あえる ヤれる アイドル『TRK26』   作:添牙いろは

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園内晴恵

「コーチッ!」

 うわ、あ、あ……園内(そのうち)さんですか。お疲れ様です。

「先日はご迷惑をおかけしてしまい……申し訳ありませんでしたッ!」

 先日、というと……? はて。

「『監禁令嬢』の収録の件ですッ! あの、仮面舞踏会のシーンは……私のために挿し込まれたものでしょう?」

 それは、まあ、そうなのですが……。

「……ハッ、挿し込まれた、といっても、その、私に挿し込むためのシーンという意味ではなく……。そもそも、それでしたら糸織(しおり)さんも一緒でしたしッ!」

 はい、はい……大丈夫ですから落ち着いてください。

 確かに、あのシーンはこちらから打診したものです。とはいえ、事前に監督にも確認をいただきまして、そのうえで、園内さんの出演を決定いたしました。

 ですから、お気になさることはありません。それに、園内さんの演技には、監督も絶賛しておられましたよ。

「本当ですか? ありがとうございますッ! 私もすごく収録楽しかったですし。あんなダンスホールで、裸になって踊れるなんて……ふふ」

 はい、基礎ができていたおかげでとても助かった、と伺っております。

「私も一応、そのあたりのお作法は一通り教わってましたので。人生、日々特訓、ですッ!」

 本番のシーンも大変好評でして、顔を隠して良いのであれば別作品でもご相談ください、とはお伝えしておりますよ。

「顔を隠して……はい、すいません。私ももっと頑張らなければなりませんよね……」

 こればかりは仕方がありません。何より、そんな園内さんに期待しているファンも少なからずおられますし。

「まあっ、私は顔を出さない方が良いと!?」

 というより、恥じらいながら頑張る姿が魅力的なのかと。

「ですよねっ! ……いえ、結果を出せないことには反省しておりますが、努力というのは大切だと思うのです。結果ばかり求めていると、努力を怠るようになってしまいますから」

 そうですね。いつか、園内さんが水泳大会に出られる日が来ることを信じております。

「あ、あの……その……実は……」

 ? どうしました?

「私がどんなになっても、コーチは、私のコーチでいてくれますか……?」

 そもそも、園内さんに何かを教えるほどの立場でもないのですが……何か深い事情があるようですね。お聞きします。

「実は……私、水泳大会には出場できているのですッ!」

 そ、それは……仮面を着けて……ッ!?

「当然、厳格な大会では難しいのですが……いわゆるローカル大会でしたら、その……ラバーマスクを着けさせていただきまして……」

 ああ、なるほど。スイムキャップを大きくした、という理屈ですね。

「こちらでの特訓のおかげで、顔の上半分を隠せば大丈夫になりましたから。おかげさまで、そちらのマスクの許可をもらえる大会には、度々出場しています」

 良かったですね。しかしそれでしたら、深刻に捉えるようなことではないのでは?

「わ、私……水泳大会に出ることを目標として、こちらの劇場にお世話になり、コーチに指示を仰いできました」

 いえ、私にできたのは、お仕事の斡旋くらいのものですけれど。

「それに、最初の頃は『顔出しチャレンジ』にも同伴していただき……私、とても心強かったです……❤」

 そう言っていただけるのなら、私としてもありがたいです。何より、事情を知らないお客様が無茶をするかもしれませんし。現在は、園内さんのファンクラブ会員の方に限定しておりますので、基本的には問題ないでしょう。

「そのお心遣いには感謝してます。ですから……これからも引き続きコーチの下で特訓させていただいてもよろしいでしょうかッ!」

 はい、こちらこそ、よろしくお願いいたします。

「……い、いいのですか……? 水泳大会に出るためにやって来た私なのに……」

 なるほど。それを気にしていらしたのですね。

 園内さんは、いまでは当劇場の人気キャストですから。こちらからも、引き続き出演をお願いいたします。

 ですが……もし、特訓にこだわりがあるようでしたら、何か別の目標を設定すればよろしいかと。

「それでしたら、あるんです。私……全裸生活してみたいんですッ!」

 嫌な予感しかしないのですが、そのー……全裸生活とは……?

「その名のとおり、全裸生活ですッ! 最低でも一週間ッ! マスクはもちろん、着衣も無しで日常生活を送り切る……ッ!」

 な、ならば……山岳地帯のコテージでも……

「それでは意味がありませんッ!」

 ……ですか、やっぱり。

「日常としての生活を、皆様に裸を見られながら送る……ちゃんと朝起きてッ、通勤してッ、お仕事もして……ッ! その間、ずっと、私は……ッ!!」

 それは……うーん……せめて、この街の中だけなら……いえ……それでも厳しいか……。

「ダメ、でしょうか……」

 ギリギリアウトですね。法的には、完全に。

「それは、残念です……。蘭さんたちもよく裸で出歩いていたので、いけるかと思ったのですが……」

 いけてないです。あの方たちの件では、警察からも度々注意を受けておりますので……。いまのところ、そこから波及する事件性がないので見逃していただいておりますが、別の騒動に発展したらさすがにマズイです。なので、劇場外での露出行為は控えていただきたく……。

「どうしても……?」

 ……ではせめて、人様に見つからないようお願いします。

「はいッ! ……私はまだ、マスクなしで人目があるのは恥ずかしいので……誰もいない場所を見繕ってますッ!」

 そ、そうなのですね……。ええ、まあ……うん、園内さんも“そのような素質”を持っていることはわかっておりましたが……せめて、ステージでマスクを外す、という目標にはできませんでしょうか。

「それは、あくまで最終目標のためのファーストステップですッ! 目標を掲げるときは、常に高くッ!」

 つまり、本来の目標を達成するために、あえてそれ以上の目標を自分に課す、と。

「はいッ! だからこそ、水着に留まらず、裸になること、としていたのですが……」

 水泳大会に出場できるようになってしまった以上、水着になることは目標に成り得なくなってしまったのですね。

「はい……だって私……できれば水着も脱ぎたいですから……ぽっ❤」

 と、とはいえ、未だに達成できていないのですし、それは最終目標になり得る課題だとは思います。ですから、もう少し小さな目標を掲げ、そのためにステージ上での全裸を目指す、というのは如何でしょうか。

「それは……その……はい。考えてはいたのですけれど……」

 では、そちらについてご協力させてください。

「いいのですか?」

 はい、私はそのー……園内さんのコーチ、とのことですし。

「ありがとうございますッ! ご指摘のとおり、全裸生活どころか、ステージ上でマスクを取ることもできません。マスク無しでは銭湯や温泉にすら他人と入れないのです」

 そのようですね。

「なので、先ずは第一歩として……コーチの前で……コーチの前でなら、裸になれるようになりたいんですッ!」

 そ、そう来ましたか……。しかし、うーん……屋外方面に舵を切られるよりは……ええ、はい、そちらで頑張ってみましょう。

「ありがとうございますッ! それでは、早速……脱がせていただきますッ!」

 お、お手柔らかに……。

「それはむしろ、特訓していただくこちらからお願いすることなのですが……いえ、手加減は無用ですッ! 私が恥じらいましたら、力尽くでひん剥いていただきますよう、よろしくお願いいたしますッ!!」

 

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