……引いたカードは……魔法カード。これは───
「カペラぁぁあああ!!!」
「!?」
びっくりした、やっぱり人間は大声に弱い。
「テラ、うるさいよ」
「叫ばずにいられないでしょ!?あのバカこんなとこまで撮ってたのね!」
撮ってた……?遅ればせながらイラストの確認。
……なんだろ、テラがとんでもなく慌ててるイラスト……いや、写真、なのかな?
「我々のカードはな、今は別任務中の奴が撮った写真を使っているのだ」
「じゃあ、この写真を撮った人がカペラ?」
「そうゆうことだ」
なるほど。つまりこれはテラにとって恥ずかしいシーンってわけかな。
だとしても今はそれほど大事な事じゃない、それよりも……
「このカード、1枚じゃ意味がない……」
少なくともあと1枚、しかも条件にあったカードが必要。
手はある、あと1枚ならカードが引ける。
「あーもう仕方ないわね。とりあえずこれを使うしかないみたいだし……」
ブツブツと言いながら、テラは隣に帰ってくる。
「テラ、私はちょっと不安だよ」
不思議な感覚。
さっき流した涙よりも簡単で、無意識のうちに言葉はこぼれる。
「不安?何が?」
「多分、うまくいかないのが。成功する確率の方が低いって、分かっているのに不安だよ。負けや失敗が怖いって分かったから……不安だよ」
「そう、仕方ないことね。それでもあたしたちの答えは変わらないわ。何度でも、信じてるわよ、そんで信じなさい」
「本当に、出会ったばっかりなのにありがたいよ。うん、頑張ってみるよ」
「大丈夫、簡単よ。欲しいカードを引き当てて、その後もう1枚奇跡起こして。そしてあたしが初めての同調を成功させる。それだけよ?簡単じゃない」
「奇跡奇跡奇跡、随分と都合がいいね」
「そりゃそうよ。いつだって、どこだって、都合のいい奇跡が時代をつくってきたのよ。大丈夫、きっと良いことあるわよ」
うん、悪くない、悪くないよ、いい言葉だね。
「結、まだ不安?」
私を見据えて、口の端を釣り上げる。
少しシニカルな表情、答えが分かりきってる表情。
「ううん、もう大丈夫」
「そ、なら行きましょ」
「うん、私は墓地の『反撃の咆哮』の効果を発動。カードをもう1枚ドロー!」
『反撃の咆哮』
通常罠
①:自分のモンスターが相手によって破壊されたターン中、自分のライフポイント以上の戦闘ダメージを受けるとき発動できる。
その戦闘ダメージを0にし、このターン自分のLP以上の攻撃力をもつモンスターは攻撃宣言を行えない。
②このカード名の①の効果を使った次の自分のターン中、墓地のこのカードを除外して発動できる。
自分の手札が1枚以下なら、カードを1枚ドローする。
「アレを引き当てるだけね」
「うん、アレを引き当てるだけだね」
「あ?あー、あれな、アレを引き当てるだけな」
「えぇ!あ、アレ……?アレですね!アレ!」
約2名、おそらく分かってないだろうけど。
大丈夫大丈夫、確率ってのは不思議なものだね。
およそ7分の1って考えると、あと4枚しかないカードって考えると難しく感じるけど。
引くか、引けないか、2分の1なら上等だよ。
ドロー!……枠はオレンジ、カードは…
「あの……もしかしてわたし……じゃない?」
おずおず手をあげるイオ、引いたカードも同じく。
「いえ、良くやったわイオ!待ってたわよ!」
「うん、テラ以外のチューナーが必要だったんだよ」
引いたカードを手札に加え、最初に引いたカードを発動する。
「魔法発動『エマージェンシーコンバート』!」
『エマージェンシーコンバート』
通常魔法
このカード名のカードは1ターンに1枚しか発動できない。
①:手札から『SATELLITE』チューナー1枚を公開して発動する。
デッキから公開したカードとカード名の異なる『SATELLITE』チューナー1枚を手札に加える。
その後公開したカードをデッキの1番下に戻し、自分のデッキの一番上のカードを墓地へ送る。
「結、分かってるわよね?」
「うん、分かってるよ」
アイコンタクト。
呼吸も、考えも、同調していく感覚。
デッキからカードを引き抜く、あと1つ。
「『SATELLITEコネクター テラ』を手札に!『イオ』をデッキの下に戻して、デッキ上から1枚を墓地へ!」
デッキで見たあのカード、おそらくあれが……
「……あってる?」
カードを墓地に送る。そのカードを見てテラは一言。
「やっときたわね、このポンコツ」
またもニヤリと笑う。面白くなってきたとでも言わんばかりに。
墓地に送ったカードには、テラがぞんざいな扱いをしていた黒い球体。
……見かけないと思ったら、今も半分ほど地面に埋まっている。
「『SATELLITEコネクター テラ』を召喚!」
「やっと出番ね、任せときなさい!」
『SATELLITEコネクター テラ』
チューナー・効果モンスター
星3/風属性/戦士族/攻 1300/守 500
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:自分のメインフェイズに手札から、このカードとカード名の異なるレベル3以下の『SATELLITE』モンスター1体を特殊召喚する。
②:このカードが墓地に存在し、フィールドに『SATELLITE』Sモンスターが存在する場合、このターンこのカードの①の効果を使っていないなら、手札を1枚墓地へ送って発動できる。
このカードを特殊召喚する。
この効果で特殊召喚したこのカードは、墓地に送られる場合に除外される。
なんと言うか……うん、すごく優秀。雑に言ってしまえばパワーカード。
最初に手札にあった時も思ったけど、そりゃのどかも優先して捨てさせるよね。私もそうするし。
どこからでも、誰とでも、コネクターの名に相応しい繋がりっぷりだよ。
「そして墓地の『SATELLITE─コア オブリヴィオン』の効果発動!このカードは、墓地から手札に加える事ができる!」
宣言したカードが取り出され、手札に加わる。
未だにテラとこのカードで呼び出せるカードは、EXデッキに存在しないけど。
信じろと言われたら信じてみる───うん、悪くない。
「『SATELLITEコネクター テラ』の効果発動、手札からモンスターを特殊召喚!」
黒い球体はふよふよと、ふわふわと、やる気なくフィールドへ。
…………そういえば、この球体……『オブリヴィオン』はテラの持ち物じゃなくって、独立した存在だったんだね。
「今聞くのもどうかと思うんだけど、この球体はなんなの?」
「ん?あー、まぁ、今度説明してあげる。今は力が入ってる球体とだけ思っときなさい」
そうだね、それより大事な事もあるしね。
「さぁ、結。格好良く頼むわよ!」
「うん、頑張るよ」
本当に、本当に久しぶり。
なにか思い出せるだろうか、なにか変わるだろうか。
「…………ううん、なにか変わるかじゃない。変えるんだ」
胸に手を当て、目を閉じる。
相変わらず、自分のものみたいに活動的な心臓。それと連動するようなドキドキとした感情。
不安と期待。大丈夫、信じてるし、信じられてる。
心は決まった。今まで会話から察するに、人の感情……私の感情を繋げて、同調を成功させようとしてるんだよね。
「さ、あんたも行くわよ。ポンコ……いや、オブ」
あだ名、かな?これまでさんざんな扱いをしてきたのに、同調の相手に選んだってことは、あれはテラなりの信用の現れだったりするのかな。
「行くよ、私はレベル2の『SATELLITE─コア オブリヴィオン』にレベル3の『SATELLITEコネクター テラ』をチューニ…………」
ング……まで言おうと思ったんだけど…………
どうしよう、テラがS召喚の際にでるエフェクトのようなものを出してるのに、全く球体が反応してない……
「…………しょ」
うん?聞き取れなかった。
でも……多分、怒ってる。ううん、多分じゃない、怒ってる。
「同調だっていってんでしょ!いい加減にしなさいよ!このポンコツがぁぁーーー!!!!!」
とんでもない声量と共に、テラは球体を蹴り上げる。
カチリ、なにかスイッチのようなものが入る音がした。
「あ!きた!きたわね!結、もう一回お願い!」
蹴り上げた球体に追いつくように、テラは飛ぶ。
感覚で分かる、この同調は成功する。
「私はレベル2の『SATELLITE─コア オブリヴィオン』にレベル3の『SATELLITEコネクター テラ』をチューニング!」
輝く輝く、最初にみた一等星のように。
並んで、重なって、連なって。コネクターの名前に恥じない、繋がりがそこにある。
「連なる星が願いの矢となり空を駆ける、シンクロ召喚!これが私の最初の一歩!『SATELLITEアーチャー テラ』!」
カードに浮き上がる、テラの新しい姿。
球体から取り出されたエネルギーは、弓の形になってその手に握られている。
「やった!同調成功!2人ともちゃんと見てる?」
テラたちは、3人で喜びを分かち合う。手を合わせて、声を合わせて。
良かった、良かったよ本当に。EXデッキから取り出した白いカードは、デュエルディスクの上で淡く光を発している。
「やったわね!結!」
「わぶっ!」
後ろからテラに抱きつかれ、おかしな声が漏れる。
私よりもいろいろと大きな身体に押しつぶされ、骨が軋む。
「……重いよ、テラ」
「レディに重いは禁句よ?」
不満そうなテラをどかして、立ち上がる。
「サイコーの気分、今なら何でもできそうよ」
「うん、私も悪くないよ」
差し出される手に、私も軽く手を合わせる。そして……
「ごめん、のどか。たびたび待たせるね」
「ホントだよ」
「うん、あと……待たせてごめんね。このターンでちゃんと終わらせるよ」
「??」
分からないかな、デュエルの遅延だけじゃない。
そのもやから開放するのが遅れてごめんね。
希望は繋がった。このターンで決着をつける。
「まずは『SATELLITE─プラクティスルーム』の効果で1枚ドロー、そして新しいテラの効果発動!墓地から『SATELLITE』モンスターをこのカードに装備する!」
「あたしは墓地から『SATELLITE─コア オブリヴィオン』を装備するわ」
残りの説明をテラが行う。ちょっと楽。
「そのままもう一つの効果発動、装備されたカードを墓地に送って、表側表示のカードを破壊する!…………なんで1度装備するの?」
普通に墓地のカードを除外なりで発動じゃだめなのかな、なんだかスキが大きいと言うか。
相手に妨害される工程が多い気がするんだけど……
ううん、良くないね。きっとテラの考えが、ある程度反映してこの効果になってると思う。
つまり、これには大事な理由があるんだよね……?
「そりゃ、このポンコツをもう1度墓地に叩き込んで……いや、大事な相棒に活躍の場を与えるためよ」
……回りくどい効果の理由は私怨でした。
「うん、ま、いっか。それじゃあテラ、お願いするよ」
「任せなさい!目標はあの黒いモンス「うん、永続魔法だね」
「…………そうね」
黒い球体……オブリヴィオンを投げつけ、のどかの永続魔法を破壊する。これを破壊しないと戦闘破壊ができないからね。
……あ、弓使わないんだ。
「っ!だけど、そのモンスターじゃ『イービルユニコーン』は倒せない!」
「うん?それはどうかな」
テラの効果はこれで終わりじゃない。
障害を破壊して、想いを願いを届かす。そんな力がある。
「テラがこの効果でカードを破壊したなら」
「攻撃力は800ポイントアップよ!」
「なん……でっ!」
『SATELLITEアーチャー テラ』
シンクロ・効果モンスター
星5/風属性/戦士族/攻 2300/守 1300
『SATELLITEコネクター テラ』+チューナー以外のモンスター1体以上
このカード名の①②の効果はそれぞれ1ターンに1度しか使用できない。
①:このカードがS召喚に成功した場合に発動する。
自分の墓地から『SATELLITE』モンスター1体を選び、装備カード扱いとしてこのカードに装備する。
②:このカードの効果で装備した『SATELLITE』モンスター1枚を墓地に送って発動できる。
相手フィールドの表側表示のカード1枚を破壊する。この効果でカードを破壊した場合、このカードの攻撃力は次のターン終了時まで800ポイントアップする。
「なんでと言われても……そう願ったからだよ」
これで攻撃力は3100。
自己強化された『イービルユニコーン』も倒せる数値。
「テラ、いくよ!」
「了解!今度も格好良いやつ頼むわよ!」
「うん、頑張るよ」
届きますようにじゃない、届かせる。
想いとか、願いとか。
「『SATELLITEアーチャー テラ』で『偽りの絆獣 イービルユニコーン』に攻撃!ウィッシュ・アロー!」
テラが弓を引く、星が駆ける。
眩い閃光のような矢が、偽りの絆獣を貫く。私の願いものせて。
「っ!うっっ!!」
まだ、足りない。
もやを消し去る光量も、LPを削り切る攻撃力も。
「ちょっとだけ驚いたけど、残念だったね、むすび。全然足りないよ!」
そうだね、足りない。
でも足りないなら増やせばいい、何度でも。
「もうできることはないよね!楽しくなってきたけど、次のわたしのターンで……」
「……次なんてないよ。言ったでしょ。このターンで終わりだって!」
久しぶりに、本当に久しぶりに私も楽しくなってきた。
でも、楽しいことならいつも通りの友達と分け合いたい。
やれやれだね。たった1日で随分と変わったもんだ、悪くない。
「手札から速攻魔法!『SATELLITE MISSION─COMPLETE !』発動!!!」
「「「おぉ!!!」」」
3人から驚きの声があがる。
うん、私も驚いてる。同時にこの奇跡が必然だとも思ってる。
『SATELLITE MISSION─COMPLETE !』
速攻魔法
①自分フィールドのSモンスターが、相手フィールドの攻撃力3000以上のモンスターを戦闘で破壊した時、戦闘を行った自分モンスターを対象に発動できる。
そのモンスターは続けてもう1度だけ攻撃できる。
この効果の発動後自分の他のモンスターは攻撃できず、相手はバトルフェイズ終了時まで効果を発動できない。
「この効果で!」
「うん、テラはもう1度攻撃ができる!」
「嘘でしょ……わたしのLPも3100……」
うん、だから……そろそろ終わりにしよう。
「テラ!もう1度、お願い!」
「任せなさい!何度でも!!」
「「ウィッシュ・アロー!!!」」
炸裂する、さっきよりも強い閃光。
きっとこの光はのどかに届く、確信がある。
「やったか!?」
「うん、フラグだからやめてね」
砂煙が上がり、のどかの姿は見えない。
不吉な言葉を言う、リゲルを制止して反応を待つ。
「あーあ」
「のどか……」
のどかは立っている。静かに、そして……
「負けちゃった」
「のどか!」
「って!危ないわよ!」
倒れるのどかを抱きとめたくて、走ろうとしたんだけど……足がもつれてしまう。
結局、私がテラに抱きとめられてしまう。あぁ……なんだか疲れた……
「結?結!?寝るな!寝たら死ぬわよ!?」
うん、死なないよ。でも、ちょっと疲れたよ、久しぶりにこんなにも眠い……
意識は落ちていく。少し無責任だけど……うん、仕方ない。あとはみんなに任せよう……
おやすみ。…………あぁ、明日、遅刻しないといいなぁ。
…………夢をみていた。
幸せな夢だった?と聞かれると答えにくいけど。
夢の中では新しい場所で、友達ができて、宇宙から来た精霊と仲良くなって。
私にもちゃんと、感情とか心があって、誰かの為に頑張れて。
自分をもう少し信じてあげようと思える。ありえないとこばかりだけど…………そんな夢だった。
うん、幸せな夢だったよ。ありがとう。
「……び!……すび!……ダメね、起…ないわ」
…………声が聞こえる。
「昨…はい…いろあったから仕方……な」
「そ…ね。イオ、カメ……わして」
「はーい」
…………誰だろう、分からない。なんだか身体が疲れていて、起き上がれないし、声も聞き取りにくい。
「──座の皆さん!───座の皆さん!」
…………聞き覚えのある声だ。誰だろう、分からない。
「──座のひとはちょっぴりバッド!」
……あぁ、夢で聞いていた声だ。
「そして──座のあなた!人生の分岐をしっかりと選べたかしら?何があっても大丈夫!誰だっていつだって変われるのよ、そしてきっといい事あるわよ!」
「なにか……変わるかな」
少しづつ意識が戻る。
ゆっくりと頭が覚醒する、これでも寝起きはいい方。
「……夢じゃなかった」
昨日の事……体感的には数時間前の事も思い出していく。
「あら、結。おはよう」
「うん……うん?……おはよ…………なにしてるの?」
「なにって、仕事よ」
身体を起こして周りを確認。
マイクを持ったテラ、カメラを持ったイオ、偉そうに座っているリゲル。
…………本当になにしてるの?
「だから仕事よ、仕事。ちっさい番組だけど『SATELLITE』印の占いを提供してるのよ」
「結構当たるんですよ〜」
「うむ、貴重な資金源だな。正直、働かないと食っていけん」
「そうなんだ……」
自分の他人への興味の無さが悔やまれる。
思い返してみれば声だけじゃなくて、言葉の端々に聞き覚えのある言い回しがあった。
うん、とりあえず……私は都会でも、変わらず占いをうける事ができるみたい。
「夢じゃなかったんだ……」
噛みしめるようにもう1度。
「夢なわけないでしょ。あ、そうそう!あたしたちもここに住むから。今日からこの部屋は『SATELLITE 地球支部』ね」
「うーーん、いいのかなぁ……」
「良いのよ、許可はとってきたわ。いい管理人ね」
いいのかなぁ……まぁ、いいのかな。
「結だってあたしたちがいなかったら困るでしょ。デッキ的に、もやの回収とか、いろいろして……あと、あたしにデュエルを教えてちょうだい!」
「あ、テラちゃんズルい!わたしもお願いします〜!」
うん、まぁ、簡単なルールくらいなら。
ゆっくり天井を見上げる。なんだか……なんだかとっても賑やかになりそう。
あんまり騒がしいのは好きじゃないはずなのに、なんでかな、悪くない。
「というか結。あんまりゆっくりしている暇はないわよ!早く朝ご飯食べて、支度しないと。今日は入学式なんでしょ?」
「うん、そうだね」
「ご飯もらってきてあげる。パンとお米、どっちにする?」
「うーん……パンかな」
「あら、気が合うわね」
パタパタと駆けていくテラを見送って、ベッドから降りる。
ここ数年なかった、賑やかな朝。
「うん、なにか変わるかも」
根拠はないけど、きっと良いことある。
そんな言葉を信じたい、私の心はそう願っている。