Re:ゼロから始める異世界生活-Story of Zi-O-   作:きゃぷてん

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2019:ドロボーのゆくさき

うん、ヨシ!

この人、勢いで誘っちゃったけど、どうしよう?

どう考えてもヨシ!じゃねえだろ、おい。何を見てヨシ!って言ったんですか?

もうあれだ。この人がチート能力貰った俺tueeeee系の人である事を祈るしかない。

何せ、盗品蔵には、『アイツ』が、来るんだ。

アイツに一般人が束になろうが、多分、皆殺しになる未来しか待ってないだろう。

フェルトは明け方の夕暮れに来るし、そん時に、アイツも一緒に盗品蔵に来る。

……うん、ほとんど詰みゲー状態。交渉成功して、ダッシュで帰ればどうにかなるかもしれないが……万一、力ずくで取り返すなんてことがあればそりゃもう。

頼む、どうにかSSR一般人であってくれ。いやSSR一般人って、何?ソシャゲのガチャかよ。というか仮にチート能力持ってたら、それは一般人と呼んでいいものなのか。

いや、そんな事はどうでもいい。とにかくどうか神様仏様、俺にくれって我儘な事は言わないからどうかこの人にチート能力を授けてくださいませんか。いや、マジで。

……せめて、もしもあの人がいてダメだったとしても、せめてあの子は助けなくては。

 

「……よし」

 

と、頭の中で思考していたナツキ・スバルは、何かを決意したように呟く。

 

「な、なあ、サテラ!」

 

スバルは、サテラを呼ぶ。名を呼ばれたサテラは振り返る。

 

「何?スバル」

 

「いやぁ実はさ、サテラには、やっぱり此処で待ってて欲しいんだけど」

 

「えぇ!?いきなり何言ってるの、スバル!」

 

「いやまあ落ち着けって! 俺とソウゴが盗品蔵に行って、徽章を取り返してくるからさ! それにもしかしたらもう売られちまってるかもしれないだろ? ほら、それで上手〜く交渉してどうにかするし! それにやっぱ危険かもしれないしさ!」

 

「売られてるって、それだったら尚更よ! 何でわざわざ待ってなきゃいけないの!? 急がなきゃダメでしょ! それにさっき人数が多い方が、相手がヤバい奴だった時に数の差でどうにか出来るかもって、スバル言ってたじゃない!」

 

「いや、なんて言うか、急な心変わりーっていうか……」

 

「急すぎるわよ!」

 

と、スバルの意見に真っ向から反対するサテラに、スバルは苦笑いしながら説得を試みるが、それも反対されてしまう。その時、ソウゴが彼らの間に入る。

 

「まあ、落ち着きなって、サテラ。多分スバルにも、何か考えがあるんだよ」

 

「ソウゴ…………でも」

 

「大丈夫!」

 

ソウゴは、両手でサテラの肩を掴んで

 

「俺たちに任せてよ」

 

その目は真っ直ぐとサテラを見つめている。

まだ、彼とは会ったばかりだ。でも、何となく、任せてみようという気持ちになった。

そして、サテラは少し考え込んで

 

「…………うん、分かったわ」

 

ソウゴに対して、サテラは頷いて、返答した。

 

「ありがとう」

 

ソウゴは、サテラが意見を呑んでくれたことに礼を言った。

 

「とりあえず、スバルの言う通り、もう売られてるかもしれないから、急いで行った方がいいかもね」

 

と、言いながら、ソウゴは懐からあるライドウォッチを取り出す。

 

「何だそれ?時計?」

 

スバルが質問している間に、リューズを押して起動する。

ソウゴがウォッチを投げたかと思えば、突如ウォッチが巨大化し、バイク、ライドストライカーへと変形した。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!?何かバイクが出てきた!?」

 

「な、何これ!?すっごーい!」

 

スバルはバイクが突然出て来たことに驚き、サテラは驚きながらも、その目は好奇心に満ちていた。

 

「ほぉー、随分と変わった形状をしてるね。スバルはこれをばいく、って呼んでたけど、ばいくって何なんだい?」

 

サテラの髪から出てきたパックが質問をする。

 

「まあ何ていうか、ガソリンっていう燃料を燃やして、その熱で超スゲー速さで動くんだよ」

 

「成る程ねぇ〜」

 

「引く物も無しに動けるの?その形状もそうだけど、不思議ね、そのばいくって」

 

「時計がバイクになるなんて聞いたことないけどな」

 

パックが納得したように頷き、サテラは目を輝かせてライドストライカーを見ている。スバルはウォッチが変形したことにツッコミを入れていた。

ソウゴはバイクに跨り、一緒に出てきたヘルメットを被る。

 

「スバル、早く乗って」

 

「あ、おう!」

 

呼ばれたスバルはソウゴの後ろに乗る。

ソウゴはバイクのエンジンを掛けると、大きな音が鳴り響く。

その様子に、益々スバルとサテラとパックの三人は目を輝かせた。

 

「ね、ねぇ、ソウゴ!」

 

そんな時、サテラがソウゴを呼ぶ。

 

「も、もし、徽章が戻ってきたら、そのばいくに乗せてもらえないかなぁ、なんて……」

 

サテラは、その白い頬を少し火照らせながら、ソウゴに頼む。

 

「あ、いや、別に無理にとは言わないわ。嫌なら……」

 

「全然良いよ?」

 

「え……本当?」

 

「うん。ちゃんと徽章取り戻して、一緒に乗ろっか」

 

「……うん!約束だからね!」

 

サテラは笑顔で返事をする。

「勿論」と、ソウゴも笑顔で返答した。

 

「よーし、さあ行こう!」

 

エンジンの駆動音を鳴らし、タイヤの後輪が勢いよく回転し始めると、ライドストライカーはスピードを出して走り出し、一気にサテラの元から去って行った。

 

「……行っちゃった。すっごーい」

 

「はぇ〜、もうあれ竜車より速いでしょ」

 

残された二人は、走っていくライドストライカーを呆然としながらも見送った。

 

 

 

 

 

ライドストライカーに乗ってるソウゴは、スバルの案内を受けながら王都を走る。

 

「やべぇ……」

 

「何だあれ!?」

 

通行人たちも走るライドストライカーに驚愕の反応を示していた。

 

「ねえ、スバル!」

 

「何だ、ソウゴ?」

 

「一つ気になったんだけど、何でサテラが徽章を探してて、フェルトって子がそれを盗ってるって知ってたの?それに、さっきもまるでサテラを貧民街に行かせたくない様に見えたんだよね」

 

「うっ」

 

ソウゴに質問をされたスバルは痛い所を突かれた、と、言わんばかりに苦い表情をする。

 

「いや……それはその……えーっと、ほら。実はな、サテラがフェルトに徽章盗られる所見たんだよ、俺。だから、助けてあげたいなーって。それに、貧民街って俺たちの世界で言う所の、スラム街だからさ。そんな危険な所に、あんな可愛い美少女を連れて行ける訳ないだろ?」

 

「……ふーん」

 

ソウゴの返事は、何処となく素っ気なかった。

 

 

 

 

 

 

 

『おいでませ貧民街』

 

『レックス 参戦しない 何故 検索』

 

「……文字読めねぇけど、何か碌な事書かれてない気がするぞ、これ……」

 

二人は貧民街へと着いた。

そして、入り口にいるのだが、立て看板を見たスバルは思わず突っ込む。

 

「ねえスバル、盗品蔵は?」

 

ソウゴは、変形し地面に落ちたライドストライカーのバイクウォッチを拾い、スバルに聞く。

 

「え?あぁ、おう、分かった。こっちだ」

 

そしてスバル達は、貧民街の道を歩き出す。

 

「おっ、着いた着いた。ここだよ」

 

しばらく歩いてスバルが指差す所を見ると、そこには建物があった。

建物自体は汚れていて、所々ヒビが入ってたりしている部分があるが、その大きさはちょっとした集合住宅並みだった。

 

スバルは空を見上げる。

空は、気持ちの良いほどに、快晴であった。

 

「まだ、フェルトが来る時間じゃないな。待っとくか」

 

「そうだね」

 

そうして、二人は地面へと座り込んだ。

 

「あっ、やっべ」

 

 ふと、スバルが声を漏らした。

 

「ん? どうかした?」

 

「サテラにフェルトが夕方に来るの伝えてなかった。帰ってくるの遅くて心配して来ちまうかも……」

 

「あー…………まぁ、その時はその時じゃない?」

 

「…………そうだな」

 

 

 

二人がフェルトを待って、暫く経つ。

空には、美しい橙色の夕日が浮かぶ。

二人は、前から土を踏む、足音が聞こえてくる。

 

「そこで何してんだ、にーちゃん達」

 

二人が声のする方向を見ると、そこには路地裏を嵐のように通り過ぎたあの少女がいた。

 

「フェルト!」

 

スバルがフェルトの名を呼ぶ。

 

「あー?私の事、知ってんのか?……って、よく見たら、にーちゃん達、あの路地裏にいた奴らじゃねーか」

 

一瞬怪訝そうな表情でスバル達を見るも、あの路地裏の出来事を思い出し、ハッとした顔で言う。

 

「はは、覚えてもらって光栄だぜ」

 

「で、にーちゃん達は此処に何か用でもあるのか?」

 

フェルトは、盗品蔵に視線を向ける。

 

「用は君にあるんだ、フェルト」

 

「あ?私に?」

 

ソウゴからそう言われて再び怪訝そうな表情をするフェルト。

 

「盗みの依頼か?それなら、前金出せよ。相手の質によっちゃあ、追加報酬貰うけど」

 

「盗むの依頼って……そういうの、しちゃいけないと思うよ?」

 

「生きるためにゃ、しょうがねーんだよ。これがなきゃ、体でも売るしかねぇんだ」

 

「……確かに、必死に生きなきゃいけないのは分かるけど」

 

フェルトの言葉に、ソウゴは苦い顔をする。

 

「で、結局、用件は何なんだよ?」

 

「……君の持ってる徽章、それを渡して欲しいんだ。それを元の持ち主に返したいんだけど」

 

「はぁ?にーちゃん達、あのねーちゃんの仲間なのか?渡す訳ねーだろ、折角の収穫だってのに」

 

「まあ待て、別にタダでとは言わねぇよ」

 

二人の会話にスバルが割って入った。

 

「取引しないか?それなら、文句ないだろ?」

 

「取引?それなら全然いいぜ。ま、そっちがどれだけ出すかにもよるけどな。なんせ、これを手に入れたいのはにーちゃんだけじゃない」

 

フェルトは、徽章と思われる逆三角形の掌に収まる小さな物体を出す。

 

「取引する相手が、もう一人いるってこと?」

 

「そうさ」

 

フェルトの返事を聞いた時、スバルは眉をひそめ、背中が一瞬ひんやりと冷たくなる感じがした。

 

「んじゃ、中に入るぞ」

 

「分かった」

 

「……おう」

 

 

 

 

 

 

 

「大ネズミに」

 

「毒」

 

「白鯨に」

 

「釣り針」

 

「我らが貴きドラゴン様に」

 

「くそったれ」

 

フェルトが合言葉らしき物を言うと、盗品蔵の扉が音を立てながら開く。

するとそこには、2メートルはあろう身長の大男がいた。

 

「よお、ロム爺。待たせちまったな」

 

「フェルトか。そっちの相手は、誰じゃ?」

 

ロム爺と呼ばれた男は、ソウゴとスバルを見る。

 

「新しい取引相手だよ。私が盗ったモンで取引したいんだとさ。あ、ミルクくれ」

 

フェルトは、歩いて席に座り、ロム爺にミルクを頼む。

ソウゴとスバルも、フェルトの隣の席に座った。

 

「おい、ロム爺、このミルク水入れて薄めてねーだろーな?不味いぞ」

 

「人が好意で出してやったもんを不味いというな」

 

「はいはい、悪かったよ」

 

フェルトはミルクの入っていたコップをロム爺に渡した後、スバル達の方を見る。

 

「さて、取引をすると言ったが、そっちはいくら出すんだ?これには宝石があって、アタシもそれなりに苦労して手に入れたもんだ。それに見合うもんだと、互いに嬉しいよな?」

 

フェルトは、徽章を二人にひらひらと見せる。

 

「悪いけど、俺、実は一文なし!」

 

「いや、おい!それじゃ、まず話になんねーじゃねぇか!」

 

スバルの一言に、フェルトがツッコむ。

 

「まあまあ、落ち着けって。一文なしでも、物々交換って手があるだろ?それでいこうじゃねーか」

 

そんなフェルトを、スバルは宥めながら言った。

 

「別にそれでもいーけどよ……じゃあ、何出すんだ?」

 

「じゃじゃーん!これだ!」

 

スバルはポケットから取り出した物を見せる。

それは、ガラパゴス・ケータイ……略して、ガラケーであった。

 

「何だそりゃ?」

 

フェルトが怪訝そうな表情でスバルに聞いた。

 

「これは、巷で噂のミーティアさ」

 

「みーてぃあ?いやどう見てもガラケ……」

 

「しーっ!合わせろ!」

 

ソウゴがガラケーでしょ、と言おうとした瞬間、スバルはそれを遮ってソウゴに言った。そして、フェルト達に向き直って咳払いし、

 

「んで、これの効果は時間を切り取ってこの中に形として残せるんだ」

 

「見てろよ」と、言ってガラケーのシャッター機能をオン。

そして、フェルトとロム爺に向かって撮ると、撮影音と、光が発生する。光を浴びた二人は、驚いた声を漏らし、スバルへ文句を浴びせる。

 

「おい、いきなり何しやがる!」

 

「何の小細工じゃ!」

 

「まあ、待てって。ほら、これを見ろ」

 

「あー?って、これは……」

 

スバルが突きつけた携帯の画面をフェルトとロム爺が見ると、そこには先程撮った二人の写真が。

 

「おお、すげぇ!私の顔が映ってる!」

 

「ホントにミーティアじゃったか!これなら、聖金貨二十枚は下らん!」

 

「ねえ、さっきから気になってるんだけど、ミーティアって何?」

 

「魔法使いのようにゲートが開いてなくても、魔法が使える道具の総称じゃ。噂に聞いてはいたが、実物を見るのは初めてじゃのう」

 

「へぇー」

 

ソウゴの質問に答えたロム爺は、ガラケーをミーティアだと思い込んでおり、興味深そうに見ている。

すると、ふと、扉が開く音が聞こえた。

その扉の開く音に、スバルの心臓は跳ね上がるように心拍数が増す。

 

ーーーーまさか。

 

「おいおい、ノックぐらいしてから入ってこいよ」

 

スバルは、恐る恐る扉の方を向く。

フェルトは扉を開けた人物に対して軽く文句を言った。

 

「あらあら、ごめんなさいねぇ」

 

その人物は、どうやら女性であった。

身長は高く、年齢は恐らく二十代前半だろうか。

目尻の垂れたおっとりとした雰囲気の美人で、病的に白い肌が薄暗い蔵の中でもひどく目立つ。黒い外套を羽織っているが、前を開けているので肌にぴったりと張り付いた同色の装束が目についた。男の目を引くであろう、ナイスバディだ。

髪はこの世界では珍しい黒髪。背を越して腰まで届く長い髪を編むように束ねている。

何処となく、妖艶な佇まいであった。

 

「……一つ、聞きたいのだけれど、そちらのお兄さん達は?」

 

女性の視線は、ソウゴとスバルに向く。視線を向けられたスバルは、思わずビクッと怯えた。

 

「ん?ああ、実はこいらもな、アンタと同じく徽章を求めてるのさ。んで、さっきまで取引してた」

 

「……へぇ。そうなの」

 

女性は、じっと視線を二人に向けている。スバルは、相変わらず怯えており、ソウゴは、スバルの様子の変動に気付いた。

 

「ねえ、お兄さん達?一つ良い?あなた達は何で徽章を求めてるか、教えて貰えるかしら?私は、雇い主の依頼で求めてるのだけれど」

 

「え、あぁ……俺たち、実は宝石とか綺麗なもんを集めるのが趣味で…… 」

 

「はぁ?何言ってんだよ、持ち主に渡すためだろ?」

 

フェルトのその一言で、スバルは血の気が引いた。

 

「フェルト!何言ってんだよ!」

 

「は、はぁ!?だってにーちゃん達の目的はそれだって言ってたじゃねぇか!」

 

「いや、えっと、あ、アンタ!これはこいつの冗談でーーーー」

 

「なぁんだ」

 

スバルは女性に向かって必死に言い訳をするが、女性のその冷たく放たれた一言に、あ、と声を漏らした。

 

「ーーーーあなた達、関係者なのね」

 

冷徹無情の殺意が、ソウゴとスバルに牙を向く。

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