自らの体を賭けのチップにする発言に、スバルは長い息を吐いて首を振る。

 

安易に賭け事に己を差し出す考え方。先のことを考えていないとしか思えない破滅的な思考……ギャンブルで身を持ち崩す人間の性質は常にそうだ。

 

少女は、男と見れば誰もが色香に惑うとでも思っているのだろう。嘆かわしい話であり、それは悲しい考え方だとも思う。

 

「もっと自分を大事にしろよバカ言いやがって。そんな色香に俺が惑うとでも……」

 

 

「表!」「裏じゃな」

 

「表じゃ」「表っす……」

 

「裏ッ!」「表じゃ」

 

「表」「当たりっす……」

 

「今度こそ裏ッ!」「外れじゃな」

 

「裏じゃ」「裏でしたわ」

 

「表に賭ける!」「裏」

 

「表の方じゃ」「……っすね」

 

「表かと思ったけど裏だ!」「表にしておけば良かったな」

 

「表」「はい……」

 

 

ナツキ・スバル、敗北————。

 

「身ぐるみ剥がされちまった……もうお婿に行けない……」

 

「服は剥がされてないから大丈夫だよ。リンガの皮は剥がされるかもだけど」

 

「上手いこと言おうとすな、それで今の悲しみは剥がれんわ」

 

リンガを全て奪われて顔を覆いしゃがみ込むスバルに励ましになってない励ましの言葉をかけた。

 

賭けに全勝ちした少女の手には、リンガ全部が入ってる袋が。

 

「言ったじゃろう。この世界は妾の都合の良いように出来とると。結果はこれじゃ。リンガは全て妾のものとなった」

 

「ぐぬぬ……折角のリンガが……!」

 

勝ち誇った顔で見下ろしてくる少女にスバルが歯を食いしばり悔しそうにしていた。

 

「他に何か、妾の興味をそそるものがあればそれを賭けても良いが……あるようには見えんな」

 

「待った」

 

「む?」

 

待ったをかけたのはソウゴだった。少女は訝しげに見る。

 

「賭けるものならある」

 

「ほう」

 

「で、それとリンガ全部を賭けて勝負するのはどう?」

 

「ふむ……まずは賭けるものを見せよ。話はそれからじゃ」

 

「はい、これ」

 

ソウゴは懐からあるものを取り出し、それを見せた。

 

それを見たスバルは驚いた。何せそれは、ジオウライドウォッチだったからだ。

 

「ちょ、待てよソウゴ! それは絶対賭けちゃダメなやつだろ!? 一番大事なもんでしょーが!?」

 

「ふむ……それが何かは知らんが、そこの凡夫の反応とそれから感じる力を見る限り……ミーティアといった所か?」

 

「まぁ大体そんな感じだよ。で、これなら大丈夫そう?」

 

「うむ、良いだろう。今からそれが妾に手に渡るのが楽しみじゃ」

 

「おいソウゴ! 話進めてるけどダメだって! お前負けたら……」

 

「大丈夫」

 

引き止めるスバルに対し、ソウゴは振り返らず言う。

 

「勝つよ」

 

その一言を聞いて、スバルは口を閉じた。何処からその自信が来るのか彼には分からない。それでも何故か、賭けに勝てるかもしれないと、自然に思えた。

 

「改めて。俺が勝ったらさっきのリンガを全部返す。アンタが勝ったらこれを渡す。それで良い?」

 

「構わぬ。にしても、変わっておるな。胸ではなくリンガの方を取るとは」

 

「スバルが折角買ったリンガだしね。全負けしちゃった訳だし、ここで取り戻そうかなって」

 

「ふっ……損な選択をするなぁ」

 

「あ。コインはアンタがやって良いよ」

 

そう言いながらコインを投げ渡すソウゴをそれを少女は受け止めた。

 

「ほう? 自身の運を妾に差し出すということか。まぁ良いじゃろう」

 

少女は掌でコインを弄った後、親指で弾いてた。

 

その間に、ソウゴは目を閉じる。

 

宙に舞ったコインはそのまま落ち、手の甲で受け止められた。

 

「表」

 

告げられる。

 

コインを押さえてる手を少女が挙げ、どちらかが明かされる。

 

「あ…………」

 

「——————」

 

コインは、表だった。

 

「俺の勝ちみたい」

 

目を閉じてるソウゴは、太陽に照らされていた。

 

 

「……お前、なんかした?」

 

口を開けていたスバルが尋ねた。

 

さっきまで全戦全敗だった。それはひとえに少女の豪運を証明していた。

 

それを一回で打ち破るのを見て、思わず何かタネがあるのではと聞いてしまう。

 

「別にー。運が良かっただけだよ。あ、リンガ」

 

「……ああ、そうじゃったな。賭けは貴様の勝ちじゃ。ほれ」

 

「ん、ありがと」

 

少女からリンガが入った袋を貰い受けるソウゴ。

 

「ほい」

 

「え? あ、サンキュ」

 

そのままリンガの袋はスバルの方に手渡された。

 

その間に、少女はソウゴの方を見ている。

 

「……ふむ。稀といえど、妾に勝ったのじゃ。己の豪運を誇りに思うが良い」

 

「なんで負けたのにそんな上から目線なのかなぁー」

 

しかもわざわざ稀って。何処までも己を曲げない女だなと、最早呆れを通り越して感心しかけていた時、

 

「やっと見つけた」

 

路地の入り口からそんな声がした。

 

スバルが視線を向けると、そこにはフードを被るエミリアがいる。

 

「あ、エミリ……」

 

顔を明るくして名を呼ぼうとした時、エミリアの隣に男がいることに気づいた。

 

「お、お、お前! 俺がいねー間にエミリアたんをナンパしやがってんのか!?」

 

「おいおい、出会い頭の一言がそれとか礼儀がなってねーぞ。嬢ちゃんよ、お前の連れ大丈夫か?」

 

男の声はくぐもったものだった。その理由は、フルフェイス型の兜で頭を包んでいるからだ。

 

「ファッションセンスがアレなやつに大丈夫かって言われたくはねーな」

 

「目上に対する口の利き方がなってねーぞー? 俺がイケてる気のいいオッサンだから許してやっけどよ、相手によっちゃ打首モンだぜ?」

 

ひえ……と小さく悲鳴を漏らすスバルに男は楽しげに首筋を叩く。

 

男はマスクを被ってはいるが、そこから下は安っぽいマントに麻布で出来た山賊のような上着と下穿き。足元は足袋にサンダルのようなものを履いていて、腰裏には青龍刀のような剣を携えている。

 

「ふむ。妾の行く先で待つとは中々気が回る。殊勝な心がけじゃな、アル」

 

「偶然の偶然だが……ま、いいや。そうだ、その通りだぜ」

 

「お前の連れかーい」

 

アルと呼ばれた男はどうやら少女の連れだったらしい。スバルが小声で突っ込んだ。

 

「で、エミリアたん。こいつに何か……」

 

変なことはされていか。と、聞こうとしたが、

 

「?」

 

「…………」

 

エミリアが、人目を避けるように近くにいたスバルの後ろに隠れていた。

 

その様子にスバルは怪訝に眉を寄せ、ソウゴは首だけ動かして見た。

 

スバルはエミリアが少女の方を見ているのに気づいた。一瞬目を向けるが、相手の方はエミリアに反応は見せてない。

 

「お互い合流出来たみたいだしさ、お開きってことで」

 

「……おお、そうだな。それが良いと思う」

 

ソウゴの提案にスバルはうんうんと頷きながら便乗する。エミリアは何故か隠れようとしてるし、この提案に乗るのが良いと思った。もしかしたらソウゴも、エミリアの様子を察したのかもと考察もする。

 

「あ、ついでに餞別だ。ほれよ」

 

スバルは少女に対して二つのリンガを投げ渡す。そのまま相手の腕に収まる。

 

「なんだかんだ縁も出来た訳だしな。絆のリンガってやつだ。今度は面倒なやつらにふらふらついてくなよ」

 

「妾は別にそのような理由でついていってはおらんがのう」

 

「……どんな理由で?」

 

「その貧乏臭い面と格好で生きていて、申し訳なくならんのかと聞いたら逆上じゃ」

 

「ちょっとやりすぎたの、あの3人に謝った方が良いかなぁ」

 

「また会ったらそうした方が良いかもしれねぇ」

 

ソウゴの言葉に返事しながら、スバルはトンチンカン達に同情した。

 

 

「あのさ、エミリアたん。あいつらいなくなったけど、そろそろ話せる?」

 

尊大な少女とその保護者と別れ、しばらく歩いたところで一同は立ち止まっていた。

 

「2人とも、さっきの女の子とは」

 

沈黙を経て、顔を上げたエミリアが口にしたのは、予想通り、彼女がその視線から隠れようとしていた少女のことだった。

 

「その、さっきの女の子とは……どこで、どうして……」

 

彼女の表情は真剣で、強張る表情に思わずスバルは眉を顰め口を結ぶ。

 

「あの人が路地の方に連れ込まれてるのを見かけてさ。見に行ったら男の人達に絡まれてたから、止めに入ったんだよ」

 

「……そうそう、そうなんだよ。まぁアイツも非はあったみたいだけど……ソウゴが軽く男共をボコった後に、色々駄弁ってた……みたいな?」

 

ソウゴの説明に、スバルも補足するように説明した。

 

「……そう、なんだ……」

 

「……エミリアたん、アイツと知り合いな感じ?」

 

視線を下を向けるエミリアに、スバルは尋ねる。

 

「知り合い……ではないんだけど、ちょっとね」

 

「……そっか」

 

そのまま深くは追求せず、帰路に着いた。




知人と相談してオリキャラ展開なしにしました
まだ2話だけで良かったな
別作品作ってそこで出すことにしたので、いつか彼らとまた会える日を
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