【完結】白嶺に染まぬ黒 ~大人のためのウマ娘 プリティーダービー~ 作:モルトキ
「ええ、お任せを。血に飢えた猟犬のようにレースを制してみせましょう」
屈腱炎。
競争ウマ娘の癌とさえ呼ばれる恐ろしい病だ。日々のトレーニングやレースの負荷により、膝下の腱の一部もしくは全体に炎症が生じ、ゆっくりと進行していく。自覚症状はほとんどなく、筋肉痛や疲労と誤解されることが多い。受診が遅れて慢性化した炎症は根治困難であり、たとえ症状が軽快したとしてもトレーニングを始めたとたん、再発・悪化してしまう。そうなれば二度とレースには復帰できない。最近では医学の進歩により、重症でなければ徹底した安静とステロイド等による内科的治療によって寛解した事例も増えつつある。しかし、走れるほどに回復したとしても、レースに出る限りは再発の可能性が永遠につきまとうため、厄介な病気であることに変わりはない。
詳しい検査の結果、マンハッタンカフェは重症化する一歩手前だったらしい。この段階で発見できたことを、むしろ誇るべきだと主治医に言われた夏野。同期のトレーナーからも、自分を責めてはならないとアドバイスを受けた。しかし、それらの言葉は、なにひとつ慰めにはならなかった。
愛するウマ娘が、引退の崖っぷちに立たされている。そこまで追い込んだのは、トレーナーである自分自身だ。悔しくて情けなくて眠れない日々が続いた。
面会が許されたのは、入院から四日後のことだった。
無機質な病室にて、マンハッタンカフェはぼんやりと窓の外を眺めていた。一週間も経っていないのに、顔がやつれて見える。まるで皐月賞出走を断念したときのように、全身から生気が抜け落ちていた。
お見舞いのため持参したフラワーバスケットが、行き場を失くして宙をさまよう。
「ごめん。わたしが気づかなきゃいけなかった」
夏野が頭をさげる。全ての責任は、トレーナーたる自分にある。今更どうすることもできないが、これだけは伝えなければならない。
カフェが夏野のほうを振り返る。その沈黙は、トレーナーが想いの丈を吐き出すまで待つという意思表示だった。
夏野は訥々と語る。天皇賞春以降、重賞レースを予定しなかったことによるカフェの欲求不満。骨折などの致命的故障を気にするあまり、マンネリ化していたトレーニング。有馬記念を見据えていたにも関わらず、凱旋門賞出走を断りきれなかった優柔不断。
なにより、マンハッタンカフェ生来の脚の弱さを甘く見ていたこと。
トレセン学園の平均的なウマ娘よりも、彼女の骨は薄かった。とくに地面と接触し、最も大きい衝撃がかかる節骨から足根骨にかけて脆弱性が目立つ。筋肉をつけすぎると骨にかかる負荷も増すため、メイクデビューで敗北したふたりは、減量トレーニングに舵を切った。トレーニング自体は成功し、二戦目にして初勝利を飾る。しかし、どうしてもスタミナの低下は避けられず、皐月賞の前哨戦となる弥生賞では4着、続くアザレア賞は11着の大敗に終わる。このとき、マンハッタンカフェの体重はデビュー時より12キロも減っていた。一生に一度しか出られない皐月賞、東京優駿を棒に振る決断をしたとき、周囲からの批判や罵倒はすさまじかった。口さがないゴシップ誌は、ド新人が未来のスターを潰すとまで書きたてた。しかし夏野はバ耳東風とばかりに聞き流す。当のマンハッタンカフェが契約続行を望む限り、彼女を手放す選択はあり得なかった。
トレーニング方法を大幅に見直し、バランスのいい体格を練り上げることで、クラシック最終戦の菊花賞にて雪辱を果たす。さらに年末の大一番たる有馬記念にも勝利し、外野の声をねじ伏せた。だが過酷な長距離レースでの疲労がかさみ、年明けから脚部不安をきたすようになる。これといった病名はつかないが、鈍痛や疲労感といった症状が続いた。そこで夏野は、知己のあった装蹄師に頼み込み、カフェの足を守るため特注の蹄鉄をあしらえた。
それが鉄橋鉄である。Uの字を描く蹄鉄に、橋板をかけるようにして空白部を埋める。接地時の衝撃を、広く足裏に逃がせる設計だ。骨折以外の身体的不調は蹄鉄で治せるというのが、装蹄師の持論だった。
しかし、面積が広くなったぶん重量は増し、地面を掻く力が減少するため、雨に濡れた重バ場だと滑りやすくなってしまう。確かに脚部不安は解消され、カフェの走りは安定した。しかし同時に、最後の直線における追込のキレを失い、日経賞は6着に終わった。
勝てなければ意味がない。
これを口にしたのは、URAでも学園理事会でもなく、マンハッタンカフェ自身だった。
天皇賞春は、通常の蹄鉄で挑み、勝利した。国内G1レース最長の3200mを制したことで、長距離最強の評価が揺るぎないものとなった。
以降、日々のトレーニングにも鉄橋鉄を使うことはなかった。
ここで判断を誤ったのだと、夏野は内省する。
ウマ娘は一直線に勝利を目指す。しかし、全身全霊であることが、いつも正しい結果をもたらすとは限らない。ゆえに、トレーナーが必要なのだ。戦局を冷静かつ俯瞰的に見つめ、適切なブレーキ役として機能しなければならない。
愛情と甘やかしをはき違えることは危険だ。座学では基本中の基本である知識が、実践でこうも通用しないことを思い知らされた。
「謝らないで、とは言いません」
夏野の言葉が途切れてすぐ、カフェは口を開いた。
「許します」
金の瞳が夏野を射抜く。
「こんな言葉で、あなたの気持ちが救われるなら、いくらでも言います。だからもう一度、わたしをレースに戻してください」
「分かった。うじうじするのはこれで終わり。早く回復できるよう全力でサポートする。そしたら、またトレーニング頑張ろう」
フラワーバスケットを棚に置き、夏野は笑顔で言った。
しかしマンハッタンカフェは首を横に振る。
「有馬記念です。治ったらどうとかではありません。グランプリレース、絶対に走りたい。どうかお願いします」
静かだが、凄まじい圧のこもる声でカフェは言った。ひとまず夏野は肯定するしかなかった。面会時間の終わりが近づいていたし、ここで迂闊に反論すれば、これからのリハビリプランが崩壊しかねない。
学園に戻り、トレーナー室で夏野はひとり考える。
どうにも腑に落ちないことがあった。マンハッタンカフェは、勝つことに対して異常な執着を持つウマ娘だ。普段のトレーニングではむしろ理性的なほどだが、出走したレースで負けたときの荒れ方は凄まじい。そんな彼女が、『勝ちたい』と言わなかった。年末の大勝負である有馬記念に対し、『走りたい』という言葉を使ってきた。
単なる思い過ごしならいいが、凱旋門賞を惨敗したにも関わらず妙に落ち着いているカフェには、嵐の前の静けさを感じてしまう。
ともかく、有馬記念のことは病状の推移次第だ。予想よりも回復が早ければ、有馬記念に出走することも可能性としてゼロではない。
あくまで、限りなくゼロに近い可能性だが。
手元のノートパソコンでは、すでに有馬記念回避の申告書を作成している。マンハッタンカフェは、ここで終わっていいウマ娘ではない。大衆から誹謗中傷を受けようが、カフェに恨まれようが、次のレースで勝つための最善手を打つのみ。
そのとき、スマホに着信が入る。相手方を見てはっとした。
シンボリルドルフ。学園の生徒会長にして、現役最強の競走ウマ娘。その呼び出しに、夏野は思わず背筋が伸びる。URAや学園に対する影響力は、並のトレーナーなどより遥かに大きい。
メッセージの内容はシンプルだった。
『学園本部の小会議室まで出頭されたし』。
用件は見え透いている。唯一の契約ウマ娘であるマンハッタンカフェを欠いた、チーム・シェアトの処遇だろう。
案の定、会議室には、ルドルフの他に、理事長を含む学園理事が四人いた。秋川理事長を中央にして、上座に五人。対面するように、ぽつんと置かれた椅子に座る。まるで被告人席のようだった。
「忙しいところ、ご足労いただいて済まない。マンハッタンカフェの様子はどうだろうか?」
ルドルフが口火を切る。どこか同情するような声音だった。
「早くも有馬記念出走に意欲を見せています。彼女ならば、必ず病気を克服し、レースに復帰できるでしょう」
そう断言しつつ、理事たちの表情をうかがう。純粋にウマ娘のことだけを考えるルドルフは、この場では緩衝材にすぎない。問題は、四人の理事たちだ。URAからの出向である三人は、険しい目で夏野を見ていた。それに対し、若くして理事長に就任した傑物、秋川やよいは終始柔和な笑顔だった。ウマ娘のためなら私財を投げうつこともいとわない猪突猛進な性格だが、こういう政治的な場での彼女は、他の人間よりもよほど腹のうちが読めない。
「とはいえ中等症の腱屈炎だ。治療には最低でも半年はかかる。有馬記念は無理でしょうな」
理事の一人が言った。他の者も追従するようにうなずく。
「どうだろう。これを期に、チームメンバーを増やしてみては?」
早速本題が出た。まずは、好きなように喋らせて相手方の情報を引き出すことにする。
「きみのトレーナーとしての能力を、我々は高く評価している。就任直後にチームを持つことは異例だが、初年度でG1三勝を達成した業績もまた異例だ。世論の圧力に屈せず、皐月賞、日本ダービーを回避した手腕も目を見張るものがある」
恐れ入ります、とだけ夏野は答える。内心、腹立たしかった。なにを今さら。クラシック二戦の回避には、URA内部でもずいぶん批判の声があがったと聞いている。結局、中枢の人間も、夏野のことなど微塵も信頼していなかったのだ。
「しかし、ワンマンチームは、こういった不測の事態に弱い。マンハッタンカフェが治療や医学的リハビリを受けている間は、きみの出番はなくなる。その空いたリソースを使って、将来有望なウマ娘たちをチームに引き入れ、指導してみてはどうか? ルドルフ会長によれば、きみのチームに入りたい娘が増えている。しかし、チーム・シェアトからは一向にメンバー募集がかからない。むろん、メンバーを決めるのはトレーナーであるきみの権限だが、もし正当な理由がないのなら、もっとチームの規模を拡充することを学園側も望んでいる」
立て板に水のごとく語るが、要はこういうことだ。マンハッタンカフェが故障して暇なのだから、他のウマ娘の育成にもっと協力しろ。レース第一主義たるURAの回し者らしい要求だった。
「予算のこともあるでしょう。今年の勝ち鞍が天皇賞春だけでは、来年のチーム予算配分は、かなり厳しいものとなりますよ」
ザマス眼鏡の女性理事が付け加える。
チームには、一年ごとに運営資金が配当される。算出根拠は、チームメンバーの頭数と、年度内にあげた勝利数だ。1着から5着までがカウントされ、レースの格が高いほど点数もあがる。それらを総合してチームランクが決定し、相応の資金が与えられる。チームの格付けは、S>A>B>C>D>E>F>Gとなり、夏野のチーム・シェアトは現在Cランクだ。いかにマンハッタンカフェがG1ウマ娘でも、ひとりで出せる成果には限界がある。学内最強チームであるリギル、スピカは、所属する複数のウマ娘全員が綺羅星のごとき戦績をあげることでSランク評価を勝ち取っている。それでも、運営資金に余裕があるわけではない。練習用シューズや蹄鉄などの消耗品、合宿場所の確保など、強いチームほど出費が嵩む。なかには育成熱心すぎて自腹を切るトレーナーもおり、とくにチーム・スピカのトレーナーは金欠で有名だった。夏野の場合、このままでは年明けにはDランク降格が確実であり、もしマンハッタンカフェが復調せず来年度の勝率が悪ければ、FかGランクまで落ちる可能性もある。そうなれば、G1勝利に向けたトレーニング環境を整えることは難しい。降格による予算減額を防ぐためには、とりあえずチームメンバーを増やすことが最も確実で手っ取り早い方法だった。
理事たちの連携プレー。育成に協力するなら、予算を増やす。これが当局側の主張だ。
「熟考。すぐに結論を出す必要はないさ」
秋川理事長が、ようやく口を開いた。
「リハビリプランの作成など、きみも大変な時期だろう。学園はもちろん、マンハッタンカフェがレースに復帰できるよう、全力でバックアップする。そしてこの機会に、考えてみてくれたまえ。きみはこの学園にトレーナーとして勤務している。その能力と熱意は、学園全てのウマ娘に利益をもたらすものでなくてはならない。チーム制を採用しているのは、そのためだ。志を同じくするトレーナーのもと、ライバルであり友人であるチームメンバーと切磋琢磨することで、より高みを目指すことができる。きみは新人であり、ひとりの育成だけで手いっぱいだったろう。これからは、トレーナーとしてさらなる技量の向上に期待する」
にっこりと笑う理事長。
彼女の言うことは、まぎれもない正論だ。チームとは本来、メンバー同士が互いに高め合う場所。モチベーションの維持や、不安の解消など、メリットは数多い。しかし、それはあくまで、ごく一般的な性格の範疇のウマ娘同士で相乗効果を発揮する手法だ。
理事たちは知らない。マンハッタンカフェの異常性を。
メイクデビュー後の傷害行為については、一切学園側に報告していなかった。もしトレーナーを故意に負傷させたとあっては、カフェはレースから永久追放されてしまう。それは夏野の望むことではなかった。例え自らの肉体を犠牲にしてでも。
彼らが一律に語る『良いチーム』が、あのマンハッタンカフェに対しても同じ結果を生むのか、甚だ疑問だった。
「生徒会としても、チームメンバー選抜に協力していくつもりだ。あなたのもとで、ウマ娘が意気揚々と活躍できる素晴らしいチームを作ってほしい」
ルドルフがフォローする。
「それでは解散! 夏野トレーナーは職務に戻りたまえ!」
秋川理事長の一声で、夏野は解放された。
トレーナー室への廊下を歩いていると、不意に隣から声がかかった。
「お疲れ。思ったより早く終わったな」
同僚トレーナーの広田翔だった。夏野とは同い年であり、大学の同期だったが、中央のトレーナーとしては広田のほうが3年先輩だ。すでに自分のチームを持ち、中堅トレーナーに匹敵する勝率をあげている。初年度からチームを率いることになり苦悩の連続だった夏野を、陰ながら支えてきたのが広田だった。
「どっと疲れた。なんかおごれ」
学生時代の口調に戻る夏野。同僚のなかで遠慮なしに話せるのは広田だけだ。
「質より量? 量より質?」
広田が尋ねる。ストレスで胃がやられているため、夏野は「質」とだけ答える。
案内されたのは、府中市内の創作料理店だった。予約席のみの二階は、ほどよい喧噪で周囲が気にならない。フレンチを基盤にしたオードブルと、おそらく自家調合のスパイスが食欲をそそる。飲みたい気分だったが、必要以上に弱みを見せたくないので我慢した。
広田が促す前に、会議室でのやり取りを夏野はとめどなく語る。
「いいことじゃないか。生徒会がサポートしてくれるなら心強いだろう。これからもトレーナーとしてやっていく以上、多くのウマ娘の育成を経験するに越したことはない。うちも個性的なのが多くて大変だが、みんな根はいいやつだよ。だから、何とかなるんじゃないかな」
しごく真っ当な意見だった。広田が担当するウマ娘のなかで、とくに有名なのは、エアシャカールとアグネスタキオンだった。両者とも、天才と狂人の間を綱渡りしているかのような変人だ。しかし広田が言うには、彼女たちがぶっ飛んで見えるのは、他人よりも優れすぎた知性や、それに基づく奇行ゆえであり、精神の根っこのところはふつうのウマ娘と大差ないらしい。シャカールは機械音痴の広田のためにパソコンやスマホの設定をしてくれるし、タキオンは疲労回復ドリンクを差し入れてくれる。広田曰く、皮膚が発光する副作用があるものの、効果は抜群だそうだ。
あの二人を育成し、レースに勝たせているのだから、彼の言葉には説得力がある。
それでも、夏野は不安だった。精神の根っこのところが、ふつうであると断言できないのが、マンハッタンカフェなのだ。
「もし他のウマ娘がチームに入ったら、噛み殺されるかもしれない」
思わず本音が漏れてしまった。
「まさか。同じウマ娘を傷つけるようなのは、この学園にはいないぞ」
「違うよ。殺されるのはわたし。ことが済んだら、他のウマ娘に興味なんて示さないさ」
その言葉に、広田は絶句した。夏野とマンハッタンカフェの間には、すでに固い信頼関係ができていると思っていたからだ。そうでなければ、過酷な長距離G1で三連勝もできるはずがない。
「実は菊花賞の前に、カフェに聞いたことがあるんだ。チームメイトが欲しくないかって。そしたら間髪入れずに『いりません』ってさ。狼に睨まれた羊の気分だったよ。それから、そういう話題は出してない。わたしもトレーニングで手いっぱいだったしね」
夏野は言った。
どうやら広田が想像しているより、マンハッタンカフェの暗部は根が深いようだった。
「なるほど。じゃあ、こうしたらどうだろう。新しい娘を入れるのが不安なら、まずはチーム連携制度で、他チームの娘を育成してみるんだ。契約じゃなく単なる連携だから、いつでも解消できるし、相手は俺のチームがなるよ」
まるで答えを用意していたかのように広田は提案する。
チーム連携。ここ最近、学園側が試行している制度だった。交換留学のように、連携したチーム同士でウマ娘を育成し合う。そうすることで育成方法の幅が広がり、より個人が能力を高めることができる。チーム・アルビレオ所属のセイウンスカイが、この手法で目覚ましい活躍を遂げたのは有名だった。
「今後、本格的にチーム連携が進んでいくだろう。ウマ娘と同じく、トレーナーも互いに協力し、腕を磨いていく時代が訪れようとしている。俺は、おまえとそういう関係になれたらと思っている」
まっすぐな目で広田は言った。
今すぐに返事はできない。だけど、この男なら、まあいいかと思ってしまう自分がいる。酒も飲んでいないのに、少し顔が熱い。
「トレーナーとしてだけじゃなく、その、個人的な関係としても」
こういうとき声が上ずってしまうのが、広田たる所以だ。裏表のない直球勝負。だから警戒心だの打算だのを抱かなくて済む。居心地のいい男だ。
「あのさ、蘭。有馬記念が終わったら、俺と―――」
広田の一世一代の告白を、無情にもスマホの着信音が掻き消す。水を差したのは、夏野のスマホだった。ディスプレイにはマンハッタンカフェが入院している病院の番号が表示されていた。
通話する夏野の表情が、みるみる強張っていく。何かよからぬ事態が生じたことは、広田にも容易に察しがついた。
通話を切った彼女は、メイン料理が運ばれてもいないのに席を立つ。
「ごめん。すぐ行かなきゃ」
椅子をけるように立ち上がりながら夏野は言った。
「何があった?」
打って変わって泰然とした声で広田が尋ねる。
「カフェが。マンハッタンカフェが病院からいなくなった」
その語尾は、ほとんど悲鳴に変わっていた。
アプリウマ娘、楽しいですね。筆者はゲームの才能ゼロのうえ本業社畜の兼業トレーナーのため、育成に苦労しています。